著者
Shun-ichi Amari Ryo Karakida Masafumi Oizumi
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE (ISSN:21854106)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.322-336, 2019 (Released:2019-10-01)
参考文献数
9

Deep neural networks are highly nonlinear hierarchical systems. Statistical neurodynamics studies macroscopic behaviors of randomly connected neural networks. We consider a deep feedforward network where input signals are processed layer by layer. The manifold of input signals is embedded in a higher dimensional manifold of the next layer as a curved submanifold, provided the number of neurons is larger than that of inputs. We show geometrical features of the embedded manifold, proving that the manifold enlarges or shrinks locally isotropically so that it is always embedded conformally. We study the curvature of the embedded manifold. The scalar curvature converges to a constant or diverges to infinity slowly. The distance between two signals also changes, converging eventually to a stable fixed value, provided both the number of neurons in a layer and the number of layers tend to infinity. This causes a problem: When we consider a curve in the input space, it is mapped as a continuous curve of fractal nature, but our theory contradictorily suggests that the curve eventually converges to a discrete set of equally spaced points. In reality, the numbers of neurons and layers are finite and thus, it is expected that the finite size effect causes the discrepancies between our theory and reality. Further studies are necessary to understand their implications on information processing.
著者
Trong-Thuc Hoang Ckristian Duran Khai-Duy Nguyen Tuan-Kiet Dang Quynh Nguyen Quang Nhu Phuc Hong Than Xuan-Tu Tran Duc-Hung Le Akira Tsukamoto Kuniyasu Suzaki Cong-Kha Pham
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Electronics Express (ISSN:13492543)
巻号頁・発行日
pp.17.20200282, (Released:2020-10-06)
参考文献数
30
被引用文献数
7

In this paper, a 32-bit RISC-V microcontroller in a 65-nm Silicon-On-Thin-BOX (SOTB) chip is presented. The system is developed based on the VexRiscv Central Processing Unit (CPU) with the Instruction Set Architecture (ISA) extensions of RV32IM. Besides the core processor, the System-on-Chip (SoC) contains 8KB of boot ROM, 64KB of on-chip memory, UART controller, SPI controller, timer, and GPIOs for LEDs and switches. The 8KB of boot ROM has 7KB of hard-code in combinational logics and 1KB of a stack in SRAM. The proposed SoC performs the Dhrystone and Coremark benchmarks with the results of 1.27 DMIPS/MHz and 2.4 Coremark/MHz, respectively. The layout occupies 1.32-mm2 of die area, which equivalents to 349,061 of NAND2 gate-counts. The 65-nm SOTB process is chosen not only because of its low-power feature but also because of the back-gate biasing technique that allows us to control the microcontroller to favor the low-power or the high-performance operations. The measurement results show that the highest operating frequency of 156-MHz is achieved at 1.2-V supply voltage (VDD) with +1.6-V back-gate bias voltage (VBB). The best power density of 33.4-µW/MHz is reached at 0.5-V VDD with +0.8-V VBB. The least current leakage of 3-nA is retrieved at 0.5-V VDD with -2.0-V VBB.
著者
森 洸遥 辻 寧英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.5, pp.245-252, 2018-05-01

Kerr型非線形媒質を用いた光デバイスは,光による高速な光制御を行うことが可能であるため,全光型ネットワークの重要な素子である光スイッチや光論理ゲートを実現するため盛んに研究が行われている.しかしながら非線形媒質では,通常の線形デバイスの設計理論を直接応用できない場合も多く,汎用的で効率的な設計法が求められている.本論文では伝搬解析手法に有限差分ビーム伝搬法,感度解析に随伴変数法を用いたトポロジー最適設計法をKerr型非線形媒質を含む場合に拡張し,光スイッチ及び全光型論理ゲートの最適設計に関する検討を行っている.
著者
阪田 史郎 青木 秀憲 間瀬 憲一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.6, pp.811-823, 2006-06-01

インターネットや携帯電話網などの従来のネットワークにはない無線マルチホップの新しい形態で通信を行うアドホックネットワークは,ユビキタスシステムにおける重要なネットワークとして,特に1990年代末以降活発な研究がなされてきた.2003~2004年にはユニキャストルーチングについて,IETF(Internet Engineering Task Force)のMANET(Mobile Ad hoc NETwork)WGにおいて三つのプロトコルがExperimental RFCになり,現在Standard TrackのRFCに向けた作業が進展している.また,大規模なテストベッドの構築が進展し,実用化への期待が高まっている.本論文では,アドホックネットワークについて,これまでの研究,標準化の動向を述べた後,MAC層でのアドホック(無線マルチホップ)ネットワークの実現技術として,2004年5月に検討が開始されたIEEE802.11sにおける無線LANメッシュネットワークに関する標準化状況,研究内容,アドホックネットワークの今後の進展を展望する.
著者
瀬村 雄一 吉田 則裕 崔 恩瀞 井上 克郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.215-227, 2020-04-01

近年実務に使用されるプログラミング言語は多様化し,ある一つのプログラミング言語においてもその文法はバージョンごとに差異をもつ.字句単位のコードクローン検出ツールCCFinderXは,多様な言語に対応するためのシンプルな仕組みをもたない.提案ツールとして,構文解析器生成系の一つであるANTLRの構文定義記述を入力として与えることで,新たな言語の字句解析が可能になるコードクローン検出ツールCCFinderSWを開発した.評価実験では,42言語の構文定義記述からコメントや予約語,文字列リテラルの情報を抽出し,81%の言語でこれら3種類の情報が抽出可能であることを示した.また,C++で記述されたソースコードに対するコードクローン検出においてCCFinderXと出力を比較し,ほぼ同等の検出能力をもつことを示した.
著者
木下 涼 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.314-329, 2020-04-01

項目反応理論では異なるテストを受検した受検者を同一尺度上で評価することができる.しかし,そのためには受検者の同一母集団からの独立ランダムサンプリングを仮定し,共通項目を含む複数のテストデータをもとにリンケージと呼ばれる処理が必要である.リンケージはテスト実施に膨大な作業を伴うだけでなく,前述の仮定により理論的に最適値を得る保証はない.この問題を解決するため,本研究では深層学習を用い,受検者の母集団と独立性を仮定しないテスト理論としてItem Deep Response Theoryを提案する.提案モデルはリンケージを必要とせず,受検者が単一母集団からのランダムサンプリングでない場合にも精度の低下が抑えられ,複数の母集団からサンプリングされている場合に頑健である.ここではシミュレーション・実データ実験より,提案モデルは未知の項目への反応予測精度が高く,特に受検者が同一の母集団からランダムにサンプリングできない場合に項目反応理論に対して大きく能力推定精度と反応予測精度を向上させることを示す.
著者
大澤 昇平 松尾 豊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.10, pp.870-881, 2017-10-01

FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを対象にした分析研究では,分析対象となるエンティティの属性情報を収集するために,ソーシャルメディアの提供するAPI (application programming interface)に対するサンプリングが行われることがある.APIの中でも,検索APIに対するサンプリングはこれまで事例が少なく,効率的なサンプリング手法については明らかになっていない.本論文では,Wikipediaから得られるオントロジーを用いることで,検索APIを利用したサンプリングの効率を高めることができることを示す.具体的に,オントロジーから複数の辞書を生成し,収集したいトピックに合わせて適応的に用いる辞書を変える手法を提案する.また,辞書の評価指標として推定Jaccard指標を提案する.実験では,提案手法がFacebookから25.8%にあたる1800万件のエンティティをサンプリングでき,推定Jaccard係数を用いた手法が既存手法よりも効率が高いことを報告する.
著者
川又 泰介 赤倉 貴子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.3, pp.163-172, 2019-03-01

Web上で試験を行うe-Testingは時空間の制約なく受験が可能という利点がある一方で,試験中の不正行為が容易に発生し得るという問題がある.そこで,試験中のなりすまし受験を防止するために,バイオメトリクスを用いた受験者認証法が提案されているが,認証の要求による受験の阻害が課題として挙げられている.そこで本研究では,受験を阻害することなく継続的に受験者を認証するため,Webカメラとペンタブレットを用いて顔認証と筆記認証を組み合わせた受験者認証システムを開発した.システムを実環境に近い状況で使用した結果,顔・筆記共に実時間で認証処理を完了可能であり,被験者は認証処理を意識することなく受験することが可能であることが分かった.
著者
嶋 和明 本間 健 池下 林太郎 小窪 浩明 大淵 康成 佘 錦華
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.2, pp.446-455, 2018-02-01

電子機器の音声入力操作が一般的になった.音声入力操作に必要となる言語理解器開発のためのコーパスは,主にWOZで収集されてきた.WOZは,人が機械に話すときに見られる簡潔な発話スタイルの収集に向く.しかし,ユーザは,言語理解に優れる機械と対話するなかで,多様な発話をするように変化すると予測される.本研究は,機械相手の簡潔な発話だけでなく将来起こりうる多様な発話も収集することを目的とし,インタビューによるコーパス収集法を提案する.具体的には,カーナビをターゲットとして,質問者から回答者にカーナビに何と言うか質問し,回答を得る.回答者には,機械向けの発話収集であり,かつ機械は進化しているため発話の制限がないことを教示する.インタビューで得たコーパスと現製品の発話ログデータ(製品ログ)を比較したところ,コーパスが一発話あたり11.7%多く形態素を含み,多様な発話を収集できたことを確認した.また,現製品の言語理解用データとしての有用性を調べるため,コーパス,製品ログ,両者混合の3パターンで学習させた言語理解器を構築し,評価した結果,両者混合学習で最高精度となり,有用性を確認した.
著者
Sven WOHLGEMUTH Kazuo TAKARAGI
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences (ISSN:09168508)
巻号頁・発行日
vol.E101-A, no.1, pp.149-156, 2018-01-01

Threats to a society and its social infrastructure are inevitable and endanger human life and welfare. Resilience is a core concept to cope with such threats in strengthening risk management. A resilient system adapts to an incident in a timely manner before it would result in a failure. This paper discusses the secondary use of personal data as a key element in such conditions and the relevant process mining in order to reduce IT risk on safety. It realizes completeness for such a proof on data breach in an acceptable manner to mitigate the usability problem of soundness for resilience. Acceptable soundness is still required and realized in our scheme for a fundamental privacy-enhancing trust infrastructure. Our proposal achieves an IT baseline protection and properly treats personal data on security as Ground Truth for deriving acceptable statements on data breach. An important role plays reliable broadcast by means of the block chain. This approaches a personal IT risk management with privacy-enhancing cryptographic mechanisms and Open Data without trust as belief in a single-point-of-failure. Instead it strengthens communities of trust.
著者
加瀬 嵩人 能勢 隆 千葉 祐弥 伊藤 彰則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J99-A, no.1, pp.25-35, 2016-01-01

近年,非タスク指向型の音声対話システムへの需要が拡大しており,様々な研究がされている.それらほとんどの研究は言語的な観点から適切な応答の生成を目指したものである.一方で人間同士の会話においては,感情表現や発話様式などのパラ言語情報を効果的に利用することにより,対話を円滑に進めることができると考えられる.そこで我々はシステムの応答の内容ではなく,応答の仕方に着目し,感情音声合成を対話システムに用いることを試みる.本研究ではまず,適切な感情付与を人手により与えた場合に実際に対話システムの質が向上するかを複数のシナリオを作成して主観基準により評価する.次に,感情付与を自動化するために,システム発話に応じた付与とユーザ発話に協調した付与の二つの手法について検討を行う.評価結果から,感情を自動付与することで対話におけるユーザの主観評価スコアが向上すること,またユーザ発話に協調した感情付与がより効果的であることを示す.
著者
廣瀬 明 丁 天本
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J98-C, no.10, pp.184-192, 2015-10-01

本論文は,複素ニューラルネットワークのエレクトロニクスでの利点を,概念的な側面と具体的な例示によって議論する.本質的に複素ニューラルネットワークは波動を扱う際に有効な汎化特性をもつ.複素数の実2 × 2行列表現を見ながらこれを論じる.また具体例として,通信チャネルを一つの複素実体として捉えて移動体通信のチャネル予測に複素ニューラルネットワークを適用する場合を挙げ,その優位性と背景にある考え方を述べる.
著者
田邉 勇二 上野 伴希 馬場 孝明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.12, pp.1274-1283, 2007-12-01

本論文では,室内の高精度な位置特定を実現させる基礎技術として,これまで報告のなかったアンテナ自身の群遅延解析をダイポール及び八木・宇田アンテナについて行った.2ポートZマトリックスを用いてダイポールアンテナ及び八木・宇田アンテナの群遅延解析を行い,遠方においてアンテナ群遅延が,前者はアンテナの自己インピーダンスで決定され,後者は放射器の自己インピーダンスと放射器近傍に存在する素子間における相互インピーダンスにより決定されることを示した.これらのことを踏まえ,ダイポール及び八木・宇田アンテナを実験により評価したところ共振周波数においてそれぞれのアンテナ群遅延が1.3 λ,2.7 λ(λは波長)となり,高精度な位置特定が必要とされる環境下では無視できない量であることが分かった.更に両実験について電磁界シミュレーションにより比較検討を行い,反射波による影響について考察する.
著者
関 良明 千葉 直子 橋元 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1709-1713, 2014-12-01

手軽な情報発信手段であるTwitter経由の情報漏えいを企業は危惧している.本論文では,従業員のTwitter投稿者を対象にインターネットを使った質問紙調査を行い,業務に関する投稿経験と投稿意識について,職種,雇用形態・勤続年数,性別による傾向分析と,情報漏えい予備群の抽出を試みる.
著者
CHOI Yunja
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE transactions on information and systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.735-738, 2013-03-01
被引用文献数
1

An automotive operating system is a typical safety-critical software and therefore requires extensive analysis w.r.t its effect on system safety. Our earlier work [1] reported a systematic model checking approach for checking the safety properties of the OSEK/VDX-based operating system Trampoline. This article reports further performance improvement using embeddedC constructs for efficient verification of the Trampoline model developed in the earlier work. Experiments show that the use of embeddedC constructs greatly reduces verification costs.
著者
熊本 忠彦 鈴木 智也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.5, pp.788-801, 2015-05-01

Twitterには,面識のない人でも気軽にフォローできるという特徴があり,他者とつながるための手段として有用と言える.しかしながら,その一方で,匿名の人からフォローされたり,既にフォローしているユーザ(フォロイー)のリツイート等により,知らない人のツイートを目にしたりする機会も多く,そのような人たちをフォローすべきか否か迷うことがある.そこで本論文では,フォロー候補となるユーザがどのような印象選好(普段,どのような話題の,どのような印象のツイートを見たり投稿したりしているか)を有しているかを可視化するシステムを提案する.老若男女1,000人が参加した被験者実験の結果によれば,43.2%〜46.5%の人が提案システムによる印象選好の提示を有用と認めたことが確認された.本システムを用いユーザの印象選好を可視化することで,フォローの是非を,有益な情報源かどうかといった単なる損得勘定だけでなく,自身の感性に合ったユーザかどうかという視点から判断することも可能となる.なお,同じ処理をTwitter上のキーワード検索に適用することで,任意のキーワードの印象文脈(そのキーワードがどのような話題の,どのような印象のツイートにおいて用いられているか)を可視化する機能も付加している.
著者
今里 文香 堀田 圭佑 肥後 芳樹 楠本 真二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.5, pp.847-850, 2015-05-01

本論文では,機械学習を用いてコードクローンの危険予測を行う手法を提案する.提案手法では,過去に存在したコードクローンの情報を学習し,その情報をもとに,現在ソースコード中に存在するコードクローンの危険予測を行う.
著者
伴野 明 勝山 一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.214-224, 2015-01-01

最近,映像に香りを付加する研究が進展している.香りの付加で重要となるのは,香りの知覚である.映像と一体的に香りを提示しても利用者が香りを知覚しなければ香り付き映像コンテンツの価値は高くない.そこで,香りの知覚率を高める研究が幾つか行われてきた.しかし,利用者へ吸気センサや香り提示装置を装着するなどの従来法では,香り知覚率が高くても装着感があるため自然さに問題がある.現実空間では香りは風に乗って運ばれる.香りは環境を知る重要な手掛かりを与えるため,人は風を知覚したとき,それまでの呼吸パターンを変化させ,効率的に香りを嗅ごうと吸気している可能性がある.そこで,本研究では,顔に空気触覚を提示し,これに連動して香りを提示すれば香りの知覚率は向上すると言う仮説を設定し,これを検証する実験,及び,そよ風が吹く映像コンテンツと空気触覚の連動による香り提示実験を行った.その結果,空気触覚を提示すると,条件反射的に吸気動作が生じる場合があること,このタイミングで香りを提示すると香りは高い頻度で知覚されることを明らかにした.