著者
宮井 ふみ 石塚 盈代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.413-417, 1968-12-20 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4

1. 実験範囲内において酵素濃度の対数と肉の硬度はある範囲内において直線的な関係にあり、硬度4~5を与えるロース肉程度の軟化には肉片10gについて酵素量2,500 P. U./ 10mlが適当である。2. 室温 (16~28℃) における酵素作用時間の影響は、作用時間2時間までは急激に肉軟化が増大し、作用時間3時間以降変化がみられない。実際の調理にあたっては、30分~1時間が適当と考えられる。3. 酵素作用は溶液として浸漬する方法と、乳糖を賦形剤として粉体をまぶす方法との間に差異は認め難く、実用面では粉体の使用が有利と考える。4. 可溶性蛋白、ペプタイドの生成量値は、使用酵素量増加と共に増加し、官能検査で得られた測定値と一致するため、肉軟化は肉蛋白の分解によるものと考える。5. 調味料のみによる肉の硬度は、調理至適濃度範囲においていずれも7以上で硬く、充分でない。常用食塩量ではパパインの活性低下を起さない。他の調味料も酵素の肉軟化に殆んど影響を与えない。6. 煮物、スキヤキ調理において酵素量250 P. U./10ml作用後、調味料を用いることにより、良好な風味と、硬度4.5~5.0のロース肉と変らない軟らかい肉を得ることができた。本研究は第16回日本家政学会に報告したが、その後、別所のくもの巣かびの産出する酸性プロテアーゼの肉軟化作用および旨味生成作用が、植物酵素に比較して良いとの報告を知った。調味添加剤として有害作用をもつ物質の混入の危険性ならびに使用上の簡易化などを考慮しながら、日本食における肉調理に酵素剤を広く実用化する目的で、更に私共は研究を続けている。
著者
向井 由紀子 橋本 慶子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.467-473, 1978-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2

1) 被験者中60%をしめるA型の持ち方をする者は幼いころよりとくに母親に継続的な訓練をうけたようであった.2) 一定の作業を行った場合, 作業能率に及ぼす影響は持ち方の違いよりも, 個人の器用さや箸を使う熟練度のほうが大であった.3) 筋活動度は伝統的な持ち方の方が第一指 (母指) の活動が大きく現われた.他の持ち方を伝統的な持ち方に変えた場合よりも, 伝統的な持ち方を他の持ち方に変えたほうが筋活動度の増加は大であった.
著者
大石 栄恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.566-568, 1976-12-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7

7品種のりんごの香気成分をヘッドスペースガスクロマトグラフィによって調べ, 品種によるにおいの特徴について検討した. 各品種に比較的多く含まれている成分は次のとおりである. ゴールデンデリシャスはエチルアセテートとn-ブチルアルコール, レッドゴールドはかブチルアルコール, デリシャスはプロピルアセテート, スターキングはイソアミルアルコール, 紅玉はn-ブチルアルコール, イソアミルアルコール, イソアミル-n-ブチレート, 印度はアセトアルデヒド, 陸奥はn-ブチルアルコール, イソアミル-n-ブチレートであった. 品種によるにおいの特徴はある特定の物質によるのではなく, 成分比の違いによるらしい.
著者
渡辺 澄子 片瀬 眞由美 平林 由果
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.87, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 わが国では、足の症状で悩む人が非常に多くなってきた。それらの症状は急に現れるのではなく、幼少期からの靴の選び方や履き方に原因があるのではないかと考えられる。我々は既にわが国の幼児を対象に実態調査を行い多くの問題点を明らかにした。ここではさらに、靴文化の長い歴史をもつドイツにおける子供靴の実態を、ドイツの小学校の保護者へのアンケート調査をもとに分析し、いくつかの知見を得たので報告する。方法 調査対象者はドイツ3地域(ベルリン、フランクフルト、フライブルク各1校)計小学校3校の保護者338名である。調査時期は2004年5月_から_6月、配票留置法による自記式調査を行った。調査内容は、普段履く靴のタイプ、靴購入時の重視点、購入店、足のサイズ測定、価格、子供靴に対する不満、子供および保護者の足の健康状態、足の症状に対する対処法、子供が最初に履いた靴に対する記憶や保存等である。結果 普段履く靴のタイプは紐靴がほとんどである。留め具のない靴はほとんど履かれていない。靴購入時の重視点はフィット性と子供の足の健康であり、シューフィッターなどのいる靴専門店で足のサイズを測って購入している。普段の靴一足の平均購入価格は6570円(円換算)であり、わが国の平均価格よりかなり高い。靴購入時の不満では価格の高さを不満と答えているものが多いが、しかしながら中古靴に対して経済的だから履かせるというものはほとんどいない。子供の足の健康には非常に関心があると答えており、足のトラブル症状に対しては、専門家のいる靴店で靴を選ぶ、病院で受診していると答えていた。子供が最初に履いた靴を6割近くのものが大事に残しているのも靴文化の違いであろう。
著者
肥後 温子 島崎 通夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.597-605, 1982-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

サツマイモ, サトイモ, ジャガイモ, ナガイモをマイクロ波と伝熱とで加熱し, でんぷん成分の変化と硬化との関係について調べると, 次のようになった.1) サツマイモとサトイモはマイクロ波加熱によって硬化現象がみられ, ジャガイモとナガイモは硬化しなかった.2) 糖化によってでんぷん含量が少なくなったサッマイモは, 硬化しにくくなった.3) 硬化したイモの組織では未膨潤なでんぷん粒とでんぷんのゲル状溶出物の存在がみられた.4) サツマイモとサトイモのでんぷん粒はマイクロ波加熱によって破裂するために溶出物が増え, ジャガイモとナガイモのでんぷん粒は破裂に至らないことが, モデル系で確認できた.以上の結果は, イモ類の硬化現象にでんぷん成分の果たす役割の大きいことを示すものと考える.
著者
竹原 広実 梁瀬 度子 西川 向一 村上 恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1005-1013, 2001

生活の中での入浴の位置づけを把握し, 今後の浴室空間のあり方を検討することを目的として入浴行動の実態について質問紙による調査を行った.得られた結果は以下の通りである.<BR>(1) 冬よりも夏が, また若年層ほど入浴頻度は高く, 若年層はシャワーをよく使い, 高年層は浴槽に浸かることが多いことが明らかとなった.<BR>(2) 身体を清潔にする以外の入浴の意味とは, 疲れをとる, 心身のリフレッシュのためと考えているものが多くを占め, 他に高年層ほど健康のため, 中年層は家族とのコミュニケーションをはかるため, 若年層は1人の時間を楽しみくつろぐ, 身だしなみを整えるなど精神的なリラックス効果や美容のためなど年齢によって入浴の意味が異なることが明らかとなった.<BR>(3) 入浴法や入浴関連商品について, 柚子湯やクール系入浴剤などは知名度が高くよく使用されているが, 比較的新しい商品である芳香浴やエステゼリーなどは知名度は高いがまだ多くは使用されていない.しかしそれらに対する関心は高いことから今後の利用が見込まれる.また男性より女性が, そして特に若年層の女性が強く関心をもっていることが明らかとなった.<BR>(4) 入浴行動について対象者の類型化を行ったところ, 日々規則正しく入浴を行っているかどうかと入浴に対して積極的な姿勢であるかどうかの2軸が抽出され, 不規則・消極型, 不規則・積極型, 規則・消極型, 規則・積極型の4つに分類された.
著者
Yukinori SATO Masako TAKADA Shun NOGUCHI
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.377-380, 1991-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ドウの一つの基本配合を中心に, 各成分の配合量を変えてドーナツを調製し, ドーナツの脱水量と吸油量とに及ぼす配合成分の影響を求めた.その結果, 次のことが明らかになった.(1) 油の添加量を変えても, ドーナツの脱脂乾燥物あたりの脱水量と吸油量とはほぼ一定であった.(2) 水の添加量が少なくなると脱水量はやや増大し, 吸油量も明らかに増大する.これは水が減少するとドウの硬化が起こり, これがドーナツにひびを生じさせるためと考えられた.(3) ドーナツは大きい方が脱水量も吸油量も少なく, 水や油の移行には表面積が関与しており, 比表面積の大きい方が脱水量, 吸油量ともに大きくなることがわかった.(4) 砂糖の量を増すと吸油量は明らかに増大するが, 脱水量にはあまり変化がなかった.(5) 卵の量が増すと, 脱水量が減じ, 吸油量が増す傾向がみられた.これらの知見からドーナツ調製時の水や油の移行には表面積が大きく影響し, 材料配合はドーナツの組織に変化を与えることで水や油の移行に関与し, またひびの生成は脱水量, 吸油量を大きく支配することが推定された.

2 0 0 0 OA 天板の影響

著者
渋川 祥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.87-92, 1986-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1

各種オーブソの加熱能に対し, 天板を使用することの影響や天板の種類による影響の違いを検討するために6機種のオーブンと5種類の天板を使用して, 天板温度の測定やクッキー焙焼時の焼き時間や焼き色の測定を行った.その結果, 次のことが明らかとなった.1) 電気オーブンでは, 庫内温度よりも天板温度が高くなるものがあり, とくに黒ホーローでその差が大きかった.他のオーブンでは, このような現象はみられなかった.2) クッキーの焼き時間は, 黒ホーロー以外では, 天板を使用しても見かけの熱伝達率 (「h」) との間に有意の負の相関がみられた.使用する天板により焼き時間は異なり, とくに「h」の低いオーブンで, その影響が大であった.熱伝導率のよい天板を使用すると, オーブン間の焼き時間の差は小さくなった.3) クッキーの上面の焼き色については, どの天板を使用しても同程度の色がつき, 色の濃さは, オーブンの「h」と放射による伝熱量の割合 (「δ」) とで決まるが, 下面の焼き色は天板によって異なった.パイレックスを使用すると, 上面と下面の焼き色の差が小さくなった.天板の上にアルミはくを敷くと電気オーブンでのみ上下差を縮める効果があった.
著者
中里 トシ子 白石 芳子 水上 恵美 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.38-44, 1974-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

小型ガスオーブンを用いて焙焼条件がパウンドケーキの品質におよぼす影響について研究した.焙焼温度は150℃から190℃までの範囲で, 焙焼時間は25-55分の範囲で行なった.本実験によって得た事項を要約すると次のとおりである.1) 焙焼温度と焙焼時間によっては, ケーキの膨化率, かたさ, 水分には有意差は認められなかった.2) 焼き色は各温度ともに第2, 第3水準の焙焼時間がよかった.形状の点からは170℃で40分と45分, 180℃で35分と40分, 190℃では30分と35分焼いたケーキがよかった.評価の合計点から見ると180℃, 35分のケーキが最もすぐれ, α化度は75%であった.3) 焙焼中のガス消費量は焙焼温度5水準問には有意差がなく, 焙焼時間3水準間には有意差が認められた.
著者
Michiko EGO Chuichi TSUTSUMI Taro NAGAHARA
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.511-514, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

1) キャベツをせん切り水浸することにより, P, Na, K, Mgなどは約10%が失われ, Caは溶出しにくいことが認められた. また水浸5分で溶出すべき無機成分の大部分が溶出した.2) ほうれん草はゆでることにより脱イオン水ゆで, 水道水ゆでにおいてCaの溶出率がそれぞれ14%と 8%と最も溶出されにくく, 一方Kはどちらでゆでてもほぼ60%という大きな溶出を示した. Fe, P, Mg, Cu, Zn などの溶出はほぼ中間に位置した.キャベツは脱イオン水あるいは水道水で4分ゆでたとき, 水道水ゆでは全体に溶出率が低いが, Fe, Caが溶出しにくく, P, Mgなどはほぼ30%溶出した. Kはいずれでゆでても30~40%が溶出した. 30分ゆでた場合は, 4分ゆでに比べ溶出率が大となり, とくにKは約 70%が溶出した. 大切りゆでと短冊切りによる溶出率の差は, ほとんど認められなかった.
著者
Michiko EGO Chuichi TSUTSUMI Taro NAGAHARA
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.540-543, 1975-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1) パセリの無機成分のうち, Fe, Cu, Znは, 水洗時に40~ 50%流出し, ついで水洗い試料をみじん切り水浸したのちもほぼ同様の流出が認められ, このことは付着物の脱着によるのではないかと推論された.2) パセリをみじん切り水浸したさい, P, Ca, Na, Mgなどは溶出しにくいことが認められた. 水道水処理した場合は脱イオン水処理に比べて, Ca, Na, Mg, Znなどの残存量がやや多いことが認められた. Kはいずれにおいても約20%失われた. また水浸5分で溶出すべき無機成分の大部分が溶出した.
著者
水野谷 武志 粕谷 美砂子 齊藤 ゆか 伊藤 純 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 天野 寛子 伊藤 セツ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.877-885, 2002

以上, 本報ではまず, 2000年世田谷生活時間調査の重要な調査設定として, 調査単位, 典型的標本, 公募方式による調査協力者, を検討した.次に, 年齢, 学歴, 職業および収入の分布についての政府統計調査データとの比較対照によって, 本調査協力者の代表性を検討した.その結果, 調査協力者は, 高学歴, ホワイトカラー的職業, 高収入, である可能性が高いことが示唆された.<BR>調査結果から注目される点は, 平日の生活時間配分では, (1) 妻常勤の夫妻の睡眠時間が特に短いこと, (2) 夫の収入労働時間は1日の約半分に達していること, (3) 家事的生活時間には明確に夫妻差 (妻>夫) があり, さらに, 妻の収入労働時間が長いほど妻の家事的時間が減少し夫の時間が増加する傾向 (常勤妻<パート妻<無職妻, 常勤妻の夫>パート妻の夫>無職妻の夫) を確認した.休日では, 収入労働時間以外の時間が平日に比べて全体的に増えるが, 無職妻の家事的生活時間は減り, また, 夫に比べて妻の社会的・文化的生活時間は短くなる傾向にあった.<BR>次に家事的生活時間および社会的・文化的生活時間の行為者比率では, (1) 平日の「食事の準備と後片付け」は, 妻が7割以上であるのに対して夫は4割以下であった, (2) 「テレビ・ラジオ」の時間が夫妻の社会的・文化的生活時間の中で平日, 休日とわず最も長くなっていた, (3) 常勤夫妻の平日の「だんらん」が他の夫妻に比べて低かった, (4) 夫に比べて妻の「読書」の比率が全体的に高かった, (5) 常勤妻の平日の行為者比率は, 全般に, 他の妻に比べて低い, (6) 無職妻の休日の行為者比率は, 全般に, 平白に比べて減少する傾向にあった.<BR>最後に過去3回の調査結果 (1990, 1995, 2000年) を比較してみると, 全体的な傾向として, 平日では収入労働時間が増加し家事時間および睡眠時間が減少し, 休日では社会的・文化的生活時間が増加した.
著者
山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.342-347, 1960

1) 寒天液は攪拌すると泡立つ。電動攪拌の場合は、1%より2%の方が泡立ちがよいが、手動攪拌の場合は、2%より1%の方が泡立てやすい。<BR>2) ゼリー強度には、攪拌度よりも攪拌終りの温度が影響する。すなわち攪拌終りの温度が低いほど、ゼリー強度は弱くなる。<BR>3) 泡雪かんに用いる卵白の量は、電動攪拌ならば5%が、手動攪拌ならば5%~10%が適当である。<BR>4) 泡雪かんは砂糖濃度が高い時は、寒天濃度を低くするように加減するとよい。<BR>5) 共立てにする場合は、攪拌始めの寒天・砂糖液の温度は、攪拌時間や攪拌終りの温度の関係から70℃ぐらいがよい。また攪拌終りの温度は38℃~39℃ぐらいがよい。<BR>6) 泡雪かんを作るには、電動攪拌の場合はもとより、手動攪拌の場合でも本実験によると、別立てより共立ての方が、操作が簡単で失敗が少ない。また容量も大きくなる。
著者
佐藤 真理子 伊豆 南諸美 熊谷 伸子 小出 治都子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2015 (Released:2015-07-15)

【目的】袴は、前後2枚の台形状の布を縫製した構造で、古くは神代における“穿裳(はきも)”から転じたとされ、日本書紀にも記載のある、和服の一種である。本研究では、伝統的所作時に袴着装の果たす役割を、生体データより検討し、運動機能性の観点から袴の再評価を目指す。【方法】実験1:被験者は健康な若年男子6名(20.0±1.2才、体育会剣道部所属)。実験着は袴、現代パンツ、下着(ブランク)の3条件とし、剣道の礼法に基づく所作時の重心動揺を計測した。実験2:被験者は健康な若年女子8名(22.6±1.8才、書道歴平均9年)。実験着は短パン、袴の2条件とし、正座及び椅座で、毛筆書字を行わせた。同一文字を同一スピードで書かせた際の、体幹と上肢の筋電図を計測した。【結果】実験1:剣道の試合前の姿勢として定められている蹲踞の際、袴着用時の重心動揺総軌跡長が小さい傾向を示した。実験2:毛筆書字における筋電図測定では、袴着用時の筋活動量が、脊柱起立筋で有意に小さかった。実験1,2より、伝統的所作時における袴着用が、身体の動揺を抑え、姿勢保持を補助する役割を果たしていると明らかになった。ウエストから腰にかけて締める前紐と後紐、腰部を後方から圧する腰板が寄与していると考えられる。なお本研究は、科研費26350082(基盤C:袴の機能性研究-世界に発信する”Hakama is cool”-)の助成を受けて行った。
著者
市川 朝子 佐々木 市枝 佐々木 由美子 中里 トシ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.829-837, 1988

1) ケーキ生地の比重は, バター添加量の増加につれて高く, また, 別立て法の場合に高くなった.比容積は, バター量の少ないものほど高く, また, 共立て法の場合に高くなった.この比重と比容積値の間には, 相関係数<I>r</I>=0.748 という高い正の相関関係が認められた.<BR>2) ケーキの水分量と糊化度の問には, 相関係数 <I>r</I>=0.748 と高い正の相関関係が認められた.<BR>3) ケーキの糊化度は, バター添加量が多くなると小さくなる傾向を, また別立て法は共立て法より小さくなる傾向を示した。別立て法でバター量 0 のケーキは, 冷凍貯蔵中の糊化度の変化がとくに顕著であった.これに対し, バターを加えたケーキは, とくに共立て法の場合, 冷凍貯蔵中の値の低下が抑制された.<BR>4) 官能検査の結果から, 嗜好的には共立て法が別立て法に比べて好まれ, 別立て法は冷凍貯蔵した場合, とくに好まれない.共立て法でバターを加えたケーキは, 焼きあがり当日も, 冷凍7日後もほとんど差はみられず, もろさの面ではむしろ後老のほうが好まれた, 以上を考えあわせると, ケーキを冷凍貯蔵する場合は, 共立て法で, バターを粉の 20~40% 量加えた試料が総合的に好まれるといえよう.<BR>5) 対照として行った冷蔵貯蔵7日のケーキの性状は, 同じ期間冷凍貯蔵したケーキに比べ, 水分, 糊化度, 弾力性についてはかなり低い値を, 凝集性はやや低い値を, また硬さはかなり高い値を示した.<BR>従来から共立て法のケーキは日持ちがよい, といわれてきたことが, 今回の糊化度および官能検査の結果から支持された.
著者
中谷 博美 後藤 景子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.637-643, 2013

Detergency of textiles by low-water laundering was assessed with a drum-type washing machine called a Wascator. An artificially soiled cotton fabric (Sentaku Kagaku Kyoukai) and three mechanical action fabrics (WAT cloth, Poka-Dot®306 and MA test piece) were attached to cotton ( 920×920 mm<sup>2</sup> ) and polyester ( 200×200 mm<sup>2</sup> ) load ballasts and then washed in aqueous alkaline detergent solution with a different bath ratio. The washing procedures used were normal, gentle and hand wash in accordance with ISO 6330. At the extremely low bath ratio of 1:3, both detergency, D, and the mechanical action value, ΔL<sup>*</sup>, decreased for all washing procedures. The magnitude and the deviation of D and ΔL<sup>*</sup> were dependent on the load ballasts used, indicating that soil removal was prevented and that uneven washing was promoted for large clothes. The relation between D and ΔL<sup>*</sup> for all experimental data was plotted on almost the same line in the high ΔL<sup>*</sup> region. In the low ΔL<sup>*</sup> region, the relation was dependent on the bath ratio, i.e. detergent bulk concentration. For low-water laundering, it was suggested that the detergency performance decreased as a result of the reductions of the mechanical action and detergent bulk concentration.
著者
渡辺 ミチ 田村 照子 志村 純子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.204-209, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高齢者衣服設計のための温熱生理学的基礎資料を得ようと, 64~80歳の有職女子5名, 対照群として20~25歳の女子学生5名を被験者として実験を行った. 23, 29, 33℃の3段階の温度条件を設定し, 夏季および冬季のおのおのおの午前に実施し, 次のような結果を得た.1) 高齢者の身体躯幹部皮膚温は, 青年老に比べて低温を示し, 四肢部皮膚温は, 寒冷環境での低下度, 暑熱環境での上昇度がいずれも小さい. これは, 高齢者の末梢部血管調節反応の機能低下を示すものと考えられる.2) 熱流量は, 低温の23℃において手部・足部ともに高齢者が有意に大きく, 高温の33℃においては高齢者の手部熱流量が有意に小さく, 皮膚温の結果とよく一致した.3) 高齢者の血圧は, 青年に比べて高い傾向にある. また, 環境の急速な変化に対して大きい血圧変動を示す. 4) 高齢者の脈拍数は, 青年に比べて有意に低い.以上, 高齢者の体温調節機能の低下が認められ, 衣服によりその躯幹部および四肢部の保護が必要であること, また, 急激な環境変化を身体に伝えないよう留意する必要のあることが明らかとなった.
著者
山内 和子 小林 重喜
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.277-281, 1975

Skin lipid on the underwear worn by 30 high school female students for 24 hr was determined by the same method mentioned in the previous paper.<BR>The results obtained are as follows : <BR>1. The amounts of skin lipid stuck to the underwear worn by girls aged 16-17 years distribute considerably widely ranging from 0 to 43.18 mg and the distribution has the mode at 13 mg. The value of the mode is equal to that for high school male students. The skewness that indicates departure from the normal distribution of the data is only +1.06, and it is very different from that for boys.<BR>2. The distribution range and the mode of the amounts of skin lipid on high school female students' underwear are about twice the width and the quantity of those for 1314-year-old pupils'.<BR>3. The amount of skin lipid on the underwear worn by boys or girls shows a rapid rate of increase during they grow older from 1314 years to 1617 years old.
著者
高村 仁知 山口 智子 林 恵里奈 藤本 さつき 的場 輝佳
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1127-1132, 1999

スパイスと野菜・肉類を調理して, カレーライスを作るまでの各過程におけるラジカル捕捉活性の変化をDPPH-HPLC法により解析した.カレーに用いられる15種類のスパイスのスクリーニングを行った結果, すべてにラジカル捕捉活性がみられ, 特に, クローブ, オールスパイス, シナモンに高い活性がみられた.野菜類と比較してもその活性は同等以上であった.カレーの調理過程では, 野菜・肉を合わせた具では加熱により活性が増加した.一方, 調合スパイスでは加熱により活性の減少がみられた.カレーではスパイスだけでなく野菜もその活性に大きく寄与していた.本研究のカレーライス1食分は363μmol Troloxeqの活性を有し, カレーライスの全ラジカル捕捉活性に対するスパイスの占める割合は, およそ45%であった.