著者
星野 佑輔 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-51, no.13, pp.1-8, 2019-02-15

人は仕事や勉強などのやらねばならない必須タスクでも,「やる気が出ない」 という理由で後回しにしてしまうことがよくある.この問題に対し,たとえばゲーミフィケーションのように,従来はタスクの実行中やタスク自体に動機づけのための要素や機能を付け加えて支援する試みが多くなされてきた.これに対して本研究では,ビデオゲームによって好ましい効果が得られるといういくつかの先行研究で得られた知見に基づき,タスクの性質や構成に手を加えるのではなく,タスクの直前にビデオゲームをプレイすることで,タスクに対するやる気を向上させることができるのではないかという仮説を立てた.この仮説が支持されるかどうかを調査するための実験を 2 つ実施した.第 1 の実験では,ビデオゲームの難易度がタスクへのモチベーションにどのように影響するかを評価した.第 2 の実験では,ビデオゲームをプレイすること自体がタスクに対するやる気向上に影響があるかどうかを調査した.結果として,ゲームをプレイすることによるモチベーションへの有意な影響は認められなかったが,ゲーム難易度の違いが影響を与える可能性が示唆された. : People often postpone even mandatory tasks such as business or study on the grounds that they do not get motivated. To solve this problem, there have been many attempts that add some elements and / or functions that evoke people's motivation to the tasks themselves and / or during execution of the tasks: gamification is a typical approach. In contrast with these conventional approaches that modifies the nature of the tasks, based on several preceding works on the positive effects of the videogames, we made a hypothesis that playing videogames just before the tasks positively affect the motivation for the tasks. To investigate whether this hypothesis is supported or not, we conducted two experiments. The first experiment was to estimate how the difference of difficulty of a videogame affects the motivation, and the second one was to investigate whether playing a videogame affects the motivation or not. As a result, it was suggested that the difference of difficulty affects the motivation, although playing the videogame does not significantly affect the motivation.
著者
姚 琼 Yao Qiong
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
年報 非文字資料研究 (ISSN:18839169)
巻号頁・発行日
no.11, pp.337-357, 2015-03-20

As local communities have become modernized and urbanized, rituals have undergone significant changes. Traditionally, academics have valued historical traditions and consistency in rituals and criticized changes in line with the modernization of society. However, do organizers and performers of rituals have the same view on such changes ? A great majority of studies on rituals have examined changes and their causes. Researchers claim that many aspects of rituals, from content to organization, have changed, and offer advice on continuing rituals by analyzing the social and local causes of those changes. Surely, they do not consider the perspective of those involved in rituals. Not many studies are conducted from their viewpoint, even though they are the ones who organize and perform local rituals. Such a study would offer significant insight on local folk beliefs in the domain of folklore. The author of this paper participated in and closely observed the Yabuneri Shinto ritual in Shiratsuka Town, Mie Prefecture, to find out the perspective of ritual organizers and performers. Yabuneri is a traditional ritual with a 350-year history. This ceremony to drive away diseases presumably originates from the myth of Susanoo, in which the deity slays a giant serpent with eight heads and eight tails. Tsu City in the prefecture started to move toward modernization and urbanization in the mid-1950s. During this process, the organization and structure of rites and rituals have drastically changed. This paper will reveal how recent changes in Shinto rituals are viewed by those involved based on interviews with shrine parishioners in the Shiratsuka area who organize and carry out the Yabuneri ritual.
著者
池島 徳大
出版者
奈良教育大学大学院教育学研究科専門職課程教職開発専攻
雑誌
奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教育実践研究」 (ISSN:18836585)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-37, 2009-03-31

本研究においては、解決が困難とされるいじめ問題について、学校教育臨床*1の視点から、いじめへの介入視点を提示することにある。具体的には、いじめの語源及び文部省(文科省)がかつて提示したいじめの定義等を見直したうえで、いじめによって受ける心的外傷を学校教育臨床の視点から整理し、いじめの介入視点を提示するものである。いじめの不可視性、いじめ確定の困難性から、いじめがもたらす心的外傷による影響は非常に高く、その回復の過程に「安心」「表現」「絆」の3段階が必要であることが、諸家の研究から示唆された。
著者
緒方 南奈 徳田 智代 原口 雅浩
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.9-16, 2016-03-31

本研究では,母親に対する甘えが大学生の精神的自立に及ぼす影響について,母親の養育態度を踏まえて検討する。研究 1 では,大学生と大学院生89名を対象に質問紙調査を行った。その結果,現在の「相互依存的甘え」は精神的自立の「適切な対人関係」にプラスの影響を及ぼし,現在の「屈折した甘え」は,精神的自立の 「価値判断・実行」にマイナスの影響を及ぼしていた。特に,母親に対して素直に甘えを表現し,うらみすねみといった気持ちを持たない人は,精神的自立ができることが分かった。また,母親の過保護な養育態度は,精神的自立にマイナスの影響を及ぼしていた。研究 2 では,大学生と大学院生108名を対象に,甘えと精神的自立について自由記述式の質問紙調査を行った。その結果,子どもの甘えに対して,母親が一貫して子どもの甘えを受け入れる態度をとることが,「 自立できる甘え」にとって重要であることが示唆された。
著者
Honma Takeru
出版者
Tukuba English Linguistic Society
雑誌
Tsukuba English Studies (ISSN:09116184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-178, 1989-08-31

0.Introduction. Although underspecified segments have been strongly motivated within autosegmental theory, the issue of which values of which features may be underspecified is not settled. ...
著者
佐野 誠
巻号頁・発行日
2001-04

平成11・12年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)課題番号11620006
著者
安田 寛 北原 かな子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.83, pp.77-85, 2000-03-31

学制発布後も遅々として進まなかった公立の唱歌教育に対し,キリスト教の宣教師達は,各地で日本人に讃美歌を教え続けた。したがって,日本人と洋楽受容の問題を考察する際,音楽取調掛と文部省が中心となった音楽教育のみではなく,日本各地で行われたキリスト宣教師達による讃美歌教育の影響を無視することはできないのである。筆者等は以上のような問題意識によって,早くからキリスト教布教が盛んに行われた津軽地方を対象として,洋楽受容に関する研究を重ねてきた。本稿は,津軽地方での讃美歌の受容,特に実際に歌った人々がどの様に受け止めたのか,という意識を窺わせる資料を紹介し,明治期の地方における洋楽受容の一端を明らかにしようとするものである。
著者
纐纈 一起 鷹野 澄 坪井 誠司 宮武 隆 阿部 勝征 萩原 幸男
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.517-532, 1990-03-30

地震予知計画の下で国立大学により運営されてきた地震予知観測情報ネットワークでは,各構成機関により維持・管理されている約160点の地震観測点の波形データが,全国7箇所の地域センター等に集められ,そこでそれぞれ独自に開発された自動処理システムにより,地震波到着時刻の読み取り・震源位置の決定などがリアルタイムで行なわれている.この処理結果はオンラインで地震研究所の地震予知観測情報センター(EPDCに転送され,リアルタイム地震データとしてデータベースに保存されている.EPDCではこのデータを統合し,TSSにより表示できるようにしたシステムを開発した.統合処理は2つのジョブが前処理と本処理を担当する.前処理ではデータを震源時順に並べ替えることと,震源時と震央座標が近い地震を同一地震と仮判定することが行なわれる.この結果がさらに本処理に送られ,親子法による同一地震の本判定と震源再決定が実行される.震源再決定で得られた統合処理結果は,ユーザのTSSごとに起動される検索プログラムで表示させることができる.1ヵ月間の処理結果を気象庁の震源速報と比較したところ,海の地震の深さが異なるのが目立つ程度で,マグニチュード3半ばより大きい地震はよく一致した.それより小さな地震では全般的に気象庁より検知能力が高いが,観測網が粗い中国・四国地方やまったく観測点がない九州地方は気象庁が優れている.本システムの今後の課題は,現在大きな地震のデータ統合を優先しているため,小さい地震の分離能力が弱い点を改善することである.また,現在情報不足で困難となっているマグニチュードの独自決定も課題であろう.
著者
大堀 道広 纐纈 一起 南 忠夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.433-461, 1990-09-28

本論文は,不整形地盤の3次元問題について,解析手法を提案し,さらにこれを用いて堆積盆地の地震動特性の検討を行ったものである.まず, 2次元問題において不整形地盤を解析するための有力な手法と評価されているAL法を, 3次元問題への拡張するための定式化を行った.従来AL法による3次元解析では特に工学的に重要な平面S波入射の垂直入射問題を取り扱うことが困難とされていた.この問題を,ベクトル・ポテンシャルによる変位の表現式を工夫することにより解決した.そして,提案した解析手法の妥当性と作成したプログラムの信頼性を確認するために,他の手法により示されている軸対称堆積盆地についての解析結果と比較したところ,良い一致を示した.続いて,これまで取り扱われることの少なかった3次元地下構造を有する堆積盆地の地震動特性を,軸対称問題ばかりでなく,非軸対称問題についてもAL法による3次元解析を行い,得られた周波数応答および時刻歴応答を1次元解析および2次元解析による応答と比較検討した.その結果, 1次元解析よりも2次元解析, 2次元解析よりも3次元解析というように,解析する次元が高くなるにつれて,堆積盆地の地表動には,より短周期の波動が励起され,振幅もより大きくなり,継続時間もより長くなるという傾向が見られた.これは, 3次元的な地下構造が地震動に与える影響が非常に大きいことを示唆している.