著者
乙丸 晶世 叶谷 由佳 渡辺 久 日下 和代 加藤 秀樹 高野 正信 佐藤 千史
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.67-76, 2003

咀嚼が口腔機能や身体状態を改善することはよく知られているが, 多くは動物実験であり, 人の心理状態に及ぼす影響については十分に明らかではない. そこで, 小学校5年生を層別化無作為に11名のグミ咀嚼群と10名の対照群に分け, 特別に調整したグミを夏休み中の28日間に咀嚼することが心理状態, 口腔機能にどのような影響を及ぼすかについて検討した. 心理状態については児童用内田クレペリン精神検査, 児童用顕在性不安検査を用いて検討し, 口腔機能については咬合力, 唾液量を測定した. その結果, 対照群では夏休み期間後に咬合力が有意に低下していたが, グミ咀嚼群では低下がみられず, グミ咀嚼が咬合力の低下を抑制する可能性が示唆された. またグミ咀嚼により作業効率が有意に上昇し, ものごとへの積極性も有意に増加することが明らかになった. また顕在性不安検査と唾液量には差がみられなかった. 咀嚼は子供の心理状態, 口腔機能へ好ましい効果をもたらす可能性がある.
著者
井筒 ゆみ
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.883-890, 2012-12-01 (Released:2013-12-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

おたまじゃくしがカエルになるとき,体の体積の半分を占める尾を消失する.両生類は,ひれをもち魚のような形をした幼生から,四つ足がはえた成体へと大規模な体の作り変えをするが,その最も顕著な例は尾の消失に見ることができる.尾の消失は発生プログラミングされた細胞死(アポトーシス)によって起こるが,そのメカニズムは,古くから甲状腺ホルモンによる細胞自律的な死によると説明されてきた.筆者らは,変態期の幼生細胞に特異的に発現する2つの新規の抗原タンパク質を同定し,成体型免疫細胞が尾を異物として認識し,死に至らせるという考えを支持する結果を得た.これにより,従来知られてきた甲状腺ホルモン作用だけでなく,新たな作用機構として,免疫が自己組織と非自己組織を識別し,脊椎動物の器官形成に働く可能性を示す.
著者
有田 真己 竹中 晃二 島崎 崇史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.338-346, 2014

【目的】在宅運動の実践に対する自己調整バリア・セルフ・エフィカシー(以下,バリアSE)を評価するための在宅運動セルフ・エフィカシー尺度(Home-Exercise Barrier Self-Efficacy Scale;以下,HEBS)を開発し,信頼性・妥当性を検討すること,およびHEBSと基本属性との関連をあきらかにすることを目的とした。【方法】要支援・要介護者114名を対象に,基本属性,運動変容ステージ,在宅運動の実施におけるバリアSEに関する質問,健康関連QOLについて調査した。【結果】1因子構造からなる6項目のHEBSを開発した。モデルの適合度指標は,いずれも良好な値を示した。α=0.86,検査・再検査間の相関係数は,r=0.94であり高い信頼性を有した尺度であることが確認された。運動変容ステージを独立変数,HEBSの得点を従属変数とする分散分析の結果,高いステージほどHEBSの得点も有意に高まることがあきらかとなった。HEBSの得点は,75歳未満と比較し75歳以上の得点が低く有意な差異を認めた。性別,主疾患,介護度とHEBSの得点には,有意な差異が認められなかった。【結論】HEBSは,在宅運動を実践する自信の程度を把握する指標として,信頼性,妥当性を有した尺度であることが確認された。

3 0 0 0 OA 足利尊氏願經

巻号頁・発行日
vol.[3], 1354

2 0 0 0 簡易輸血法

著者
ガブリール
出版者
日本医療機器学会
雑誌
醫科器械學雜誌 (ISSN:00191736)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.309-310, 1926-12-20
著者
Kunihiko KODERA Nawo EGUCHI Jae N. LEE Yuhji KURODA Seiji YUKIMOTO
出版者
(公社)日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.283-290, 2011-06-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
24
被引用文献数
7 18

In mid-January 2009, sudden changes in circulation occurred in the tropical troposphere and stratosphere. Convective activity situated over the equatorial Maritime Continent showed an abrupt weakening, whereas that over the South American to African sectors became stronger. Changes also occurred in the latitudinal structure; convective activity in the Northern Hemisphere became weaker, whereas that in the Southern Hemisphere became stronger. The change in convective activity took place in association with a change in tropical circulation, from east–west to north–south type (i.e., from Walker- to Hadley-type circulation). Almost simultaneously with these events in the troposphere, a change in meridional circulation occurred in the stratosphere during a record-breaking stratospheric sudden warming event in January 2009. Stratospheric tropical temperature showed a decrease in response to a strengthening of the hemispherical meridional circulation. In the present study, we show how the stratospheric and tropospheric circulation changes are dynamically coupled.

4 0 0 0 OA 風雲漫録

著者
徳富猪一郎 著
出版者
民友社
巻号頁・発行日
1895
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-53, 2013-01-31

言語の認知過程研究においては、視覚呈示された単語のみならず、それと正書法的に類似した単語である類似語(Coltheart, Davelaar, Jonasson, and Besner, 1977)も同時に活性化することが示唆されている。この問題の検討に際しては実験者は何らかの語彙基準を参照し、類似語数を操作することになる。しかし、こうした操作そのものの妥当性を受け入れる前に、辞書などの外在基準に基づく類似語数が実験参加者の心的辞書における類似語数と対応していることを確認しておく必要がある。本研究では、川上(1997)が報告している資料に基づく漢字二字熟語の類似語数と、漢字一文字を手がかりとして、実験参加者が産出可能な漢字二字熟語の数とが対応しているのか否かが吟味された。229名の実験参加者を対象とした実験の結果、川上(1997)に基づく類似語数と実験参加者が産出した漢字二字熟語の数との間に対応が認められた。この対応は、川上(1997)が参照した辞書である岩波広辞苑第四版と実験参加者が有する心的辞書との間に対応があることを示していると解釈された。
著者
山本 るみ子 齋藤 勉 宮川 博充
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.33, pp.331-334, 2001-12

台湾産白ブンチョウの羽色の表現型を調査し、国内における白ブンチョウの生産性向上のために利用できるか検討した。 1.台湾産白ブンチョウは桜(有色)に対し劣性である白の遺伝子をホモ型で保有していると推定された。 2.台湾産白ブンチョウ羽色の特徴としては、弥富産白文鳥雛にある黒い刺し毛が全くなく、純白であった。 3.台湾産白ブンチョウと弥富産桜ブンチョウの交配から発生した子はすべて桜ブンチョウの羽色で多量の白い刺し毛が存在していた。したがって、台湾産白ブンチョウは弥富産白ブンチョウが持つ桜(有色)に対し優性で、致死作用のある遺伝子(Wh)を保有していないと推定された。 そのため、台湾産白文鳥同士を交配することにより、白ブンチョウの生産性と品質を向上させることが期待された。
著者
伊澤 幸洋 小嶋 知幸 加藤 正弘
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.217-226, 1999-07-20
参考文献数
10

仮名の読み書きは良好である一方, 漢字に失読失書症状を呈した失語例に対して, 漢字一文字の音読みの改善を目的に2種類の訓練法を適用し, 訓練効果の比較検討を行った.1つは当該漢字を含む熟語をキーワードとして対連合学習する訓練 (以下, キーワード法訓練) , もう1つは漢字一文字と読み仮名との対応を直接再学習する訓練 (以下, 非キーワード法訓練) である.2つの実験を構成し, 自然治癒の要因を統制した上で, 2種の訓練効果を比較した.実験1は5日間のキーワード法訓練, 実験2は5日間の非キーワード法訓練とそれに続く5日間のキーワード法訓練からなるA-Bデザインである.結果, キーワード法訓練では統計的に有意な効果が得られ, 訓練終了後もその効果が持続することが確認された.一方, 非キーワード法訓練では効果が得られなかった.キーワード法による音読は, 文字を直接音韻に変換する情報処理過程が障害された際, 文字から意味を経由して音韻にいたるルートによって文字から音韻情報を引き出す手法である.これまで仮名一文字の書字や音読の訓練手法として報告されてきたキーワード法が, 本症例では漢字の音読みにも利用可能であることが確認された.また, 本症例の症状から, 同じ形態から音韻への変換でも仮名と漢字では処理過程が異なり, 障害の程度に乖離がありうることが示唆された.
著者
川上 正浩 小野 菜摘 佐々木 美香 西尾 麻佑
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.95-103, 2012-01-31

本研究では、読み(音韻)から漢字(形態)への対応について、人間の反応に基づいたデータベースを構築することを目的とした。具体的には、仮名一文字で表記される特定の音韻(読み)から想起される漢字のバリエーションについて明らかにすることを目指した。実験参加者169 名を4 つの群に振り分け、それぞれの群に、仮名一文字で表される15 個の音韻を呈示した。30 秒の制限時間内に当該音韻から想起される漢字一文字のデータベースを作成した。集計の結果、本研究で対象とした仮名一文字のうち、もっとも多くの漢字が想起されたのは「か」(4.98)であり、もっとも少ない漢字が想起されたのは「ぬ」(0.80)であった。これは各実験参加者の想起漢字数であるが、想起された漢字のバリエーションについては、「か」(46)がもっとも多く、「せ」(3)がもっとも少なかった。
著者
林 千渝 宇野 彰
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.37-42, 2015
被引用文献数
1

本研究では台湾の小学三年生103名を対象とし,これまで報告されてきた文字習得にかかわるとされる音韻認識能力,視覚認知能力,自動化能力,語彙力のなかで,台湾の中国語話者児童においてどの認知能力が中国語漢字の音読力に関与するのかを明らかにすることを目的とした.さらに,台湾で用いられている注音の構造から,音節と音素の2種類に分けた音韻認識能力の検査を用い,音読発達にかかわる影響を検討した.その結果,視覚認知課題と自動化課題の成績が漢字一文字音読成績を予測していた.中国語漢字は形態的変化によって意味や読み方が異なる文字であるため,視覚認知能力の貢献度が高かったのではないかと考えられた.また,台湾児童は,音読の際,音素や音節の単位よりも,sub-syllabic unitであるonsetやrimeを認識し,操作している可能性が考えられた.