著者
三宮 真智子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 人間の情報処理に対する科学的探究心の育成を重視した問題解決志向のコミュニケーション学習プログラムの開発を目指し, 次の3つの成果を上げた。(1) 一般社会人として必要なコミュニケーション能力を構成する知識, スキルを体系化した。(2) ミスコミュニケーション・データベースを試作した。(3) コミュニケーションがうまくいったり失敗したりするのはなぜなのかを科学的に探究する学習プログラムを開発した
著者
佐々木 宏子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本報告書は、「絵本の主題分析のもとづく絵本心理学の構築III」の研究成果の一部です。第III期は「赤ちゃんと絵本」に焦点を絞り研究を継続してきましたが、テーマが赤ちゃんであるだけに実に文章化が難しいものでした。それゆえ第1章の「つなぐものとしての絵本」では、映像写真を多用することになりました。第1章は、生まれたときからの赤ちゃんの追跡記録のまとめです。本研究では2002年生まれの一男児を選び、かなり細かく追跡しました。現在、17巻のDVD映像記録が収集できており、さらに継続中です。1.ストーリーテリングへの強い好奇心、2.オノマトペへの集中、3.車と自動車絵本へのあく事なき執着、4.幼年童話を聴く、5.赤ちゃんと絵本を読み合う姿勢について、です。誕生から2歳6ヶ月までの追跡記録です。第2章は、「伝えるものとしての絵本」で札幌で追跡した一女児(1999年生まれ)の誕生から5歳近くまでの聞き書きを中心とした分析・考察のまとめです。1.成熟が読み方の変化をもたらし、新たな内容の読みを開発してゆく、2.絵本の読み合いを通して分かる異質な他者としての子ども、3.略、4.絵本の世界を日常の生活に再現し体験する、5.言葉が実在するものと同じ力をもちはじめる、6.7.略、8.年齢不詳の主人公が問いかけるもの、9.10.略、11.幼児は多層性のある生活を生きる、12.「そうやって思っていることの気持ちがいま届く」-想像力への信頼-、13.14.略。あと、「絵本学」第3号に掲載の論文/佐々木宏子著「絵本は父親をどのように描いているか」(2001年4月)を付け加えました。
著者
服部 勝憲 齋藤 昇 秋田 美代
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学部学生の算数科カリキュラムのとらえ方は,「各学校の算数科教育計画・指導計画」が31.8%,「算数教育の計画,授業,評価の総体」が30.8%,「学習指導要領に示された算数科の内容」が15.6%,「算数科の授業内容の全体」が14.2%である。以下「算数教育により子ども達が身につけたもののすべて」3.3%,「算数科の教科書に示された内容」1.9%と続く。また開発したカリキュラム編成の重点に関する尺度,評価実施の場面と時間に関する尺度,編成段階の評価と改善に関する尺度の評価尺度得点において,学部学生の得点が現職教員より高い結果が出ているが,単純に学部学生の方の認識が高いとは考えられない。今後これらの調査項目に対する理解の広さ・深さ,さらに学校現場におけるそれらの実施の困難さ等についての検討が必要である。さらに授業観を評価する10個の調査項目を用いて,授業観についての3つのタイプ,(1)教師主導・説明練習評価尺度得点が高いType-A,(2)2つの評価尺度得点がともに平均的な位置にあるType-B,(3)生徒主体・活動支援評価尺度得点が高いType-Cを抽出した。これらの観点から考察すると,小学校教員の場合は39.4%が,中学校教員の場合は,36.9%がType-A, B, Cとして抽出された。それに対して学部学生の場合は28.4%(全211名中)とかなり少なく,タイプとして見られるような明瞭な授業観を持つに至っていないといえる。また学部学生の場合,現職教員の場合に比べて,拡散的である。特に評価の場面や時間,及び評価の改善に関する評価尺度では現職教員の場合に比べて,かなり高い得点を示している。このことから評価とそれによる改善に関しての可能性についての期待を示している。このことからも,教員養成系学部において,望ましいカリキュラム観や授業観を育てていくための考え方やその展開のための教員養成カリキュラム(教育計画・シラバス)の開発とともに,一貫性のある教科カリキュラムに関する教育のあり方が重要なものになる。
著者
吉本 佐雅子 鬼頭 英明 西岡 伸紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

49の高校(定点校)の生徒に,平成23年度(32,259名)と25年度(32,458名)の2回「高校生の喫煙,飲酒,薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国定点追跡調査」を実施した。この2年間で薬物乱用経験者率は0.63%→0.51%に,飲酒の年経験者率は 40.0%→30.6%に,喫煙の年経験者は5.3%→3.6%と,減少していた。高校生においては「朝食摂取」,「学校生活の楽しさ」,「クラブの参加状態」,「アルバイトの週平均時間」,「大人が不在の状態で過ごす1日平均時間」,「悩みごと等を親に相談する方か」などのライフスタイルによる飲酒,喫煙の習慣化が薬物乱用に至る大きな要因として考えられた。
著者
齋藤 昇 秋田 美代 跡部 紘三 村田 勝夫 佐藤 勝幸 今倉 康宏
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,教員養成大学大学院の開発途上国への設置に向けての学術調査研究を行うことを目的としている。学術調査の結果,次のことがらが明らかになった。1 ラオスの教育大臣,教育省教員養成局長から,ラオスへの大学院修士課程設置について,国として歓迎するとの意向を受けた。また,ラオス教育副大臣から,具体的な設置場所について提案があった。さらに,設置について鳴門教育大学への協力要請があった。2 ラオスの小・中・高等学校の学校制度は,5-3-3年制である。ラオスの教員養成学校卒業生の就学総年数は,14年間である。ラオス教育省は,中学校を4年制に改革する計画を立てている。3 ラオスの教員養成学校(8校)理数科教員の学力及び授業実践力は,かなり乏しい。ラオスの理数科教育の質を高めるためには,教員養成学校教員の質の向上が必要である。4 ラオスの教員養成学校の施設・設備,特に実験装置,実験器具・薬品類は,皆無に近い。大学院修士課程を設置する際には,それらの設備の充実が必要である。必要な設備の例を列挙した。5 ラオスの教員養成学校教員の学位取得状況は,修士が16%で,博士が0%である。また,教員養成学校教員の100%が修士課程の設置を希望している。6 ラオスの教員養成学校及びラオス国立大学教育学部のカリキュラムを調査し,それをもとにラオスに適する大学院修士課程理数科コースのカリキュラム案及び履修方法案を作成した。7 大学院修士課程のラオスへの設置に際して,タイのコンケン大学から連携協力の申し出があった。それに基づき,連携した場合のカリキュラム素案を作成した。
著者
橋本 泰幸 佐々 有生 山木 朝彦 谷口 幹也 山田 芳明 芳賀 正之
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,徳島県下の伝統文化の調査を行い,その成果をもとに徳島県の伝統文化を学べる文化施設をデータベース化を行う。そして,海外の伝統文化の継承と教育に関してカンボジア王国で調査を行い,日本国内の状況とを比較検討し,文化創造からの視点での文化継承と教育活動の重要性を提言するにいたった。また,以下のテーマに関する考察が本研究において行われた。美術館における鑑賞教育の観点から地域と芸術の連携に関する研究。大竹拙三を中心に地域社会における美術教育実践家の足跡に関する調査研究。鑑賞教育における身体性に関する研究。また,「生きる力」を育む美術教育プログラム及びネットワークの開発にあたって,研究究組織全体の取り組みとして,鳴門市,大塚国際美術館,鳴門教育大学の三者の連携による「地域文化財教育活用プロジェクト」を実施した。本プロジェクトによって,美術教育ネットワーク構築のための基盤がつくられ,大学と,地方自治体,私立美術館の共同運営によるワークショップ等の事業を行い,その成果として,教員が活用するための美術教育実践例が提案されるに至った。そして,本研究の成果を公開し,広く活用するためのWeb版の美術教育センターが構築された。
著者
山木 朝彦
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

鑑賞教育の充実のためには、学校における鑑賞の学習と美術館における鑑賞の学習の内容と方法が整合性をもつように、計画されなくてはならない。このため、美術館と学校教育の連携が求められている。この連携の方法と連携によって開発される教材について、次の各項目で研究を展開し、成果を公表した。1、積極的に学校との連携を推し進めてきた美術館が、現在、どのような具体的な方法によって学校連携を展開しているのか、美術館四館(世田谷美術館・宇都宮美術館・東京都写真美術館・川崎市岡本太郎美術館)を訪問し、各館の学芸員に対面によるインタビュー形式の調査を行い、それぞれの館で展開している学校連携の方法について調査し、平成17年3月に冊子としてまとめた。また、学校との連携に関して先駆的な役割を担った「横浜美術館子どものアトリエ」の基本コンセプトについて聞き取り調査を行い、そこからワークショップなどのあり方について検討し、研究成果を美術科教育学会(平成19年3月)で発表した。2、ワークシートやティーチャーズガイドの開発と、啓発的な展示の試みを模索しているテイト・ギャラリーの教育機能について考察し、平成17年3月に学会誌論文として発表した。3、「鑑賞教育推進プロジェクト」という研究会の一員として、この美術館から発行された四種類のワークシートの開発にかかわった経験を活かし、ワークシートの開発のプロセスと、教材としての有効性をつぶさに記録し分析した。その成果を平成18年3月発行の研究成果報告書にまとめた。4、ワークシートと併用することによって教育的効果をあげるパワーポイント教材を作成し、実際の授業で活用し、その効果について成果報告書のなかで考察した。5、美術館だけではなく博物館・歴史資料館などを利用して、さまざまな造形的な作品を鑑賞する方法の一例として、日本の世界遺産の鑑賞の仕方について検討し、教材にかかわる図書の鑑賞にかかわる箇所を執筆した。
著者
梅澤 実 土井 進 浦野 弘 濁川 明男 中山 玄三 姫野 完治 谷塚 光典
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

教育実習における実践的能力を評価する評価基準を明らかにすることをねらいとし、教育実習での実習生の学びから、評価基準を探った。その結果以下のことが明らかになった。(1)授業設計段階での意思決定:初期は、興味・関心」が意思決定に大きく関わるが,授業の回数を重ねるに従い,その観点は次第に薄れ,理解度の項へと関心が高まる。(2)授業実践過程における意思決定:「子僕の反応」による意思決定要因は,「予想外の応答」と「子供の行動」に分けられる。「意思決定の実際」では、授業展開における「リスキー」か否かの判断は,授業が予定通り成立するかどうかである。しかし,実習が進むにつれ,子供達が「理解」するために,どのような意思決定をすればよいかという意識が芽生える。(3)授業を見る観点の変容:初期段階は、「子ども主体」の実現を探ろうとする意識で、大学における講義等で得た知識を授業者の具体的教授行為に同定する。授業を1〜2回経験した段階で、「説明」「発問」という教授行動を児童の側から捉える。授業を3〜4回経験した段階から、「特定児童」に目が向けられる。最後の段階では、「教材」についての見方、「子どもの学習にとって、どんな意味があったか」といった、「子どもの学習」と「教材」との関係を視野に入れた批判的視点が獲得される。
著者
山木 朝彦 井上 由佳 塚田 美紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研修の機会などを通じた美術にたいする教師への教育と学校との連携という観点から俯瞰したとき、テイト・ギャラリーの教育普及活動全般が非常に質の高い内容を誇っていることを調査によって確認した。さらに、学校と連携して行われた実践的な教育プログラムであるバーバル・アイズ(Verbal Eyes)というプロジェクトの実施の方法と教育的意義の両面について、学芸員・教師・アーティストなど主要な関係者から聞き取り調査を行い、美術教育における美術館利用のあり方や表現活動と鑑賞活動を有機的に結びつける手法、そして、アーティストを媒介にした現代の美術の動向を学校に伝達する方法を明らかにした。
著者
前田 一平
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.247-258, 2008

For Whom the Bell Tolls has long been regarded as one of the major novels of Ernest Hemingway, but almost no critics of the 80's and 90's, when the drastic revising of Hemingway's works took place, seem to have paid much attention to it. Still, two small critical movements supporting this novel can be recognized. One is a discussion presented from Spanish scholars : Edward F. Stanton and Allen Josephs are versed in the language, tradition, and culture of Spain and try, for example, to find the models of Pilar and Maria in the history and culture of Spain, not of the US of America. They maintain that what Hemingway had learned in Spain in the course of eighteen years, especially the primordial Spain which was the other world to him, is realized in this novel. The other movement is made by the critics who highly praise the organically united structure of the novel. The point of their argument is that the plural narrative voices, interior monologues, and recollections which form the multiple narrative structure of For Whom the Bell Tolls are all united with the simple and single action of blowing the bridge. This paper critically examines and denies the reliability of those two movements and concludes that the most convincing reading so far presented of For Whom the Bell Tolls could be found in Edmund Wilson's review published as early as in 1940, where he criticized the defects of the form and the story development of the novel.
著者
岩永 定 柏木 智子 藤岡 恭子 芝山 明義 橋本 洋治
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.37-50, 2007

There are many problem behavior of children in Japan such as bullying, juvenile delinquency, school violence, vandalism, drug etc. Many factors cause such problems, but we set up a hypothesis that the decline of self-esteem of children is very important factor. From this hypothesis and the examination of the precedence research regarding self-esteem, we set the following 3 points as the aim of this paper; 1) to review the history of Project Adventure (PA) program and to grasp of its definition and contents, 2) to grasp present conditions and problems of PA program in Miyagi Prefecture that firstly introduced it in Japan, 3) to search possibilities and limits of Miyagi PA program in the formation of the self-esteem of children. As a result of research, we conclude next three points: 1) PA is defined as the formalized process of experiential learning that makes a series of adventurous and challenge activities as the means for intending the change of the consciousness and behavior of students. PA program have been advanced the wide use and qualitative change in the process of the occurrence and diffusion in USA. It diffused partially after PAJ (Project Adventure Japan) is established in 1995 in Japan. 2) PA in Miyagi Pref. is being carried out as MAP (Miyagi Adventure Program) under the guidance of PAJ and the fundamental thought is expressed as the 'cycle of experiential learning'. Miyagi Pref. is the only one prefecture which tackles with PA by the board of education as a whole, and promote the program in the cooperation of school education and social education. The program is developed on 4 contents; (1) training of leaders, (2) enlightenment activities, (3) upgrading of the institutions and equipments, and (4) introduction of PA to the school education activities. However, the training of the leader is restrictive, and training activities are relying on PAJ now. Also, it is very difficult to measure the educational effects of PA program to students. 3) The board of education try to introduce the PA program to all public schools, but some teachers and principals reject the PA program because they doubt its effect. The staffs of board of education think that such teachers and principals do not participate the training and do not understand significance of PA program. But we think there is other reason. In the process of introducing PA program to school education, it decreased elements of adventure that improve the self-esteem of children.