著者
根津 由喜夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ビザンツ皇帝の帯びる霊性的権威の実像を解明することを目標にしている。11-12世紀における帝都コンスタンティノープルをひとつの神聖空間として俯瞰した上で、そこで行動し、独特な政治文化が醸成されるのに貢献した皇帝以下のビザンツ人たちの行動形態を、極力、同時代の価値観、思考様式に基づいて解き明かしてゆくことを目指している。さらに、時の経過と共にそれらの現象がたどった変遷の過程も探求する。
著者
早田 幸政 青野 透 堀井 祐介 前田 早苗 富野 暉一郎 福留 東土
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.書面調査法科大学院について、日弁連法務研究財団、大学評価・学位授与機構、大学基準協会の専門職大学院認証評価システムを検討し、その特質を把握した(前田、堀井)。また経営系、会計系においては、AACSB等アメリカのアクレディテーションシステムを検討し、併せて国内におけるシステム構築に向けた動向や準備状況をABEST21、大学基準協会等諸機関のそれを中心に把握を行った(福留、渡辺)。公共政策系に関しては、アメリカのNASPAAの公式文書を手がかりに評価基準・プロセス等について詳細な検討を進めた上で、国内における公共政策大学院認証評価のアウトライン、認証評価手続規程案等を提示した(早田)。さらに、大学院プログラムに対する国際的な質保証のあり方についても考察を行った(前田、福留)。2.訪問調査国内の公共政策大学院の関係者を対象に、質保証の仕組み構築の可能性や必要性についての意識を聴き取り調査を通じ把握し、その概要を取りまとめた(早田、富野、渡辺)。またアメリカのNASPAAを訪問し、最新の情報の補充に努めた。3.その他研究代表者及び研究分担者の一部が、日本における公共政策系大学院に係る認証評価機関の設立に参与し、その準備に向けて、アクレディテーションに関する複数の資料(手続規程や訪問調査の手引き等)の翻訳をはじめ必要な諸作業を漸次進めてきた。
著者
木村 留美子 河田 史宝 津田 朗子
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13427318)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.143-149, 2000

看護婦の体験や経験がどのように専門職業人の意識を形成しているのか,自己イメージとの関係から調査した.学習会への参加は20代が最も多く,全体の62.5%を占めていた.自己イメージの経験年数別比較では30項目中13項目に有意差を認め,経験年数による職業的自己イメージの相違が明らかとなった.20代と30代以上の2群間で自己イメージの因子構造を比較し,それぞれ6因子を抽出した.その内5因子は共通であった.「力強さ」因子は30代以上で,「誠実さ」因子は20代で有意に高かった.学習会への参加動機による自己イメージの因子構造の比較からそれぞれ5因子を抽出した.その内の4因子は共通であった.「社交性」「指導力」因子は業務命令により参加した者の得点が有意に高かった
著者
吉岡 和晃
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究において申請者らは、発生期・生後の生理的および病的(虚血、腫瘍)血管新生ならびに血管恒常性維持にクラスII型PI3K-C2αが重要な役割を果たすことを明らかにした。内皮細胞においてC2αをノックダウンすると、エンドソーム輸送の障害、VE-カドヘリンの配送異常が引き起こされた。C2αヘテロ欠損マウスでは、アンジオテンシンII投与に対する解離性大動脈瘤形成の発症率上昇が見られた。以上のことから、C2αは血管内皮細胞において、小胞輸送の制御を介した物質輸送及びエンドソーム上でのシグナル伝達に必須であり、これらの作用により血管形成と血管の健全性維持に重要な役割を担うことが明らかになった。
著者
森下 知晃 水上 知行 田村 明弘
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ハワイ大学設置のSIMSを用いて、グラファイトの局所炭素同位体比分析の分析手法を確立した。この手法を用いて、高圧変成岩、接触変成岩、ヒスイ輝岩、グラファイトを含むかんらん岩捕獲岩の分析を行った。高圧変成岩類、接触変成岩類は、炭質物中の不純物の影響により良いデータが得られなかった。ヒスイ輝岩のデータから、ヒスイが形成される沈み込み帯初期には、マントル値と同程度の炭素同位体比を含む流体が関与していることが明らかになった。かんらん岩捕獲岩中のグラファイトからは、生物起源を示唆する軽い同位体比が得られた。マントル中でのダイヤモンドが形成との関連を示唆する。
著者
大谷 吉生 瀬戸 章文 吉川 文恵 古内 正美
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ガス分子に近い大きさを持つナノ粒子をエアフィルタで捕集できるかどうかは、ナノ粒子製造工程における有害なナノ粒子への曝露に関連し、労働衛生の分野で大きな関心事である。本研究では、マクロ分子を単分散ナノ粒子代替粒子として使用し、エアフィルタのナノ粒子捕集効率を測定する試験法を提案し、その評価を行った。その結果、エレクトロスプレーと微分型静電分級器(DMA)を用いてポリエチレングリコール(PEG)分子を発生させ、荷電中和後、DMAで分級すれば、PEG分子量を変えることにより、粒子径2.6μm以上で、マクロ分子イオンをフィルタ試験用ナノ粒子として使用できることを明らかにした。
著者
大島 徹 塚 正彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

熱中症及び熱傷性ショックで死亡したグループ(第1群)と,機械的窒息で死亡したグループ(第2群)に分けて,細胞数の比較検討を行ない,病理組織学的観察を行ったところ,機械的窒息死事例の肺組織においては,高温の悪影響による熱中症や熱傷性ショック死事例と比べて,単球及び多核巨細胞が多数認められた。また,一酸化炭素中毒死のグループ(第3群)にもマクロファージ及び多核巨細胞減少の傾向が認められ,遊走する数はある程度,浸出物の多寡と相関する傾向にあった。法医診断において,単球系細胞の観察によって,以上3群間の鑑別診断の精度が上がるものと考えられた。
著者
山崎 俊明 横川 正美 立野 勝彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

リハビリテーション領域における重要な課題である廃用性筋萎縮の進行予防に焦点を絞り、筋萎縮進行中のストレッチ効果、および筋肥大効果が報告されているアドレナリン受容体作用薬(clenbuterol ; Cb)投与との併用効果を調べた。廃用性筋萎縮は、後肢懸垂法により作成し、2週間の実験期間を設定した。実験動物としてWistar系ラットを使い5群に分け、通常飼育群(CON)の他4群を実験群とした。実験群には後肢懸垂処置を行い、後肢懸垂群(HU)、1日1時間ストレッチ実施群(STR)、Cb投与群(Cb)およびストレッチとCb投与の併用群(STR+Cb)とした。分析は、形態評価および機能的評価を行った。タイプI線維断面積は、HU群はCON群の42%に減少したが、Cb群は81%、STR群は58%、STR+Cb群は74%であった。ストレッチ効果を認めたが、併用効果は認められなかった。筋線維タイプ構成比率は、Cb群で有意なタイプII線維比率の増加を認めたが、STR+Cb群では変化なく併用の有用性が示唆された。Cb群およびSTR+Cb群の筋収縮時間はCON群より有意に短縮し、HU群およびSTR群の収縮時間はCON群と差がないことから、Cb投与による悪影響として速筋化傾向が示唆された。単位断面積あたりの単収縮張力はSTR群がCON群と差がなく、しかもCb群より有意に大きい結果から筋伸張の効果が示唆された。実験群の筋原線維タンパク量(MP)は、CON群に比し有意に減少した。実験群間では、Cb群およびSTR+Cb群のMPがHU群およびSTR群より有意に大きく、Cb投与の効果が示唆された。以上の結果から、廃用性筋萎縮進行中のラットヒラメ筋に対する予防的介入方法として、Cb投与による断面積減少の抑制と、筋ストレッチによる伸張刺激の併用効果の有用性が示唆された。
著者
小林 恵美子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、未成年大学生が飲酒、喫煙をするか否かを合理的に判断する背景について、次のことを実証した。飲酒に対する社会的制裁と非飲酒に対する社会的報酬の推定値は抑止要因として、そして、飲酒に対する社会的報酬と非喫煙に対する社会的制裁は促進要因として作用していることが明らかになった。さらに、飲酒、喫煙に対する「制裁>報酬」となった時にこれら違法行為を自重すること、また、非飲酒に対する「制裁<報酬」となった時に飲酒を自重することが示された。
著者
三浦 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

水分子系を念頭におき、水素結合分子集団の量子状態の計算を厳密に実行するシミュレーション手法の開発を行った。このシミュレーション手法は変分経路積分法にその基礎をおき、本研究では運動方程式を用いて計算を実行する分子動力学法およびハイブリットモンテカルロ法の開発を行った。またシミュレーションパラメータの探索に有用と考えられる、調和振動子系に対する解析解の導出もあわせて行った。本手法は、水素分子クラスターおよび水1分子の系に対して適用され、その有効性が明らかになった。このことにより本シミュレーション手法は水素結合分子集団に対する大いに有望な量子シミュレーション手法であることが示された。
著者
氣多 雅子
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学教育学部紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:02882523)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.17-37, 1998-02

1950年代末から60年代初頭にかけての実存主義から構造主義へという思想史的転換は、人間中心的な主観主義から、非人称的な構造に優位を置く客観主義への転回として性格づけられてきた。この「構造」の概念はある種の流動性と多様性をもつようであるが、そこに一貫するのは、主体の思索や意志や行動は、社会構造や言語の無意識の構造によって規定されたものであるとする見方である。この状況は、今度は構造という概念の批判と反省の
著者
大浦 学
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

モジュラー形式と代数的組合せ論の境界部分部で研究を行ってきた。2元体上自己双対重偶符号の重み多項式はある有限群の不変式となっている。ここで現れる有限群の中心化環の構造を小須田雅と共同で決定した。本村統吾と共同でZ4符号に対応するE-多項式が生成する環の生成元を決定した。小関道夫とともに、長さ85の extremal な自己双対重偶符号から得られる extremal な格子の高種数のテータ関数について研究を行い、特に種数4ではそれらが異なることを示した。
著者
福士 圭介
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して、福島第一原子力発電所が水蒸気爆発を起こし、大量の放射性物質が原発周辺に放出された。放出された放射性物質の中で、総放出量と半減期から、原発周辺の土壌汚染の主な原因は放射性セシウム(Cs)であるといわれている。原発周辺の広範囲で放射性Csが土壌表層の細粒物質に濃集していることが確認されており、土壌に普遍的に含まれている層状粘土鉱物がCsの主な取り込み媒体と指摘されている。 福島県の土壌は阿武隈花崗岩を母岩としており、その風化生成物である層状粘土鉱物のであるスメクタイト、バーミキュライト、イライトの存在が確認されている。層状粘土鉱物は層状の結晶構造を持っており、層間に保持される陽イオンは溶液中の陽イオンと交換可能である。Cs+はこれら粘土鉱物への親和性が特に高いため、原発事故により放出されたCsは層状粘土鉱物の層間に強固に保持されていることが予想されている。しかし溶液中の主要陽イオンが高濃度である場合、強固に保持されたCs+であっても他の陽イオンとの交換によりCs+は溶脱する可能性がある。自然界において粘土粒子が接触する天然水は主要陽イオンを様々な濃度で含んでいる。したがって天然の土壌に吸着した放射性Cs+が天然環境に溶出することが懸念される。環境中における放射性Csの動態の理解には、天然土壌からの主要陽イオンによるCs溶脱挙動の理解が必須である。本研究は福島県第一原発周辺に分布する土壌粘土を用いて、主要陽イオン(Na+, K+, Mg2+, Ca2+, NH4+, Li+)添加によるCs(133Csおよび137Cs)の脱離挙動を系統的に検討した。また標準的なスメクタイトに保持されている微量セシウムを対象に主要陽イオンによる脱離実験も行った。