著者
竹村 和久 吉川 肇子 藤井 聡
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.12-20, 2004
被引用文献数
3 5

本論文では, 種々の社会的リスクについて議論するための意思決定論的枠組を提供する. 筆者らには, これまでの伝統的リスク解析研究者, リスク社会学者, 予防原則を擁護する人々の間では, 社会的リスクに関連する環境の不確実性をどのように把握して, 考察するかということに関して, 共通の認識枠組がないように思われる. 本論文では, 不確実性を, 意思決定主体の環境の構造によって分類して, これらの社会的リスクに関わる問題がどのようなものであるかを, 不確実性下の意思決定問題として検討する. また, 本論文で提案する理論枠組が, 今後の社会的安全のための技術の一過程としてのリスク評価にどのような応用的含意があり得るのか考察を行う.
著者
永岑 光恵 原 塑 信原 幸弘
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.177-186, 2009
被引用文献数
2 5

少子高齢化は将来の日本社会を大きく規定する要因であり,ここから生じる諸問題を解決する社会技術の開発は緊急の課題である.基礎科学として発展してきた神経科学も少子高齢化に対応する社会技術として活用されなければならない.そこで,神経科学の社会技術的応用可能性を検討する先駆的試みとして,神経科学的観点から高齢化社会の問題,特に振り込め詐欺の認知上の原因を分析する.振り込め詐欺のうち,オレオレ詐欺,還付金詐欺の被害が最も深刻だが,この被害者の大部分が中高齢者である.中高齢者の意思決定は加齢により自動化していくが,このことが詐欺に対する高齢者の脆弱性の原因となっている.そこで,中高齢者の意思決定上の特徴を考慮して,振り込め詐欺の防止策を提案する.
著者
馬場 健司 木村 宰 鈴木 達治郎
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.68-77, 2004
被引用文献数
4

近年急速に導入が拡大している風力発電の立地, 大規模ウィンドファームの開発については, いくつかの公益を巡ってコンフリクトが発生するケースがしばしばみられる. 立地プロセスにおけるアクターの参加の場や意思決定手続きについて, 文献調査とヒアリング調査により日米のケースを比較した結果, 以下が明らかとなった. 日本では自然公園での立地ケースについては公式プロセスの中で景観に限定したアジェンダが設定されるのみであるのに対して, 制度要求に基づく環境影響評価が適用された米国の洋上立地ケースでは, 第三者的専門家による非公式プロセスが補完しながら, そこで得たインプットが公式プロセスへとフィードバックされるなど, 事業の早い段階から幅広い参加の場とアジェンダが設定されている.
著者
寿楽 浩太 大川 勇一郎 鈴木 達治郎
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.165-174, 2005
被引用文献数
1 1

本稿は原子力政策の是非を問うものではないが,その立地問題に関する地方自治体での新しい意思決定プロセスの事例研究を通して,エネルギー技術導入に関する意思決定プロセスの質の向上に貢献することを目的としたものである.事例には,新潟県巻町の立地中止事例と北海道の発電所増設事例を取り上げた.分析の結果,(1)法や制度による「公式」のプロセスと,そうでない「非公式」プロセスの全体をとらえることの重要性,(2)最終的な意思決定に至るまでの「中間プロセス」における選択肢の評価,社会的学習,課題設定の更新などの役割への注目,(3)「手続き的公正」の重要性,(4)プロセスの目的や方法についての共通了解の重要性,(5)意思決定の「場」の設定のあり方への注目,などの知見と示唆が得られた.
著者
西田 豊明
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.48-58, 2003
被引用文献数
5 1

本論文では,会話型知識プロセス支援技術の概念的枠組みとそれを実現するための技術について述べる.社会技術研究をネットワーク時代を象徴する動的で複雑な知識創造として位置づけ,現代社会における知識創造に伴う種々の困難を克服するための概念的枠組みとしてコミュニティ知識プロセスを提案し,その要件を示す.次に,社会における相互理解・知識共有・合意形成をシームレスに支援し,運用するための基本コンポーネントとして,映像コミュニケーションツールVMIS,会話エージェントシステムEgoChat,参加型自動放送システムPOC,政策論議支援システムCRANES,及び,それらを統合する枠組みとしての統合的コミュニケーションツールS-POCの概要を述べ,今後の展望を示す.
著者
福田 隆文 深澤 秀司 杉原 英和 渡辺 幸夫 小山 富士雄 稲垣 健二 甲斐 雅行 加藤 洋 松岡 俊介 小島 直樹
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.146-154, 2005

化学工場は外部に影響を及ぼす事故の可能性があるので,住民に不安感があることは事実である.したがって,安全・安心な工業社会の確立に向け,工場のリスクに関するコミュニケーションが重要であり,そこでは住民が望んでいる情報の提供が必要である.本研究では,工場と住民の間のリスクコミュニケーションを円滑に進めるため,住民が望んでいる情報,提供の方法などを,化学産業が比較的多く立地している都府県の1,500人を対象としたweb方式アンケート調査によりまとめた.その結果,住民は化学的・技術的情報より,事故防止策や発災時の行動に関する情報を求めていること,被害としては後遺症となるものを懸念していることがわかった.また,情報は工場から直接入手したいと考えていることもわかった.
著者
三宅 苞
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.21-29, 2004
被引用文献数
1

J. ザイマンは、1960年代より金属物理学の研究を進める傍ら、科学者共同体による知識生産という視点から数多くの科学論の書を著し、この分野でも注目されてきた。しかし、日本においては、これまで幾つかの訳書はあったものの、その科学論についての詳細な検討はなされてこなかった。本論は、『パブリック・ノレッジ』から最近の『リアル・サイエンス』までの主要著書を採り上げ、比較検討し、ザイマンの思考の変遷を明かにする。特に、ザイマン科学論の特徴であるアカデミック科学のモデル化とポスト・アカデミック科学批判について考察する。さらに、ザイマンの欧米での最近の論評に注目し、日本の科学論の中での展開可能性を探る。
著者
中尾 政之 飯野 謙次
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.58-65, 2006

組織構成員の失敗予知能力を高めるために,自習用のゲームソフトウェア"パニック2005"を作成した.このゲームでは毎回,似たような内容を持つ,失敗に関して質問を繰り返して解答させ,より抽象的な上位概念の失敗知識の修得過程を調べる.その結果,ゲームの回を重ねるほどに,平均的には,解答時間が短くなり得点が高くなって知識修得できることがわかった.しかし,必ずしも全員ができるとは限らず,すなわちゲームに4 回以上解答した25 人のうち,失敗知識を修得できた人は60%であった.また,ゲーム後に24 人にアンケートを行ったところ,80%以上の人が,ゲームによって楽しく知識を学べたが,組織構成員の全員に知識を理解させるのは質問内容をより身近な下位概念の知識に変えるべきだ,と答えた.
著者
豊田 武俊 堀井 秀之
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.16-24, 2003
被引用文献数
2 4

著者らは、昨年発覚した原子力発電所トラブル隠し等の信頼失墜に至った不祥事の背景・要因の分析を実施している。調査では、問題の全体像を把握し、本質的な要因を抽出することを目指している。本稿では、研究開始時に、方針や方向性を検討するために実施した問題の全体像の把握手法について紹介する。分析の材料としては、原子力発電所トラブル隠しに関する新聞記事を用い、分析手法としては構造モデル化手法を採用した。この手法により、問題の構造を表わす図を描くことができ、問題分析の方向定め、またインタビュー調査において情報を抽出する上で有用であることが確認できた。
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中西 航
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-28, 2011

本論文は,山梨県を事例に交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,近世以前,明治~戦前,戦後の3つの時代区分にしたがって整理した.山梨は,元来,山々に囲まれた地域であるため,近隣地域とのアクセスが不便であった.しかし,古来より道路網が整備されており,一時は,富士川を通じた舟運も栄えた.明治時代に入り,近代化が進められると,鉄道が整備され,舟運は衰退した.戦後は,観光農業と製造業が盛んとなり,東京という巨大市場へのアクセス向上のため新笹子トンネルや中央高速道路が開通された.これらの経緯を踏まえつつ,交通に関連する社会的要因を,国内動向,政治・政策,産業・宗教に分類し,これらと交通システムとの相互関係を時代別に分析した.
著者
太田 響子 林 裕子 松浦 正浩 城山 英明
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.24-39, 2008
被引用文献数
1 1

本稿は,新奇性の高い環境技術を社会に導入する政策プロセスにおいて,分野横断的ネットワークと民間主体の公共的企業家機能の果たす役割とその特性を検証する.具体事例として,温暖化対策が比較的遅れている住宅部門における面的なCO?排出削減の取り組みである,太陽熱セントラルヒーティングシステムを採用した集合住宅建設のプロセスを扱う.分析からは,新技術を社会に導入するプロセスにおいて,多様なステークホルダーが,(1)分野横断的(マルチセクター)なネットワークを構築することが必要であり,その際,(2)特に民間主体が公共的企業家精神(アントレプレナーシップ)を備えている場合があること,これらの要因の戦略的なマネジメントが社会導入の鍵であることが明らかになった.
著者
加藤 浩徳 城山 英明 深山 剛
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.147-158, 2009
被引用文献数
2

本研究は,LRTの導入を10年近くの期間にわたって検討してきている,宇都宮市を事例として取り上げ,LRT導入に関わる問題の構造を,関係者へのインタビュー調査によって分析し,今後の導入に向けた検討に資することを目的とする.具体的には,まず,導入を巡る議論の経緯を整理し,関係主体に対するインタビュー調査を実施した.次に,インタビュー調査の結果から,関係主体の問題構造認識を分析し,各主体の関心の違いや問題の認識の違いを比較した.インタビュー結果から,導入に関わるファクターとドライバーを抽出し,LRT導入にかかわるイシューの整理を行った.さらに,関係主体間の相互期待表を整理することを通じて,LRT導入に向けた関係主体間の連携の可能性を検討した.
著者
内丸 幸喜 五月女 悦久 大伴 康志
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.viii-xiii, 2004

文部科学省「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」で行われた安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策上の重点課題の検討内容およびその結果を紹介する。重点課題を抽出するため、安全・安心を脅かす要因を網羅的に把握して整理し、その中から、犯罪・テロ、災害、感染症など17項目を検討対象として設定した。設定した検討対象から、重点課題抽出のための評価軸を踏まえて、重点的に取り組むべき課題の検討を行い、危険物・有害物質検出技術や減災対策技術、感染症対策技術を始めとする35の重点課題および被害予測シミュレーション技術やセンシング技術など8つの共通基盤として取り組むべき重点課題を抽出した。
著者
ジヴァノヴィッチ サシャ 堀田 昌英 長山 大介
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.120-130, 2010

This paper explores the Kosovo Conflict through the use of the Cognitive Conflict Evolution Model and the Integrative Explanatory Model. The paper discusses the perceptions of two conflicting sides, the Kosovo Serbs and the "West" represented by the United Nations Missions in Kosovo (UNMIK), investigating how from a perspective different from the common branding of the Serbs as the perpetrators and the Albanians as the victims, the West can be perceived as contributing to an exacerbation of the situation by the "rational loop" which leads to an aggravation of the human rights situation and the "cognitive loop" which leads to a support of independence under unsatisfactory human rights situations. The Integrative Explanatory Model provides a holistic representation of the main factors of the conflict, supplementing the mechanism unraveled by the Cognitive Conflict Evolution Model.
著者
土田 辰郎 木村 浩
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.30-40, 2012
被引用文献数
1 1

原子力事業者の広報担当はマスメディアとの接点となり,記者へ原子力に関わる様々な情報を伝えている.広報担当とマスメディアとの日常的なコミュニケーションを中心とする平常時広報に注目し,広報担当の認知を23名へインタビューすることにより明らかにした.その結果を既に調査報告のあるマスメディアの原子力や原子力事業者に対する認知と比較した.広報担当者はプレス発表の機会も含め記者と継続的にコンタクトを図ることで記者の意識を理解するようになり,マスメディアへの情報伝達は改善がみられてきたことが分かった.平時におけるリスク認知の観点から,事業者がマスメディアに対して行う平常時広報での活動成果や課題の提示は,他の産業へも展開できる知見となろう.
著者
松八重 一代 久保 裕也 大竹 久夫 長坂 徹也
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.106-113, 2008
被引用文献数
6 4

現在工業的に利用されている高品質のリン鉱石は、現在のペースで消費が進むと100 年以内に枯渇することが懸念されており、新たなリン資源の開発が強く望まれている。本研究では、詳細なリンの国内マテリアルフロー分析を行い、製鋼スラグと下水汚泥に濃縮されるリンは、質および量において輸入リン鉱石とほぼ同等であり、人工リン資源として極めて高いポテンシャルを有することを示した。また、これら廃棄物からのリン回収技術開発を行った。廃棄物産業連関モデルを用いて、これらの新技術が与える環境負荷および経済影響を定量的に示した。
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中川 善典 中西 航
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.70-85, 2012

本論文は,高知県を対象として,交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会経済的要因や政治的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,古代~中世,近世,明治~戦前,戦後の4つの時代区分にしたがって整理した.その結果,高知県は,険しい四国山地と海に囲まれた地域であったため,古代から現在に至るまで,海路による広域交通ネットワークに頼らざるを得なかったこと,県領域内の閉鎖的な交通政策が広域旅客交通の発展を妨げたこと,高知県の陸路ネットワークの整備は,主に政治的要因によって実施されてきたこと,高知県の海上交通ネットワークは,一貫して関西地方との経済的結びつきのもとに発達してきたこと,四国遍路が高知県内の技術に与えた影響が大きいことなどを明らかにした.
著者
大上 泰弘 神里 彩子 城山 英明
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.132-142, 2008
被引用文献数
1

イギリスにおける動物実験の規制では,包括的な法律に基づき国家が一元的に,動物実験を行う人,施設,実験内容を管理する.アメリカでは,分立的な法制度の下で,機関内動物実験委員会を中心とした各研究機関の自主規制を基盤としている.そして,この自主規制を監督する制度が法律とガイドラインで規定されている. これらの規制に関する比較分析を踏まえて,日本の動物実験規制のあり方に関する二つの提案を行った.一つは,日本において動物実験規制ガイドラインを作成する場合,その規制原理 (理念) を「愛護」ではなく「尊重」とすべきであるという点,もう一つは,一定の担保された実効的な自主的規制メカニズムを構築するとともに,信頼に足る研究者の資質を研究者サイド自らが養成・保証する仕組みを構築し,一般社会に示す必要があるという点である.
著者
尾暮 拓也 高松 悠 古田 一雄
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.389-398, 2004
被引用文献数
1 2

原子力の是非について社会的に合意形成するためには社会全体によるリスク理解の醸成が必要である. 技術的な知識あるいは問題意識を技術者コミュニティと市民コミュニティで共有するためにはインターネットにおいてはディレクトリ型検索サイトの整備などが急務であると考えられるが, ここで用いられるオントロジーは十分に吟味されて設計されなければならない. 本研究ではまず市民コミュニティのオントロジーをテキストマイニングの概念マップ作成技術を応用して分析し, 原子力工学科カリキュラムから推定される技術者コミュニティのオントロジーと比較して両者の違いを明らかにする. 次にこれらの違いを踏まえて技術的な知識あるいは問題意識の共有のためのオントロジー設計方法について提案する.
著者
木村 浩 古田 一雄
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.307-316, 2003
被引用文献数
5 4

本研究の目的は,人々が原子力政策の賛否を判断する際に,居住地域や原子力に関する知識量によって,その判断に寄与する要因がどのように異なるのかを明らかにすることである.その目的のために,まず,消費地域3個所と電源地域2個所において原子力に関する社会調査を実施し,その収集データに因子分析を用いて,原子力に関する4つの認知要因を見出した.この結果を基に4つの認知要因尺度を作成し,相関分析の手法を用いて認知要因と原子力政策に対する賛否の判断との間にどのような相関関係が存在するのかを回答者の居住地域や知識量に着目して比較分析を行った.その結果,居住地域によって賛否の判断と大きな相関を持つ認知要因が異なり,その違いは知識量によって埋められていないことが示された.