- 著者
-
城島 十三夫
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.1, pp.109-114, 1994 (Released:2008-05-15)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
5
4
トマトの果実の着色状況 (着色または広義の果色)は熟度の指標としてのみでなく, 品質の重要な要素としても利用されている. 特に, 樹上成熟トマトの消費が近年高まるにつれて, 果色は品質要素として一層重要視される傾向がみられる (阿部ら, 1970;東尾ら,1989).ところで, 我が国におけるトマトの一般栽培品種は現在のところ果肉が桃赤色の品種にほとんど限られているが, 黄色系や橙色系品種も時にみられるようになってきた. トマトの果色発現には, かなりの数の遺伝子が関与していることが知られているが (Kargelら,1960;Khudairi, 1972;Stevens-Rick, 1986;Tomesら,1953), 赤色, 黄色そして橙色など基本的な果肉の色には主にRおよびT遺伝子座が関与し, Rは生成されるカロテン色素の量を, そしてTは生成されるそのカロテン類の化学型を決定する. したがって, 遺伝子型R-T- (RRTT, RRTt, RrTT, またはRrTt) のにおいてはトランス型のリコペンが果肉内部で多量に生成集積されるため赤色果肉の果実 (桃赤色系を含めた一般的な赤色型, 以下同様) となり, そしてrrT-(rrTTまたはrrTt) ではトランス型のβ-カロテンのみを少量形成するため黄色の果実 (黄色型) となる.一方, R-tt (RRttまたはRrtt) ではシス型の種々のカロテン類を多量に形成するため橙色果実 (橙色型)となり, そしてrrttではそれらの量が少なくなるため黄橙色果実 (黄橙色型) となる (広田, 1975;Jenkins•Mackinney, 1953,1955;LeRosenら, 1941). これらの果色は色相を表わすa, bの比 (a/b値) によって明確に類別された (城島ら, 1986). さらに, それぞれの果色型の色素成分および色素量の分析も比較的容易に行えるようになった (Johjima•Ogura, 1983;Johjima, 1993).そこで, 本報ではRとT遺伝子が関与する種々の遺伝子型系統を供試して, トマトの基本的な果色型の露地およびハウス栽培, さらに, 着色障害の発生が顕著な32°C以上 (施山•阿部, 1977;Tomes, 1963)の高温環境下における着色特性と色素含量, 組成について調査し, これらの間の関係について明らかにした,