著者
喜多 常夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.604-616, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
8
被引用文献数
2

日本は世界的に見て,稀に見る長寿企業の多い国であるという。その中でも,とりわけ清酒製造業は長寿である。欧州では,ドイツなどでもワインやビール醸造業には長寿企業が多い。その理由は那辺にあるか,著者も長寿酒造業者のリストを整理・解析し考察を加えているが,明確な答えは見つかっていないようにも窺える。しかし,我が国の清酒製造業者が何代にもわたって酒造業を脈々と続けて来たことは厳然たる事実である。 貴重な調査記事の一読をお勧めするとともに,読者諸賢におかれてはそれぞれ考えをめぐらせ,将来への清酒製造業の維持・発展のよすがとして頂くことを希望したい。
著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.479-488, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1

分析機器の発展とともに,ビールの香り,ホップの香り,酸化劣化臭,それらがヒトに与える影響などについての研究が盛んに行われ,今では多くの知見が得られている。本内容は,過去に行われたそれら研究について振り返り,酒類が醸し出す香りについて論じたものである。
著者
髙山 卓美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.204-218, 2016 (Released:2018-06-29)
参考文献数
36

中国の蒸留酒は,固体発酵,大曲,泥窖地発酵,固体醪蒸留など他に見ない特徴を持ち,その酒質も高アルコール度,高い香気など独特の個性を有している。しかしながら,その起源については諸説あり謎に包まれた部分も多い。中国では近年,遺跡の発掘が相次ぎ貴重な発見がなされているが,著者は2007年に発見された劉怜酔焼鍋遺址の出土遺物をもとに,これまでの古記録を整理しつつ,その歴史的意義と酒造法変遷についての考察を行った。本論文は中国酒史を考える上で重要な知見と示唆を与えるものである。
著者
藤沢 英夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.628-640, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
28

本報告は,平成21年5月に独立行政法人国立科学博物館によって発行された「技術の系統化調査報告第14集–ビール醸造設備発展の系統化調査」をもとに,要点を再編集して報告するものである。

5 0 0 0 OA お味噌の効能

著者
渡邊 敦光
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.714-723, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
46
被引用文献数
3 2

わが国の代表的発酵食品の一つである味噌について,健康や長寿に良いことが伝承されてきたが,食塩の過剰摂取による弊害のおそれも指摘されてきた。これまで味噌等の発酵食品の健康・栄養に関する知見については伝承的な説明が広く知られていたが科学的な研究の発展が遅れていた。近年,動物を用いた臨床研究,分子生物学,分子栄養学の研究が進展し,味噌を含む発酵食品の健康機能性が急速に明らかにされつつある。本解説では,味噌の抗癌効果を長年に亘って研究し味噌の生理機能研究を牽引してきた研究者の一人である著者に,これまでのご自身の研究成果と国内外の研究成果を紹介していただき,味噌の健康機能について幅広くわかりやすく解説していただいた。
著者
Du DONGDONG 海老澤 香里 宮本 悠紀 吉永 真理子 上原 誉志夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.126-136, 2014 (Released:2018-03-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

わが国の伝統的発酵調味料として「和食」の味を支えている味噌は,多くの生理機能成分を含むと考えられているが,同時に食塩を含むことから高血圧症の原因となるとして,消費者から敬遠され,消費量が年々漸減する傾向にある。しかし,最近の研究から,味噌汁として摂取する量では高血圧症の原因とはなりにくいことが解りつつある。味噌の食塩を敬遠するよりも味噌の成分がもつ機能性をより有用と考えて,おいしく食事をいただく方が,より健康によいことがわかり始めている。本解説では,味噌汁を摂取することが食塩による血圧上昇には直接つながらないことを動物実験により示し,むしろ味噌にふくまれる成分の複合的作用による血圧上昇抑制について解説していただいた。味噌には多くの成分が含まれ,それらの複合的作用について今後の研究へ期待が大いにもたれる。
著者
堀越 昌子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.389-394, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2

なれずし(馴れずし・熟れずし)は,コイやフナなどの川魚に米飯を混ぜ,重石をして数ヶ月から数年かけて保存する。この間,乳酸菌の作用でpHが下がり,雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質の分解により旨み成分が増加するが,独特の香りを持っている。琵琶湖の「鮒ずし」や東北・北海道の「いずし」を始め,各種のものが知られている。そこで筆者に琵琶湖のナレズシを中心に,文化・栄養・製法・位置づけ・抗菌性について解説して頂いた。
著者
林 京子 田中 昭弘
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.401-412, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
14
被引用文献数
2

収穫直前のマイタケを冷蔵保存した後に凍結乾燥し,アミラーゼによる分解を防ぐために,80℃以上の高温で熱水抽出したαーグルカン(YM-6A)が生体防御機能を介したマウスへのインフルエンザさらにタミフル耐性株に対しても治療効果があることを見出したので,解説いただいた。
著者
田中 利雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.629-630, 1984

日本酒のオンザロックがかなり普及してきた。果して, このオンザロックが, 一体, いつ頃から行われたのであろうか。左党ならずとも興味あるところである。
著者
岩本 將稔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.318-325, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

柿渋は従来,防水及び防腐効果を有するため染色に使用されてきたが,醸造用の清澄剤として用いられている事実について知らない人も多い。この点について筆者は,柿渋の歴史的背景から,柿渋の製造方法を含め清酒への応用について詳しく解説している。また,新しい手法(UF膜)を用いて,従来からの課題であった柿渋の酪酸臭等の発酵臭(不快有機酸)の除去を可能とし,高分子柿タンニンを効率良く分離するとともにゲル化防止にも成功した。この2つの事例は,柿渋の新たな可能性を示唆するものであり,たいへん意義がある。歴史好きな人や醸造に携わる人,ならびに研究者にとっても参考になることも多く一読願いたい。
著者
後藤 奈美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.210-216, 2012 (Released:2017-12-11)
参考文献数
36

国産ワインのレベル向上などからワインに関する研究が多く行われている。最近,赤ワインの渋みに関する研究も多く報告されている。ここでは,渋み成分の生合成から,渋みを感じる仕組み,ぶどう栽培やワイン醸造を含めて最近の知見や筆者の取り組みも交えて,詳細に解説いただいた。
著者
好田 裕史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.81-85, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

ウイスキーは長期貯蔵後,製品化され,その複雑な香味が特徴的で大きな魅力のひとつである。このウイスキーの豊かな香り成分は単に味わいとなるだけでなく,ストレスを緩和させる作用があることが明らかにされつつある。筆者らの内分泌,神経科学,生理学的検証から,その作用を解説して頂いた。
著者
伊豆 英恵 鎌田 直樹 髙橋 千秋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.198-206, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
103
被引用文献数
1 1

近年の消費者の健康意識の高まりとともに,日本酒の機能性や健康効果に関する論文や報告が数多く出されている。本稿では清酒だけでなく酒粕関連も含め,また研究報告に限らず解説や学会発表と特許も含めて網羅的に調査し,有用な機能性について項目ごとにまとめられている。是非ご一読いただき,科学的な裏付けのある日本酒の健康効果を消費者に広めるための参考にして戴きたい。
著者
渡辺 正澄 藤原 正雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.171-176, 1988
被引用文献数
2

酒をおいしく味わうには, 飲酒に最適な温度と酒に合った料理を選ぶことがポイントであるが, 特にワインの場合には両者の関係がよリ厳しく要求される。本稿では, ワインの酸組成と飲酒適温との関係並びに料理との相性についてこれまでの知見を要約して紹介いただいた。<BR>ワインがなぜ温度と料理にこだわるのかを科学的に解き明かしてくれた興味ある解説である。
著者
藤井 建夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.174-182, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

わが国の発酵食品には酒類・味噌・醤油・食酢・納豆・漬物・かつお節・くさや・塩辛・ふなずし・チーズ・ヨーグルト・パンなど,さまざまな食品がある。これらの食品は,その土地の産物や気候風土を上手に生かし,さらには長い時間をかけて培われてきた先人達の知恵の結晶である。本解説では,水産物の発酵食品を長年に亘って研究を重ねてこられた筆者に,香の強いくさや・塩辛・ふなずしについて,その歴史・製法・微生物の働きについて解説して頂いた。
著者
渡辺 敏郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.282-291, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
25
被引用文献数
1 8

平成22年11月にNHKの「ためしてガッテン」が,酒粕の効能と調理方法について取り上げ放送したところ,消費者から大きな反響があり,酒粕の在庫切れなどを招いたことは記憶に新しい。レジスタントプロテインは番組で取り上げられた食物繊維様の活性を持つ物質である。レジスタントプロテインは米貯蔵タンパク質のプロラミンに由来するタンパク質で,醪中で溶解せず,胃酸でも分解されることなく小腸に達し,種々の生理機能を発揮する。発酵食品である酒粕は栄養学的に優れているのみならず,多くの機能性が報告されているが,ここでは,レジスタントプロテインを中心にその機能性を紹介していただいた。まだまだ遅れている酒粕の有用性研究の発展と酒粕の復権につながれば幸いである。
著者
溝口 晴彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.382-388, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1 5

清酒醸造において,伝統技法の一つが生〓つくりであろう。そこには種々な微生物が関わり,そのなかでも乳酸菌が大きな役割を演じている。しかしながら,どのような乳酸菌がどのように関わり,生〓および醪,さらには酒質への影響との相関については,長年の課題であった。筆者らは分子生物学的な手法により,生〓の乳酸菌叢とその特性を解析し,そこから見えてきたこれからの清酒醸造における生〓の意義について解説していただいた。
著者
神保 五彌
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.76-80, 1973

江戸時代後期の庶民の生活のなかにとけこんだ酒の姿を, 早稲田大学の神保先生の流麗な筆をおかりしておとどけする。上酒1升が夜鷹蕎麦20杯分, 下酒1升が同じく5杯分とあるから2,000円から500円位にあたるだろうか, 今にくらべて酒の値段はそれほどかわらない時代の話である。