著者
安達 内美子 河合 あずさ 足立 己幸
出版者
名古屋学芸大学健康・栄養研究所
雑誌
名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報 = Annual Report of Institute of Health and Nutrition, Nagoya University of Arts and Sciences (ISSN:18821820)
巻号頁・発行日
no.4, pp.27-45, 2010-12-25

本研究は地域の特徴を生かした食教育プログラム開発における環境的アプローチの一環として、モーニングサービスとして提供されるメニューの現状と課題を明らかにすることを目的とした。2009年10月~2010年 3 月、著者のうち名古屋圏在住の 2 名が各自生活圏内の喫茶店について、食物内容の実測を含む踏査調査を実施した。調査した118店の136メニューのうち、飲み物を注文すると無料で料理がつくタイプ、並びにサービス実施時間帯だけ飲み物代を安く設定し、追加料金(下げた価格の分)を支払うと料理がつくタイプの110メニュー(バイキングタイプ 2 メニューを除外)について解析を行った。料理を飲み物、主食系、主菜系、副菜系の各料理、乳製品、果物、その他に分類し、料理レベル、食事レベル、食材料レベル、栄養素レベル及び価格での現状を検討した。飲み物(ホットコーヒー)の価格は350円と400円で約70%を占めていた。料理レベルについて、主食系ではトースト、主菜系ではゆで卵、副菜系ではサラダが主に提供されており、いわゆる洋食料理に偏っていた。料理の組み合わせは、核料理(主食系・主菜系・副菜系) 3 種が揃っているメニューは26.4%に留まっていた。食材料レベルでは、穀類の出現率は100%で最高率、次いで油脂94.5%、卵類79.1%の順だった。一方、副菜系の主材料となる淡色野菜・きのこ・海藻類、緑黄色野菜の出現率は低く、 0 グラムが56.4%を占めた。栄養素レベルでは、脂肪エネルギー比率が平均で36.8%と高く、カルシウムとビタミン C が特に低値を示した。
著者
見神 広紀 宮本 孝道 木村 啓二 笠原 博徳
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2010-ARC-187, no.22, pp.1-6, 2010-01-21

本稿ではビデオコーデックである H.264/AVC エンコーダの高速化手法としてフレームおよびマクロブロックでの階層的な並列処理を提案する.H.264/AVC エンコーダの一実装である x264 上にマクロブロックでの並列処理機能を実装し,64 コアのマルチコアシステム上での処理性能の評価を行った.その結果,2 コア集積のマルチコアである Intel Itanium2 (Montvale) を 32 基搭載した 64 コア構成の ccNUMA サーバである SGI Altix450 において,フレームでの並列処理のみの場合が 6.3 倍であったのに対しフレームおよびマクロブロックの 2 階層で行った場合は 10.6 倍の性能向上が得られた.
著者
山本 雄大 山本 潤美
出版者
八戸学院大学
雑誌
八戸学院大学紀要 (ISSN:21878102)
巻号頁・発行日
no.57, pp.53-64, 2018-12-21

本研究の目的は,日本社会において配偶者も恋人もいないシングルへの否定的ステレオタイプを検討することである。研究1ではGreitemeyer(2009)の追試を行い,シングルのターゲットが、パートナーのいるターゲットよりも,パーソナリティ,生活満足感,身体的魅力を否定的な評価を受けることを明らかにした。さらに,研究2ではシングリズムを生み出す心理過程について検討した。本研究では,結婚願望信念がシングルに対する否定的評価を導くと仮説を立てた。その結果,結婚願望信念を強く抱く人ほどシングルの外向性を否定的に評価した。
著者
早川 広記 Hiroki Hayakawa
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-09-30

近年の汎用計算機はCPU以外にGPUや専用アクセラレーションユニット等,様々なハードウェアがプログラマブルデバイスとして搭載されるようになった.特に,GPUやIntel(R)Xeon Phiのようなメニーコアアーキテクチャの拡張デバイスが搭載される例が多く,スーパーコンピュータへの導入事例も多い.例えば,東京工業大学のスーパーコンピュータ,TSUBAMEは多数のCPU及びGPUで構成される.他には,TOP500上位にランクインするスーパーコンピュータにおいてもGPUやXeon Phiなどのメニーコアデバイスが採用されている例が多く見られる.このような構成のマシンでは,CPUとアクセラレーションユニットが効率良く協調動作するプログラムを実装すると高い性能を発揮できる.アクセラレーションユニットを活用する技術は未知な部分が多く存在し,高い性能を実現するための理論的な研究及び実験的な研究が盛んに行われている. しかしながら,これらの研究はアクセラレーションユニット上で高い性能を実現することを目的として完結している例が多く,計算機上のアクセラレーションユニットは十分に活用できているが,CPUが十分に活用できていない例が多く見られる.これはアクセラレーションユニットのみならず,CPUも適切に活用すれば更なる性能向上ができる可能性を示している.本研究では,計算リソースが複数混在した計算機上(CPU 4 cores 8 threads + GPU 2台)において,GPUアクセラレーションの成功実績のある最短経路探索アルゴリズムであるIDA*アルゴリズム(Iterative Deepening A* algorithm)をGPU実行のみならず,計算機上の計算リソース全て(CPU+GPU)を効率良く動作させることを目的とし,単純なGPUアクセラレーションを行った場合よりも高速な実装手法の有無を検討した.研究成果として,IDA*アルゴリズムをルービックキューブの最短解探索に適用した場合において,CPUとGPUを同時に効率良く使用する実装手法を3つ提案することができ,従来手法に対し高いパフォーマンスを得ることに成功した.
著者
金野 浩二 山本 奬 大谷 哲弘 KINNO Koji YAMAMOTO Susumu OHTANI Tetsuhiro
出版者
岩手大学大学院教育学研究科
雑誌
岩手大学大学院教育学研究科研究年報 = Research Journal of the Iwate University Professional School for Teacher Education (ISSN:2432924X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.147-156, 2019-03-29

本研究の目的は,教師からのほめを認知しにくい子供のほめの受け取り方について検討し,どのような言葉がけをすることがほめを認知するのに効果的であるのかを明らかにすることであった。そこで,小学校4~6年生に対して質問紙調査を行い,ほめを認知しにくい子供を抽出した。そして,抽出した子供への聞き取り調査を行うことで効果的な支援方法について検討するとともに,担任による実践によって支援方法の効果を検証した。これにより,ほめを認知しにくい子供は「具体的なことや場面についてほめられると認知する」「努力したことなど本人が自覚していることをほめられると認知する」ということが明らかになった。そして,この2点を踏まえ,教師が「子供の自覚と教師の評価を一致させてほめる」ことが支援として効果的であることがわかった。
著者
矢嶋 直規
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = Humanities: Christianity and Culture (ISSN:00733938)
巻号頁・発行日
no.46, pp.281-301, 2015-03-31

スピノザは彼以降の西洋近代哲学の展開に大きな影響を与えた哲学者である。ヒュームの哲学もまたスピノザの影響を受けて成立した体系の一つである。スピノザとヒュームに共通する最大の主題は「自然」である。両者は、倫理を自然によって基礎づけることを哲学の根本的な目的としていた。ヒュームにとってhuman nature とはいわゆる人間本性ではなく、人間に固有の知覚の連合とそれに基づいて成立する現象の総体としての自然を意味する。ヒュームもスピノザも因果の本質が必然性にあると見なしている。ただしスピノザの必然性が理性により認識されるのに対し、ヒュームの必然性は感覚によって感じられるという違いがある。ヒュームとスピノザの体系の共通点と相違点を理解する上でスピノザの「一般的概念(notiones universales)」とヒュームの「一般観念(general ideas)」の関係を考察することが重要である。スピノザは「一般的概念」を第一種認識に属する想像力の働きに基づく人間の誤謬の源泉として批判している。それに対してヒュームはロックの「抽象観念(abstract ideas)」を批判しながら、一般観念に独自の理解を付与している。とりわけヒュームはロックによる抽象観念を、人間精神の有限性を根拠として批判しており、この点でヒュームとスピノザは共通の認識に基づいている。スピノザは一般的概念を理性による「共通概念(notiones communes)」によって克服し、十全な認識としての第二種認識へと移行する。それに対してヒュームは一般観念に止まりつつ、一般性の拡大によってより妥当な認識が成立していくという観念の自然な発展の理論を提示する。ヒュームの一般観念は習慣から社会的な慣習へと発展することで単に個人的な主観的認識に止まるものではなくなる。スピノザもヒュームもそれぞれの哲学によって他者と協働して幸福を達成する筋道を示そうとする。ただし、スピノザが哲学的認識による理性的主体自身の救いを目的とするのに対してヒュームは一般的認識の成立に基づく共同体全体の安定を目的としている。安定した共同体は富と学芸を生み出し、人間性そのものを発展させる。スピノザとは対照的にヒュームにおいて個人の救いは、個人の理性による哲学的認識にではなく共同体全体の力に委ねられるのである。
著者
池田 幸代 イケダ ユキヨ Yukiyo Ikeda
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-90, 2011-09-30

本研究では、地域に密着した経営を行う企業が成長していくために必要な要因について明らかにすることを目的としている。そのために北海道札幌の代表的な菓子メーカーである「(株)きのとや」を事例として取り上げている。そしてこの企業の成長プロセスをいくつかの時期に分け、経営戦略の様々な視点から分析を行っている。この企業は創業時より、店舗の立地上の不利益や限定された販売エリア、厳しい競争環境といった様々な困難に直面してきた。しかし、この企業は、成長過程のそれぞれの時期において、戦略上の対応を変えることで成長を続けてきた。企業の成長の過程では、戦略ポジショニングの変更と製品開発を行うとともに、戦略ポジショニングを支える組織能力の構築がすすめられていた。このように、本研究は、企業がいかにしてこうした直面する問題を克服してきたかについて明らかにするものである。
著者
塩田 今日子
雑誌
二松學舍大學論集
巻号頁・発行日
no.63, pp.(15)-(37), 2020-03-27
著者
定兼 邦彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.899-902, 2007-08-15

データ列に対して検索効率などを効率化するため,索引を付加することがある.演算を効率化するために,データに対して特定の情報を付加したものを,ここではデータ構造と呼ぶこととする.本稿ではこのようなデータ構造のうち,もとのデータの長さnに対してo(n)程度の付加情報のみを与える,簡潔データ構造と呼ばれる分野について解説する.特に,最も基本的かつ応用範囲の広いビットベクトルに関する簡潔データ構造に焦点を当てる.ビットベクトルBに対して,先頭からi番目までのビット中の1の数を与えるrank1(B i)と,i番目の1の位置を与える select1(B i)という演算は,基本的かつ重要な演算である.これらの演算が定数時間で可能な簡潔データ構造について,具体的なデータ構造とアルゴリズムを紹介し,次に付加するデータサイズの下界についての結果を示し,最後に今後の展望について述べる.
著者
徐 方啓
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.129-142, 2019-07-31

[要約]数十年前,パナソニックの創業者である松下幸之助はそのずばぬけた経営手腕と素晴らしい経営理念のため「経営の神様」と称賛された。今日,日本には松下幸之助に匹敵する経営者がいるのか。その答えは「いる」。すなわち京セラと KDDI の創業者である稲盛和夫である。本稿は,まず技術者,経営者,哲学者と三つの視点から稲盛和夫という人間を考察した。その上で,ヒトの心を中心とする経営,モノの真髄を追求する経営,カネの価値を高める経営と三つの視点から稲盛経営哲学とは何かについて考察した。後,国内外の学界・産業界の新しい動向に注目して稲盛経営哲学への展望を述べた。[Abstract]Several decades ago, Kounosuke Matsushita, the founder of Panasonic, was praised as“God of Business”for his unrivaled management skills and a wonderful management philosophy. Today, does Japan have a comparable top manager to Kounosuke Matsushita ? The answer is“Yes”. That is, Kazuo Inamori, the founder of Kyocera and KDDI. This paper first examined the human being, Kazuo Inamori, from the three viewpoints: engineer, manager and philosopher. And then, it considered what the Inamori Management Philosophy is from the three viewpoints of the management centered on human heart, the management pursuing the essence of goods, and the management raising the value of money. Finally, it described the prospects for the Inamori Management Philosophy, focusing on new trends in academia and industry both in Japan and abroad.
著者
苫名 孝
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.73-81, 1956-03-30

【緒言】 大根のすいり現象については,従来多くの業績があり生態的,組織解剖的な面で得る所多大であるが,体内成分の点では定量的な成績を見出し難いうらみがあった.著者はさきに,根菜類に及ぼす肥料三要素の影響について報ずる所があったが,その一端として体内含量とす発現との関係を調査し,更に窒素含量の消長についてはようやく詳細に検討を試みた.なお,地上部茎葉との関係を明らかにする必要から,その手がかりとして浸透圧に就いても若干の測定を行った.
著者
木下 光生
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.271-290, 2011-11-30

本稿は、日本の賤民と百姓が一八世紀後半~一九世紀以降、自他の身分を強く意識し出す状況を素材として、共同研究の全体テーマ「身体と人格をめぐる言説と実践」を、日本近世史研究において問うことの意義を考えるものである。本テーマは、これまでの近世史研究ではほとんど意識されてこなかったが、その問いを、自己の「客観的な実態」(身体)と「自己認識」(人格)の間に生ずるズレやせめぎ合いをめぐる問題に置き換えてみれば、近世史研究で残されている課題、とりわけ賤民と百姓の自他認識論として議論することが可能となる。そしてそうした視点にたつと、一八世紀後半~一九世紀という時代のもつ重要性が鮮やかに映し出されることとなる。通常、右の時代は、民衆の力によって身分(制)社会が「動揺」「崩壊(解体)」する時代として描かれがちである。だが、当該期の賤民や百姓が邁進した地位向上運動をつぶさに見てみると、当時の民衆が「身分」を相対化しようとしていたどころか、むしろそれにこだわりまくり、身分を拠り所にした自己表明を、運動によって公言して憚らない人びとであった点に気づかされる。しかもそれらの運動は、いずれも、他身分・他賤民との「平等」ではなく、「差別化」を図ろうとするものばかりであり、それに邁進すればするほど、本来複雑な実態をもつ「客観的な自己」と「自分が自覚する自己」をひたすら乖離・分裂させるものであった。こうした動向を、単に「限界」視するのは無意味であり、人びとが「身分」に寄り添おうとした切実な思いに、もっと肉迫し得るような発想と時代認識をもたなければならない。加えて、他者との「差別化」を孕むような地位向上運動は、近現代日本社会でも確認できる。その意味で、「身体と人格をめぐる言説と実践」という問いかけは、「前近代/近代」という既存の時間認識を相対化する可能性も秘めている。