著者
祓川 摩有 田辺 里枝子 曽我部 夏子 山田 麻子 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.271-277, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

高脂肪食にビタミンK2 (メナキノン) を添加し, アルカリホスファターゼ (ALP) への影響について検討を行った。7週齢のSD系雌ラットを対照 (C) 群, メナキノン-4 (MK-4) を添加したビタミンK食 (600 mg/kg diet) (K) 群, 高脂肪食 (F) 群, 高脂肪食にMK-4を添加した高脂肪ビタミンK食 (600 mg/kg diet) (FK) 群の4群に分けた。実験食開始83日後において, 十二指腸のALP比活性はK群がC群に比べて有意な高値を示し, FK群がF群に比べて有意な高値を示した。また, 大腿骨のALP比活性において, K群がC群に比べて有意な高値を示し, FK群はF群に比べて有意な高値を示した。以上の結果より, 高脂肪食摂取時においてもビタミンK摂取により, 小腸および大腿骨のALP活性が上昇することが明らかになった。
著者
水重 貴文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.69-74, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
19

うつ疾患, 不安障害, 認知症などの精神疾患の患者数は, 厚生労働省が指定した5大疾病の中で最も多く, 深刻な問題となっている。一方, 食品タンパク質の酵素消化により生成するペプチドや低分子オリゴペプチドの中には多彩な生理作用を示すものがある。近年, それらのペプチドの中から脳神経系に作用するものが見出されている。本研究では, 医薬品のスクリーニングに使用される動物行動学的手法により, 低分子ペプチドの中からうつ様行動, 不安様行動, 認知機能の調節に対し有効なものを見出した。構造—活性相関解析や体内動態解析により活性成分候補を特定した。また, メカニズム解析により, それらの情動調節作用には神経新生促進やモノアミン, γ-アミノ酪酸のシグナル経路活性化などが関与することが明らかになった。以上の研究成果より, 食品由来低分子ペプチドが経口投与で有効かつ強力な脳神経調節作用を有する可能性を示し, 膨大な分子種からなるペプチドと脳神経系との相互作用の一端を明らかにした。
著者
嶋本 康広 佐藤 孝義 池内 義弘 西田 元之 松野 一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.79-91, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
53

ビタミンKは緑色野菜や発酵食品に多く含まれており, ヒトの血液の凝固や骨の代謝に関与している機能性分子である。身近な食品において植物油にはフィロキノン (ビタミンK1) が主に含まれ, 牛乳にはフィロキノンに比べメナキノン-4 (ビタミンK2) が多く含まれている。また育児用調製粉乳や液状乳には乳児の生育を補助するためフィロキノンとメナキノン-4が添加されている。ビタミンKの分析を行う上では脂質抽出液からシリカゲルカラムを用いてビタミンKと夾雑物の分離を行う必要があるが, 多量のシリカゲルや有機溶媒を使用する点や処理時間が長くかかる点など作業効率や環境負荷の面に課題があった。本報ではシリカゲル粒径の微細化による前処理系のダウンサイジングを目的とした検討を行い, 作業時間を短縮し環境負荷を低減した効率的な改良法の開発を行った。
著者
吉村 美紀 加藤 陽二 新田 陽子 横山 真弓
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.95-99, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
17
被引用文献数
5 1

野生シカ肉の有効活用を目的として,オスジカ,メスジカの肉重量および栄養成分の差異について検討した。試料は,兵庫県丹波地域において2010年9月,11月,12月に捕獲したニホンジカを使用した。オスジカの平均体重は46.4 kg,肉重量は16.7 kg,歩留率は35.6%,栄養成分は100 gあたりタンパク質21.2 g,脂質0.4 gを示した。メスジカの平均体重は36.3 kg,肉重量は13.1 kg,歩留率は35.7%,タンパク質20.5 g,脂質0.7 gを示した。メスジカは,オスジカより小さいが,肉の歩留率は同等で,脂質量は増加傾向にあった。オスジカ,メスジカとも捕獲月による肉重量および栄養成分値の差異は小さかった。肉の部位別では,オスジカ,メスジカともモモとスネの重量割合が高く,肉の部位間での栄養的特徴の違いは小さかった。
著者
福島 道広
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.3-8, 2021 (Released:2021-02-27)
参考文献数
31

腸内環境はヒトの健康に大きく関わっている。本研究では農産食品素材が腸内環境を改善する効果について検証した。まず小豆等に含まれるレジスタントスターチは盲腸内で短鎖脂肪酸を増加させ, コレステロールや脂質代謝改善効果をもたらした。さらに迅速に腸内発酵特性を検討できるin vitro腸内発酵実験モデルを構築した。その結果, 食品素材の影響や腸内発酵の経時的変化を短期間で調べることが可能となり, in vivoモデルと同様な結果も得られた。最後に化学修飾したヒドロキシプロピル (HP) -澱粉により, 腸内細菌叢ではβ多様性がHP-澱粉と通常澱粉で異なる細菌叢組成を示した。その結果HP-澱粉が盲腸内短鎖脂肪酸を増加させ, 血漿グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1), ムチン量, 免疫グロブリンA (IgA) 量との間に正の相関がみられ, GLP-1は摂食量, 腸間膜脂肪面積との間に負の相関にあった。これらの研究成果は腸内環境改善に関する基礎的研究であるが, 人々の健康長寿の維持・増進に貢献できることを期待する。
著者
吉積 一真 熊倉 啓人 藤浪 未沙 細谷 孝博 熊澤 茂則 堀 由美子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.237-245, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
34

パルミラヤシ由来の含蜜糖であるパームシュガーは, ポリフェノールやミネラルを多く含むことから, 上白糖の代替品としてだけでなく, 生活習慣病に対する有用性が期待されている。そこで, パームシュガーの総ポリフェノール含量と抗酸化活性を評価し, 実験動物を用いたパームシュガーの単回・長期摂取が血糖応答に及ぼす影響について検証した。その結果, パームシュガーの総ポリフェノール含量は黒砂糖と同程度に高含量であり, 抗酸化活性 (ORAC値) は黒砂糖より低いものの, ココナツシュガーやメープルシロップより高い値を示した。パームシュガーのマウスへの単回投与は, 上白糖と比較して投与後30, 120, 180分のΔ血糖値が有意に低かった (30分: p < 0.01, 120, 180分: p < 0.05) 。また, 曲線下面積 (ΔAUC) も, 上白糖と比べて有意に低値であった (p < 0.01) 。約3カ月間のパームシュガーの継続的な投与による空腹時血糖値の上昇は認められなかった。以上の結果から, パームシュガーは血糖上昇が緩やかな甘味料であることが示唆された。
著者
木原 稔 神部 飛雄 北村 真人 渡辺 亮太
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.247-253, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
23

廃棄される未利用資源であるオホーツクホンヤドカリPagurus ochotensisを食品として利用するために, 丸ごと外骨格ごと一般成分, 重金属を, 部位別に外骨格ごと遊離アミノ酸ならびに脂肪酸を分析した。その結果, 脂質が多く, 外骨格を含むために灰分, 炭水化物が多く, 水分が低かった。総水銀, 鉛, カドミウムは検出されず, 総ヒ素は0.77 ppmであった。遊離アミノ酸総量及びタウリンはズワイガニの値よりも多く, アンセリンやカルノシンが含まれていた。腹部の脂肪酸は, エイコサペンタエン酸 (EPA) 及びドコサヘキサエン酸 (DHA) 含量が高く (100 gあたりEPA 1,600 mg, DHA 800 mg) , 季節変動するが, EPAは主な青魚類よりも多かった。オホーツクホンヤドカリの重金属類含有量は食品として問題になるレベルではないこと, 食経験の報告もあることから, 食品として利用可能と判断できた。また, 遊離アミノ酸が多く, タウリン, アンセリン, カルノシン, EPA及びDHA含量が多いことが食品としての特徴である。
著者
宇都宮 一典
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.193-197, 2020 (Released:2020-10-19)
参考文献数
13

日本人の食事摂取基準2020年版の主たる改訂点の一つに, 「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」の項目立てを新設したことがあげられる。糖尿病は生活習慣病中でも重要な疾患として取り上げられており, 糖尿病診療ガイドライン2019との整合性を図る形で, その内容を反映するものとなっている。糖尿病の予防と管理の上で基本になるのが, 総エネルギー摂取量の設定である。従来, BMI=22を標準体重として, これに見合うエネルギー設定をしてきたが, 総死亡率が最も低いBMIには幅があり, その関係はフレイル予防を目指す高齢者では異なっている。また, BMI=30を超える肥満者が22を目指すことは難しい。そこで, 標準体重という言葉を廃して, 目標体重と改め, 患者の属性や現体重などから柔軟に設定することとした。今後, 二重標識水法による実際の消費エネルギー量を踏まえ, 実効性の高い設定法を検討する必要がある。
著者
門田 吉弘 北浦 靖之 遠藤 明仁 栃尾 巧
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.123-131, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
35

ケストースは, スクロースに1分子のフルクトースが結合した三糖のオリゴ糖である。我々は, プレバイオティクスとして流通している種々のオリゴ糖との比較試験を実施し, ケストースが, 最も幅広い腸内有用菌に対して良好な増殖を示すオリゴ糖であることを明らかにした。さらに, ケストースの継続的な摂取によって, アレルギー疾患や生活習慣病を予防・改善できる可能性も明らかにしており, ケストースが様々な生理機能を有するプレバイオティクスとして, 人々の健康維持に貢献できる可能性を示した。また, 我々は, ケストースの実用化に関する研究として, 工業的製造の際に使用される酵素の改良にも取り組んでいる。本稿では, ケストースによる有用菌増殖効果をはじめとして, ケストースが有する様々な生理機能および, 製造酵素の改良に向けた取り組みについて紹介する。
著者
金本 郁男 金澤 ひかる 内田 万裕 中塚 康雄 山本 幸利 中西 由季子 佐々木 一 金子 明里咲 村田 勇 井上 裕
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.133-140, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
24

2種類の低糖質パンを摂取した時の食後血糖推移を食パンおよび全粒粉パンと比較するとともに, セカンドミール効果および糖質の消化性を評価するために試験を行った。健常成人11名 (男性2名, 女性9名) を対象者とした。摂取する熱量を統一した食パン (糖質38.6 g) , 全粒粉パン (糖質36 g) , マイルド低糖質パン (糖質8.5 g, 高たんぱく) , スーパー低糖質パン (糖質3.4 g, 高たんぱく高脂質) のいずれかを朝食に摂取し, 昼食にカレーライスを摂取する4通りの試験を行い, 食後血糖を経時的に測定した。糖質の消化性はGlucose Releasing Rate法で測定した。その結果, マイルド低糖質パン, およびスーパー低糖質パン摂取後の血糖値は低値を示したが, セカンドミール効果は認められなかった。本研究で用いた2種類の低糖質パンのうち, 消化性, 食後血糖, 満腹度の観点からマイルド低糖質パンの方が優れていると考えられた。
著者
三嶋 智之 中野 純子 唐沢 泉 澤田 未緒 伊佐 保香 柴田 克己
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.27-31, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
20

本研究では母乳中の葉酸濃度の経時的変化について縦断的に調べた。25名の授乳婦より提供された産後1週目から8週目までの母乳中の葉酸濃度をバイオアッセイにより定量した。授乳婦の食事調査は行っていないため葉酸の摂取量は不明であった。本研究で分析した200検体の母乳中葉酸濃度は54.2±31.9 μg/L (平均±標準偏差) , 中央値が46.6 (4.9-161.9) μg/Lであり, 被験者全体の葉酸濃度は5週目まで上昇し, 1週目と比較して3週目から8週目の各週では有意に高値を示した (p<0.05) 。また, 1週目の葉酸濃度の中央値にて2群に分けて解析を行ったところ, 高値群の母乳中葉酸濃度は低値群に対してすべての週において有意に高値を示した (p<0.05) 。
著者
佐藤 駿 永田 龍次 福間 直希 島田 謙一郎 田宮 大雅 中山 保典 韓 圭鎬 福島 道広
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.81-91, 2020 (Released:2020-06-18)
参考文献数
38
被引用文献数
1

大麦品種BARLEYmax (BM) は一般品種の大麦より食物繊維やレジスタントスターチを豊富に含む。本研究では一般大麦品種であるハインドマーシュならびに対照区であるセルロースと比較してBMのin vitroにおける腸内発酵特性を検討した。実験1では2種の大麦を同等に使用し, 実験2ではBMに難消化性画分が多く含まれることを考慮して検討した。大麦試料を消化酵素により加水分解してその残渣物をin vitro培養槽に供試し, 48時間の培養試験を行った。実験1において, BM添加区はハインドマーシュ添加区より培養後期での高い短鎖脂肪酸産生を示した。実験2ではそれに加えて, BM添加区は培養期間を通して短鎖脂肪酸産生の増加およびアンモニア態窒素の低下を示した。以上の結果から, BMは短鎖脂肪酸を持続的に産生し, さらにその多量な難消化性成分により, 有効な腸内発酵特性を示す可能性が示唆された。
著者
田中 充樹 津嘉山 泉 山本 登志子 中村 孝文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.93-101, 2020 (Released:2020-06-18)
参考文献数
40
被引用文献数
2

食品の嚥下しやすさ評価への嚥下音と筋電図の応用性を検討するために, 嚥下のしやすさの異なる食品を嚥下した際の嚥下音信号と筋電図のパワーと発生時間を解析した。食品にはポタージュ, ヨーグルト, プリン, 及びヨーグルトと同程度のとろみに調整したジュースと自然薯粉末溶液を用いた。健康な成人男性13名について, 3 gの試料を一度に嚥下した際の嚥下音信号を小型コンデンサーマイクで甲状軟骨部から, 筋電図を右側顎二腹筋表面から記録した。テクスチャー解析で得た食品のかたさは嚥下しやすさが増すと増加した。嚥下音信号のパワーはかたさの対数と有意に逆相関したが (r = -0.435, p < 0.01) , 発生時間は有意な相関を示さなかった (r = -0.151) 。筋電図については, パワー及び発生時間のかたさの対数についての相関係数はそれぞれ0.261と0.176であり, 有意な相関はみられなかった。かたさは嚥下しやすさに関係することから, 嚥下音信号のパワーはゾル状食品の嚥下しやすさの評価に応用できる可能性の一端が示された。
著者
細野 崇
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-13, 2020 (Released:2020-02-17)
参考文献数
15

2018年の日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%であり, 2040年には35.3%になると推計されている。加齢は糖尿病, 運動機能障害, 動脈硬化, 骨粗鬆症, がん, 認知症などの様々な老化関連疾患の危険因子であること, これらの病気は発症までに長い年月がかかることから, 病気の予防法の確立が重要である。これまでに我々は, 食品因子を用いてがんと認知症の予防に関する研究を行ってきた。がん予防に関する研究では, ガーリック香気成分のジアリルトリスルフィドが大腸がん細胞の細胞周期の停止を介して細胞増殖を抑制することや, 肝臓の薬物代謝酵素の活性調節を介して発がん物質などの代謝を促進することを見出してきた。一方, 認知症予防に関する研究では, 加齢に伴って減少する多価不飽和脂肪酸の摂取が, アルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することを報告した。以上の成績から, 食品因子の利用はがんやアルツハイマー病などの老化関連疾患を予防することが可能であることを示唆しており, 健康寿命の延伸への応用が期待される。
著者
河崎 祐樹 八木(田村) 香奈子 後藤 純平 清水 邦義 大貫 宏一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.109-115, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目的: 健常な日本人が黒ニンニク含有サプリメントを摂取することによる肝機能への有効性を検証すること。試験デザイン: プラセボ対照・二重盲検・ランダム化比較試験。方法: 40名をランダムに2群に割付, 黒ニンニクまたはプラセボを12週間, 摂取させた。摂取前, 6週間後, 12週間後に血液検査 (肝機能, 腎機能, 血糖, 脂質) , 身体測定などを行った。結果: 12週間後の変化量において, 肝機能マーカーであるアラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) は黒ニンニク群のほうが有意に小さい値を示し (p=0.049) , アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) も黒ニンニク群のほうが小さい傾向を示した (p=0.099) 。結論: 黒ニンニクを12週間摂取することで, 健常日本人に対して肝機能保護作用を示すことが示唆された。本試験はUMINへ登録されている (UMIN000024771) 。
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 松井 康素 荒井 秀典
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.221-229, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1

フレイル高齢者でエネルギー摂取とは独立して偏りやすい栄養素を横断的に解析することを目的とした。当院フレイル外来を受診した独歩可能な高齢者270名 (年齢中央値79歳) を対象とし, 中等度以上の認知機能低下やタンパク質制限を要する者は除外した。フレイルはJ-CHS基準で評価した。食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票で評価し, 推定エネルギー必要量を摂取したと仮定した栄養素・食品摂取量を算出後, 22の栄養素摂取量が日本人の食事摂取基準の推奨量または目安量を満たすかどうか評価した。フレイル有無において基準を満たしていない者の割合をχ2検定で性別に比較し, 差を認めた栄養素を従属変数, フレイルを独立変数, 年齢, BMIを共変量としたロジスティック回帰分析を性別に行った。その結果, 女性でのみ有意な関連を認め, フレイルの亜鉛摂取基準値未満に対するオッズ比 (95%信頼区間) は2.50 (1.23‐5.06) であった。フレイルな高齢女性では亜鉛の不足に留意した栄養指導が必要である。
著者
立花 宏文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.205-210, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
32

緑茶の多彩な生理作用 (抗がん作用, 抗アレルギー作用, 血圧降下作用, 脳血管障害予防作用, コレステロール低下作用など) にはエピガロカテキンガレート (EGCG), エピカテキンガレート, エピガロカテキン, エピカテキンなどのカテキン類が関与している。特にEGCGは緑茶に特有な成分であり, 緑茶の生理作用に深く関係していると考えられている。著者らはEGCGの細胞膜受容体として67-kDaラミニンレセプター (67LR) を同定した。また, EGCGの抗がん作用, 抗アレルギー作用, 抗炎症作用などの生理作用は67LR依存的であること, EGCGの67LRを介した生理作用の発現過程 (EGCGセンシング) にMYPT1, eEF1A, PP2A, Akt, eNOS, sGC, PKCδ, 酸性スフィンゴミエリナーゼ, スフィンゴシンキナーゼ1, cGMPといった分子が関与することを明らかにした。一方, 緑茶と併用摂取する食品因子がEGCGセンシングに作用することでEGCGの生理作用に影響を及ぼすことを示した。
著者
中岡 加奈絵 田辺 里枝子 奥 裕乃 山田 麻子 野田 聖子 星野 亜由美 祓川 摩有 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.57-63, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
37
被引用文献数
3 6

高脂肪食におけるビタミンD制限によるアルカリホスファターゼ (ALP) 活性への影響について検討した。11週齢SD系雄ラットをコントロール食 (C) 群, ビタミンD制限食 (DR) 群, 高脂肪食 (F) 群, 高脂肪食でビタミンDを制限した食餌を与えた (FDR) 群の計4群に分けた。実験食開始28日後に, 大腿骨のALP活性は, DR群がC群と比べて有意に低値を示し, FDR群もF群と比べて有意に低値を示した。また, 十二指腸のALP活性においては, FDR群がF群と比べて有意に低値を示した。小腸ALPは, 腸内細菌由来のリポ多糖 (LPS) などを脱リン酸化して解毒していることが示唆されており, 高脂肪食摂取時におけるビタミンD制限が小腸ALP活性を低下させることにより, 腸内ホメオスタシスに影響を及ぼしている可能性が考えられた。
著者
浦部 貴美子 灘本 知憲 古谷 雅代 田中 有花里 安本 教傳
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-27, 2003-02-10
被引用文献数
2

野草 (17科42種) を対象として, 悪臭指標物質の一つであるメタンチオール (CH<sub>3</sub>SH) に対する消臭力の有無を検索し, さらにその消臭力の比較検討を行った。野草から得られたメタノール抽出物5mgについて, ヘッドスペースガスクロマトグラフ法によりCH<sub>3</sub>SHに対する消臭率を求めた。その結果, 約1/3の14種の野草に, 銅クロロフィリンナトリウム (SCC) よりも高い消臭力が認められた。特に消臭率100%を示した野草は, オニアザミ, カワラヨモギ, タカサブロウ, ヒメジョン, カキドオシ, オオニシキソウ, キジムシロの7種類であった。これら7種の野草抽出物の中でも, タカサブロウはSCCの24倍, オニアザミ14倍, オオニシキソウ7倍, カワラヨモギが6倍となる高い消臭力であった。これらの野草が消臭性植物であるという報告はこれまでのところ見あたらない。したがって, これらの野草は新しく消臭効果の期待できる素材であることが示唆され, 今後その作用に寄与している成分の同定が必要と考えられる。
著者
松永 安由 松本(高木) 来海 山下 舞亜 森(木津) 久美子 廣瀬 潤子 冠木 敏秀 酒井 史彦 成田 宏史
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.105-113, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
27

乳児の経口免疫寛容の誘導に関して母親へのプロバイオティクス投与の有効性が報告されている。本研究では, 母親マウスにLactobacillus gasseri SBT2055 (LG2055) と食物抗原を同時に投与し, その母乳で育った仔マウスの免疫寛容応答に与える影響を評価した。雌マウスにカゼイン食 (C群) , 卵白食 (E群) , 卵白+LG2055食 (E+LG群) を交配前から離乳まで摂取させ, 仔マウスには離乳後にオボアルブミン (OVA) を抗原としたアレルギー性下痢誘発試験を行った。その結果, 仔マウスの下痢発症率はE群に比べてE+LG群で有意に低下した。また, LG2055を投与した母親マウスの母乳中の総IgA濃度とOVAと特異的IgAの免疫複合体 (IgA-IC) 濃度が有意に増加した。以上より, 母親のLG2055摂取は仔マウスの経口免疫寛容を増強した。この増強には母乳中のIgA-ICが関与することが示唆された。