著者
佐々木 麻紀子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.246, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 家庭洗濯は衣類に付着した汚れを除去し、元の状態に回復させながら繰り返し使用していくことを目的に行われる。そこで家庭洗濯の効果的な方法を検討することを目的として、衣類の中でも汚れ落ちが気になる靴下汚れを試料として着用実験を行い、つけ置き洗いの効果について検討した。方法 20代から30代の女性10名に日常生活及び運動中に靴下(綿100%白色)を着用し活動をしてもらい試料とした。洗濯は、市販の液体洗剤及び粉末洗剤に30分間浸け置き後、渦巻き式洗濯機及びドラム式洗濯機の標準コースで洗濯を行った。着用・洗濯を繰り返し6回行い、新品の靴下との一対比較でつま先、かかと、すねの3カ所について目視により9段階評価した。結果 運動中に着用した靴下の汚れは毎回のつけ置き洗いの有無で洗浄性に差があり、つけ置き効果が高い。しかし、日常生活で着用した場合の汚れ落ちはつけ置き洗い有は無の場合より効果はあるものの、運動中と比べその効果は小さいことがわかった。日常生活及び運動中ともにつけ置き洗いをしたものは、洗浄効果が高く、つけ置き洗いの効果が認められるものの汚れの種類によりその効果に差があること、また1回の洗濯では汚れ落ちの差は少ないが、汚れは累積しており、6回の繰り返し洗濯において洗濯方法の違いによる汚れ落ちに差がみられた。この実験では、洗濯機の種類による汚れ落ちの差は認められなかった。
著者
品川 弘子 赤羽 ひろ 中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.594-600, 1981-09-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16

マヨネーズの材料配合比による流動特性を検討するため, Scheffeの3成分系の単純格子計画法2) に従い, E型粘度計を用いて実験を行った.試料マヨネーズとしては, 油68~86%, 酢5.5~23.5%, 卵黄8.5~26.5%の配合比をもつ10個を調製した.各試料の流動特性値およびpHより次の結果を得た.1) マヨネーズの流動方程式の定数およびみかけの粘性率が得られ, 各材料配合比に対するこれらの流動特性値とのあいだにそれぞれ2次の推定式および推定曲線が示された.2) 分散媒の流動方程式の定数およびみかけの粘性率が得られた.3) マヨネーズの降伏応力やみかけの粘性率の推定曲線を用いることにより適当な降伏応力やみかけの粘性率をもつマヨネーズの材料配合比を選ぶことが容易となると考える.4) マヨネーズのSibreeの係数hは, 油濃度に依存し, 最密充填状態ではほぼ1.30, 高油濃度では1.20, 低油濃度では1.49であることが認められた.5) 分散媒のpHは3.4~4.6で, マヨネーズのpHよりもわずかに低いことが認められた.
著者
藤村 淑子 大野 静枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.210-215, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

衣服のゆとり量を求めるために, 体操によって生じた体表面の最大変化量を, できるだけ正確にかつ迅速に, また被験者に疲労を与えずに測定する方法として, 伸縮性P. S.を全身に着用させ, 動作の変化量をP.S.に縫い込んだ未延伸糸から求める方法を考え, 以下の結果を得た.1) 皮膚の伸びと未延伸糸の伸びとの間には, γ=0.996の有意な相関性があり, 測定法としてきわめて有効であった.2) 体表面の面積変化量は, 部位によって異なり, 大きく変化する部位, 少ない部位, 微小に変化する部位に区分された.体幹前面では胸部より腹部の変化量が大で, 側方に向かうに従ってさらに大きく変化する. 後面は肩甲骨上, 胸囲線付近の変化が大きく, 肩関節の移動が大きく影響していることがわかる. また, 股関節部では臀溝上のみに限られた. 下肢部は膝関節部を除き一般には変化量は少ない.3) Vervaeck Indexと各基準線の変化量との関係は, 指数の大きいものほど大きくなり, 脂肪が沈着する腰部では顕著にあらわれた.4) 本実験から得られた体幹部の平面展開図と静止時体表面展開図との間には, 面積変化がよこ方向よりたて方向に顕著にあらわれた. 両者の面積差は, 363.2cm2であり, この値は体操に必要な最低面積ゆとり量といえる. また, 文化式パターンと比較すると, その差は25.9cm2できわめて少なく, 運動に要する最低ゆとり量の必要量からみて, わずかに7%しか満たしていないことがわかった.以上, ゆとり量を体表面との面積変化量から求め, 着衣実験を通して, 各部位に必要なゆとり量について考察してきたが, その結果から, 被服設計上, 次のようなことがいえる. すなわち, 下着など伸縮性布地に対して動作時に要求される変形量は, 面積変化量の最大値を容易にとりうるような材質であることが望ましく, また織物を素材に設計する場合は, 面積拡大率の大きな部位にゆとりを配置するように工夫する必要があろう. 一般に, 人間の動作から生じる体表面の変化量は, よこ方向よりたて方向に多くあらわれることが確認され, それに追従するためには図6に示すようなたて方向のゆとりが必要になる. このたて方向のゆとりを, よこ方向のゆとりにどこまで置換できるかを問題にするのが被服デザインということになる. この解決法として, 従来から, ゆるみ量がよこ方向にとられているわけである. なお, 本研究は, 皮膚の表面積の変化量そのものに限ったゆとり量として求めたものであり, 実際の着衣時における衣服地と皮膚とのずれがゆとり量の許容を排除することについては考慮しておらず, この点は今後の問題として考えていく予定である.
著者
安田 武 奥野 温子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-86, 1981-02-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

寒天ゲルの凝固が果汁の添加によって妨げられる事実について, 主としてX線的に研究して, クエン酸が単位胞内に入って結晶生成を妨げネットワークが不完全となるものと推定した.
著者
晴山 克枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.880-884, 1985-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

じゃがいもの加熱における調味料の添加時期と硬さとの関係について, おもに食塩をとりあげて検討し以下のことが明らかになった.1) 食塩の添加時期を変えてじゃがいもを20分間加熱すると, 加熱当初に食塩を添加した場合にじゃがいもは水煮よりもやわらかくなったが, 加熱開始5分後, 10分後に添加した場合にじゃがいもは水煮とほぼ同程度の硬さを示し食塩の軟化効果はみられなかった.2) 食塩の添加時期とその浸透量の関係については, 添加時期により浸透量は変化せず, 硬さの変化との相関性は見いだせなかった.3) 食塩の添加時期によって, 加熱後のじゃがいものペクチン質の水溶性ペクチン区の割合が異なり, 加熱当初に食塩を添加したものの水溶性ペクチン区の割合は加熱開始5分後に食塩を添加したものよりも多く, このことと硬さとが関係していることが示唆された.4) 砂糖と酢酸の添加時期による硬さへの影響をみると, 砂糖は添加時期が早いほどじゃがいもを硬くし, 酢酸は加熱当初に添加するとじゃがいもを硬くするが, 添加時期が遅くなるにつれ硬化する効果はなくなった.以上のことから, 調味料の添加時期による硬さへの影響は, 調味料の種類によって異なり, じゃがいもの硬さは調味料を添加するときのペクチン質の状態と調味料の成分との関係で変化することが明らかとなった.
著者
小西 史子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.15-22, 2002-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
3

スルメイカを用いて 1~6℃ の天日乾燥あるいは 32 ℃ の温風乾燥によりスルメを製造した.その後, エキスを抽出し, 遊離アミノ酸, 核酸関連物質, 有機酸, グリシンベタイン含量, 色を測定し, 官能検査により生イカとスルメ完成品の違いを比較した.また, 乾燥方法によりどのような違いがあるのかを検討した.1) 官能検査の結果, スルメ完成品のエキス成分は生に比べて, 天日乾燥, 温風乾燥ともに苦味, 酸味, うま味が有意に強かった.天日乾燥では甘味も有意に強かった.2) スルメ完成品の遊離アミノ酸総量は, 天日乾燥により有意に増加したが, 温風乾燥では変化がなかった.3) 温風乾燥によりスルメ完成品の ATP, AMP, IMP は著しく減少したが, 天日乾燥では温風乾燥より減少程度が小さかった.4) スルメ完成品の有機酸については, 天日乾燥によりリン酸と乳酸が, 温風乾燥により乳酸と酢酸が有意に増加した.グリシンベタイン量には天日乾燥, 温風乾燥により変化がみられなかった.5) 温風乾燥によるスルメ完成品の b 値は天日乾燥より有意に高く, メイラード反応が進行していることが示唆された.6) 官能検査の結果, 天日乾燥によるスルメ完成品が温風乾燥より, 甘味とうま味が強かった.
著者
河村 フジ子 中島 茂代 森 清美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.295-298, 1977-07-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

ゼラチンゲルの特性に及ぼすタンニン酸の影響をみた結果を要約すると次のようになる。1) ゼラチンゾルに10鐙9%または100mg%のタンニン酸を加えてpH5 (等電域) に調整すると, ゾルの明度は低下し, ゲル化しにくくやわらかいゲルを形成するが, タンニン酸10mg%添加ゾルはpH3, pH6ともに, タンニン酸100mg%添加ゾルはpH3の場合はいずれも対照 (pH調整ビラチンゾル) よりゲル化しやすい.2) ゼラチンゾルがタソニン酸により沈殿する場合でも, 保温しつつ十分攪拌すると, 沈殿の一部が溶けて, ゲル形成が阻害されるのをある程度防ぐことができる.3) タンニン酸添加ゾルに砂糖を加えるとゲル化しやすく, 硬いゲルを形成する.ゾルのpHによるゲルの硬さの差は砂糖無添加の場合と同じ傾向を示す.4) リンゴ汁添加ゾルは糖やペクチンを含むが, pHが5に近く, タンニンを含むので, 対照ゲル (無添加ゼラチンゲル) とほぼ同程度のゲルを形成する.コーヒー液添加ゾルのpHも5に近く, 多量のタンニンを含むのでやわらかいゲルとなり, 紅茶液添加ゾルのpHは6に近く, タンニンも少ないので, 硬いゲルとなる.
著者
楠 幹江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.151, 2005 (Released:2005-12-08)

目的:健康の視点から靴下の効用を考えると、足部の保温性や皮膚の保護、清潔などが考えられる。これらの効用は、当然ながら、靴下の物理的形状により異なると思われるが、本研究では、普通靴下と5本指靴下を使用して、その相違を検討した。<BR>方法:普通靴下と5本指靴下の相違を検討するため、女子学生を対象として、アンケート調査および被験者実験を試みた。アンケート調査では、靴下の形状による健康観の相違をたずねた。また、被験者実験では、素材を綿100%に限定した両者の靴下を使用して、皮膚表面温度の測定(サーモトレーサーを使用)、血圧・心拍数の測定、足型の測定(フットプリンターを使用)、疲労度の測定(むくみの検討:下肢の5カ所の周経を測定)、靴下の形状による相違を検討した。<BR>結果:1. アンケート調査による意識調査の結果、5本指靴下に対する健康的イメージ度は高い結果が得られた。一方、ファッション的イメージ度は高くもなく低くもなくといった中間的な結果であった。2.サーモトレーサーによる皮膚表面温度の測定結果、安静時における表面温度は普通靴下着用時が高いが、運動後の表面温度は5本指靴下の方が高い結果が得られた。靴下の形状による保温効果の相違はあると考えられる。3.疲労度の指標として、14時間着用後の足のむくみを測定した結果、普通靴下着用よりも5本指靴下着用の方がむくみが少ない傾向が得られた。4.フットプリンターによる歩行時の足型を検討した結果、普通靴下着用よりも5本指靴下着用の方が素足に近い足型が得られた。靴下の形状による歩行状態の相違はあると考えられる。
著者
白木 まさ子 貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.525-532, 1977-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1) 牛乳羮の調製にあたり, 牛乳の添加量が多いほど牛乳羮の硬さ, もろさが減少する.2) 牛乳の添加量が多いほど牛乳羮の凝集性が増加し, 離漿が減少する.これは牛乳羮の性状の安定性が増加するためと思われる.3) 牛乳羮の離漿には比較的多量のカゼインと少量の脂肪が含まれているので, やや青味がかった白色を呈する.4) 牛乳成分のうち, カゼインと脂肪は強固な結合状態を保ちながら牛乳羮の硬さに影響をおよぼす.5) バター, カゼイン添加試料による牛乳美の硬さ, もろさはおのおのの添加量に影響され, 特に, カゼインの場合は添加量が増えるほど硬さ, もろさは減少する.
著者
柚本 玲 今井 綾乃 田中 辰明
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.131, 2005 (Released:2005-12-08)

目的本研究では衣類のカビ汚染を防ぐために市販防虫防カビ剤の代替品として天然植物精油を使用することを目指した。精油は天然由来で生分解性が高いこと、市販されており入手しやすいなど居住者にとって利点が多い。そこで、気体状態でカビを発育阻止する市販の天然植物精油を選出し、効果の持続性、必要量、揮発成分の発育に対する影響を検討することを目的とした。方法衣類のシミから分離したCladosporium cladosporioides、Aspergillus nigerを供試菌としてpotato dextrose 寒天培地に植菌し、ペトリ皿(φ90 mm)内に0.1 mlの精油を含ませた滅菌ろ紙を培地に触れないように設置した。25℃で7日培養後に集落が目視確認できなければ”効果あり”とし、効果持続日数、必要量、精油揮発成分と発育阻止効果との関係を分析した。結果精油の揮発成分に室内空気汚染源となる物質は含まれていないことを確認した。両真菌に効果のあった精油は8種、C. cladosporioidesのみでは3種、A. nigerのみでは2種であった。両真菌を30日以上発育阻止した精油は7種、C. cladosporioides のみでは3種であった。そのうち、本実験の最少量である6μlで30日発育阻止した精油は、両真菌に対してLEMONGRASS、THYME、C. cladosporioidesに対してはROSEWOOD、A. nigerに対してはCINNAMON leafであった。発育阻止持続日数の短いつまり発育阻止効果の弱い精油の揮発成分放散量の方が効果の強い成分よりも多い傾向にあったことから、放散量が発育阻止効果に与える影響は小さいことを確認した。
著者
下村 道子 島田 邦子 鈴木 多香枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.484-488, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

魚肉 (マアジ肉) を純水, 2%食塩水その他の溶液中で30℃から100℃の間, 10度間隔の温度で加熱した場合の魚肉の変化を調べた.結果は次のようである.1) 加熱溶液へのたんぱく質の溶出は, 40℃から50℃にかけて増加し, 50℃から60℃では, あまり変らないか, また減少する場合も見られ, 60℃から70℃では再び増加がみられた 食塩水やしょうゆ水では, たんぽく質の溶出率が高くなり, 清酒を加えると, やや抑えられる傾向がみられた.2) 加熱溶液が水の場合, そのアミノ酸分析においてエキス分に含まれているアミノ酸とともに, 90℃で加熱した場合にはゼラチンに由来すると思われるアミノ酸が多く含まれていた.3) 加熱した魚肉の硬さは, 40℃から50℃にかけて著しく減少し, 50℃付近で最低となり, 60℃より100℃まで漸次増加した.調味料の影響はあまりみられなかった.4) 魚肉の凍結切片を水, 食塩水, 酒水および魚類用塩類溶液に入れ, 加熱し顕微鏡で観察したところ, 水では40~50℃で筋せんいの収縮が始まり, 70℃までさらに凝集がすすむのがみられた. 60℃をすぎると結締組織の溶解がみられた 食塩水に切片を入れると, 筋せんいは溶解したように拡がり, 加熱による変化はあまりみられなかった. 酒水では, 加熱しなくても筋せんいの収縮がみられ, 低湿でも変性が起こると思われた. 魚類用塩類溶液では, 食塩水に似た変化がみられた.
著者
大浦 律子 吉川 清兵衛
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.183-188, 1986-03-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

過酸化系漂白剤なかでも過炭酸ナトリウムの分解速度はpHにより大きく影響される.この現象をさらに検討するため本報では, 過酸化水素の分解速度, 漂白力とpHの関係を測定し, 過酸化水素に炭?ナトリウムを加えた系 (モデル過炭酸ナトリウム) との比較を行った.さらに, 洗剤中に配合されている無機ビルダー (硫酸ナトリウム, リン酸ニナトリウム, メタケイ酸ナトリウム) を共存させた系についても検討した.また, 過炭酸ナトリウムに, これらの無機ビルダーを共存させた系で, 無機ビルダーが分解速度におよぼす影響について検討し, つぎのような結果を得た.過酸化水素に炭酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムを加えると, 過酸化水素単独にくらべ, 分解速度は速くなり, これらの無機ビルダーは, 分解促進作用がある.しかし, 硫酸ナトリウムやリン酸ニナトリウムを加えても, 過酸化水素の分解速度には, ほとんど影響しない.過酸化水素に無機ビルダーを加えた場合の漂白力への影響は, 硫酸ナトリウムやリン酸ニナトリウムでは, 中性から弱アルカリ性域で, わずかに高くなるが, pH 11以上では, ほとんど変わらない.また炭酸ナトリウムでは中性~酸性域では相当の, また弱アルカリ域ではわずかの漂白効果の向上がみられた.またメタケイ酸ナトリウムを加えた場合は, 強アルカリ浴でも漂白力は低下しなかった.過炭酸ナトリウムにメタケイ酸ナトリウムを加えるとpH9.5までは分解が起こらず, 弱アルカリ浴では, 過炭酸ナトリウムの分解を抑制することが認められた.本研究の一部は昭和59年度日本家政学会年次大会 (第36回) で発表した.
著者
牧野 秀子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.719-723, 1987-08-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

乾燥大福豆の食塩水浸漬が, 煮熟後のやわらかさを促進する効果の機構を明らかにするために, 官能検査, 物理的測定, 食塩およびカルシウムの含量・ペクチン量の測定によって, 水浸漬の場合と比較検討し, 次の結果を得た.1) 食塩水 (0.7%) に浸漬後煮熟した豆は, 官能検査および物理的測定により, 水浸漬後の煮豆よりも子葉が有意にやわらかいこと, 種皮は顕著にそしゃくしやすく磨砕されやすいことが認められた.2) 食塩水浸漬豆の食塩含量は, 水浸漬豆のそれにくらべて, 子葉では約2倍, 種皮では約3倍と多く, カルシウム量は子葉では約1/4, 種皮では約2/3と少なかった.食塩水浸漬中に食塩が吸収されるに伴って, -織中のカルシウムが溶出したことが示された.3) 食塩水浸漬煮豆のペクチン量は, 水浸漬煮豆のそれにくらべると, 子葉, 種皮ともにメタリン酸塩可溶性ペクチンが少なかった.カルシウムの溶出に伴ってペクチン質が変化したことが示された.4) 水浸漬煮豆の種皮は, その官能特性およびペクチン含量により, 難崩壊性現象があらわれたことが示唆された.食塩水浸漬煮豆の種皮では, これが抑制されたと考えられた.
著者
平山 静子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.309-312, 1970-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
4

1. 電子レンジ加熱の苺ジャムは、本実験の条件では、電熱器加熱のものに対して約1/2の加熱時間で仕上がった。加熱前にさとうによって果汁を浸出させる必要もなく、火力調節の手数もないが、原料の分量に対して、目的の砂糖濃度に仕上げるための加熱時間については、注意を払う必要がある。2. 電子レンジ加熱によるものは、官能テストの結果、電熱器によるものより好ましいという結果が得られた。3. 電子レンジ加熱によるものは、香りが良く、色調も美しい。4. 電子レンジ加熱によるものは、ゼリー化が少ない。しかしレモン汁を添加することにより、両加熱法とも、ゼリー化を高め、両加熱間の差は少なくなる。5. 電子レンジ加熱によるものは、やや酸性が強い。6. 電子レンジ加熱によるものは、蔗糖の転化率が少ない。
著者
新井 映子 伊東 清枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.161-169, 1991-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

共立て法によりスポンジケーキを調製するさいの, 卵黄の起泡性ならびにその膨化性について検討を行い, 卵黄泡沫の膨化がスポンジケーキの品質に与える影響について考察した.(1) 全卵中の卵黄量に卵白中の水分量に絹当する水を添加して攪拌すると, 卵黄の起泡性は卵白よりも高くなった.これより, 全卵の状態で攪拌を行う共立て法の場合には, 卵黄はきわめて起泡しやすい状態にあること, また, 起泡力をもつことが確認された.(2) 卵黄泡沫は, 共立て法のバッターに特有の硬さ, 粘り, 付着性等のテクスチャー特性を与えた.(3) 卵黄泡沫も焙焼により膨化することが確認された.ただし, 膨化率は, 全卵および卵白により形成された泡沫よりも小さかった.(4) 卵黄泡沫のみの膨化力で膨化させたスポンジケーキは, 凝集性が小さく, もろく, また, きめもあらかった.(5) 共立て法で膨化させたスポンジケーキの官能評価は, 卵黄泡沫および卵白泡沫がそれぞれ膨化することにより形成される2種類の異なる気孔が存在することにより, はじめて得られるものであった.(6) スポンジケーキの良好な膨化のためには, 卵黄および卵白両者の相互作用が必要であった.
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 細見 博子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.199-203, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

マリネ処理時間および酸濃度の食肉蛋白質におよぼす影響について検討し, あわせてマリネ処理肉の官能検査を行った.1) 浸漬時間の経過および, 酸濃度の増加にともないマリネ肉のpH低下, 重量増加がみられ, 切断応力が経時的に減少して肉がやわらかくなることが認められた.2) マリネ処理により生じた水溶性窒素化合物の総量は半日~1日経過で著しく増加した.3) 酸の浸透にともない筋肉蛋白質中のミオシン主鎖の切断がおこり, 150,000 dalton fragmentへ移行することが認められた.4) 浸漬日数の経過にともない官能的にも肉がやわらかくなると判定された.また, 酸味を感じるパネル数も増加した.
著者
池田 昌代 秋山 聡子 鈴野 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-75, 2023 (Released:2023-03-04)
参考文献数
37

大量調理における省エネルギーを考慮した調理機器の選択を行うために, フライパンとスチームコンベクションオーブン (200℃) を用いて鶏肉 (70 g×100切) を加熱する際のガス消費量を測定すると共に加熱後の鶏肉の品質評価を行った. 鶏肉10切から50切を加熱する際のガス消費量はフライパン加熱が最も少なかったが, 60切以上の加熱ではフライパン加熱がスチームコンベクション加熱を上回った. フライパン加熱した鶏肉の重量保持率は, スチームコンベクション加熱と比較し有意に低く, 破断荷重及び破断エネルギーは有意に高かった. 分析型官能評価では, 鶏肉の焼き色 (P<0.01) と硬さ (P<0.05) に有意差が見られ, フライパン加熱した鶏肉は焼き色が濃く硬いと評価された. 嗜好型官能評価ではフライパン加熱の焼き色が有意に好ましい (P<0.01) と評価されが, その他の項目ではフライパンとスチームコンベクション加熱に有意差は無かった. 給食施設においては調理する食材の量やメニューに適した調理機器を選択することで厨房内のエネルギー消費量の削減ができると考える.
著者
渡辺 喜弘 岡崎 英規 西宗 高弘
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.155-160, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

カイコガを食材として利用する際, その安全性を検討する必要がある.本報では, カイコガ体内に存在するチアミナーゼに着目し, 以下の結果を得た.(1) カイコガの幼虫及び蛹にビタミンB1分解酵素チアミナーゼを見出した.(2) 酵素反応温度がチアミナーゼ活性におよぼす影響を検討したところ, 60℃から70℃で活性が最も強かった.(3) 本酵素のpH依存性を検討した結果, pH9.0において最大の分解活性が認められた.(4) 本酵素はビタミンB1を分解するときに第2基質としてシステイン, タウリン, リジン, プロリン, グルタチオン, ピリドキシン等を要求することがわかった.(5) 本酵素をプロテアーゼ処理すると失活し, 蛋白質性である事が確認された.また, 透析後の酵素液中にも第2基質依存性の酵素活性は残り, 本酵素は非透析性の高分子量物質であることが確認された.(6) ビタミンB1のモノリン酸エステル, ジリン酸エステル, トリリン酸エステルには本酵素は反応せず, 遊離のビタミンB1のみを分解することがわかった.
著者
本間 伸夫 塩崎 啓子 渋谷 歌子 石原 和夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.355-361, 1974-08-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

The relationship between the flavor and the heating time of niboshi-soup (extract of dried small sardine) was examined by sensory evaluation. During the heating of niboshi-soup, it was observed from panel scores that the flavor turned to be more preferable.Volatile, neutral and basic components in the head space vapor of niboshi-soup were investigated by gas chromatography and thin layer chromatography. The volatile neutral components of unheated and heated niboshi-soup were identified as follows; paraffins (C4-C8), n-aldehydes (C2-C6), iso-butyraldehyde, n-alcohols (C1, C3, C4) and iso-alcohols (C3, C4). The volatile basic components were ammonia, dimethylamine and trimethylamine. The amounts of most of these volatile components decreased during the heating.It appears that the decrease of the low-boiling volatile components contributes to the increased flavor acceptability of the heated niboshi-soup.