著者
齋藤 毅
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,多様で表情豊かな歌声を合成可能にする歌声合成技術の構築を目指し,以下に示すの4つの成果を達成した.(1)オペラ・ポピュラー歌唱者25名による歌声500トラックから構成される歌声データベースの構築.(2)歌声の裏声・地声(声区)の生理的・音響的特徴の操作に基づく声区識別・変換手法の構築(3)オペラ歌唱固有の音響特徴の制御に基づくオペラ歌唱合成手法の構築.(4)歌手の個性を規定する音響特徴量の検討.これらの成果は,従来の歌声合成で実現できなかった豊かな声質,高度な歌唱技量に基づく歌唱スタイルを表現可能にするものである.
著者
志水 照匡
出版者
金沢大学
雑誌
社会環境研究 (ISSN:13424416)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.105-120, 2004-03
著者
牧 輝弥
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

黄砂とともに風送される微生物群(黄砂バイオエアロゾル)を、黄砂発生地(タクラマカン砂漠)および飛来地(珠洲、立山等)の高度1000m-3000mで採取した。分離培養法および遺伝学的分析手法を駆使して、黄砂バイオエアロゾルに優占する種を突き止め、優占種が飛来地に沈着するとともに、ヒト健康影響および生態系の動態に関わっている可能性を明からにした。ただし、優占種以外の微生物種(非優占種)には、数百種が含まれることが分かり、その生態学的および生理学的特徴は推測に留まる。
著者
稲垣 美幸 堀井 祐介 吉永 契一郎
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,大学には教員でも職員でもない位置付けとして「専門職」と呼ばれる様々な職種の導入が進んでいる。この各職の業務内容や組織に関する実証研究は進んでいるが,その一方で,当事者やその周囲では課題の声が聞かれる。しかし,こうした課題は現場レベルの感覚的なものとして聞かれるのみで,客観的に明らかにされてはいない。で,本研究は,専門職として報告されている新たな職種全体を対象に,専門職が抱える課題を客観的かつ実証的に明らかにし,専門職を取り巻く共通課題と職種による特色を見出す。
著者
佐々木 達夫 VOGT Burkard 金子 浩昌 二宮 修治 BURKAHRD Vogt ブハード ホクト ジェイ ラクスマン ブィード ホクト 蔀 勇造
出版者
金沢大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

アラブ首長国連邦ラッセルカイマ首長国にある、中世港湾都市ジュルファル遺跡を発掘調査し、住居跡とモスク跡を発見し、出土した陶磁器片の整理を現地で行った。調査の目的は、中世のインド洋貿易で運ばれた陶磁器を使って、当時の貿易状態の一面を探り、それを使用した人々の生活と歴史を復元することであった。イスラーム世界と東アジアは、9世紀以来、海上交通路を活発に利用した貿易により交流したことが知られる。これは陸上の道から大量輸送の可能な海の道への転換であり、こうした事実は文献からだけでなく各地から出土する大量の陶磁器片などによって推定できる。しかし、その産地、数量、組み合わせ、歴史的な変遷、さらに使用した人々などについての詳細な実態は不明瞭な部分がまだ多い。そこで、ペルシア湾岸に位置する交易都市ジュルファル遺跡を発掘することにより、その実態、すなわち、どのような建物に住む人が、生活用具になにを用い、そしてなにを食べ、他の世界のどこから物を運んだかを知る資料を得る。とくに、東西世界の貿易と技術的な影響関係を、出土する陶磁器を主に用いて探ることが現在の課題である。すなわち、本研究は他地域との交流という視点を中心にすえた現地調査研究である。一つの住居単位(中庭と建物を含む最小単位の敷地)が推定できる範囲を目的に発掘を行った。ジュルファル遺跡では7層に分類できた14世紀から16世紀にかけての都市遺跡の一部を発掘し、層位的な建物プランの変化をとらえることができた。層位的に出土する陶磁器の組み合わせやその他の生活品から、ここに住んだ人々の従事した貿易と生活の状態、その変遷を推定することができた。出土品は現地およびラッセルハイマ国立博物館でできるだけ分類整理し、器形復元や統計的な処理を行った。その過程で選別され登録された出土品の一部を日本に運び、詳細な実測図作成、写真撮影を行っているところである。さらに陶磁器の釉と素地の科学的分析を日本で実施中である。一部の分析結果はすでに論文として公表している。出土した陶磁器は、イラク、イラン、アラビア半島各地、東南アジア、中国などから運ばれたものであることが判明し、当時の貿易の様相を知る手掛かりを得ることができた。東・東南アジアの製品では中国の染付、青磁、赤絵、黒褐色釉陶器、ベトナムの染付、青磁、タイの青磁、鉄絵陶器、黒褐釉陶器などが目立つ。イランやイラクの青緑釉陶器、白釉陶器、さまざまな文様の描かれた施釉陶器も出土している。土器はアラビア半島産が多く、次いでイランの土器が続いている。現在、重量を計測して層位的に統計処理を実施中であるが、産地不明の製品もまだあり、基礎的研究の継続がさらに必要である。もっとも多いのは現地産土器、次いでイラン産土器、さらにイラン産の施釉陶器である。遠隔地から運ばれた陶磁器は海上貿易を復元するうえで大きな意味をもっており、さらに研究を続ける予定である。ジュルファル遺跡の周辺に所在する遺跡の調査も実施した。ジュルファル遺跡の北10kmに位置するハレイラ島は、初期のジュルファル遺跡と推定できる遺跡である。ハレイラからジュルファルに都市が移動し、ジュルファルという都市名もハレイラから現在の地に移動したと推定でき、二つの地域を併せて広義のジュルファル遺跡と呼ぶべきであることが推定できた。島の南端で初期イスラームの住居跡を発見した。ジュルファル遺跡の歴史的位置づけを行ううえで重要な発見であり、本格的な調査がさらに必要である。ペルシャ湾地域における日本人によるイスラーム時代の遺跡調査は、我々の調査が唯一であり、本研究の果たす学問的な役割は大きい。
著者
ケンダル ジュディ
出版者
金沢大学
雑誌
言語文化論叢 (ISSN:13427172)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.151-165, 2000-03

少なくとも私の知る限りでは「文荷」の英訳には前例がないと思われます。私たちの翻訳は以下の方法で行なわれました。日本文学研究者のイリス.エルガリシとの共同作業により,彼女が翻訳の現本となるものを作成し,私が「文荷」特有の文体に留意しながらそれに手を加えていきました。しかし,この作品特有の文体を英語で表現するのは容易ではありませんでしたが,この作品が何処かサミュエル・ベケットの文学に通ずるところがあると思い,彼の作品を改めて読み直しました。翻訳を完成するにあたり「文荷」のユーモアに富んだ複雑な文体を英語で正確に表すことができたのは,ベケットの作品に負っているところがあります。
著者
岩坂 泰信 張 代洲 小林 史尚 牧 輝弥 柿川 真紀子 洪 天祥
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

タクラマカン砂漠での気球観測では上空に浮遊する黄砂の約10%が微生物と合体していた。黄砂が偏西風帯にまで舞い上がった時点ですでに微生物を付着させている可能性が高い。能登半島での観測は、黄砂濃度上昇時に微生物濃度が上昇し「黄砂とともに大気圏を移動している」ことを強く示唆した。立山山頂付近の積雪の黄砂層の微生物多様性はタクラマカン砂漠のものと高い類似性があり、砂塵発生源地からの長距離移動・拡散を示唆した。
著者
碓井
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文学部論集. 行動科学・哲学篇 (ISSN:13424262)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.27-43, 2001-03-15

パーソンズ・ルーマン・ハーバマスの三者は,ともに「象徴的メディア」を扱う共通アリーナにあるので,それぞれの長短を比較・検討することができる.「象徴的」「一般化」「コミュニケーション・メディア」「成果」「操作」という中心概念を置き,三者には,メディアそのものを複雑性縮減,負担解除の装置としてとらえる共通項がある.他方,メディアが生み出す多様性に差がないかどうかを検討する.メディアの記号論,名称,類別,機能と効果,社会分化との関連を,順次検討した.批判的検討を通して,基本的メディア,技術的メディア,個別領域・複合形態でのメディア,の3領域に分けて再編成する可能性を示唆した.メディアと集権化・分権化の関連について問題提起をした。テキストとして,パーソンズ『政治と社会構造』,ハパーマス『コミュニケーション的行為の理論』,ルーマン『社会の社会』を中心にしている.
著者
熊崎 博一
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

社交不安障害(以下SADと略す)患者の数は人口の約10%という高い有病率であり、大きな社会的問題となっている。SAD患者はヒトから見られているという意識が強く、人前での会話といった社会的場面において強い不安を呈し、職業面・社会生活面で大きな障害をきたす。SADはもっとも生活の質(QOL)を下げる精神疾患の一つとの報告もある。現在まで薬物療法や認知行動療法など効果的な治療もあったが、一方で難治なケースも数多く存在した。人の外観に酷似したヒト型ロボットであるActroid-Fは声の抑揚を調整することで感情的要素を軽減でき、状況・場面・体調・感情によって対応がぶれることもなく、不安が強く変化に敏感なSAD患者にとっても安心して関わることができ、向社会的態度を誘発することが期待できる。“暴露療法”は不安に慣れるための練習法で、敢えて自分が苦手とする状況をクリアしていく事によって少しずつ恐怖を取り除き、病気を克服していくという治療法である。多くのSAD患者にとって心地よく自然にかつ相互にインタラクションするように視線呈示やジェスチャといったActroid-Fの動きを改良し、ノンバーバルな表出を調整する。動きを改良し、Actroid-Fを用いた暴露療法を確立することが目的となった。平成29年度は精神科医の応募者が実験中の経時的変化を詳細に検討し、Actroid-Fに対するSAD患者の反応の分析に取り組んだ。SAD患者の長期的にインタラクションするうえで、Actroid-Fから受ける人間らしさの印象、心理的安心感を指標とした、SAD患者のインタラクションの質を上げる要因を評価し、Actroid-F の動きを改良することでSAD患者と自然にかつ相互にインタラクションするActroid-Fの実現を目指した。多くのSAD患者が適合するActroid-Fが設定することに成功した。
著者
KANASAKI Hajime
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文学部地理学報告 (ISSN:0289789X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.56-88, 1984-03-29

居住の自由がなかった江戸時代から"出稼"という現象はあった.越中の売薬出稼ぎは代表的なものであり,江戸へ出た越後の"米搗ぎ",酒造に従事した村民の集団,或は各地の城下町へ農閑期を利用して武家や商家等に奉公に来た場合等々,その仕事も多岐に亘ったし,出身地も全国的に広く存在した労働力の地域間移動の現象である.明治になると人々の居住は自由となり,一方殖産興業のスローガンの下で各種の産業が急速に発展したことはよく知られている.この産業を支えた労働力は,大部分は農村から離村し,都市に移った人々によってであったが,それらの産業は今日のように近代化され,機械化されたものではなかったし,経営方針や労務管理も大きく異っていたので,業種によっては大量の臨時的労働力-つまり季節出稼者の-を雇傭した.一方,農村側に於ては,封建時代程ではないにしても,依然として農業のみでは生活出来なかった人々が極めて多かった.経営規模が小さかったり,小作農が多かったりしたことから当然であるが,日本海側の農村地帯のように,冬季は自然条件から必然的に農作業が出来にくい,従って農閑期とならざるを得ないといった理由も加えることが出来る.これを,出稼者を送り出す方の要因であるとすれば,前者は受入れる要因ということが出来よう.この両者の要因が相俟って出稼者を発生させた原因と思われる.本論では,こうした当時の社会的な状況を踏まえて,わが国全体の出様現象がどのように展開して来たか,主として府県単位で稍々マクロに捉え,同時に,出稼者が従事した主要業種について,その盛衰をみたものである.わが国の季節出稼の情況は,第2次大戦を境にして大きく変ったし,又,高度経済成長の始る頃から急速に質量共に変つたので,本論では一応昭和35年までの情況について述べてある.蓋し,戦前戦後で,諸統計の基準が大きく変り,両者の比較が極めて困難になったからである.
著者
米田 洋恵
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

リサーチ・アドミニストレーター(RA)と産学官連携コーディネーター(CD)が連携して研究支援にあたることは、研究の推進に大きく寄与する。そのため、両者の連携を重視した柔軟で効果的な研究支援を実現する組織体制・組織マネジメント方法として「プロジェクト型組織モデル(以下「本モデル」)」を提案し、その有効性を検討した。本モデルでは、RAとCDが職掌ごとに別々の組織に所属するのではなく、両者が同一組織に所属し、プロジェクト単位で混合チームを設置する。本研究では、一部に本モデルを導入した金沢大学のRA・CD組織、先端科学・イノベーション推進機構(FSI機構)を調査対象とし、平成28年4月から1年間活動状況を記録した。その結果、新たに融合研究を行う研究チームの立ち上げにおいて、本モデルが著しい成果を上げたことがわかった。また、本モデルにおけるマネジメントの困難さ、具体的には、業務内容およびマネジメント担当者の資質が、本モデルを導入した組織のマネジメントの成否に非常に大きく影響する可能性があることがわかった。同時に行った、他研究機関における組織体制調査においては、RA・CDの連携の重要性は認識しているものの、実際に取り組みを進めている組織はごく限られることがわかった。また、取り組みを進めている組織のなかで最も成果をあげている組織が本モデルを導入していることがわかった。比較検討した結果、本モデルは、RA・CD組織において、業務内容とマネジメント担当者の資質によっては大きな成功を収め得るため, 導入にあたっては、この二点の検証を経る必要性が高いことがわかった。なお、本研究の実施期間内では、他のより効果的な組織体制・運営方法については十分な検討を進めることができなかった。RAとCDが一貫した研究戦略に基づいて活動し、研究推進に大きく寄与しうる組織体制およびマネジメント方法を明らかにするためには、さらなる調査を行う必要がある。