著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.598-603, 2024-03-11 (Released:2024-03-11)
参考文献数
47

本研究では、甲信越三県の国立大学(山梨大学、信州大学、新潟大学)を対象に、旧軍施設の転用実態を整理する。山梨県では、罹災した山梨師範学校と山梨工業専門学校が、近隣接する旧軍施設(旧歩兵第49連隊)に移転し、新制移行後、その校地と元の校地の一帯に集約移転した。長野県では、非罹災の松本医学専門学校が、郊外の旧軍施設(旧歩兵第50連隊)に移転し、新制移行後、松本市内に限っては、その校地及び隣接地に集約移転した。新潟県では、新潟第二師範学校が、隣接する城址の旧軍施設(旧第13師団司令部)に女子部を開設して校地を拡張した。また、非罹災の新潟青年師範学校や新潟県立農林専門学校は、他都市の旧軍施設(旧歩兵第16連隊、旧歩兵第16連隊第3大隊)に移転した。新制移行後は、新潟市郊外の新たなキャンパスへの集約移転が進められた。
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.592-597, 2024-03-11 (Released:2024-03-11)
参考文献数
59

本研究では、北陸三県の国立大学(富山大学、金沢大学、福井大学)を対象に、旧軍施設の転用実態を整理する。富山県では、罹災した富山師範学校が、郊外の旧軍施設(旧歩兵第35連隊)に移転し、新制移行後30年以上かけて、その校地及び隣接地に集約移転した。石川県では、非罹災の金沢高等師範学校や石川青年師範学校が、郊外の旧軍施設に移転した。一方、占領軍の方針もあり、城郭部の旧軍施設が新制金沢大学のメインキャンパスとなり、集約移転が進められた。福井県では、罹災した福井師範学校が、郊外の旧軍施設(旧歩兵第36連隊)に移転した。また、後の福井地震で罹災した福井青年師範学校も郊外の旧軍施設(旧歩兵第36連隊)に移転した。新制移行後は、福井市内の工学部周辺への集約移転が進められた。
著者
前田 勇樹 川畑 宗太
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.2161, 2024-03-31 (Released:2024-03-01)

琉球大学附属図書館では,2021年度からYouTubeによる情報発信を行っている。所蔵する貴重資料やデジタルアーカイブに関するコンテンツを中心にこれまでに100本以上の動画を公開した。本稿では,琉球大学附属図書館のYouTubeを活用した広報事業について,その経緯やコンセプトおよび実施中の事業を詳述し,現段階での外部からの評価をもとに課題を提示した。
著者
松本 敏治 橋本 洋輔 野内 友規
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.81-91, 2024-02-25 (Released:2024-02-25)
参考文献数
40

近年,ASDの方言不使用という印象が全国で見られるとする報告がなされており,解釈の一つとしてメディアからの言語習得を指摘する意見があるが,否定的見解も存在する。この解釈が妥当であるなら,自然言語とメディア言語に乖離がある国や地域では類似の現象が生じる可能性があり,アイスランド・北アフリカからはこの解釈を支持するような報告がある。本論文では,4名のアイスランドのASD青年・成人に関して,本人および母親に行った聞き取りの結果を報告する。4名とも初期はアイスランド語を話していたものの現在は英語が主要言語となっている。本人・親ともに,興味をもった英語メディア・コンテンツの繰り返し視聴によって英語習得が行われたと認識していた。これらの聞き取りとアイスランドにおけるアイスランド語と英語の使用状況の情報に基づいて,ASDのメディアからの言語習得の可能性とその成立条件を検討した。
著者
小森 日菜子 小林 さやか 川田 伸一郎
出版者
独立行政法人 国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告A類(動物学) (ISSN:18819052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.33-48, 2024-02-22 (Released:2024-02-22)
参考文献数
65

A mounted skin of unknown species belonging to genus Canis deposited in the National Museum of Nature and Science, Tokyo (NSMT) is certificated morphologically and bibliographically. The specimen label is described as ‘a kind of Yamainu’ and M831 of the Tokyo Imperial Household Museum collection, while the specimen catalog says that M831 was derived from an individual kept at Ueno Zoo and that it was disposed of after. This specimen seemed to be confused with another one. So, we examined the morphological characteristics of this specimen and traced the history of Canis sp. specimens of the Tokyo Imperial Household Museum collection and Canis sp. kept at Ueno Zoo. As a result, measurements of this mounted skin were reasonable to be within the range of specimens previously identified as Japanese wolves. We confirmed that this specimen is correctly labeled as M831. This specimen M831 was considered to be one of two wolves that arrived at Ueno Zoo from Iwate Prefecture, Japan, in 1888. Therefore, it is thought that this specimen is a Japanese wolf. This study may have revealed a new Japanese wolf skin specimen that had previously been overlooked.
著者
伊藤 伸泰 尾関 之康 野々村 禎彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.336-347, 1999-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
47

非平衡状態から熱平衡状態への緩和の様子から系の熱力学的性質を解析する方法が提唱され, さまざまな問題へと応用が広がっている. 簡便かつ効率的で信頼性も高い「非平衡緩和法」と呼ばれるこの方法の特徴と実例とを計算物理の視点から紹介する.
著者
丹羽 政美 安藤 秀人 平松 達 深澤 基 伊藤 栄里子 安藤 俊郎 渡邉 常夫 藤本 正夫 小出 卓也 岡野 学
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.143, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>前立腺癌は日本人の高齢化と食生活の欧米化に伴い、日本でも増加傾向にある疾患である。前立腺疾患の診断においてはprostate specific antigen(PSA)、直腸診、経直腸的超音波断層法、MRI、針生検などが中心になっているが、生検が簡便に施行できるため画像診断よりも生検が優先される傾向にあった。しかし、従来の生検のsensitivityは50%前後という報告や最近のMRI診断法の進歩によって前立腺の内部構造が明瞭に描出されるようになり生検で前立腺癌と確定した症例の臨床病期診断のみならず、生検前の癌病変の検出においても非常に有用であることがわかってきた。生検前にMRI検査を行って癌部が検出もしくは疑いができれば系統的生検と標的生検を同時に実施することができ、診断能の向上が期待できる。以前勤務した西美濃厚生病院や当院でも前立腺癌を疑った場合、生検前にMRI検査を行うことをルーチン化し、生検の診断能の向上を目指して担当技師が画像についてコメントを記載している。 今回、東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行した症例について生検結果と比較検討した。また拡散強調画像が可能であった症例についてADC(apparent diffusion coefficient)値を測定したので報告する。<方法>東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行し標的生検が可能であった91例について生検診断をゴールドスタンダードとして年齢、PSA値、MRI診断について検討した。撮影装置は1.5T(PhilipsおよびGE社製)装置でphased array coilを用いて撮像した。撮像法はT1強調画像、T2強調画像、Gdダイナミック画像で検討した。(可能であった24症例についてはADC値も検討した。)<結果>生検前にMRIが施行された91症例中37症例に生検によって前立腺癌が認められた。癌の平均年齢は72.5歳でPSA値の平均値は46.5ng/mlであった。PSA値を年代群別に癌とBPHを比較検討すると年代群が高くなるにつれて高値になる傾向がみられたが年代群別では有意差はみられなかった。しかし、癌とBPHでは各群で有意差を認めた。生検結果を基準にみたMRIの正診率は84%、感度96%、特異度76%、陽性的中率73%、陰性的中率95%と高い診断能が得られた。また拡散強調画像が可能であった前立腺癌部のADC値は平均0.97×10-3mm2/sec、正常部のADC値は1.57×10-3mm2/secであった。<考察>前立腺は生検後の出血によって前立腺の信号強度は修飾され、しかもその影響が長く続くことが知られている。これらの信号変化は読影の妨げになるだけでなく、偽病変の原因となり病変の検出能をも低下させる。そのためMRIは生検前に撮像することが推奨されるが、今回の検討でかなり精度の高い診断が可能であることが認められた。また、Gdダイナミック撮像やADC値を測定することにより、より精度が増すと考えられる。さらにMRIは検出能だけでなく皮膜外浸潤や隣接臓器浸潤などの検出も可能で治療法を選択するためにも必要不可欠な検査であると考えられた。ただし、MRIで強く前立腺癌が疑われたにもかかわらず生検でBPHと診断された症例があることやMRIで癌と良性病変との鑑別が困難な場合もあったことより十分に経過観察し今後の検討課題としたい。
著者
坂本 治也 富永 京子 金澤 悠介
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
pp.NPR-D-22-00013, (Released:2024-02-16)
参考文献数
41

なぜ日本人の政治参加は他国と比べて低水準なのだろうか.なぜこの30年あまりの間に低下し続けているのだろうか.これらの問いに答える新たな理論的説明として,本稿では過去の大規模な社会運動に対する否定的評価が政治参加水準に与える影響に着目する.つまり,日本人の政治参加が他国の人々に比べて低調であり時系列的にも低下しているのは,過去の社会運動に対する悪いイメージが投票参加を除いた政治参加全般に投影されて,政治参加への強い忌避感を生じさせているためではないか,との仮説を立て,その仮説の妥当性を検証した.分析の結果,1960年安保闘争や2015年安保法制抗議行動への否定的評価は,投票参加以外の政治参加(ボランティアや寄付を含む)に対して有意な負の影響を与える関係にあることが明らかとなった.日本人の政治参加水準を向上させるためには,過去の大規模社会運動に対する悪いイメージが政治参加全般に安易に投影されている現状を改めて行く必要がある.
著者
山之城チルドレス 智子
出版者
日本薬学図書館協議会
雑誌
薬学図書館 (ISSN:03862062)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.111-117, 2023-12-31 (Released:2024-01-25)
参考文献数
14

2023年G7開催後,オープンサイエンスについて議論が高まっている。日本でも研究のオープンアクセス(OA)化を求めるポリシーが検討され,研究を迅速に発見・アクセスでき,再利用可能な形式やフォーマットで提供することへの需要が高まっている。この動きの中で2022年に筑波大学の発案でスタートしたJapan Institutional Gateway(JIG)は,大学の規模に関係なく,どの機関でもオープンサイエンスを実践することができる新しい学術出版形態のオプションとなっている。最大の特徴は人文社会科学分野の日本語論文を2か国語でOA出版することが可能な点であり,一定の条件を満たせば,国際的な論文データベースに論文が収載される。言語や分野に縛られず研究成果を発表できるだけでなく,オープンサイエンスを実践してその効果を個々の研究者が体験できるモデルとなっている。
著者
石田 明日香 高柳 昌芳 保科 架風 岩山 幸治
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.99-126, 2023 (Released:2024-01-11)
参考文献数
16

現在, バスケットボールの選手評価に使われる指標には, 評価値の信頼性に関する情報を得ることや選手同士の相乗効果に関する評価が難しいという問題がある. これに対し本論文では, チームメイトや対戦相手など同時に出場している選手の能力や, チームメイトとの相乗効果を考慮に入れたモデルをベイズ推定することでそれらの問題を解決する選手評価が可能になることを示した. また, 選手の攻撃・守備能力などの事後分布を解析的に導出することで, 選手の能力評価値やそれらのアフィン変換で得られる指標のベイズ信用区間を構築し, 能力値の推定の不確実性についても評価できることを示した. これは, マルコフ連鎖モンテカルロ法を利用するよりも計算コストを抑えることが可能である. また, アメリカ National Basketball Association (NBA) のデータを利用し, 既存手法との比較検証を実施し, 提案手法は既存手法よりも妥当な選手評価を提供することを確認した.
著者
大城 沙織 (2023) 大城 沙織 (2022)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

土帝君とは琉球王国時代に中国から招来された土地神、農耕神であり、現在でも沖縄各地で信仰されている。沖縄各地の土帝君信仰は多様であり、その信仰からは地域レベルでの中国的信仰の受容、琉球王府との関係性、近世から現代に至るまでの土地を巡る歴史観を辿れると考える。本研究では沖縄島と周辺離島で土帝君に関する民俗誌研究を重ねながら、土帝君のルーツとされる土地公との比較を行う。土地公との比較にあたっては、台湾にて歴史的背景を踏まえた現地調査を実施する。そのなかでも本研究は特に現在の祭祀実践に注目し、琉球国時代から現在までの村落の歴史観や民衆レベルでの異文化交流を描き出そうとするものである。
著者
Masato Nitta Takanori Ishikawa
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-30, 2024-01-11 (Released:2024-01-11)
参考文献数
60

Henneguya postexilis Minchew, 1977 (Cnidaria: Myxobolidae) is described as a novel record for Japan. It was found in the gills of non-native Ictalurus punctatus (Rafinesque, 1818) (Siluriformes: Ictaluridae), which were collected from the Omoi River, a tributary of the Tone River system in Tochigi Prefecture, central Honshu. This myxozoan species is native to North America and its discovery from Japan in this study is the second case reported from a non-native region. Until now, H. postexilis has only been observed in I. punctatus, suggesting that it is an introduced alien species in Japan, likely accompanying its host.
著者
川崎 有亮 寺嶋 宏明 上田 修吾 福永 明子 八木田 正人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1547-1551, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
24

症例はtrisomy8陽性骨髄異形成症候群とSjögren症候群で当院加療中の32歳の女性.右下腹部痛と発熱を主訴に緊急入院し,絶食と抗生剤加療で症状は改善したが,入院9日目に腹痛が再燃,腹部CT検査で消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断された.緊急開腹術で上行結腸および終末回腸の穿孔と判明し,結腸右半切除+回腸人工肛門造設術を施行した.回盲部病変は病理学的診断で非特異的潰瘍であり,口腔内アフタ性潰瘍・顔面の痤瘡様皮疹・手指関節炎の特徴的な臨床症状もふまえて,不全型Behçet病の回腸潰瘍穿孔の確定診断に至った.近年,本邦におけるtrisomy8陽性骨髄異形成症候群に腸管Behçet病を併発する報告が増えており,このような場合は穿孔のリスクを有する回盲部領域の潰瘍合併の可能性を念頭に置き,できるだけ早期の下部消化管検査を施行するべきである.
著者
長谷部 政治
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.88-96, 2023-08-09 (Released:2023-08-30)
参考文献数
38

温帯地域では季節の移り変わりによって外部環境が劇的に変化する。このような四季が存在する地域の生物の多くは1日の日長変化から季節を読み取り,生理状態や行動を適切に調節している。体内で約24時間周期のリズムを刻む体内時計である概日時計が,この日長測定に重要な役割を果たしていると考えられている。一方で,情報処理の中枢である脳神経回路内で,概日時計に基づいた日長情報がどのような神経シグナルを介して伝達され,細胞レベルでどのような日長応答を起こしているのかは長年不明であった。著者らの研究グループは,明瞭な日長応答を示すカメムシなどの野外採集昆虫を用いて,細胞レベルでの生理学的解析とRNA干渉法による遺伝子発現操作解析を組み合わせることで,この概日時計に基づいた日長情報の神経処理機構の解明に取り組んできた。本稿ではまず,概日時計に基づいた日長測定機構のこれまでの研究の歴史について紹介する。続いて,近年著者らが生殖機能に明瞭な日長応答を示すホソヘリカメムシを用いて明らかにした,日長情報を伝達する神経シグナルとそれを受け取った生殖制御細胞での日長応答について紹介したい。