著者
石永 正隆 望月 てる代 上田 愛子 市 育代 七枝 美香 小田 光子 岸田 典子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.291-296, 2001-10-10
被引用文献数
2 3

小学生100人の1日の飲食物から脂質摂取量を陰膳方式で実測した。その結果, 平均39.7g/dayの脂肪酸を摂取していたが, 男女とも肥満児と非肥満児間で有意差はみられなかった。成人の場合に比べて, 飽和脂肪酸が4-6%多く, 多価不飽和脂肪酸特にn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量や割合がともに成人の半分ほどで3.3%であった。魚介類由来の脂肪酸の平均摂取量は297mg/dayで, 100mg/day以下の児童が50%を占めていた。コレステロールおよび植物ステロールの摂取量は, それぞれ平均255mg/dayおよび137mg/dayで, 肥満群と非肥満群間で, 男女ともに有意差はみられなかった。以上の結果から, 小学生の肥満群と非肥満群で脂質成分の1日摂取量に差はみられなかったが, 子どもたち全体としては, 魚介類や野菜類の摂取量を増大させることが重要であることがわかった。
著者
川村 信一郎 多田 稔 楢崎 丁市
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.268-275, 1966
被引用文献数
1

(1) 大豆 (10品種) は88.8~92.0 (平均90.3) %の種実 (子葉) と6.1~8.3 (平均7.3) %の種皮と1.9~2.9 (平均2.4) %の胚軸からなる。<BR>(2) 糖を抽出し, 個々の糖を定量する方法を定めた。<BR>(3) 9品種の大豆の種実, 種皮, 胚軸の水分, 灰分, 粗脂肪, 粗タンパクを分析定量した。日本品種はアメリカ品種よりも炭水化物が多い。<BR>(4) 9品種の大豆の種実, 種皮, 胚軸の個々の糖を定量的ペーパークロマトグラフィーによって定量した。平均すると脱脂種実はサッカロース6.6%, ラフィノース1.4%, スタキオース5.3%を含み, 単糖類 (グルコースとフルクトース (?)) と五糖類 (ベルバスコース) がこん跡量存在する。平均すると種皮はアラビノース0.02%, グルコース (+フルクトース (?)) 0.05%, サッカロース0.60%, ラフィノース0.13%, スタキオース0.41%, ベルバスコースこん跡を含む。アラビノースは水溶性多糖類が分解したものかも知れない。脱脂胚軸の糖組成は脱脂種実と大差ないが, スタキオースがサッカロースより多い場合が多かった。<BR>計算によると, 大豆全粒 (無水物, 脂肪あるまま) は平均すると単糖類と五糖類 (ベルバスコース) こん跡, サッカロース5.0%, ラフィノース1.1%, スタキオース3.8%を含む。 (この値は日本産1品種についての定量値よりやや高い。)
著者
伏木 亨
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.247-250, 2003-08-10
参考文献数
7
被引用文献数
2

実験動物を用いて, 人間の食物や飲料に対する嗜好性が推定できるかという問題についてシンポジウムで発表した内容の一部をまとめた。動物の嗜好は, 基本的には人間には当てはまらないが, 動物と人間に共通の特定の生理的条件のもとでは, 有用な解析の手段となる。ここでは, ビールの多飲料特性および, 脂肪に対する高い嗜好性について, 実験動物を用いた研究を紹介する。
著者
小柳 達男 太田 稔 鷹嘴 テル
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.39-41, 1956

1) 小麦パン, それに粉乳, 大豆, そば或はひえを混じたパン及び白米とみそという6種の異つた飼料でラッテを飼育し栄養価を比較した。<BR>2) 粉乳パンと大豆パンはこれで飼育したラッテの発育, 肝中の酵素活力, ビタミンC含量等よりみて優れた値を有している。<BR>3) そばパンはこれに次いですぐれており, ひえパンは不良であつた。<BR>4) 標準パンに比し白米区のラッテの発育はよいが両区のラッテの肝中のC含量が他のいずれの区よりも低い。
著者
谷 由美子 水野 さやか 住岡 美由貴 古市 幸生 大島 芳文 伏見 宗士 垣沼 淳司
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.255-263, 2006-10-10
被引用文献数
1

ラットを用いて, コレステロール添加高脂肪食を飼料として与えた対照群, 対照群の飼料の53% (w/w) を納豆の凍結乾燥品で置換して組成を対照群の飼料とそろえた納豆群, およびおのおのにサーファクチン0.3%を添加した飼料を与えたサーファクチン群, サーファクチン・納豆群の3試験群, 計4群について脂質代謝を調べ, サーファクチン含量の高い納豆開発の可能性を検討した。その結果, 1) 血清総コレステロール, 動脈硬化指数, トリグリセリドとも三つの試験群で有意に低下または低下の傾向がみられ, 総コレステロールではサーファクチンと納豆の相乗効果が認められた。2) 肝臓の総脂質はサーファクチン・納豆群で, コンステロールはサーファクチン群とサーファクチン・納豆群で, トリグリセリドはいずれの試験群でも低値を示した。3) 糞中コレステロール排泄率はサーファクチン・納豆群で, 胆汁酸排泄量はすべての試験群で増加し, 肝臓の脂肪酸合成系は納豆群とサーファクチン・納豆群で低下した。以上の結果から, コレステロール添加高脂肪食飼育ラットにおいて, サーファクチンと納豆が, 血清総コレステロール, 肝臓トリグリセリドの低下および糞中コレステロール排泄率の増加に相乗作用を示すことがわかった。
著者
中村 強 林 直樹 吉原 大二 柳井 稔 川西 悟生
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.377-383, 1991
被引用文献数
1 1

従来, 消化吸収障害モデルとして使用されてきた膵管結紮ラットは, 比較的短期の飼育でも膵臓が萎縮することが知られている。そこで, 本実験では膵機能は正常であるが消化吸収能が障害されたラット (MWラット) を栄養実験に使用することとし, このラットのモデルとしての有用性について検討するとともに, 中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT) を摂取させた場合の栄養状態に及ぼす影響について, サフラワー油 (LCT) を対照として比較検討した。<BR>その結果, LCTを摂取させたMWラットの脂肪および窒素の吸収率は, 健常ラットに比較して有意に低下し, とくに脂肪の吸収障害は顕著であった。また, MWラットは体タンパクの異化も亢進し, また低栄養状態下にあることが認められ, 術後の消化吸収障害モデルとして有用であった。<BR>一方, MWラットにMCTを摂取させた場合, LCTに比較し吸収性が顕著に優れていた。さらに, MCTは体タンパクの異化亢進を緩和させ, 栄養状態を改善させることが認められた。<BR>以上の結果から, 胆汁・膵液が欠損した消化管術後の消化吸収障害下にあっても, MCTは吸収性のみならず栄養学的にも十分な有効性を示し, 脂肪源素材としてきわめて有用であると判断された。
著者
伊藤 智広 伊藤 裕子 樋廻 博重 勝崎 裕隆 今井 邦雄 古市 幸生 小宮 孝志
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.281-287, 2005-10-10
被引用文献数
1 6

これまでに我々は, アズキ熱水抽出物がヒト胃がん細胞にアポトーシス誘導を誘発させることやベンゾピレンにより化学発がんさせたマウスに本抽出物を摂取させることで, がんの増殖を抑制することを報告した。本研究では, さらにこの抽出物を水-メタノール系ODSカラムクロマトグラフィーに供し, その後, アポトーシス誘導物質を分取HPLCにより分離・精製した。アポトーシス誘導物質は質量分析, <sup>1</sup>H-, <sup>13</sup>C-NMRなどから, カテキン-<i>O</i>-7-β-グルコピラノシド (C7G) と同定された。C7Gは培養ヒト胃がんKATO III細胞だけでなく, ヒト白血病細胞HL-60にもアポトーシス誘導を誘発したが, 正常細胞には影響がなかった。このC7GによるDNAの断片化は, <i>N</i>-Acetyl-L-cysteine により抑えられた。以上の結果から, C7Gによるアポトーシス誘導には活性酸素が関与しているのではないかと推測される。
著者
岡村 保 松久 次雄 南部 朔郎 斎藤 利晴 芦田 憲義
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.356-361, 1970

米の理化学性に及ぼす外因の影響を知ろうとし, 本報では外因として, 機械脱穀において外部から与えられる"衝撃"をとりあげ, これと米の2~3の理化学性との関係を調べ, さらに発芽との関連についても検討し, これら理化学性や発芽に影響を及ぼす米粒の状態を, 可視的な胴割粒や損傷粒の面からだけでなく, 不可視的な組織的損壊としての"歪み (仮称) "なる考え方からも見ようとした。<BR>結果は下記のとおりである。<BR>1) 脱穀機の回転数を異にしたばあいの米の水溶性乾固物量を調べたところ, 回転数が高いものほど小となった。<BR>2) 全糖量についても同様に, 回転数が高いものほど小となった。<BR>3) pHは高速回転のものほど小となった。<BR>4) 米粉末の水浸出液の比電導度は, 高速回転のものほど大となった。<BR>5) 機械脱穀籾の発芽率が低下することは従来の知見のとおりであるが, 発芽速度は大となった。これは稔実度などの差異によるものとは説明し得ず, 米粒に外部から力が加わって起こる"歪み (仮称) ", 胴割れ, 籾殻のずれなどにより, 米粒の吸水性・酸素供給量などが増加し発芽速度が早まったものと推察された。<BR>6) 脱穀機の回転数が大の場合, 籾米粒浸漬水の比電導度 (および糖量) が大となった。
著者
梶本 五郎 嘉ノ海 有紀 川上 英之 濱谷 美穂 前田 裕一
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.291-295, 1992
被引用文献数
6

油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解および油脂の熱酸化に及ぼす各種の抗酸化剤の作用, ならびにアスコルビルパルミテート (As. P) との併用による効果について検討した。<BR>1) 使用した抗酸化剤の内では, TBHQが最も油脂中のTocの熱分解を防止し, ついで, セサモール, オイゲノールの順で, ケルセチンおよびBHAは効果少なく, フラボンやβ-カロチンは防止効果が認められなかった。<BR>2) TBHQは添加量を増すにしたがい, Tocの熱分解防止効果は高められた。<BR>3) Tocの熱分解防止効果の高いTBHQやセサモールは, 油脂の熱酸化も抑制したが, β-カロチンおよびフラボン添加では油脂の熱酸化を促進した。<BR>4) BHA, セサモールおよびケルセチンのそれぞれの単独添加の場合ょりもAs. Pの併用によりTocの熱分解防止効果は高められた。<BR>5) Tocの熱分解防止効果のないフラボンでは, As. Pとの併用によりTocの熱分解防止効果が現れた。一方, β-カロチンにはAs. Pの併用による効果は認められなかった。
著者
早渕 仁美 久野 真奈見 松永 泰子 吉池 信男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.189-198, 2007-08-10
被引用文献数
4 5

女子大生とその両親544人分の食事記録に基づき, 2,877日に摂取された42,508品目の料理を用いてデータベースを整備した。まず, 料理名と使用食品重量, あるいは各料理の栄養価を用いて分析を行った。クラスター分析に使用する栄養価と食品群別重量を絞り込み, タンパク質・脂質・炭水化物と野菜・果物・飲用乳重量を変数として用い, 料理を11パターンに分類した。大きく三つの異なるグループ, 「複合的料理群」と「単独料理群」, その他が存在した。「複合的料理群」は, カレーライスのような「複合主食型」 (<i>n</i>=1,364), すき焼きのような「複合主菜型」 (<i>n</i>=448), おでんのような「複合副菜型」 (<i>n</i>=695) の三つに分類された。「単独料理群」は, 炭水化物を平均60.0g含む「主食型」 (<i>n</i>=5,916), タンパク質を平均20.3g含む「主菜型」 (<i>n</i>=1,789), 野菜重量が平均70gの「副菜型」 (<i>n</i>=4,226), 飲用乳重量が平均187gの「牛乳・乳製品型」 (<i>n</i>=1,362), 果物重量が平均100g (<i>n</i>=1,582) と230g (<i>n</i>=343) の「果物型」の六つに分類された。なお, 料理の過半数はこれら九つには分類されず, 弁当や小鉢で供されるような「小主菜型」 (<i>n</i>=5,865) と, 「飲物・小食物型」 (<i>n</i>=18,918) に分類された。これら11の料理型は, 含まれる食品の種類や栄養価の点から, 食事評価や栄養教育上重要な特性をもっていると考える。
著者
下田 博司 川守 秀輔 河原 有三
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.279-287, 1998-10-10
被引用文献数
11 25

スリランカに自生するニシキギ科の植物サラシア・レティキュラータ (<i>Salacia reticulate</i>) より得た水抽出物 (SRE) の, 食後の過血糖に及ぼす作用を, ラットおよびヒトボランティアで検討した。SREはショ糖, 麦芽糖およびα化デンプン負荷によるラットの血糖値の上昇を用量依存的に抑制した。しかしながら, ブドウ糖や乳糖による血糖上昇に対しては, 抑制作用を示さなかった。ショ糖に対する血糖上昇抑制作用は, 他の麦芽糖やα化デンプンより強く, ショ糖負荷直前の投与で奏効し, 投与量の増加に伴い作用の持続時間も延長した。<br>次に, 各種グルコシダーゼおよびα-アミラーゼに対する阻害活性について検討を行ったところ, SREは酵母およびラット空腸由来のα-グルコシダーゼに対して強い阻害作用を示すとともに, α-アミラーゼに対しても阻害作用を示した。一方, β-グルコシダーゼの活性には影響を及ぼさなかった。SREのラット空腸由来各種α-グルコシダーゼに対する阻害活性の強度は, スクラーゼ=イソマルターゼ>マルターゼの順であった。さらに, 健常人ボランティアにショ糖 (50g) を負荷した耐糖能試験において, SREはショ糖負荷5分前200mgの服用で, 30分後の血糖値を有意に抑制した。<br>以上の結果より, SREはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼ阻害作用に基づく過血糖抑制作用を有し, ヒトにおいても少量で食後の過血糖を抑制することが明らかとなり, 糖尿病患者の食事療法に応用できる有望な食品素材であると考えられる。
著者
岸田 太郎 佐伯 茂 桐山 修八
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.251-260, 1997-08-10
被引用文献数
2 1 2

本研究により以下のことが明らかになった。<BR>1) DWB, DOFおよびPSFは二価鉄の利用性を促進した。PSFはその発泡度が高いほど大きく二価鉄の利用性を促進した。<BR>2) DWB, DOFおよびPSFは三価鉄の利用性には大きな影響を与えなかった。<BR>3) DOFおよびPSFの二価鉄利用性促進はFe吸収の促進によるものと推測された。
著者
黒田 圭一 小畠 義樹 久保田 美佳 西出 英一 印南 敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.291-299, 1985

2種類の魚油多価不飽和脂肪酸濃縮油を異なった投与法によりラットに与えたとき, 投与法の違いが各濃縮油の血清, 肝臓の各種脂質濃度に影響するかどうか検討した。ラットは成長期のSprague-Dawley系の雄を用いた。試験に用いた2種の多価不飽和脂肪酸濃縮油は, 純度66%エイコサペンタエン酸濃縮油 (EPAconc) と純度76%ドコサヘキサエン酸濃縮油 (DHAconc) であった。各濃縮油はラットに2週間投与した。濃縮油投与法は, 0.5%コレステロール (chol) を含む基礎飼料に各濃縮油を3%レベルで添加した飼料を摂取させる方法と, あらかじめ基礎飼料のみラットに摂取させ, 摂取飼料の3%相当の濃縮油を単独に胃内へ胃管で注入投与する方法の2種の方法を用いた。対照群には5%オリーブ油を投与した。各濃縮油を飼料に添加投与したとき, EPA-concは血清の中性脂肪 (TG) を抑制する作用がDHA-concやリノール酸より明らかに強かった。しかし血清, 肝臓, 心臓中のchol濃度に対しては上昇抑制作用が弱かった。一方DHAconcの血清TGの上昇抑制作用はほとんどみられなかった。胃管投与法では, EPAconc, DHAconcともに飼料への混合投与の場合と作用の傾向はよく似ていたが, EPAconcのTGに対する作用は強まり, cholに対する作用は逆に弱まった。血清PLは両投与法において同程度の低下を示した。血清と肝臓中の過酸化脂質 (TBA値) はEPAconcの飼料への添加投与では上昇したが, 胃管投与では上昇しなかった。DHAconcはどちらの投与法においても著しい上昇傾向を認めた。このように試料濃縮油の投与法の相違によりそれらの血清, 肝臓等の脂質への作用は一部異なった場合もあったが, 全般的にみて似たような傾向を示した。
著者
円谷 悦造 浅井 美都 太田 美智男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.101-106, 1998-04-10
被引用文献数
2 1

食酢を用いた調理における, 食中毒原因菌である<i>Escherichia coli</i> O157: H7 NGY-10, <i>Salmonella</i> Enteritidis IID 604, <i>Vibrio parahaemolyticus</i> IFO 12711および <i>Staphylococcus aureus</i> IFO 3060の挙動を調べ, 食酢が細菌性食中毒の予防に有効か否かを検証した。<br>食酢を調味に使用する調理食品では, 食酢使用量の多い, 酢漬け類, 紅白なます, サワードリンク等では, <i>E. coli</i> O157: H7 NGY-10に対する殺菌効果が, 食酢使用量の比較的少ない, 酢の物類, すし飯等では静菌効果が確認された。食酢を調味には使用しないが, 刺身類や茹で蛸を食酢に短時間浸漬すると, 供試菌株に対する静菌効果ないしは殺菌効果が発現し, 保存性が高まった。炊飯前に, 食味に影響しない量の食酢を添加すると, 冷却後の米飯に供試菌株を接種しても静菌された。冷凍魚介類を食酢希釈液中で解凍すると, その後の穏和な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。また, ハンバーグステーキに食酢を適量添加して焼くと, 中心温度が65℃という不十分な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。<br>以上の結果より, 調理の場面での食酢の細菌性食中毒防止効果が確認された。
著者
下村 吉治
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.373-376, 2002

スポーツの世界で, 栄養の重要性についての関心が高まっている。運動競技において良い成績をおさめるためには, スポーツに適した体づくりをすることと, 十分なスタミナづくりをすることが必要であろう。最近のスポーツ栄養に関する研究では, 食べるものの質と量に加えて, 摂取するタイミングの重要性が明らかにされつつある。この総説では, 体づくりとスタミナづくりについてのこれらの最近の知見を紹介する。
著者
望月 てる代 上田 愛子 石永 正隆
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.339-343, 1998-12-10
被引用文献数
2 2

30~59歳日本人男性100人の脂質の1日摂取量を直接測定した。<br>1) 全脂肪酸, コレステロール, 植物ステロールおよびリン脂質の1日摂取量は44.8g, 295.5mg, 194.1mgおよび2.9gであった。30~39, 40~49および50~59歳代の全脂肪酸の摂取量は51.8, 41.3, 45.1gであり, 飽和脂肪酸の摂取量が30~39歳代と40~49歳代で有意に差があった。<br>2) 魚介類由来の脂肪酸摂取量の平均は1.2gで, n-6/n-3比の平均は4.3であった。<br>3) 30~39, 40~49, 50~59歳代のコレステロールの摂取量は273.8, 274.7および331.3mgであった。コレステロールとリン脂質の摂取量の間には強い正の相関があった。
著者
近藤 万里 寺田 美穂 田部井 亮 宇都宮 信博 松山 和義 山本 一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.383-388, 1983

高血圧自然発症ラットを用い, わかめの高血圧発症に対する影響を検討し, 胎生期よりのわかめの投与は発育期に次のような作用を示した。<BR>1) わかめは甲状腺機能を増強し, 血中サイロキシン濃度を上げ, また, 血漿中カテコラミン濃度を下げる。<BR>2) わかめは血清中KおよびCa濃度を上げる。<BR>3) わかめ投与によって体重増加が抑制されるもの, および体重増加傾向に差が認められるものがあった。<BR>4) わかめには胎生期から投与した場合, SHRの高血圧発症を遅らせる効果があったが, 高血圧発症そのものを抑制する効果はなかった。
著者
中谷 延二
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.389-395, 2003-12-10
被引用文献数
2 12

香辛料の機能成分のなかで抗酸化性, 抗菌性に着目して活性成分を探索した。抗酸化性に関しては香草系香辛料のシソ科のローズマリー, セージからきわめて抗酸化性の高いアビエタン型フェノール系ジテルペノイドを単離, 構造解析した。同科のオレガノ, マジョラム, キク科のヨモギ類から極性の高い水溶性抗酸化ポリフェノールを見いだした。香辛系香辛料のショウガからジンゲロール型およびジアリールヘプタノイド型の30種の新規化合物を含む50種の抗酸化成分を得た。ウコンには各種クルクミノイドが見いだされた。トウガラシ, コショウからはフェノール系アミド化合物を単離し, オールスパイスからはフェニルプロパノイド配糖体やタンニンを, ナンヨウザンショウからは一連のカルバゾール類を見いだした。抗菌性については非揮発成分に着目し, ハイゴショウ, パプアメース, ナツメグなどから多種類の化合物を得た。抗酸化物質は生体内酸化ストレスよって発症するがん, 動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つことが期待される。
著者
原田 理恵 田口 靖希 浦島 浩司 佐藤 三佳子 大森 丘 森松 文毅
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.73-78, 2002-04-10
被引用文献数
7 16

トリ胸肉より, ヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリン・カルノシンを豊富に含むチキンエキスを調製し, マウスに投与した場合の体内動態および運動能力への影響について検討した。チキンエキスをマウスに経口投与すると, アンセリン・カルノシンは分解されずにジペプチドのまま吸収されて血流に乗り, その血中濃度は投与約30分後に最大に達した。また, チキンエキスを10% (固形分換算) 配合した飼料を継続投与することにより, 大腿四頭筋内にアンセリン・カルノシンの有意な濃度増加がみられた。このチキンエキスを投与したマウスは, 投与開始6日目以降, 速い水流 (10L/min) のあるプールにおける疲労困憊までの遊泳持久時間が対照群に比べて有意に向上していた。この持久運動能力向上効果の一因として, チキンエキスの経口摂取により, 生体緩衝能力をもつアンセリン・カルノシンが血流を介して骨格筋内に蓄積されることによって, 骨格筋内の緩衝能が高まったことが推察された。