著者
伊藤 一成 辻 麻衣子 三宅 剛史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.670-677, 2015 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

現在普及している速醸?や生もと系酒母の原型とされる菩提もとは,速醸もとの技術が全国に普及したのと同時に姿を消したとされている。近年,奈良県において菩提もとの製造メカニズムが解析され,菩提もとを用いた清酒が再現復活している。これと同時期に岡山県内の蔵元において,独自の方法で製造したそやし水を使用するもと造りが確立されていた。本稿では,このそやし水の解析から明らかになったことを解説していただいた。

11 0 0 0 OA ホップの探究

著者
村上 敦司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.783-789, 2010 (Released:2016-02-05)
参考文献数
33
被引用文献数
1

ホップは苦みと香りを与えビール醸造には欠かせないものである。ホップはどのように進化してきたのだろうか。これまで原産地等は不明であったが,著者は世界的なネットワークを使って多くの野生種を集め,遺伝子レベルで解析した。

11 0 0 0 OA ビールの泡

著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.195-203, 2016 (Released:2018-06-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

ビールの泡はおいしさと深い関係がある。感触として口当たりが良くなり,まろやかな味になるだけでなく,ビールが空気に触れるのを防ぐ「ふた」の機能により,ゆっくりと時間をかけておいしいビールを味わうことができる。ビールの泡持ちは非常に複雑な現象である。その現象,およびそこで何が起こっているかを,筆者らのこれまでの研究を含め,非常にわかりやすくまとめていただいた。

10 0 0 0 OA 乾杯の文化史

著者
神崎 宣武
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.768-773, 2009 (Released:2016-02-12)

日本文化のルネッサンスとして日本文化を,日本らしさ伝統を大事にすることを目的として,学術,芸術,伝統産業,食文化,スポーツ等各界の有識者の賛同を得て「日本酒で乾杯推進会議」の事務局が日本酒造組合中央会におかれている。推進会議の会員3か条として,日本文化を愛すること,日本酒を愛すること,率先して日本酒で乾杯することと述べている。が,日本酒で乾杯することは古来からの伝統的なものでないことが「乾杯の文化史研究会」で明らかにされた。筆者(「日本酒で乾杯推進会議の中核をなす100人委員の一人」)のいう酒礼,盃ごと,を踏まえた「日本酒で乾杯」の作法が21世紀はじめに醸成された日本の飲酒文化として確立されることが期待される。
著者
木村 啓太郎 久保 雄司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.756-762, 2011 (Released:2017-03-21)
参考文献数
25
被引用文献数
2

我が国の大豆発酵食品の中で,納豆は味噌,醤油と並んで広く愛され,食されている食品である。本解説では,納豆菌と枯草菌の由来,納豆種菌の由来と製造の現状について歴史的変遷を含めて解説していただいた。また,著者らが研究されてきた納豆菌と枯草菌の系統解析や最近の納豆菌ゲノム解析の完了にともなって得られた研究成果から,納豆菌と枯草菌の相違点について,ゲノム上の一塩基多型とクウォーラムセンシング遺伝子の多様性等,明らかになってきたことや今後の納豆,納豆菌研究の注目点と展望について解説いただいた。
著者
藤田 晃子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.271-279, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

酒が充分にない頃は酒が飲めるというだけでも喜びであったはずだが,誰と飲むか,どこで飲むかを気にすることが多くなり,酒の種類が増えてくると,売り場のPOPをはじめ何の料理ではどの酒ということが情報として必要とされている。酒と料理の相性に関する研究は,まだ始まったばかりであり幅広い方に興味を持っていただき,様々なアプローチが行われればと思う。
著者
加藤 寛之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.426-432, 2014 (Released:2018-03-14)
参考文献数
13

ワインのコルク臭や清酒のカビ臭の原因物質であるTCA (トリクロロアニソール) は、極低濃度で異臭として感じられることが知られている。コルク臭やカビ臭はワインや清酒の品質を大きく損ねてしまうが、TCAには「異臭」だけでなく、他の香りを感じなくさせてしまう強力なマスキング効果があるという興味深い結果が筆者らによって明らかにされた。運悪くコルク臭ワインやカビ臭清酒に当たってしまったら、他の香りがマスクされるか試してみてはいかがだろう。
著者
金子 ひろみ
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.447-454, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
6

この度日本酒造組合中央会は,日本酒が常備されていない家庭にも,飲用以外の用途で日本酒をおいていただくことを目的として,「日本酒を,すべての家庭に」というキャンペーンをスタートさせた。健康や美容に良い日本酒を健康的に飲むためのおつまみなどについて研究をしてこられた管理栄養士,料理研究家そして日本酒スタイリストとしてご活躍中の筆者に,その経験を生かして,飲用以外に日本酒を使う実例やその効果・効能などをわかりやすく解説をしていただいた。このキャンペーンをとおして,日本の全世帯に日本酒が備えられ,料理などに幅広く活用されることを願っている。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
25

梅酒は製造工程がシンプルであるため,原料ウメの特性や状態が梅酒品質に及す影響は大きい。しかしながら,この分野での研究例は未だ少なく,十分な知見が蓄積されていないのが実情である。 本稿では,原料ウメの栽培条件とそのウメを使用して製造した梅酒品質との関連性について,これまでの試験研究結果を含め貴重なデータをご紹介いただいている。梅酒製造に関心ある方は,是非ご一読いただきたい。
著者
黒田 利朗
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.136-148, 2012 (Released:2017-10-24)

黒田利朗氏は,1981年にパリに翻訳やビジネス関連調査を行うシンクタンク会社KSMを設立され,この分野では長く活躍されておられますが,2004年から日本食レストラン(現在3軒),2007年から日本食材・調味料,酒類の輸入販売を行うワークショップ・イセを始められました。ワークショップ・イセでは「ホンモノの食材を通じて日本の風味を伝える」をコンセプトに,欧州への日本の生活文化の発信に取り組んでおられます。氏のフランスでの長い経験と交友関係を生かした,ジャーナリスト,ソムリエ,飲食業関係者を対象とした日本酒試飲会の取り組み,また,ビジネス経験に基づくアルコール関連事情の分析等から,今回大変新鮮かつ価値のある報告をいただいております。
著者
橋口 知一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.352-356, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1

東日本大震災から3年が経過し,瓦礫の処理,インフラ,建物も整備されつつあります。しかし,原発からの放射能汚染は本調査のとおり酒類では問題は出ていませんが,今後も注視する必要があります。清酒の輸出や国内の汚染の状況など考える上で貴重な資料だと思います。ご一読下さい。
著者
溝口 晴彦 原 昌道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.124-138, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
50
被引用文献数
7 6

酒母は麹造りと共に酒造りの大切な工程で,乳酸発酵を伴う生もと系酒母と乳酸を添加する速醸系酒母に大別され,従来よりいろいろな切り口で比較がなされてきた。今回,生もと系酒母の複雑な環境の場がそこで育てられて酵母に与える膜リン脂質の脂肪酸組成と関連づけて生もとの不思議な現象を明快に解明した本総説は,現場に従事する人にも興味を持って一読出来るものと確信している。
著者
後藤 奈美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.116-120, 2011 (Released:2016-06-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

甲州は,日本を代表する伝来のブドウ品種であるが,これまで隠れていた香気特性が見出され新しいスタイルの甲州ワインが誕生し,また,欧州への甲州ワインの輸出が始まるなど,今注目のブドウ品種である。著者は,必ずしも明確ではなかった甲州の由来,分類の問題に一貫して最先端のDNA多型解析によって取り組み数多くの成果を上げてこられた。今回,その研究成果とともに甲州の分類にかかわる興味深い諸問題について解説していただいた。
著者
根来 宏明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.694-700, 2016 (Released:2018-08-06)
参考文献数
9

酒臭い息で帰宅して家族に顔をしかめられる,多くの人が身に覚えがあるのではないだろうか。飲酒後の呼気のにおいは,お酒を敬遠する要因の一つかもしれない。著者らは,GC-olfactometry/MSを用いて呼気の「酒臭さ」に関わるにおい成分を同定し,さらに,お酒の種類やタイプの間でもその成分に違いがあることを明らかにした。今後,「酒臭くならない」お酒の開発などにもつながっていきそうな,興味深い研究である。
著者
金子 健太郎 進藤 斉 佐藤 和夫 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.539-549, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1

不飽和脂肪酸の水和化能の高い乳酸菌を用いて,焼酎もろみ中でγ-ラクトン類を生成させるための諸条件を検討した。1.水和化能の高い乳酸菌をどぶろくから分離し,その中から能力の高い乳酸菌26-a株,26-d株及び41-d株 の3株を分離した。同定の結果,26-a株及び26-d株はLb.brevisと同定されたが,41-d株は同定に至らなかった。2.焼酎もろみでの不飽和脂肪酸の供給源として麹エキスや酵母の自己消化物,90%精白米よりは玄米が好ましいことがわかった。3.玄米を掛け原料として黒麹(90%精白)を用いた焼酎仕込条件を検討した結果,酵母は,清酒酵母K701より焼酎酵母SH4,泡盛酵母AW101が優れていた。また,乳酸菌の添加時期は2次仕込の1日目に,添加菌数は106cfu/mlが好ましかった。4.この条件で仕込んだ焼酎には0.070~0.15ppmのγ-nonalactone,0.16~0.35ppmのγ-dodecalactoneが生成された。また,乳酸菌26-d株のみに0.09~0.12ppmのγ-decalactoneが検出された。5.官能評価では,対照に比べ乳酸菌を添加して醸造した焼酎は,γ-ラクトン類の香りが高く味が濃いというコメントが見られた。また,低沸点香気成分の量が多いこと等から,香りの評価がいずれも高く,また,味及び総合評価でも26-d株及び41-d株で醸造した焼酎が対照よりもかなり良い結果であった。
著者
喜多 常夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.458-476, 2012 (Released:2017-12-12)
被引用文献数
2

2011年日本産酒類の輸出額は,約190億円である。このうち清酒が88億円だが,農産物ではりんごが65億円,緑茶が30億円であるのでかなり貢献しているといえる。しかも,近年増加傾向が続いており,清酒や焼酎の海外イベントも活況を呈している。また,海外生産も好調で本格的に国際化が始まり成長期を迎えた感がある。本稿では,著者が独自に収集されたデータから,海外生産を含め成長期にある清酒と焼酎の現状分析とともに,この成長を継続するための課題への現実的な提言がなされている。筆者は,実に好奇心旺盛な方で,氏の経営する社のHP(http://www.kitasangyo.com/)には,本稿に関係した情報以外にも,酒類に関係する様々な情報が掲載されているので,こちらも参考にされることをお勧めする。
著者
丸山 勝也
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.432-439, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
6

節度ある飲酒として純エタノールに換算した場合,1日あたり20g程度が適量とされている。これはどのような医学的根拠から導かれるのか,飲酒家にとっては興味を惹かれる問題である。本稿ではアルコール関連障害の診断,治療を行ってこられた専門医にお願いし,アルコールの作用,アルコール代謝と個人差ならびに関連疾患について医学的側面から簡潔に説明して頂いた。更に,その知見から導かれる病気にならない飲み方についても解説して頂いた。特にアルコール依存症の早期発見や予防のために,自己診断によるスクリーニングテストは有用である。
著者
猪谷 富雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.719-732, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
70

日本人は普段コシヒカリに代表される限られた品種のお米ばかり食べているが,稲の世界は多様である。本稿では,「古代米」をきっかけに,稲の多様性から稲と稲作のルーツまで解説いただいた。是非ご一読を。