著者
芳野 裕明 山下 隆史 田中 俊司 金 義哲 藤本 泰久 宋 星胎 紙野 建人 梅山 馨
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1471-1476, 1985

胆嚢癌は一般に進行癌でみつかることも多く,予後不良症例が多いことから,早期診断の必要性が強調されている.最近,超音波検査が有用であった早期胆嚢癌2例を経験したので報告する.<br> 症例1は, 76歳の女性, 10年前より胆石を指摘されており,主訴は右季肋部痛.超音波検査で,肝内部エコーより軽度エコーレベルの低い腫瘤が,胆嚢底部で不整形に突出し,頸部では内腔に充満したように認められ,悪性腫瘍が疑われた. ERCPにて,胆管膵管合流異常は認めなかった.摘出標本では,胆嚢頸部から底部に散在性に多発した乳頭状腫瘤を認め,混合石10個が存在した.病理組織学的には,高分化型腺癌で一部筋層まで浸潤を認めたが,リンパ節転移はなかった.<br> 症例2は, 35歳の男性,主訴は右季肋部痛.超音波検査で,胆嚢内によく動く結石数個と頸部に体位変換にて動かない2×1.5cm大のやや不整形の腫瘤エコーを認めた.腫瘤の内部エコーは,比較的均一であるがややhyperechoicで, acoustic shadowは認めなかった.腫瘤の大きさや,不整形であることより,腫瘍を疑った. DICでは,胆嚢内に結石と頸部に不明瞭ながら隆起性病変を認めるも,質的診断はなしえなかった.摘出標本では,頸部に乳頭型の腫瘤と混合石1個,ビ系石5個を認め,病理組織学的には , papillotubular adenocarcinomaで,粘膜内に限局していた.リンパ節転移も認めなかった.<br> 早期胆嚢癌の定義はいまだ一定の見解はないが,胆嚢の解剖学的特性や予後より,筋層までにとどまるものを早期癌としている報告が多い.今回の2症例も,早期胆嚢癌と考えられたので,診断ことに超音波検査の有用性,ならびに治療についても若干の文献的考察を加え報告した.
著者
天野 定雄 黒須 康彦 中山 寿之 三宅 洋 松田 健 遠藤 潔 上田 仁 森田 建 佐藤 公望
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.2313-2320, 1991-10-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

最近9年間に経験した鼡径部ヘルニア821例について統計的観察を行い,また施行された手術術式,術後合併症,術後再発,術後愁訴などについて検討した.ヘルニア種別頻度では外鼡径ヘルニアが76.1%,内鼡径ヘルニアが13.6%,大腿ヘルニアが8.2%,内外鼡径ヘルニアが1.9%であった.手術術式は外鼡径ヘルニアではMarcy法,内鼡径ヘルニア,大腿ヘルニア,内外鼡径ヘルニアではMcVay法が最も多く行われていた.術後合併症は3.7%に認められ,血腫形成が最も多かった.再発率は全体で3.1%であった.内鼡径ヘルニア型再発と大腿ヘルニア型再発が主であり,これらの症例の中には全身の併存疾患を有していたものが多かった.術式別愁訴に関してはMcVay法で程度は軽いものの牽引痛の頻度が著しく高かった.再発や愁訴を減少させるためには,ヘルニアの基本的な理解と確実な手術手技が重要と思われた.
著者
田中 良太 吉田 治 松田 実 福島 久喜 花岡 建夫 呉屋 朝幸 関 恒明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1222-1225, 1997-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

注入法による豊胸術後乳癌の1例を経験したので報告する.症例は52歳女性, 23年前に注入法による両側豊胸術を受けた.左乳房および左腋窩部腫瘤を触知し増大してきたため当院外来を受診した.造影MRIにて左乳房に腫瘤像が描出され,腫瘤辺縁に輪状濃染像が認められたため乳癌を疑った.腫瘤摘出生検を施行し病理学的に浸潤癌との診断が得られたので定型的乳房切除術を施行した.組織学的には充実腺管癌,鎖骨下リンパ節転移陽性と診断された. 造影MRIが注入異物と乳癌との識別に有用であった.
著者
岩瀬 和裕 竹中 博昭 阪口 勝彦 大畑 俊裕 石坂 透 高垣 元秀 大嶋 仙哉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.907-910, 1993-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9

持続的気腹時間が70分を越える気腹圧12mmHgでの腹腔鏡下胆嚢摘出術の3例において,腎機能を経時的に測定した.血漿中ヒト心房性利尿ホルモン濃度,血漿中レニン活性,血漿中アンギオテンシンII濃度,自由水クリアランス,ナトリウム排泄分画ならびにカリウム排泄分画は一定の変動を示さなかった.チオ硫酸ナトリウムクリアランスは気腹中にやや低下する傾向が認められた.パラアミノ馬尿酸クリアランスは気腹開始後に漸減し,気腹中は気腹開始前ならびに気腹終了後に比して低値を示した.気腹圧12mmHgといえども,長時間の持続的気腹においては有効腎血漿流量の低下により一時的に尿量が低下する可能性が示唆された.
著者
谷島 義章 尾頭 厚 奈良原 裕 下石 光一郎 村田 升
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.2733-2736, 2013

症例は87歳,女性.意識障害を主訴に救急要請し当院へ救急搬送.来院時,意識レベルE1 V1 M1 GCS3点,収縮期血圧80mmHg,脈拍50回/分,洞調律,体温35.2度,呼吸回数>30回.胸腹部造影CTで,30mm大の腹部大動脈瘤と60mm大の左総腸骨動脈瘤を認めたが,明らかな破裂を疑わせる所見は認められなかった.造影剤の総腸骨静脈への流入を認め,左総腸骨動脈瘤が左総腸骨静脈に穿破した腸骨動静脈瘻と診断.腸骨動静脈瘻による急性心不全と診断し,緊急手術を施行.瘤空置と右外腸骨動脈から左外腸骨動脈へバイパスグラフトを置く下肢動脈血行再建術により良好な術後経過を得た.腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の破裂では腹腔や後腹膜腔への破裂がほとんどだが,隣接する静脈に穿破する症例もまれに認められ,こうした症例には瘤内からの瘻孔閉鎖例の報告が多いが,症例によっては瘤空置+下肢動脈血行再建術も有効と考えられる.
著者
石川 正美 太田 宏 高原 信敏 大野 昭二 三浦 則正 稲垣 嘉胤 渋沢 三喜 石井 淳一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.331-336, 1984-03-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
19

1982年1月から10月までの10ヵ月間に, 6例の大腸穿孔による,汎発性糞便性腹膜炎を経験したので報告する.同期間における当病院の大腸手術例は68例で,大腸穿孔が占める割合は8.8%であった. 手術はexteriorizationおよびHartmann法を症例によって使いわけ,腹腔ドレナージの他に,術中に腹膜潅流用チェーブを挿入して,術後間歇的腹腔内洗浄を行った.術後合併症のうち,創〓開に対して縫合創に全層マットレス減張縫合を加えて良好な結果を得,未然に防止可能と考えられた.術後endotoxin shockから離脱した後に,心筋梗塞を合併して死亡した症例を経験し,初期shockから回復した後も,発生し得る2次的合併症に対する厳重な観察が必要と考えられた. 汎発性糞便性腹膜炎において,白血球数は比較的早期から低下することが示唆され,発症より14時間を経た症例は全例がshockを発生し, 16時間を経た症例の転帰は極めて不良であった.全体の死亡率は50%であったが, shock合併例の死亡率は75%と高値を示し,発症から手術までの時間に大きく左右されることが示唆された.
著者
中川 辰郎 下田 忠和 大野 直人 桜井 健司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2976-2980, 1992-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
著者
林 貴史 澤田 隆 清水 哲 河村 良寛 岸 清志
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.1366-1369, 1999-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

症例は60歳男性.糖尿病を指摘されていたが未治療であった.発熱,嘔気を主訴に入院,抗生剤の全身投与を行うも効果なく,敗血症からDIC状態となる. CTscanで肝外側区域に限局するガス産生化膿性肝膿瘍と診断されたため経皮的膿瘍ドレナージを試みるも少量の排液しか認めず,その排液からはKlebsiella pneumoniaeが検出された.膿瘍を含めた肝外側区域切除と胆嚢摘除術を行った.膿瘍は10×9×5cmで多数の隔壁を有する出血壊死巣であった.術後は治療に比較的よく反応し敗血症, DICは徐々に改善し,血糖はモノタード・インスリンでコントロール良好となった.膿瘍の経皮的ドレナージが困難なガス産生化膿性肝膿瘍症例に対する治療法の1つとして,膀膿瘍を含めた肝切除術は有効な方法と考えられた.
著者
北原 直人 小野田 尚佳 石川 哲郎 日月 亜紀子 小川 佳成 平川 弘聖
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.1518-1521, 2001-06-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18

腎不全を合併した原発性アルドステロン症の外科的治験例に関する報告は少ない.われわれは,腹腔鏡下副腎摘出術によって,血圧,電解質異常の管理が容易となった1例を経験したので報告する.症例は49歳,男性.腎不全,高血圧にて加療中に低カリウム血症を認め,精査にて原発性アルドステロン症と診断された.腎機能の悪化により,透析導入となっていたが,血圧,電解質の管理が困難であった.腹腔鏡下に左副腎摘出術を施行し,術後透析のみで血圧,電解質はコントロール良好となった.透析導入例にみられた本症の治療に対する一致した見解は得られていないが,自験例では低侵襲の腹腔鏡下手術により,高血圧,電解質が改善したことから,今後同様の例での治療方針を決定するうえで示唆に富む症例と考えられた.
著者
坂口 昌幸 新宮 聖士 春日 好雄 小林 信や 天野 純 保坂 典子 野村 節夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.3021-3026, 1998-12-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
52

症例は45歳女性.検診で前頸部腫瘤を指摘され,縦隔内甲状腺腫と診断された.この時に胸部X線で右横隔膜の挙上を指摘され, CT, MRIにて右肺下面と横隔膜との間に巨大な腫瘤を認め,右肺中葉を圧排していた. CT値より脂肪腫,胸腺脂肪腫が疑われた.これらの腫瘍を摘出した.縦隔内甲状腺腫は256g,縦隔内巨大腫瘤は2,000gで,病理組織学的にはそれぞれ腺腫様甲状腺腫,胸腺脂肪腫と診断された.縦隔内甲状腺腫を合併した胸腺脂肪腫は極めて稀で,われわれが検索しえた限りでは,本症例1例のみであった.
著者
田中 信孝 登 政和 針原 康 進藤 俊哉 青柳 信嘉 今中 和人 出口 順夫 上野 貴史
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.319-325, 1991-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

昭和53年より平成元年までの12年間に手術施行した938例の良性胆道疾患中, 4.8%にあたる45例の壁肥厚著明な長径5cm未満の萎縮胆嚢症例45例の外科治療につき検討した.胆石の合併を44例に認めたが萎縮胆嚢の特殊背景病変として内胆汁瘻,合流部結石,内視鏡的乳頭切開術後などがあげられた. CTでは86%で描出可能であったが, USでは診断は必ずしも容易でなく, 61%は高エコー,音響陰影像で推定された.外科治療として基本的に胆摘ないし胆摘+T-ドレナージが施行されたが,標準的胆摘は5例のみに行われ,胆摘困難例では胆嚢部分切除後粘膜破壊を加えた.主たる合併症である胆管損傷を1例に認めた.胆嚢癌の合併は2例4.4%であった.萎縮胆嚢の手術は安全性を優先しつつ可及的に胆嚢切除を意図すべきで,その際癌併存の有無の術前診断が困難であるため術中迅速病理診断は不可欠と考えられた.
著者
北川 雄一 深田 伸二 川端 康次 藤城 健 安井 章裕
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.2099-2102, 2005-09-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20
被引用文献数
6 7

術前からの認知症の存在は,高齢者に対する外科治療の際の大きな問題のひとつである.平成13年度厚生労働省長寿共同研究「高齢者術後せん妄の治療と予防に関する研究」の中で,多施設共同「後ろ向き調査」の対象患者 (80歳以上) 461人中の442人を対象とし,術前より認知症を有した患者38人と残り404人を比較検討した.これら認知症患者は,有意に高齢で (86.4歳:83.7歳),術前ASA・PSが高かった.手術時間は認知症患者が短時間であった (106分:130分).術後在院日数 (44.1日:31.3日)は認知症患者で長期化していた.術後合併症発生率は認知症患者で高く (84.2%:44.8%),特に肺炎・呼吸不全の発生が多かった.また術後せん妄あるいは認知症の症状悪化の頻度も高かった.術前より認知症を有する患者では,術後合併症-特に呼吸器合併症の発生と,精神・神経症状悪化に注意する必要がある.
著者
平口 悦郎 三宅 毅 須永 道明 新里 順勝 小沢 達吉 加藤 紘之 田辺 達三
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.209-214, 1992-01-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

消化管の手術後,縫合不全により形成された瘻孔が難治化し,その対策に苦慮することがある.当科ではフィブリン糊注入による瘻孔閉鎖を試み,良好な結果を得たので報告する.昭和63年5月から平成元年10月までの期間に321例の消化管手術を施行し,術後縫合不全,瘻孔の形成を認めた27例中12例を対象とした.年齢は28歳から80歳,性別は男性6例,女性6例で,胃全摘術後5例,膵頭十二指腸切除術後3例,直腸切断術後3例,ほか1例であった.それぞれ2週間から5カ月,平均8週間の保存的治療を行い,瘻孔の縮小は認めたものの治癒には至らず,フィブリン糊注入を施行した結果, 9例で瘻孔閉鎖,治癒した.本法によれば浸出液が持続的かつ多量にあるもの,感染の急性期にあるもの,瘻孔部に腫瘍が浸潤しているものなどを除いた多くの症例で,手術的治療をすることなく,短期間で瘻孔を治癒させることが可能であり,きわめて有効な治療法である.
著者
佐藤 達夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.2253-2272, 1995-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
著者
佐々木 貴浩 佐藤 宏喜 古内 孝幸 竹中 能文 佐久間 正祥 堀 眞佐男
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.926-930, 2005-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

乳癌胆管転移の1例を経験した.症例は56歳,女性.平成9年左乳癌(TlN0M0)で乳房部分切除,腋窩郭清を施行.病理診断は浸潤性乳管癌 硬癌,リンパ節転移陰性,切除断端癌陰性で残存乳房照射50Gyとtamoxifen 20mg 5年間の補助療法を行った.乳癌術後5年5カ月,肝機能障害発症,画像診断上,中下部胆管が著明な狭窄を呈し,胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には粘膜直下より漿膜,膵に浸潤した腺癌が認められ,既往の乳癌の組織像に類似しているところから乳癌の胆管転移と診断した.乳癌の転移による胆管狭窄は肝十二指腸間膜リンパ節転移による報告例が散見される程度で本症例の如き胆管転移は極めて稀である.
著者
松田 光弘 権田 厚文 藤井 佑二 勝浦 康光 冨木 裕一 櫻井 秀樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1305-1308, 1998-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

症例は52歳,女性.柿を3カ月間にわたり毎日15個以上摂取していたが,腹痛,嘔吐が出現し近医受診.腸閉塞の診断で当院紹介され入院となった.小腸造影検査で下部小腸に閉塞がみられ,同部位の超音波検査で4.5cm大の音響陰影を伴う腫瘤を認めた.柿胃石による腸閉塞を疑い手術を施行した.回盲部より40cm口側の回腸にクルミ大の異物が嵌頓していたため,異物直上の回腸を切開し,異物を摘出した.結石分析では,タンニン酸が主成分であり,柿胃石と診断した. 胃石による腸閉塞の術前診断は難しく,開腹してはじめて診断がつくことが多い.嗜好品の入念な問診を行うことはもとより,小腸造影検査を行い,閉塞のみられた部位の超音波検査で音響陰影を伴う高エコー像が認められた場合は,胃石による腸閉塞を念頭におき,診断治療することが望ましいと思われた.
著者
星野 和義 村上 雅一 塩田 摂成 万木 英一 阿部 重郎 岸本 宏之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.1754-1759, 1998-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

過去5年間の計46例のマムシ咬傷に対し検討を行った.年間の症例数は,平均9.2人,月別では, 4月から11月までに見られ, 7月, 8月に症例が多かった.年齢は4歳から86歳までにわたり,平均60歳で,特に51歳以上で全体の83%を占めていた.受傷部位は,手指,足背,足趾の順に多かった.症状は,咬傷部位の腫脹が多く,その他に皮下出血,内出血,眼症状等が見られた.最大腫脹日は,腫脹が軽度のものでは1日目,高度のものでは2, 3日目が多かった.腫脹が高度のものに全身症状が多く見られた.腫脹が高度のもの,全身症状出現例に入院期間の延長が見られた.局所の切開,洗浄,マムシ抗毒素血清(血清),セファランチン投与の治療にて全例治癒しえた.血清の使用率は80%であり,有用な治療法と考えられた.血清の皮内反応陽性率は41%と高かったが,血清病の発症は8%と低かった.