著者
梅野 圭史
出版者
鳴門教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度の研究結果より、「体育授業の場における葛藤価値検査」の診断結果は、体育授業改善の指標になり得る可能性の高いことが推察された。とりわけ、「体育授業に対する価値観」が形成される小学4年生において両者の密接度の高いことが示されたことは、この時期に葛藤内容を多分に含んだ運動教材を導入すれば、彼らの道徳性の発達に大きく貢献するものと考えられる。そこで今年度は、小学校4学年3学級を対象に「スポーツか、暴力か」の葛藤を含みもった「スポーツチャンバラ」を実践し、単元前後の比較より葛藤価値判断力がどのように変容するのかについて検討した。その結果、4段階からなる葛藤価値検査の診断結果に対して、χ2検定を施したところ、単元前と単元後の間に有意差は認められなかった。しかし、S3段階とS2段階を境に、EX-S3段階とS2-S1段階とに大別した場合、単元後に葛藤価値判断力が有意に高まるとする結果が得られた。これには、学習者行動分析における「従事」の「間接的活動」が関係していることが認められ、スポーツチャンバラの審判活動に積極的に関与できるかどうかが葛藤価値判断力に影響を及ぼすものと考えられた。以上のことから、スポーツチャンバラにおける審判活動が積極的に展開できれば、葛藤価値判断力が高まることが認められるとともに、葛藤価値検査の有用性が確かめられた。
著者
小野 米一
出版者
鳴門教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

アイヌ語話者の日本語北海道方言の特徴として、次のような知見が得られた。(1)母語アイヌ語の干渉と思われる特徴が、主に音声面に観察される。例えば、(1)主に1拍目の音を引き伸ばしがちなこと、(2)母音オとウが近似していること、(3)連母音同化を起こしにくいこと、(4)サ・シャ行音及びザ・ジャ行音の区別がないこと、(5)いわゆる清音と濁音との区別がないか混同が著しいこと、(6)拗音を直音ふうに発音する傾向があること、(7)イントネーションが平板な調子になりがちなこと、などである。しかし、文法面においても、(8)助詞「に」「しか」などの用法、(9)自動詞・他動詞の混用、(10)文末の表現、などにアイヌ語の干渉が認められる。語彙面には、借用語がいくつかあるものの、アイヌ語の干渉はほとんどない。(2)アイヌ語話者たちが身に付けた日本語は、主に明治期・大正期、さらには昭和戦前期のものであり、昭和30年代以降の共通語化が急速に進む以前のやや古い北海道方言である。東北方言的な特徴が基盤となって、全国各地からの移住者たちが持ち込んだ全国諸方言が混交しあった、独特の「北海道方言」である。その日本語には、織田氏のそれに淡路島方言から取り入れたと思われる特徴がいくつか観察されることに象徴されるように、近隣在住移住者の日本語方言が反映している点で注目される。(3)アイヌ語話者の日本語北海道方言には、以上のような共通した特徴も観察されるが、生育環境や日本語を身に付けた時期、アイヌ語・アイヌ文化に対する態度などが、アイヌ語話者一人ひとりの日本語の個人差となってさまざまでに観察される。
著者
佐伯 昭彦 土田 理 氏家 亮子 末廣 聡
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,モバイル学習環境を活用した実験・観察型の数理教材を開発し,その教育的有効性を実際の授業で明らかにすることである.研究期間内において,インターネットとハンドヘルド・テクノロジーを活用したモバイル学習環境を構築した.授業の内容は,遠隔地にいる2つのクラスの生徒が,協調学習を通して,歩く動作とグラフの関係を探究することである.授業を評価した結果,研究目的が達成できたことが明らかになった.
著者
前田 一平
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国ワシントン州シアトルの旧・日本街を現地調査し、第二次世界大戦後の歴史に埋もれたシアトル日本街の歴史と地理の復元にあたった。それによって、この街を舞台とする日系アメリカ文学の歴史的地理的背景を具体化することができた。また、作家ヘミングウェイの故郷イリノイ州オークパークを現地調査し、この町のほとんど未詳の歴史についてリサーチをした。それによって、ヘミングウェイの誤解された出自および故郷との確執を明らかにした。
著者
葛西 真記子 大倉 江里奈
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.184-198, 2014-03-14

We used a longitudinal design to study the changes in participants' empathy level during their clinical psychology graduate school. We used the multi−dimensional empathy scale, four emotion description tasks, the self−introspection scale, and two questions requiring written responses, which focused on participants' experiences of supervision. A total of 87 clinical psychology graduate students completed these scales four times during their training years. Results showed that students with a higher caseload, aged older than 30, had higher in the "empathic interests" subscale. The level of empathy and emotional awareness, however, did not change significantly during the period. First−year clinical psychology students scored higher on self −introspection than second−year students. Students with a higher caseload also scored higher on self−introspection than those with a lower caseload. The written responses showed that there is a flow of change, which begins when participants write up the case summary ; followed by thinking back to their own reactions, respective situations, and contexts ; adopting an objective perspective, and understanding issues relating to the case ; these lead to the tasks that are undertaken in the following session. Furthermore, based on their supervision experiences, participants gain new perspectives, comparing these with their own views, subsequently expanding their way of understanding.
著者
天野 忠幸
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門史学 (ISSN:09141383)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.27-47, 2012
著者
永野 和男 大谷 尚 岡本 敏雄 吉崎 静夫 藤岡 完治 生田 孝至
出版者
鳴門教育大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

若い学問としての教育工学は,概念規定を性急に行うよりは教育分野におけるさまざまな問題解決を繰り返し,その中で徐々に,その対象や方法を明らかにしていくという方略で発展してきた。しかし,その後,コンピュ-タの普及によって,研究の対象や方法がさらに拡大し,これまでの枠組みだけでは通用しなくなってきている領域もある。そこで,この段階で,それぞれ第1線級で活躍している若手研究者が中心になって,これまでの研究をレビュ-し,研究方法論そのものについてその方向性を明確にしておくことは極めて重要な研究課題であった。研究の方法としては,分担者全員による合宿研究会を企画し,討論を中心として問題点を掘り下げていくという方法をとった。第1年次においては,2回の合宿研究会,教育工学会の自主シンポジウムなどを企画し,その内容についてまとめた記録を中間報告書「教育工学の研究方法を考える」として印刷し,検討資料として教育工学関係の研究者約200名に配布した。また、今年度は,それぞれの研究者集団を授業研究、システム開発、基礎研究の3つのグル-プにわけ、それぞれの研究方法を軸としながら、教育工学が求めている研究者像を明らかにし,その具体的な研究者養成カリキュラムを考えていくという方向で検議を進めていった。これらの討論記録は、中間報告書と最終報告書にまとめ教育工学の研究者約300名に配布した。報告書では、教育工学が単に1つの方法論をもった研究集団ではなく、別々の方法論と対象をもった研究者の集まりであることや、教育工学の研究開発と実践研究との問題、基礎研究と実用研究の問題など幅広い論議がなされているだけでなく、問題解決のための具体的な提案、研究者養成のための内容や方法などの提案もなされており、我が国の教育工学の学術的発展にとってきわめて意義深い成果が得られた。
著者
三宮 真智子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学情報教育ジャーナル (ISSN:18823661)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-28, 2009-03

教職大学院に在席する教師を対象とした「コミュニケーション・マネジメント演習」において,説明に対するメタ認知能力を高めるための教材として「不完全な説明」教材を導入した。「不完全な説明」問題に対する現職教師30名の解答を分析した結果,次の2点が明らかになった:1)教師と言えどもこうした説明の不完全さへの気づきは必ずしも十分ではない,2)「不完全な説明」の中でも,必要な情報の欠落や表現の曖昧さ(多義性)に気づくことが困難である。教師が生徒の批判的読解力を伸ばす指導を行うための前提として,説明に対するメタ認知能力を高める効果的な取り組みが教師教育において必要と考えられる。そのためには,「不完全な説明」を教材として用い,説明の不完全さを指摘するといった演習を行うことも1つの方策として考えられる。
著者
渡邉 廣二 長濱 太造 佐渡 君江
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地域経済活性化の手段として地域通貨を見た場合,消費者の需要が地域内に向かうようにするには,消費者が地域通貨を受け取るよう促すことが必要である。消費者が法定通貨の代わりに地域通貨を受け取るのは,地域通貨を入手するのにほとんど負担を負っていないかあるいはわずかな負担で地域通貨を入手できる場合である。すなわち地域通貨を発行し運営する原資が地域外のひとびとや行政の補助金によって負担されている場合である。
著者
橋本 俊顕 森 建治 原田 雅史
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

自閉症には脳の器質的障害があり、「心の理論」、実行機能、中枢統合機能などの機能不全が生じ社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害の3徴候を示すと推測されている。このことから、社会のルール、特に明文化されない暗黙の了解、道徳的、倫理的事柄の把握が困難である。さらに、学校生活での問題行動や日常生活においての様々なトラブル、触法行為を起こしてしまうことも報告されている。本研究では自閉症児に見られるこのような問題行動と脳機能の関係を明らかにするために、倫理・道徳的場面を画像として課題負荷し、良い、悪いの判断を求め、その情報処理の過程の脳活動をfMRIを用いて測定した。対照は無意味図形とした。刺激は課題負荷45秒-コントロール課題45秒を2回、1シリーズ3分の構成のbox-carデザインで行い、判断できた合図は右手でスイッチを押させた。対象は高機能自閉症男児7名(11〜17歳)と健常男児3名(13歳)、健常成人7名、非自閉症のてんかん、Sotos症候群各1例の計19名である。検査に際しては保護者及び被験者に十分に説明し納得と同意を得た。健常者では側頭・後頭境界部〜側頭葉中部(左>右)、左右前頭葉背外側および前内側に活動性の亢進が見られた。高機能自閉症では前頭葉背〜腹(左<右)、前頭葉全部内側、頭頂葉〜側頭・後頭境界部〜側頭葉前部(左<右)に活性が見られた。その他、左中心前回、右前頭葉腹側および正中部に活性が見られた。自閉症と健常児の間では課題の正答率に差はなかった。課題の正答率に差がなかったがこれは課題内容が簡単であったことが想定されるが、実際の場面とこのような課題負荷では情動の影響が異なっていること、自閉症ではいかに行動すべきか解っているが実際に採るべき行動が採れない解離現象があることから、差が出なかったとも考えられる。fMRIの結果から自閉症では課題処理の系が健常者と異なることが想定されるが、さらに例数を増やし、課題の工夫をして検討することが必要である。
著者
山下 一夫 中野 秀美 中津 郁子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.65-72, 2010

The purposes of this study were to collect awareness and learning that author experience in the day nursery, and to examine the concern with clinical psychology. The case took up two people who belong to the one year old child class and two year old child class that author was concerned a lot. As a result, about relations with infants, there were some common features with a psychology clinical scene, especially the importance of relationship was found. Moreover, it was suggested that sociality, common sense, a flexible attitude, snuggling up to a heart, and fostering sensitivity that is necessary for person who aimed at the clinical psychologist is obtained. In addition, the one that led to psychology clinical activity in the future was obtained.
著者
増田 聡
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:13434403)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.13-21, 2003-03-07

In this paper, it is discussed that Fumio Koizumi's famous studies in Japanese popular music have some problems. His studies have been influential in the Japanese musicological studies in popular music, and the method in that studies is mainly based on a theory of musical scales that used in the succeeding study by Yoshiaki Sato. Sato's study is better for explaining how some scales of Japanese popular music have taken roots, than Koizumi's, But Sato's study has same problem in Koizumi's, which became clear at Sato's appearance in a famous T.V. news show program, "News Station." Studies based on a theory of musical scales often cut the music to abstract entities which are not heard by audience, so the studies will fail to catch a whole of the musical event. This paper suggests that popular music studies should stare on three levels of productive neutral receptive in a music event, not accord a privilege to "music itself."
著者
久我 直人
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.144-159, 2011

The purpose of this study is to examine the applicability and the effect of "the Autonomously?Integrated?Organization(AIO)theory of teachers". For the purpose, I introduced this program into the organization of school. In addition, I inspected the application and the result on the construction of organized intention and the educational improvement. The results by qualitative and quantitative analysis were the following : 1)"the utonomously?Integrated?Organization(AIO)theory of teachers" was applicable to the organization of school 2)"the Autonomously?Integrated?Organization(AIO)theory of teachers" constructed organized intention formation and collaboration. 3)"the Autonomously?Integrated?Organization(AIO)theory of teachers" produced educational improvement.
著者
谷田 裕之 川上 綾子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学情報教育ジャーナル (ISSN:13491016)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-38, 2006-03-30

Web検索活動を取り入れた調べ学習で見られる課題を克服するために児童間の相互作用に着目し,効果的な検索活動と児童の学びに対してそれが果たす役割をまず検討した。次に,児童間の相互作用を促す手だてを組み入れた総合的な学習の時間の授業設計を行い,その効果を検証した結果,スムーズな検索活動を促す相互作用が活発化し,調べ学習の成果に対してもそれらが有効に働くことが示唆された。また児童ら自身も,自分たちの相互作用がコンピュータ操作の面だけでなくWeb検索の過程にも有用であると認識していることが示された。
著者
小川 勝
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.325-335, 2008

As for interpretation of Parietal Art, Magic theory has been the most prominent hypothesis since the begging of 20th Century when the academic research started. Though Magic Theory has been accepted as established motive among the amateurs of prehistoric art, almost specialists have insisted alternative thinking, that is, the interpretation by structuralism. In this paper, the author points out some problems of Magic Theory, for example, signs of arrow, shamanism, devotional image and so on. Above all, the author criticizes the method of ethnographic parallels for its racist base. In any way, the author recognizes theoretical possibilities of Magic Theory, and continues to discuss the problem of integration as basis of Magic Theory.
著者
今倉 康宏 早藤 幸隆 曽根 直人
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

(1)身近な素材を用いた異分野を効果的に関連・融合させた創造力・独創力開発型の広領域型科学実験教材の開発(教師教育)(2)教育現場・科学体験広場などでの学習効果の高い実践的検証(学校支援・教師教育)(3)学習者(教師)が学習資源を効果的に活用できる大学,公的研究機関,民間企業等と学校現場との連携のための環境整備の推進と提案
著者
宮下 晃一
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中学校の技術科において生徒が機械的な動く仕組みを製作して動かす実習を通して様々な機構に触れて学ぶことができる,組立て式の機構学習キットの開発を行った。キットは回転軸と無給油ブッシュ,プーリー,歯車,スライダー,リンク等数サイズから構成されている。機構学習キットの教育的効果を評価するために研究授業を行った。研究授業は、講義と実例紹介による従来型の授業と、機構学習キットを用いた授業を行い,それぞれの授業後に生徒たちを対象としてアンケート調査を実施した。その結果,機構学習に本キットを用いることによって,生徒は高い関心を持って授業を受けることができ,身近な機械の仕組みをよく理解することができたことが分かった。