著者
田中悠樹
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

問題と目的 現在,教育現場の課題として自然体験活動の欠如が取り上げられている(日置, 2004; 国立青少年教育振興機関, 2010)。その要因のひとつとして昆虫に対して嫌悪感を示す子ども・教師が増えている(日高, 2005; 鑄物・地下, 2014)ことが考えられる。しかし嫌悪は恐怖や不安といった感情と近い属性を備えた感情であるとされるものの,対人的な場面以外の研究は多くなく,特に昆虫に対する嫌悪は従来本能的なものであると考えられており,その構成要因についてはほとんど明らかでない。 よって,本研究は,対人嫌悪の研究を参考として尺度作成を試みることで昆虫に対する嫌悪感情の構成を明らかにすることを目的とする。方法 調査対象者 関西の国立大学で,2015年1月から2月に質問紙調査を実施した。分析対象は大学生51名(男性:17名,女性:34名)である。 質問項目 日高(2005)において想起されやすかった昆虫「ハチ・ダンゴムシ・イモムシ・チョウ・カブトムシ・バッタ・ゴキブリ・セミ・ガ」についてそれぞれA:(比較的)好ましく思う,B:(比較的)いやだと思う,C:どちらでもない,のどのイメージ群に当てはまるか解答を求めた。なお,統制のためにそれぞれスライドショーで該当する昆虫の画像を提示した。その後,金山・山本(2003)の嫌悪対象者に対する感情の尺度のうち4因子を応用し,昆虫に対する嫌悪感情の尺度を作成,各群について回答を求めた。質問項目は全20項目×3群であり,6件法である。結果と考察 昆虫へのイメージ 各昆虫に対するイメージ群の選択率をFigure 1に示す。χ2検定で選択率を比較した結果,好ましく思う群にはチョウ・カブトムシ・バッタが,いやだと思う群にはハチ・イモムシ・ゴキブリ・ガが選択される傾向にあることがわかった(p<.05)。この結果は日高(2005)の結果を概ね支持し,嫌悪対象となる昆虫とそうでない昆虫とは区分されていることが示唆された。今後昆虫の持つどのような属性が感情に影響を及ぼしているのか調査する必要があると考える。 昆虫に対する嫌悪感情の構成 昆虫に対する嫌悪感情の尺度20項目の3群それぞれ主因子法・Promax回転による探索的因子分析を行った。その際に全群において信頼性係数を低下させていた1項目を分析から除外した。金山・山本(2003)との比較のために,いやだと思う群について取り上げたところ,4因子構造が妥当と判断され下位項目の特徴から各因子を命名した。それぞれの因子名・下位項目・α係数をTable 1に示す。 今回の調査で得られた因子構造のうち「恐怖感情」「無関心」は金山・山本(2003)の尺度と一致したものの,新たに「不快感情」「敵意感情」の因子が抽出された。このことから,嫌いな他者といやだと思う昆虫とで抱く嫌悪感情は概ね似通っており,昆虫に対しては不快と嫌悪が別の感情であることがわかった。 また,嫌悪感情4因子の各尺度得点について,好ましさによる平均値の比較を分散分析によって行った。結果,無関心以外の3因子において好ましさの程度によって差が見られ(不快感情:F(2, 100)=66.68, p<.01; 恐怖感情:F(2,100)=55.89, p<.01; 無関心:F(2,100)=0.39; 敵意感情F(2,50)=12.66, p<.01),いやだと思う群が他の2群と比べて該当する3因子すべてで有意に得点が高かった。こしたことから,いやだと思う昆虫に対する不快や恐怖,敵意といった感情は他の昆虫と比べて強いものであることが示唆された。
著者
山田 隆二 井上 公夫 苅谷 愛彦 光谷 拓実 土志田 正二 佐野 雅規 李 貞 中塚 武
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

赤石山地鳳凰山東麓小武川支流ドンドコ沢に大量に分布する花崗岩質の巨大な角礫群は、堆積層から採取した樹幹試料等の放射性炭素(14C)年代測定に基づいて、奈良-平安時代に発生した大規模岩屑なだれに由来し天然ダムを形成したと考えられている(苅谷, 2012, 地形, 33: 297-313)。本研究では、酸素同位体比年輪年代測定法を用いて、岩屑なだれの誘因や堆積過程の解明に迫った。年代測定用の試料は、ドンドコ沢天然ダム湖堆積物の地表下約1 mの砂泥層に含まれるヒノキ(樹幹直径約50 cm、年輪計数による推定樹齢約400年)からディスク状に切り出して採取した。切り出したディスクから木口面に平行な厚さ1 mm、幅1 cmの薄板をスライスして板のままセルロース化し、最外年輪を53年分切り出して、総合地球環境学研究所が所有する熱分解元素分析計付きの同位体比質量分析計で測定した。測定結果の経年変動パターンを木曽ヒノキの標準変動曲線と対比したところ、ヒノキはAD 883+α(αは1年以上、数年程度)以降に倒伏・枯死したと考えられる。岩屑なだれの誘因を地震による強震動であると限定した場合、同じ露頭から採取した樹幹の14C年代測定結果は809-987(CalAD, 2σ; 苅谷, 2012)であることから、既往文献(宇佐美ほか, 2013, 日本被害地震総覧599-2012, 東京大学出版会)によると誘因となる可能性のある歴史地震が4つ程度考えられる(AD 841 信濃、 AD 841伊豆、AD 878 関東諸国、AD 887 五畿七道)。一方、酸素同位体比年輪年代のレンジはAD 883+αであるため、誘因となる可能性のある歴史地震はこれらのうちAD 887 五畿七道地震に絞られる。苅谷ほか(JPGU 2014, HDS29-P01)は同じ樹幹試料より年輪幅を計測し、AD 887晩夏の枯死年代を得ており、五畿七道地震(仁和三年 = AD 887夏)に関連して枯死したと指摘したが、酸素同位体比年輪年代測定の結果はそれに矛盾しない。この研究は、平成27年度砂防学会の公募研究会の助成を受けた。
著者
白井 正明 渡辺 万葉 宇津川 喬子 林崎 涼 高橋 尚志 小尾 亮 加藤 裕真
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

静岡平野から駿河湾に注ぐ安倍川の源流域には,大規模崩壊地である大谷崩れが存在する.大谷崩れ周辺は過去幾度も大規模な崩壊を繰り返し,18世紀初頭の宝永東海地震の際の大崩壊では,崩壊土砂が土石流となって大谷川と安倍川上流の谷を埋めたとされる(例えば,土屋,2000).町田(1959)は,大谷崩れ起源の崩壊堆積物量の見積もり値を1.2×108 m3 と推定すると共に,崩壊堆積物に関連する地形を河成段丘発達史の視点から解釈している.安倍川本流において大きな落差をもつ赤水の滝については,安倍川が土石流堆積物を下刻しつつ形成した,崩壊による土砂で谷が埋まり尾根筋からの越流により滝が形成された,などの記述が見られるが,いずれも十分な根拠を示しているとは言い難い.赤水の滝周辺の「土石流」堆積物と基盤の古第三系頁岩の分布を調査すると,赤水の滝は実際には土石流堆積物上を流れ下っておらず,基盤岩上を流れ下っていること,土石流堆積物の分布は赤水の滝のすぐ上流から東側を通り,滝のすぐ下流で再び現在の安倍川に合流することは容易に見てとれる.さらに赤水の滝周辺の土石流堆積物露頭において,土石流堆積物の礫の配列から堆積物形成時の古流向を推定した.赤水の滝の下流側(南側)では,土石流堆積物は安倍川左岸の赤水の滝展望台周辺に比較的良く露出する.礫のインブリケーションから古流向は概ね西への流れであったと解釈される.また長軸は古流向にほぼ平行であり,転動とは別のプロセスにより礫が運搬されていたことを示す.岩相としては礫支持であり,一般的な土石流堆積物(基質支持)と比べて礫の濃度が高いが,基質には泥分も多く含まれており,土石流の一種として差し支えないと思われる.一方赤水の滝上流側では植生が繁茂し,巨礫の直下にかろうじて露出している中礫のインブリケーションから推定される古流向は概ね東への流れを示した.以上より,赤水の滝は大谷崩れの崩壊に端を発した土石流堆積物によって安倍川の谷が埋められた際に,水流が元々の尾根を越流し,蛇行した谷をショートカットして流れ落ちることにより形成され,現在も基盤の頁岩を下刻しつつある,と考えるのが妥当であると結論づけられる.
著者
二村 徳宏 戎崎 俊一 丸山 茂徳
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

We found that a significant positive broad component of iridium in a pelagic deep sea sediment core (886C) around an iridium peak by asteroid impact corresponds at the K-Pg boundary. The 886C is core sample was taken by the Ocean Drilling Program (ODP) in the central portion of the North Pacific. This site has been in Pelagic from the End-Cretaceous periods. The accumulation rate is 0.5 m Myr-1. Kyte et al., (1995) measured iridium density in the 886C core of 0.75-72.2 m which corresponds of 〜80 Ma from the present. In this data, there is one sharp peak around 65.5 m correspond at K-Pg boundary. In addition, we found that there are broad components across 〜20 m above the back ground which have some sharp peak component. The Ir value of the broad component which is about dozen times of back ground. This broad component is difficult to be explained by the materials on the surface of the Earth, and requires the contribution from the iridium-rich extraterrestrial materials, such as CI chondrite. And it is difficult to explain the broad component by diffusion and bioturbation of an iridium peak by asteroid impact. Platinum-group-element such as Pt, Re and Ir are redistributed by changes in sedimentary redox condition. However such change can probably account for many of small -2. The climate cooling in the End-Cretaceous period is also suggested by the variations of stable isotope rations in oxygen and strontium (Brian and Huber, 1990; Barrera and Savin, 1999; Li and Keller, 1998). Any photosynthetic plants had heavy damaged, and loss of biodiversity began to the top of food chain.The mass extinction at K-Pg boundary, which is widely thought to be caused by an impact of an asteroid (e. g., Schulte et al., 2010). However, a complete extinction of level of family by asteroid impact seems rather difficult. First, a severe environment turn-over would finish few years after impact, the solid particles and sulphate launched by the asteroid impact was settled down for only few month (troposphere) to few years (stratosphere) and negative radiative forcing became negligible after a few years from the impact (Pierazzo, 2001).The number of individuals would recover completely after the environmental catastrophe was over, if a few percent of individuals of one species survived.Second, in spite of there were similar impacts without catastrophic on the Earth, for example, Alamo, Woodleigh, and Popigai crater, there are no evidences of association for extinction. However, because the encounter with the dark cloud perturbs the orbit of asteroid or comet by its gravitational potential and may lead an asteroid or comet shower, the asteroid impact at K-Pg may be one of the consequences of the dark cloud. For a certainly, only an asteroid impact cannot involve mass extinction, however may be role cruncher. The multiple impact and volcanism in a short period of time (Keller, 2005) may have been caused by encounter the dark nebula and atte
著者
鮫島総史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第51回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2016-04-27

わが国に理学療法士が誕生して50年が過ぎ,この間,理学療法先進諸国から多くの支援を受けるとともに,国際協力機構(JICA)等を通じて海外の理学療法の普及・啓発に協力してきた。また,海外大学院での学位取得や留学,海外で理学療法士として勤務するなど,わが国の理学療法士の国際活動は着実に裾野を広げている。 今日,日本理学療法士協会は,世界理学療法連盟(WCPT)で最大の会員数と最高の組織率を誇る組織となり,さらなる国際貢献とともに,わが国の理学療法士のキャリアパスとしての海外での活動や理学療法の輸出を含めた国際展開が求められている。そこで,本シンポジウムでは,現地での豊富な臨床教育経験を有する3人の演者に,①それぞれの国の保健制度,②理学療法士(卒前・生涯学習を含む)教育制度,③理学療法士の職域・臨床実践の動向をご報告いただき,日本理学療法士協会が取り組む海外展開を含め,わが国の理学療法士の国際的な職域・キャリアパスと理学療法の輸出・技術移転を含めた可能性について広く意見交換する機会としたい。 (抄録執筆:内山 靖,高橋 哲也)
著者
千秋 博紀 黒澤 耕介 岡本 尚也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

A shooting star is caused by an entry of a cosmic dust particle into the planetary atmosphere. The light from the shooting star composed of thermal emission and emission lines from the gas in from of the dust particle and the vapor from the dust particle. It means that the physical and chemical condition of the dust particle can be estimated from a photometric and/or spectroscopic observations. However a shooting star is a sporadic and un-controled event, and thus the relation between the physical and chemical condition and the resulting spectroscopic observation is estimated by empirical equations.We are constructing a laboratory experimental system to simulate shooting stars by using a two-stage light gas gun at Planetary Exploration Research Center (PERC), Chiba Instiute of Technology, Japan. This gun shoots a projectile with size of 2 mm into a observational chamber filled with gas. The light from the projectile is observed by high-speed camera with 1 Mfps and its spectrum is taken by spectrometer simultaneously.We carried out a series of experiments using the system with a variety of projectile composition. The specific spectra relating to the projectile component were confirmed as a function of the location from the projectile (during head-neck-tail structure). We will give the experimental results and discuss the chemical and physical status of shooting star.