著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.341-347, 1999-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The effects of cooking pot material and heating conditions on the physical and chemical properties of rice gruel were studied.It was found difficult to adjust the heat input to rice gruel cooked in a yukihira nabe (earthen pot) when the temperature reached over 100°C at the bottom of a pot. Rice gruel cooked rapidly was harder and stickier than when cooked slowly, particularly when a yukihira nabe was used as the pot. Rice gruel cooked slowly had a large amount of reducing sugar, mainly consisting of glucose. Rice gruel that was too sticky was not easy to swallow and was disliked. Rice gruel cooked in an aluminum pot was preferred to that in a yukihira nabe, although the application of the heat retaining method to the latter type of pot was effective.
著者
今井 弥生
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.292-297, 1965

東京家政学院短期大学・家政科学生を対象とし、1955~1963年にわたり、日本色彩社発行の97標準色を用いて、嗜好色と着用嗜好色とを経年的に調査し、これらの嗜好率と相関関係とを明確にするために決定係数を求め、同時に着用嗜好色率の嗜好色率平均弾力性を求めて検討を加えた。被験者は9年間計2,757名である。<BR>主な結果<BR>1. 嗜好色と着用嗜好色とにおいて、色彩の受容には周期的現象が認められる。<BR>1) 嗜好率1位を示したダーク・ブルー系の周期は、約4~6年と推察される。なお、レッド系とブルー系とを主調とする年度にはパープリッシュの傾向を好み、ブラウン系とグリーン系とを主調とする年度にはグリーニッシュを好む傾向が強い。<BR>2) 2位を示したスカイ系は、ダーク・ブルー系と交互に出現する傾向があり、次のピークに達するまでには、約4~6年の周期があると推察される。<BR>3) 3位を示したイエロー系は、徐々にピークに達し、その周期は、約8年以上と推察される。<BR>2. 決定係数の大小には、その信頼度とともに、年令層による特色がやや認められる。<BR>1) ターコイズ系、ライト・グリーン系、メディアム・グレー系は決定係数が大であり、嗜好色と着用嗜好色との相関関係が強度に存する。これはこの年令層にあう系統と思われる。<BR>2) オリーブ系、ラベンダー系、ワイン系、リーフ系においては決定係数が小であり、相関関係が殆んど存しない。これらは比較的年配層にあう系統と思われる。<BR>3. 決定係数・平均弾力性ともに大なる系統については、この年令層における需要予測が確定できると考えられる。<BR>1) ターコイズ系、メディアム・グレー系、ライト・グリーン系は決定係数・平均弾力性ともに大であり、着用嗜好色率の増加が確実に予想される。<BR>2) イエロー系、イエロー・グリーン系、レッド・パープル系、ブルー系、レッド系、ベージュ系、ブラウン系、オリーブ・グリーン系については、決定係数は中位であるが、平均弾力性は1より大であるので、着用嗜好色率の増加がやや予想される。<BR>3) ブラック系の決定係数は中位ではあるが、平均弾力性は最も大であり、ある時期には最大の着用嗜好色率の増加率が予想される。
著者
大井 裕子 鶴淵 和子 小林 トミ 穂坂 直弘 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-86, 1985

砂糖液の加熱時における火力と最終温度がカラメルソースの色や味とどのような関係にあるかを明らかにするため実験を行い, 次のような知見を得た.<BR>1) カラメルソースの濃度は, その仕上がり重量がもとの砂糖重量の1.10~1.15倍がよい.<BR>2) 官能検査の結果, 強火では 210~230℃ 加熱のものが色・味ともに評価が高かった.これに該当するのは, 中火では220℃, 弱火では210℃加熱のものであった.<BR>3) カラメルの色は弱火で210℃, 中火で220℃, 強火で230℃になると急変しやすく, ばらつきが大きくて再現性に欠ける.<BR>4) カラメルソースの色価は 600 前後が適当である.<BR>5) カラメルソースの pH は, 加熱温度の上昇とともに低下する.<BR>6) 火力は強火よりも弱火のほうが温度が緩慢に上昇し, 低温で着色する.<BR>7) カラメルの調製法としては160℃まで強火にし, その後弱火で加熱するのが, 所要時間や調理操作上よいと考えられる.
著者
高井 郁子 柳沢 幸江 村田 安代 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.307-314, 1993-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3

鶏肉の水煮における, 加熱開始温度と加熱終了温度の相違が物性, 食味におよぼす影響を明らかにするため, 鶏肉および煮汁の呈味成分の消長, テクスチャー特性について調べた.また官能検査を行い呈味成分, テクスチャーとの関係を考察した.(1) 実験11) 水煮した鶏肉のかたさには, 水から煮ても, 熱湯に入れて煮ても, 加熱開始温度の影響はなかった。2) 本報の実験条件では, 熱湯に入れて煮た方が若干, 肉中, 煮汁中の5'-IMP量が多く, 官能検査の結果も, 熱湯に入れて煮た方が, 肉にうま味があり, 好ましい傾向がみられた.煮汁も熱湯に入れて煮た方が, うま味を多く感じていた.(2) 実験21) 加熱終了温度の違いによる核酸関連物質, 遊離アミノ酸の消長はほとんどみられなかった.しかし, 呈味に関与しているといわれているタウリン, アンセリンは加熱により徐々に煮汁中に溶出した.2) 官能検査の結果, 本報の実験条件では, 加熱終了温度90℃ (23分加熱) の肉がやわらかく, しっとりとして総合的に好ましいという評価を得た.実験1, 2の結果より鶏肉の水煮は, 本実験条件では肉の呈味成分の消長はあまりみられず, 肉のかたさ, パサつきなどの物性面への影響が多いと考えられた.加熱方法としては熱湯に肉を入れ内部温度80~90℃になるまで加熱する方法が望ましいといえる.
著者
新田 ゆき
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.173-176, 1975-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) 加熱中断によるジャガイモ組織の硬化現象 (ゴリイモ化) について実験した結果, 55~70℃, 100分予加熱したのち, 100℃で再加熱したものは堅く, 破断力が増大した.しかし, EDTAを加えると予加熱しても柔らかく, 逆に, CaCl2 を加えたものは普通加熱でも破断力は著しく増大した.2) 予加熱したものでは, 水溶性ペクチンが普通加熱のものより明らかに少なく, 塩酸可溶性ペクチンは逆に多い傾向を示した.3) ジャガイモ以外の野菜, 果実の若干のものについても実験したが, 同様に60℃予加熱で顕著に破断力が増し, 水溶性ペクチンが減少した.4) 以上の現象の原因として, ペクチンメチルエステラーゼがペクチニン酸のメチル基を離し, フリーになったカルボキシル基が組織内の Ca++, Mg++ と架橋を作り堅くなるのではないかと想定している.
著者
矢田 幸博 永嶋 義直 鈴木 めぐみ 鈴木 敏幸
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.310, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】冷え症状の愁訴と生理状態との関連性を明らかにすることを目的に冷え性意識を有する日本人女性の性格特性の調査と自律神経系評価計測を行った。【方法】東京近郊在住で冷え性意識のない女性群(健常群:20_から_60代)および本人愁訴とともに質問紙にて冷え性と判定された女性群(冷え性群:20_から_60代)を選択した。ストレス、疲労、性格特性および神経症を調査するためSCL30、CFSI、STAIの各質問紙およびCMI健康調査表を用いた。生理評価は、心拍変動解析、手掌部のペルチェ素子による温熱負荷時の血管反応性の周波数解析を行った。【結果】健常群のストレス得点に比して冷え性群の得点は、全年代で高く、ストレス得点が高くなるほど冷え性群の占有率が高かった。疲労感調査では、冷え性群で一般疲労、気力の減退が顕著であった。STAIおよびCMIによる性格特性、神経症調査では、冷え症群で特性不安が高い傾向が認められたとともに神経症の重症頻度が有意に高かった。一方、自律神経系計測では、冷え性群でRR間隔の有意な低値が認められた。また、温熱負荷時の血流周波数解析から冷え性群で血管拡張が起こりにくいことが示唆された。以上の結果から、冷え性意識のある女性は、生理心理両面において緊張状態にあり、冷え性の症状の発現や悪化につながっている事が示唆された。
著者
牛田 智 谷上 由香
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1129-1130, 1998-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3

In the previous paper we reported that natural indigo products can be discriminated from synthetic indigo products by detecting red pigments contained as contaminants in indigo dyestuffs by means of HPLC. However, the HPLC method is difficult to put into practical use due to the high cost of equipment. Herein, the capability of TLC to discriminate between the two was investigated. The red pigment contained as a contaminant only in sukumo, Japanese natural indigo dye, and another red pigment contained as a contaminant only in synthetic indigo could be separated and detected on TLC.This means that the simple TLC method is capable of discriminating between natural indigo dyeing and synthetic indigo dyeing.
著者
五十嵐 由利子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.4, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 住宅の断熱・気密化が進められ、その住宅性能に合致する暖房方法が増加してきているものの、開放型暖房器具による各室暖房が多い現状である。そこで、本研究では、開放型暖房器具使用時の二酸化炭素濃度(以下、CO2濃度)の実態を把握し、適切な換気方法の提案のための基礎データを得ることを目的に、昨年度は実住宅を対象に開放型暖房器具使用時のCO2濃度が高くなっている現状を報告したが、本報では、換気による効果も合わせて報告する。 方法 新潟市内の2000年建築された住宅1戸を対象に、CO2濃度、温度、湿度が記録できる小型自記記録装置を用いて実測調査を行った。測定を行ったのはLDK(14畳、石油ファンヒーター使用)と居室(大学生の個室、6畳、石油ファンヒーター使用)で、2013年11月8日~12月18日まで測定を行った。なお、居住者は3世代6名で、日中は高齢者夫婦がLDKで過ごしている。結果 LDKでは8~21時まで継続しての暖房が多く、室温は22℃前後、湿度は50%前後であった。CO2濃度は、暖房開始直後の上昇が大きく、7,000ppmを越えることも多かったが、その後は5,000ppm前後で変動していた。一方、居室では間欠暖房のため、暖房開始後の室温上昇とともに10,000ppmを越えることもあり、非暖房時の最低でも1,000ppmを超える日が多かった。居室での換気を廊下の扉開放、窓開放など試みたが、窓の施錠をせず僅かな換気量の継続が効果的であった。
著者
荒川 志津代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.354-363, 1984-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

多くの要因を含んだ子ども写真を視覚刺激として提示した場合のかわいさの要因について検討した.1) 被験者は子どもの身体以外のものにも関心をもっており, それをかわいくも感じているが, かわいさの基準を具体的に明示するように求める場合には, キンダーシェマとかわいさとの関連が生じることが推測された.2) 被験者の属性が子どものかわいさの要因の一つであることが明らかとなった.3) かわいさの因子として, 楽しさ, 無力さ, 活発さ, 緊張, 力動性, 従順さが見いだされた.4) 子ども観の三つの因子が見いだされた.伝統的・保守的子ども観, 客観的・理性的子ども観, 保護的・共感的子ども観である.5) 子ども観とかわいさイメージとの関連が示唆された.
著者
荒川 志津代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.729-736, 2005-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

The purpose of this study is to compare views of grownups on the cuteness of children between 1980 and 2005. A 21-item questionnaire was answered by 80 adults in 1980 and 200 adults in 2005. The adults who responded consist of 4 groups; a male group with a child or children, a female group with a child or children, male university students with no children, and female university students with no children. The main results are as follows : 1) In the case of the second group, or the female group with a child or children, their views are not identical between 1980 and 2005, the variance between the two is greater than that of the other groups, although their views come closer to those of the other 3 groups in 2005. 2) The number of those who stated that children were all lovely is larger in 2005 than in 1980. 3) The number of those who answered that they felt sympathy for babies or little children is larger in 2005 than in 1980. 4) Notable is the number of the respondents in the first and second groups who objected to the item that pensive or inactive children are not childish. Those who objected to the statement is larger in 2005 than in 1980.
著者
島田 淳子 小竹 佐知子 松本 美鈴 畑江 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.197-203, 1990-03-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

調理操作の中の調味操作が, 押し出し成型したタンパク質を主成分とする組織化製品に及ぼす影響を物性変化の面から検討した.試料はタンパク質含量90.0%, マトリックス構造中に直径0.003~400μmの細孔の分布が認められるもので, 水浸漬を対照とし, ショ糖, 食塩, 醤油, 酢酸および乳酸の0.1~1.0M水溶液に浸漬した結果次のことが明らかになった.(1) ショ糖, 食塩, 醤油水溶液浸漬後の重量増加による保水性は対照に比べ増加したが, 比重を考慮して保水された水溶液の体積をみると, ショ糖は吸水されにくいことが認められた.一方, 酸浸漬によるTSPの保水性は著しく大きかった.(2) かたさは, 保水性同様, ショ糖, 食塩および醤油浸漬試料では対照とほとんど差がなかったが, 酸類では著しく軟化した.(3) 内部構造については, ショ糖, 食塩および醤油浸漬TSPの断面は対照と差がなかったが, 酸浸漬 TSPではマトリックスの様相が著しく変化し, 断面全体に網目構造が発達した.(4) 調味液浸漬後の試料の断面を測定した結果, 吸水膨潤による断面積変化量は保水性を反映する結果であった.
著者
高正 晴子 江後 迪子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.835-844, 1999-08-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
48

The characteristics and types of food served at wedding ceremonies of the Shimazu household in Kyushu are described.Shimazu wedding ceremonies were different from those of other major households. Food was served after exchanging sake cups. Zoni (a kind of mochi soup) and five kinds of kezurimono were included on the wedding menu. Jinchu (five-color rice), and tegake (a kind of kezurimono) and tokokazari (an alcove ornament) cannot be found at the wedding ceremonies of other important feudal lords. Thus, the Shimazu ceremonies were clearly different, although they were simplified over the years.
著者
赤羽 ひろ 大澤 はま子 中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.472-478, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

粘稠調理食品のうち, 白ソースをとりあげ, その基本となるルーの性状におよぼす加熱温度および材料配合による水分量の影響などについて実験検討した. さらに, それらのルーを用いた白ソースの性状についても検討を行った. ルーの調製には日常の調理法にもとづく条件をなるべく採用し, バターと小麦粉のほかに, バター脂, サラダ油, 乾燥小麦粉を用い検討した.1) ルーの乾麩量はルーの材料中の水分量と, 加熱温度によって変化した. ルーの加熱温度が80℃以下では乾麩量に変化はみられなかったが, ルーの加熱温度が100℃以上になると, ルーの水分率が0%の場合は乾麩量の変化はみられないが, 水分を増すに従って乾麩量は減少し, ルーの水分率が36%になると, ほとんど乾麩量は0に近づいた.2) 光学顕微鏡的には, ルーの加熱温度140℃までは澱粉の粒形, ならびに複屈析性に顕著な変化は認められなかった.3) バターと小麦粉を用いたルー (水分率36%) から調製した白ソースは, ルーの加熱温度が120℃のものでは粘度がやや高く, ルーの加熱温度140℃では急激に白ソースの粘度低下がみとめられた. しかし, 水分の少ないルーを用いた白ソースでは, ルーの加熱温度140℃になるまで, やや粘度の上昇がみられるが, 急激な変化はみとめられなかった.4) バター, バター脂, サラダ油を用いたルーから調製した白ソースについて, 嗜好特性, 総合評価を5点評点法で評価した結果, バターを用いたものが最も好まれた.5) これらの白ソースの総合評佃, 嗜好特性値の間の関係を絹関行列, 重相関係数, 重回帰式により求めた結果, 呈味, 色, 香りの順でその評価が影響していることが認められた.
著者
田村 毅 倉持 清美 及川 裕子 久保 恭子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.135, 2006 (Released:2008-02-28)

目的 出産後、夫婦関係の親密性や満足度が低下することがBelskyらの研究で明らかになっており、国内でもその傾向は同様で、菅原(1998)によると夫のサポートが出産後の夫婦関係に関連する。演者らは妊娠・出産・子育て期における夫婦関係の変化を、質問紙による追跡調査によって明らかにしようとしている。妊娠中の夫婦に対する第一回調査から、第二回(出産後4ヶ月)、第三回(1歳時)、第四回(2歳時)までの結果は、昨年の大会にて発表した。今回は引き続き第五回調査(3歳時)を加え、全体の概要を報告する。方法 対象者は、首都圏の保健機関・医療機関での母親学級・両親学級に参加した夫婦4623組である。調査項目は、夫婦関係尺度として、QMI (Quality Marital Index)、MLS (Marital Love Scale)、およびDAS (Dyadic Adjustment Scale) を用いた。結果 経時的な夫婦関係の低下が見られ、Belskyらのデータを確認する結果となった。特に、男性と比較して女性の下げ幅が大きいことが特徴的である。 生活時間の配分、女性の就労状況、夫の家事・子育て参加、子どもの発達、親の社会的サポートなどを独立変数として重回帰分析を行った結果、夫婦のコミュニケーション、パートナーの収入、夫の出産時の協力および子育て参加などが夫婦関係を規定する主要な要因であることが明らかになった。 出産・子育て体験は夫婦に大きな喜びをもたらすと共に、家事・育児など日常生活での負担から、家族にストレスが加わり、夫婦関係が相対的に低下すると考えられる。特に育児による拘束感、妊娠期以前に担っていた社会的役割からの撤退などが問題となる。
著者
李 有鎭 成瀬 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.533-543, 2001-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

Up to the present time, there have not been many studies carried out to determine an effective method for systematical conditional setting for polka-dot patterns, because most previous studies have used commercial printed polka-dot patterns. Therefore, we prepared thirty samples with different patterns wherein two kinds of patterns (i.e., an oblong and a square) each with polka-dot diameters of 1.6, 1.4 and 0.8 cm were respectively combined with five different colors by means of CG (computer graphics). In addition, in these samples, area ratios of the polka-dots to the background area were consistently maintained at 1 : 7 for the rectangular pattern and at 1 : 5.8 for the square pattern.Characteristic values of these samples were obtained by means of optical measurements and a sensory evaluation to try to determine those factors, which controlled images expressed by the polka-dot patterns set in different conditions. The following results were objectively proved.1. From the results of the SD method, a more significant distinction was found in the evaluation of color samples of different color values for each polka-dot size than in that of different dot sizes on each color sample.2. From the results of the t-test, a more significant distinction was found in the evaluation of the two design patterns in the case of the polka-dot diameter of 1.6 cm. In addition, it was found that yellow and green had relatively profound effects on the arrangement of the polka-dots.3. It was also proved by the method of paired comparison that the variation of polka-dot colors distinguished more remarkably differences in pattern images than their sizes did.4. From the results of the method of paired comparison, for most of the evaluation items, values of evaluation in the case of oblong patterns were higher than those in the case of square patterns.5. There was a correlation between visual evaluation and relative value and chrome on polka-dot patterns.It was found that the sensory test is quite an effective way to study polka-dot patterns.
著者
金 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.413-421, 1995-05-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5

切り干し大根の香気形成について, 生大根と切り干し大根 (生干し, ゆで干し) の各香気濃縮物を非加熱 (エーテル振とう抽出), 加熱 (SDE法) の各条件で調製し, GC, GC-MSを用いて香気成分を検索した。さらに, 生大根, 切り干し大根, 煮熟切り干し大根の香気成分を比較し, 切り干し大根の香気形成について考察した.生大根は風乾により辛味を思わせる刺激的な生大根臭からやや刺激臭の残る乾燥大根臭へと変化するが, 成分的にはMTBelの約95%以上が消失し, メタンチオール, ジメチルスルフイド, (E) -メチルチオブテニルシアニド, 酢酸等が増加した。しかしながら, 成分的にもフレーバー的にも生大根と大差なく, また, 生干し, ゆで干し問においても差はなかった.ところが, 切り干し大根を水と共に加熱すると特有なフレーバーを生じ, 生干しと切り干しでは匂いも異なった.切り干し大根の香気成分は160以上の成分からなり, 炭化水素 (3), アルコール (14), アルデヒド (18), ケトン (10), ケトアルコール (2), エステル (2), 脂肪酸 (5), フラン (2), ピリジン (1), ピラジン (2), ピロール (1), チオフェン (4), ニトリル (9), イソチオシアナート (13), 含硫アルデヒド (5), その他の含硫化合物 (11) を同定したが, 主要成分は生大根と同様含硫化合物であった.切り干し大根臭から煮熟切り干し大根臭への香気成分の消長は, 特に含硫化合物にみられ, 生大根香気成分中95%以上を占めていたMTBelの分解生成物と思われるメタンチオールやスルフィド類, アルキルニトリル類, 熱的にやや安定な (Z, E) -MTBeNやMTBI, CH3S基の付加化合物であるメチルチオ誘導体等が煮熟切り干し大根臭の主要香気成分であった.
著者
五島 淑子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.1169-1178, 1990-12-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22

The purpose of this study is to make a quantitative study of local food and nutrition in Edo Period, based on a data base processed from “Bocho Fudo Chushin-an” (a geographical description and local history of Chasha-han compiled in 1840s). The average individual food supply (per capita per day) was estimated by dividing total food production estimated in the previous studies by population (523, 000) and further divided by the number of days per year (365). The individual nutrition supply was estimated in reference to Standard Tables of Food Composition in Japan (third edition).The daily food supply of individual can be summarized as follows : cereals, 465.1 g; sweet potatoes and starch, 71.9 g; nuts and seeds, 0.6 g; pulses, 22.6 g; fishes and shellfishes, 12.5 g; meat, 3.7 g; eggs, 0.1 g; vegetables, 179.5 g; fruits, 8.1 g; fungi, 0.2 g; algae, 1.0 g and beverages, 95 ml. This result shows that people in those days lived on rice and barley.The daily nutrition supply of individual was 1, 861 kcal of energy, 52.4 g of protein, 11.3 g of lipid, 284 mg of calcium, 10 mg of iron, 1, 603 I.U. of retional potency, 1.62 mg of thiamin, 0.66 mg of riboflavin and 100 mg of ascorbic acid. Cereals formed 86.4% of total energy, and lipid 5.5%. Animal protein was only 5.7% of total protein supply. It was clarified that their living depended chiefly on cereals.
著者
横溝 佐衣子 山本 信子 福田 満
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.134, 2004 (Released:2005-04-02)

[目的]レトルト米や、新しい加工米が多種類開発されている。家事時間の軽減志向により、炊飯器も高温短時間で食味向上が期待されるIH式電気炊飯器や、玄米が炊ける多機能型も開発され、米の利用法や食べ方は多様化してきた。特に最近では、操作の簡便性と環境汚染の面から無洗米が普及し始めている。無洗米はBG米(糠で糠を除去する湿式処理米)が一般的であるが、さらに改良が進み、浸漬時間不要で炊き増え効果があるといわれる乾式無洗米が商品化された。そこで本実験ではこの無洗米に注目し、従来の無洗米(BG米)との食味の違いなどを検討することを目的とした。[方法]試料は「新無洗米(乾式処理)」と「従来のBG米(湿式処理)」の2種に、対照として2試料の無洗米に加工する前の「精白米」を用いた。炊飯操作は、メーカーのマニュアルに従った。即ち、精白米とBG米の加水量は、米重量の1.5倍で浸漬時間30分、新無洗米は1.6倍で浸漬時間は0分とした。官能検査は5段階評価の採点法、さらに吸水率、粒の大きさ、還元糖量、α化度、電子顕微鏡など食味にかかわる調理学的測定を行った。[結果]官能検査の総合評価では平均点の高い方から、精白米、新無洗米、BG米であった。香りについては2種の無洗米(BG米と新無洗米)が、精白米よりも評価点が高かった。しかし、色の評価は、どちらも精白米に比べて黄色いと評価された。無洗米同志の比較では還元糖量、α化度などには測定値に大きな違いはみられなかったが、粒の大きさでは新無洗米がやや膨らみが大きくなり、若干炊き増え効果がみられた。
著者
難波 敦子 成 暁 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.193-197, 1998-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7

A search for the correlation between Japanese and Chinese food cultures identified the production of natto, a non-salted and fermented soybean product, in China. Natto is prepared by Jingpo-zu in Dehong Thai-zu Jingpo-zu Province of Yunnan in China. Boiled soybean covered with bamboo grass, straw or loquat leaves is left to ferment in a bamboo basket. After fermentation, it is eaten with pepper, or salt and pepper is added to produce a seasoning like Japanese miso. Salted natto is also dried for storage as drynatto, and some natto is used to prepare Shui-douchi a kind of supplementary food. Our search indicates that the nattoline from Nepal via Bhutan and Myanmar that has been presented by Sasaki can be extended to Yunnan in China.