著者
草野 篤子 中西 央 小野瀬 裕子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.5-14, 2000-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

日本国憲法第3章人権条項のうち, 「男女平等」と「教育の機会の平等」を中心としたベアテ草案作成の背景を考察し, ベアテ草案の先進性と限界を見いだした.その結果を以下にまとめる.(1) ベアテ草案作成の状況ベアテは, 語学力を駆使し, 諸外国憲法を参考に引用しながら, 女性の権利, 教育の平等, 労働者の権利等, 「女性と子どもが幸せになるため」の条文を作成した.(2) ベアテの経歴と起草条項の淵源ベアテが起草した, 民主的な近代家族の生成に寄与した女性の権利保障と教育の自由が明文化された条文の淵源として, (1) 母親からの影響, (2) 10年問の在日経験, (3) 米国ミルズ大学での教育, (4) 被抑圧民族であるユダヤ人として受けた差別, (5) 被抑圧ジェンダーである女性として受けた差別の5点を見いだせた.ベアテはこの時弱冠22歳であったが, さまざまな社会や文化に対してグローバルな視野を持ち, 博識であった.(3) 憲法研究会草案との対比日本の民間草案は約12あったが, 国民に目を向けていち早く発表された憲法研究会草案は注目に値する.新たに規定されるべき国民の権利義務として, 「言論学術芸術の自由」「労働の義務」「労働に対する報酬の権利」「休息権」「老年疾病の際の生活保障」「男女平等の権利」「民族人種差別の禁止」をあげている.模範とした諸外国憲法は, 憲法研究会草案を知らないベアテが模範にした憲法と同じであった.ベアテと憲法研究会が参考にした憲法の条文を表1に示した.ベアテ草案と憲法研究会との条文の共通性を表2に示した.憲法研究会草案はGHQ上級職員から高く評価され, その意識の中には取り入れられていたと考えられた.(4) ベアテ草案の先進性および限界ベアテ草案 (GHQ第一次案) の先進的な部分と限界の双方の指摘を試みた.先進的部分として3点あげることができた.第一に, 家庭における男女の平等を規定した第18条, 長子相続の廃止を規定した第20条では, 「家」制度を廃止するだけでなく, 民主的な近代家族の実現を図るために, 家族という私的領域におよんで法的規定を行ったこと.第二に, マッカーサー草案としては最終的に削除されたが, 第19条の母性保護と非嫡出子差別の禁止, 第26条の男女同一価値労働同一賃金は, 後に法制化の課題として残ったこと.第三に, 第21条, 第24条, 第25条で「児童」の権利をとりあげ, この時代に子どもを「保護の客体」ではなく「権利の主体者」としてとらえた起草を行っていることである.次にベアテの限界として2点指摘できた.第一に, 第25条に高齢年金の保障を掲げているものの, ベアテ自身も指摘しているように, 老人社会福祉に関する条項がないこと.第二に, 住居の選択はあるものの, 居住権等の居住の権利に関する条項がないことをあげることができた.
著者
小泉 智史 矢田貝 智恵子 内藤 佐和 柳澤 泰任 須見 洋行
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.44, 2004 (Released:2005-04-02)

【諸言】ビタミンKは血液凝固因子の合成のみならず骨粗鬆症との関係が注目されている。これまで当研究室では納豆菌が生産するビタミンK2(MK-7),ナットウキナーゼ(NK)について報告してきた。今回,市販納豆及び納豆菌によるビタミンK2,NKについての培養温度,振盪速度による生産性の変化などを検討した。【実験方法】納豆菌は(Bacillus subtilis natto)納豆の製造に用いられる宮城野株,朝日株,高橋株,医薬用に用いられる日東株,目黒株,中国雲南省の納豆から分離した雲南株,金沢株の計7種類の菌株を基本培地2%ポリペプトンS(和光純薬),3%グリセリンを用い,液体振盪培養を行った。また比較対象として市販納豆7種類の乾燥物を試料とし,MK-7は当研究室で確立したHPLC法(Sumi et al.,Food Sci.Tech.Res,5:48,1999;農化,73:599,1999)で測定した。またNKの血栓溶解活性は標準フィブリン平板の溶解面積(mm2)(Sumi et al.Experientia,43:1110,1987)で測定した。【結果】市販納豆7種類でのMK-7含量は11.9±8.6μg/g(dry wt)で,液体振盪培養による菌体内MK-7含量は2,852.0±2,774.2μg/gとはるかに高含量であり,最も多く生産したものは29℃の金沢株の12,800μg/g(dry wt)であった。培養液上清の場合,特に目黒株は100rpmよりも30rpmの方が高い数値を示した。またNKの血栓溶解活性はMK-7とは相関せず,29℃よりも37℃,30rpmよりも100rpmの方が生産性のよいことが確認された。
著者
西澤 千惠子 北野 亜紀 鈴木 美弥 小長井 ちづる グュエン ヴァン·チュエン
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.122, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

コーヒーは牛乳やクリームなどと混合され、飲料されることが多い。そこでコーヒーに牛乳、クリーム、砂糖などを添加した時に、コーヒーの有する抗変異原性、抗酸化性およびラジカル消去作用が変化するかどうかを検討した。その結果コーヒーおよび牛乳を原料とする添加物はこれだけで抗変異原性、抗酸化性およびラジカル消去能を示した。またコーヒーにこれらの添加物を加えると、抗変異原性およびラジカル消去能は大きくなり、抗酸化性はコーヒーとの中間の値を示した。これらの性質はコーヒー中のクロロゲン酸と乳製品中のカゼインが関係していると思われ、混合してもクロロゲン酸やカゼインは妨害されることなくそれぞれの性質を発現しているものと推察された。
著者
武田 珠美 福田 靖子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.137-143, 1997-02-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
35
被引用文献数
1

日本独特の調理であると考えられるすりゴマの調理性を明らかにするために, 本報ではゴマ種子の炒り条件による成分変化を検討した.焙煎温度は 170℃, 200℃および230℃とし, 時間は1分から20分の各温度につき4通りとした.170℃20分, 200℃5分および230℃5分焙煎したゴマ種子の重量, 色調はほぼ同じであった.総食物繊維量は170℃15分, 200℃10分, 230℃では5分をピークに減少した.セサミンやセサモリン, アミノ酸も加熱とともに減少した.また呈味に関係する遊離アミノ酸および遊離糖も次第に減少した.官能検査から170℃15分で焙煎したゴマの味の評価が高く, 炒りゴマとして総合的に好ましいことが明らかになった.
著者
岩崎 雅美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.43-53, 1993-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
67

A costume worn by female elementary school teachers in the latter half of the Meiji Period was the one reformed from a traditional Japanese costume called a KIMONO. About 1900, the female teachers' custume was composed of an undivided HAKAMA called a MOBAKAMA like a Western pleated skirt, and a conventional KIMONO underneath. A broad sash, OBI, which was normally used to fasten the KIMONO, was not worn. And, the long-length KIMONO was replaced with a TSUTSUSODE which was a short-length reformed KIMONO with tighter sleeves like those of a Western clothes. The MOBAKAMA and the TSUTSUSODE were both made of cotton.Many of the female elementary school teachers were ordered to wear the above-mentioned costume by the ordinance of a prefecture, just as the male elementary school teachers were ordered to wear western-style uniform.The development of the female teachers' costume suggests the following : 1) In view of the fact that many prefectures adopted the above costume for female elementary school teachers, it can be inferred that educational leaders at that time must be significantly conscious of the nation-wide integration of a new educational society.2) In my previous report, I pointed out that male elementary school teachers were ordered to wear a western-style uniform made of wool which was high-priced material so as to show dignity to schoolchildren. On the contrary, the female teachers' costume was made of cotton, a poorer quality material, with the aim of raising the low attendance of schoolgirls of destitute families; the female teachers' plain costume was believed to make the threadbare girls feel more homey and accessible to school. However, it is quite true that the poorer appearance of the female teachers was openly exposing their lower salary and social status.3) The MOBAKAMA, which originated from men's HAKAMA, an equivalent of Western trousers for men, was found far more convenient for physical exercises. Some female teachers was dissatisfied with the extraordinary design of the TSUTSUSODE, but we have to admit that the TSUTSUSODE was easier for them to wash and take care of because of its simple design similar to a light Western blouse.Therefore, it can be concluded that the adoption of the costume for the female elementary school teachers gave significant favorable results to the development of school education in Japan.
著者
難波 敦子 成 暁 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.187-191, 1998-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

An investigation of post-heated and fermented teas (pickled teas) in Yunnan, China revealed that Liang-pan tea (a salad tea) which is considered to be made by Jinuo-zu in South Yunnan, is widely made by Thai-zu in Dehong Thai-zu Jingpo-zu Province of Yunnan. Liang-pan tea is prepared from fresh raw tea leaves, dried tea or Lephet-so, which is one of the post-heated and fermented teas of Myanmar, with salt, various spices, vegetables and oils being added. Liang-pan tea is just like a salad tea, and it is presumed that this tea originated as an edible food material, before emphasis was placed on drinking.
著者
森 基子 長谷川 玲子 船坂 鐐三 小瀬 洋喜
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.833-840, 1990-09-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

(1) 生活排水対策として調理廃棄物対策が求められているが, 多様な調理内容をもつため, 対策の有効性の評価が困難である.(2) 本研究では, 一般に広く用いられる調理原材料および家庭的調理食品のBOD原単位を求め一覧表とした.食品1gあたりのBOD値の最も高い食品は, いものあめ衣がけ, 鯖のから揚げがいずれも1,100mg/g, ついでマヨネーズ880mg/g, 白玉だんご830mg/g, マーガリン800mg/gがこれに次ぐ.これら以外の食品は600mg/g以下である.砂糖, 小麦粉が500mg/g, 小豆 (ゆで) 380mg/gに代表されるように, 炭水化物, タンパク質系の食品は200~400mg/gのものが多いが, 脂肪系の食品は800mg/gを超えるものが多い.したがって食品分類による差が認められ, 原食品では, 野菜, きのこ類は100mg/g以下, 果実類は100~200mg/g程度のものが多いが, 調理食品では, 野菜, きのこ類が100~200mg/gに増大し, なすのてんぷら, きんぴらごぼうのように油を用いたものでは500mg/g程度となっている.砂糖やしょうゆの影響はその添加量が少なく, 大きな影響を与えるほどではなかった.(3) 重回帰分析各成分測定値の分布は, 水分の2乗が正規分布を示したが, 強熱減量, 四塩化炭素抽出物量, BODは対数に変換したとき, 正規分布を示した.目的変数 (y) をBODとしたときの重回帰式を求めた結果, 強熱減量 (x1) による単回帰式となった.ln y=0.913lnx1+0.448, γ=0.865, 寄与率74.8%.この式により求めた推定値と測定値との間の相関係数は0.865となり, BOD値を強熱減量から推定することの可能性を示した.(4) 調理廃棄物のBOD原単位を明らかにし, 未測定の食品については強熱減量の対数により推計することができることを示したので, これにより調理排水対策をすすめ, 生活排水対策を有効なものとする施策を得るのに役立つことが期待される.
著者
畑江 敬子 香西 みどり 古川 英 熊谷 美智世 伊藤 純子 十河 桜子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.250, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】近年、家庭用調理機器においては従来のガスコンロに代わり、電気の誘導加熱を利用した電磁調理器(IH)の普及が進んでいる。そこで本研究では、現状の調理内容に即したエネルギー使用データを収集し、ガスコンロとIHの違いを把握することを目的としている。【方法】 春夏秋冬それぞれ1日の朝食、昼食、夕食の献立を、女子栄養大出版部「栄養と料理」献立カレンダーより選定し、さらに一部をアンケート結果による人気メニューに置きかえることにより、季節、栄養、カロリー、調理方法、人気を考慮した現代版メニューを作成した。年代と調理経験の異なる3人の調理者により、作成メニューについてガスコンロ、IHそれぞれに対し同じ調理を行い、熱量および使用時間を測定した。実験では大きさを揃えた両調理器で適した鍋を用い、同一メニュー内では食材および量を統一した。【結果】IHの方が多くの一次エネルギーを消費した。四季別において冬メニューでは夏の2倍以上のエネルギーを消費し、調理別においては湯沸かし茹で、煮るでエネルギー消費量全体の6割以上を占め、これらはガスコンロ、IHで同じ傾向を示した。火力別の効率と使用割合から一次エネルギーでの総合効率を求めると、ガスコンロで50.0%、IHで27.7%となった。ランニングコストは四季別、調理別のどちらにおいても電気代の方がガス代に比べ高くなった。両調理器の10年間の使用を含めた製造から廃棄までの総エネルギー消費量は、IHではガスコンロの約1.3倍となった。
著者
加藤 征江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.627-633, 2001-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

小麦粉とバターを180℃の高温度まで加熱したブラウン・ルーの香気を明らかにするため, ルーA (材料を180℃まで加熱したルー) とルーB (材料を180℃まで加熱し, その温度を5分間保持したルー) の2種類のルーから調製した香気濃縮物をGCおよびGC-MSで分析した.結果は次の通りである.(1) ルーAの香気濃縮物の重量は既報の100℃加熱のルーに比べて, 約4倍に増加し, GC上のピーク数も非常に多かった.ルーBもルーAとほぼ同じであった.(2) ルーAにおいて, 新たに12種類の化合物を同定した.それらはアミノ・カルボニル反応を経由する7種類の複素環化合物 (フラン類, ピラジン類, ピロール類等) と2種類の環状ケトン類, および脂質由来と思われる2種類の酸と1種類のアルデヒドであった.それらはルーBにおいても存在した.それらの化合物はやや甘い香りと強い焦げ臭をもつ180℃ルー (ルーA, ルーB) の香気に大いに貢献していると思われた.(3) ルーの加熱温度180℃では, フラン類中の特にフルフリルアルコールの量はルーAでは全香気成分量の約46%になり, 更に加熱条件の強いルーBでは約49%で, 既報の160℃ルー (ブラウン・ルーの初期段階に相当) に比べてかなり多くなった.またピラジン類も種類, 量ともに多くなった.それらフラン類やピラジン類のような複素環式化合物はルーAでは全香気成分量の約70%, ルーBでは約80%も占めていた.一方, バターに多く含まれている中級カルボン酸類やラクトン類, および120℃ルー (ホワイト・ルー相当) に多い2-ウンデカノンのような鎖式のメチルケトン類が顕著に減少していた.このように各香気成分組成も180℃ルーの香気の特徴に寄与していた.
著者
吉松 藤子 下村 道子 岡田 洋子 宮沢 礼子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.471-476, 1977-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) 産卵直後の新鮮卵のゆで卵は, 卵殻がむけにくく, 保存によりpHは上昇し, 2日後よりむけやすくなった.2) 新鮮卵にアルカリ性ガス処理を行い, pHを上昇させると卵殻はむけやすくなった.調理的見地より, アンモニアガスの処理がよく, 5%のアンモニア水で10分間の処理で効果があった.貯蔵卵に酸性ガス処理を行うと, pHは低下し, 卵殻はむけにくくなった.3) クチクラを剥離して保存すると, 無処理卵より卵白のpHの上昇が速く, 卵殻は26時間でむけやすくなった.4) ゆで卵の卵白の色については, 新鮮卵は不透明で白く, 貯蔵やアンモニア処理によって明るさL値が低下した。卵白のpHとL値との問には, 高度に有意な負の相関関係がみられた.5) ゆで卵の卵白の硬さは, 貯蔵日数により, またアンモニアガス処理により硬くなった.卵白の保水性は, 貯蔵日数, アンモニアガス処理により増した.硬さ, 保水性ともに, アンモニアガス処理は1日貯蔵したほどの効果があった.
著者
久保 桂子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.164, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 共働き世帯において、夫の職場環境が夫の家事・育児参加や、仕事が家庭生活への妨げという夫の意識に影響を及ぼすことは、これまでの研究において明らかにしてきた。本研究では、さらに、夫の職場環境が妻の仕事と家庭生活の葛藤とも関連するかを明らかにする。加えて、妻の葛藤と、妻の夫に対する家庭生活への参加要求行為(クレーム行為)との関連についても検討する。方法 2013年11月に、千葉県西部の公立保育所21保育所の保育園児の保護者を対象に行った質問紙調査の結果を用いて分析する。調査票は家族票・母親票・父親票を組にして2119世帯に配布し、回収は1118世帯分であった(回収率52.8%、有効票は1099世帯、51.9%)。平均年齢は、夫37.5歳、妻35.7歳、平均子ども数1.7人である。結果 (1) 夫の職場環境が「残業を当然とする雰囲気・残業をしないと終わらない仕事量」の得点が高い場合、妻の仕事から家庭生活への葛藤の得点も高くなる傾向が認められる。一方、妻の家庭から仕事への葛藤との関連は認められない。また、育児など家族の都合を相談できない雰囲気という夫の職場環境は、妻の葛藤と関連がみられない。(2)夫の職場環境の残業関係の得点が高い場合、妻の夫へのクレームの得点も高い。しかし、実際の夫の労働時間の長さとクレーム行為との関連は弱い。(3)妻の仕事から家庭生活への葛藤の得点が高い場合、妻の夫へのクレーム行為の得点も高い。
著者
須見 洋行 岡本 猛
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.337-342, 2003-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

テンペ水抽出液に強い血栓溶解活性を確認した.水抽出液の凍結乾燥物1g当たりの活性はウロキナーゼに換算して450 IUであった.この血栓溶解活性を示す主要な酵素は, 等電点電気泳動の結果から, 等電点は約8.7であり, その分子量はゲルろ過の結果から約30,000と推測された.この酵素は血栓タンパク質 (フィブリン) だけでなく, 弱いながらSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAおよび H-D-Val-Leu-Lys-pNAも分解し矢印は, 分子量スタンダードの溶出位置を示す. (1) : サイログロブリン (分子量670,000), (2) : γ-グロブリン (分子量158,000), (3) : 卵白アルブミン (分子量44,000), (4) : ミオグロビン (分子量17,000), (5) : ビタミンB12 (分子量1,350).た.さらに, 65℃以上で失活し, 1mM/lのジイソプロピルフルオロリン酸および1mg/mlのエラスタチナールによって強く阻害された.Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNA分解に対するエラスタチナールの阻害は競合的であり, Ki値は9.8×10-8Mであった.
著者
久保 加津代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.325-333, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

以上のことをまとめるとつぎのようにいえる.1. 住生活関連記事の分量は決して多くはなかったが, 当時の『家の光』には農村の生活改善の核である住生活改善の実態が読みとれる記事がある.数は少ないが平面図もある.初期には「啓蒙」が中心であったが, 1930年頃から「実践」がみられるようになる.2. 農村の住生活改善は, (1) 個人の活動, (2) 共同による活動, (3) 組合による活動または組合の協力による活動の3つのパターンで進められている.個人の活動については1933年以後に多くみられ, 男性による寄稿が多く, 能率的になった事例が客観的に述べられていることが特徴である.共同による活動については, 女性たちが協力して講演会や台所批評会を開いたり, 台所改善講などにとりくんだ記事が多く, 個人の活動と比べると, 改善の成果・感想が伝わってくるものが多い.組合による活動または組合の協力による活動は, 産業組合および信用組合や県農業会などが関係して住宅改善を行った例である.また産業組合による共同浴場は, 健康管理意識も高め, 教育機能や村民の情報交流機能まで果たし, 共同作業場の設置や農業経営の向上, 住宅の居住性向上にもつながっている.都市部で進んだ住生活改善の影響もあって, 昭和時代初期には農村部でも台所改善を中心に住生活の改善が進んだ.『家の光』は『婦人之友』『主婦之友』などの女性雑誌と比べると, 女性自身の寄稿が少なく内容も客観的事実を述べるものにとどまっているが, 貧困のなかで協力しあって生活を衛生化・能率化したエネルギーと, そして限定された階層の限定された活動であったとしても, 戦後に展開される農家の住生活改善のモデルになったであろう点は評価できる.
著者
難波 敦子 宮川 金二郎 大森 正司 加藤 みゆき 田村 朝子 斎藤 ひろみ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.907-915, 1998-08-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25

This report continues our study of post-heated and fermented tea which are produced in the northern area of South-East Asia and Japan. A search of Chinese literature for Suancha (a sour, non-salted pickled tea) reported it to be produced by hill tribes in the south-west of Yunnan province in China by a two-step fermentation process (under aerobic and anaerobic conditions) like Goishi-cha in Japan. Our study, however, clarifies that the present Suanchas are produced by a one-step fermentation process under anaerobic conditions like Lepet-so in Myanmar, Miang in Thailand and Laos, and Awa-bancha in Japan. Suancha is now produced by the Bulangzu living near Mt. Bulang in Xysanbanna and by the Daizu in Dehong province of Yunnan. Edible pickled teas, including Liangpan-tea and Yancha that is the other kinds of pickled tea in Yunnan are also discussed.
著者
黄 慧瓊
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.671-680, 2002-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The objective of this research is to investigate upon the ethnic identity of the Korean Residents in Osaka City through the food culture and their adaptability towards the Japanese culture by taking concrete examples from their food culture, especially the festive food culture. I made a questionnaire-based survey as well as an oral-survey in the Korean-populated areas of Osaka. The purpose of this survey is to examine the festive food preparations, the changes of food patterns that have taken place as a result of living in Japan. The results of this survey showed that there was a correlation between the ethnic identity of the Korean Residents in Osaka City and their festive food preparations. The stronger was the feelings of ethnic identity, the stronger was the ethnic influence on the traditional festivities and the closer was the food preparations to the traditional Korean style. Regarding the dishes used, they were mostly made-in-Korea and were bought directly from Korea or at the Korean shops. Moreover, on the viewpoint of the mutual relation between ethnic identity and the representative festive food, i.e. the New Years festive food, the survey revealed that the amount of traditional Korean festive food prepared during New Years was proportional to the strength of feelings of ethnic identity of each family. However, there was no difference in the amounts of traditional Japanese festive food that the families prepare for the New Years and, moreover, no relation with the extent of the family's ethnic identity feelings.
著者
高橋 久美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.415-423, 1987-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18

It is widely accepted that the parent-child tie is still closer than the marital tie in Japan. It is important in family studies to clarify the process and causes on which such marital relationship is formed. The purpose of this study is to examine changes and problems of the marital relationship across the transition to parenthood. The samples were parents of 270 kindergarten children and 195 nursery school ones.The results are as follows : Less than half of husbands and wives married with intense love for the spouse but 78% of husbands and 74% of wives were delighted with the first-pregnancy. Many of them wanted to have children and came to be child-centered after the child-birth. Though most of them were satisfied with their marital relationship before and after the first-birth and at present respectively, their satisfaction with companionship was rather low. It is assumed that they put much more importance on the earning and parental roles than the marital role.
著者
片山 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1025-1028, 1989-11-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1

FWA-1そのものを効率よく分解することはむずかしいが, FWA-1の光分解生成物の中に, AlcaligenesまたはPseudomonas属に含まれると推定されるブタン21株等により生分解を受けやすいものがあり, 光分解反応と組み合わせると初めて効率よく低分子化合物に分解していくことが判明した.
著者
長尾 慶子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.373-377, 1989-05-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

衣を厚くしたコロッケの揚げ加熱中の破裂の機構に関して以下の結論を得た.1) 衣を2, 3, 4mmと厚くすると薄衣の1mm試料の場合にみられた表層部破裂は起こらず, コロッケ全体に縦 (長軸方向) に亀裂が入る全体破裂となった.2) 外皮の引張強さは, 経時的に増加した.2mm試料のほうが, 3および4mmの試料に比べて短時間で強度が大となった.破裂時の外皮の強度から推定した内部圧は, 2mm試料のほうがより厚い皮の試料に比べて有意に低かった.3) 厚衣の全体破裂は, コロッケ内容物体積が揚げ加熱中に温度上昇に伴い6.5~6.9%膨張することで, 約2~3N/cm2高まった内部圧を皮が抑えきれずに亀裂が起きて, 破裂するものであることが示唆された.
著者
長尾 慶子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.523-527, 1991-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2
被引用文献数
1

加熱前のコロッケを冷却することによる破裂の抑制効果を検討した.ポテトコロッケの温度を-20℃ (冷凍コロッケ) および5℃ (冷蔵コロッケ) まで冷却したのち, 180℃で揚げ, 冷却処理をしないで同様に調製した室温コロッケと比較し, 次の結果を得た.(1) 冷却処理は, 外皮1mmの薄衣コロッケにおいてとくに有効であった.すなわち, 室温試料では100%表層部破裂し, 可食コロッケは0%であったが, 冷蔵試料では95%が, また冷凍試料では100%が可食コロッケとなった.この理由として, 低温にすることにより外皮近傍部の温度上昇が遅れ, 揚げ加熱中に蒸気圧が高まることが抑えられた結果, 表層部破裂が抑制されたことを認めた.(2) 外皮 2mmおよび 3mmの室温試料は, 100%全体破裂し可食コロッケの割合は0%であったが, 冷蔵試料においてもそれぞれ10%および5%であり, 破裂抑制効果はほとんど認められなかった.破裂の機構は室温試料のそれと同じであった.(3) 外皮 2mmおよび 3mmの冷凍試料における可食コロッケの割合は, それぞれ55%および45%であり破裂抑制にかなり効果的であった.破裂の抑制は外皮の厚さにより異なり, 2mm衣試料は冷凍によりすべて表層部破裂になり, 3mm衣試料はすべて全体破裂であった.しかし, 3mm衣の全体破裂は室温試料と同じ機構では説明できず, 両試料ともに冷凍による異なる破裂の機構が示唆された.(4) 2mm衣の場合, 室温では100%全体破裂したが, 冷凍 (-20℃) 試料では100%表層部破裂となった.