著者
舩木葵
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>結果から眠気のするときは覚醒時に比べ血中酸素濃度が1.1%程度低下していたため、やはり眠気のするときは血中酸素濃度が下がるのではないかと考えた。仮説は、眠気のするときの酸素の量は2~3%減るのではないか、とたてたが実験を通してそれほど血中酸素濃度は低下していないことが分かった。また、心拍数も同時にはかれるため血中酸素濃度を測るときに見てみると覚醒時、眠気のするときに関わらずいつもばらつきがあったため、心拍数は眠気に左右されないと考えた。数値が3~4%以上下がることなく、正常値の範囲内で覚醒時と眠気のするときの血中酸素濃度の変化をみることができた。またこの実験結果を応用すると、自動車運転の居眠り防止に役立てられるのではないかと思った。ハンドルに血中酸素濃度を測ることができる装置をつけ、酸素濃度が下がり気味になっていたら脳を刺激する警告音がなる仕組みにすることで、運転中の居眠り、また居眠りによる事故を減らすことができると思う。
著者
河野 恵三 宮田 聡美 新井 成之 有安 利夫 三皷 仁志 牛尾 慎平
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】我々は昨年の本学会で、第3類医薬品「錠剤ルミン®A」の主要な有効成分NK-4が、マクロファージ(Mφ)様に分化させたTHP-1細胞に対して、M1 Mφマーカーの発現増強、TNF-α/IL-10産生比の増加やビーズの取り込み亢進など、貪食能の強いM1様Mφへ分極させることを報告した。今回、錠剤ルミン®Aの一般創傷に対する作用機序を明らかにするため、アポトーシス細胞の貪食(Efferocytosis)による炎症性M1様Mφから創傷治癒能の高い抗炎症性M2様Mφへの移行に及ぼすNK-4の効果について検討した。【方法と結果】①NK-4 (1-5 μM)によりM1様Mφへと分極したTHP-1細胞を、過酸化水素処理によりアポトーシスを誘導したJURKAT E6.1細胞(Apo-J)と、1 : 0.25~2の割合で混合し37℃で1時間共培養後にLPS (1 μg/ml)で刺激し、サイトカイン産生を調べた。その結果、NK-4濃度依存的且つApo-J細胞数依存的なTNF-α産生抑制と、対照では見られないIL-10産生の有意な増加が認められた。一方、TGF-β産生に影響は認められなかった。TNF-α/IL-10産生比でみると、細胞比1:1の場合、LPS単独刺激に対して対照では28.8 ± 9.7% (n=3)低下したのに対して、NK-4 (5 μM)処理では83.7 ± 8.7% (n=3)の低下が見られ、NK-4処理細胞で抗炎症性M2様Mφへの移行が促進していた。またNK-4処理細胞で対照よりも強いApo-Jの貪食が見られた。②Efferocytosisに重要なPhosphatidylserine とMφ上の受容体との結合をAnnexin Vで阻害すると、TNF-α産生抑制は完全に回復したが、IL-10産生増強には影響が見られなかった。③Cytochalasin DでApo-Jの貪食を阻害すると、IL-10産生増強作用のみが見られなくなったことから、IL-10産生増強作用はApo-Jを貪食することが重要であると考えられた。④Efferocytosisで活性化されるPI3K/Akt経路の関与を調べた結果、Western BlottingではNK-4処理細胞とApo-Jとの共培養によりAktの強いリン酸化が認められた。またWortmannin 処理ではNK-4処理細胞におけるTNF-α産生抑制は部分的に回復し、IL-10産生増強は完全に低下した。【考察】NK-4は創傷時にMφを貪食能の強いM1様Mφへと分極を促進すると共に、炎症の収束へ向けてEfferocytosisを高めて、炎症性M1様から抗炎症性M2様Mφへの移行を促進することで治癒を高めることが考えられた。またその作用機序としてPI3K/Akt経路の活性化の関与が示唆された。
著者
迎山 和司
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では,人工知能によって4コマ漫画を分析し,得られた特徴情報からルールを設定して2コマ漫画を生成した.4コマ漫画は4つのコマで構成され,一つのコマは登場人物・背景・セリフ・オノマトペ・漫符の要素で構成される.興味深い点はコマの形は同じなのにコマをバラバラに分解されても読者は元に戻すことができることだ. これは、コマ同士に関連する何かがあることを意味する.そこで,このような接続ルールを見つけ,選択されたパネルを組み合わせて新しい物語を自律的に生成した実験を行った.分析と試行の結果,セリフと登場人物のルールを発見し,2コマまでは破綻のない物語を生成できた.したがって,基礎的ではあるが,あらゆる漫画を抽象化して共通要素から新しい物語を作るという本手法の有効性は示せたと考える.今後は4コマ漫画にのみならずストーリー漫画でも要素を抽出して同様の手法で試したい.
著者
中島 健介
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

はじめに大規模な津波は大気Lamb波を励起することが知られており(Arai et al 2011; Mikumo et al 2008 など), グローバルな微気圧計観測網から海面変位を推定することも行われている. 過去のその様な手法において, 津波の波源域での圧力偏差 p は津波に伴う海面鉛直速度 w を用いて p=ρ c w (cは音速)と与えられている. この関係は, 通常の音波を想定しており, 内部重力波, 重力の影響を強く受ける音波, そして Lamb 波の場合の適切さには疑問がある.実際, Watada (2009)は等温大気について, 下面境界に鉛直速度を与えて圧力応答を波数・周波数空間において調べ, 音波, 内部重力波,Lamb 波の分散関係に対応して顕著な違いがあることを示した. 対応して実空間での応答の調査が望まれるが, 過去には現実的な断層運 動を想定した計算が行われており(たとえば泉宮・長岡,1994) 理論的な理解には必ずしも繋がっていない. そこで本研究では理想的な状況を想定して津波による大気波動の励起を調べる.考察する系と数値モデル線形化した水平鉛直2次元の等温大気の方程式を,下面に与える鉛直流により駆動し, 応答を調べる.計算領域は, 水平2000km, 鉛直 100km であり,上端 20km はスポンジ層とする. 下端の鉛直流は2種類のものを想定する. 第一は, 時間空間的にガウス分布のパルスであり, 地震断層変位に対応する海面盛り上がりを想定する. 時定数は, 通常の地震から津波地震までを想定して 10秒から300秒までのパラメタ実験を行なう. 第二は, 水平にガウス分布の海面変位を左右に動かすものであり, 津波の水平伝播を想定する. 伝播速度は, 典型的な水深における津波伝播速度を想定して25m/sから 300m/s の範囲でパラメタ実験を行う. 方程式の離散化には spmodel(竹広ほか2013)を用いた.結果海面の盛り上がりで生じる圧力偏差は音速で水平に伝わるLamb波によって支配されるが, その波形は, 海面盛り上がりの時定数にほとんどよらないことがわかった. 振幅は, 海面の盛り上がりに対応して大気が static に鉛直変位することを想定して見積もることができる(詳細は当日)。伝播する津波から生じる応答としては、津波とともに伝わる強制波動(通常は内部重力波)に加えて, 音速で水平に伝わるLamb波が生じることがわかった. この成分の振幅は概ね津波伝播速度の2乗に比例し, 典型的なパラメタでは, 海面盛り上がりによる成分の半分程度の大きさとなる.理論的考察以上の結果は、鉛直流擾乱を持たない Lamb 波が大気下端での鉛直運動で励起されることを示す。このような必ずしも自明でない結果について、当日、理論的議論を行う。参考文献Arai et al (2011): Geophys. Res. Lett. doi:10.1029/2011GL049146Mikumo et al (2008): J. Geophys. Res. doi:10.1029/2008JB005710Watada(2009): J. Fluid. Mech. doi:10.1017/S0022112009005953泉宮・長岡(1994): 海岸工学論文集, Vol.41, p.241.
著者
梶田 展人 川幡 穂高 Wang Ke Zheng Hongbo Yang Shouye 大河内 直彦 宇都宮 正志 Zhou Bin Zheng Bang
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年、完新世の気候変動は人類文明の盛衰に強く関係していた可能性が多くの研究で指摘されている。地球温暖化による急激な気候変動が懸念されている現在、完新世の気候変動を定量的かつ高時間解像度で復元し、そのメカニズム及び人類への影響を明らかにすることは、将来の気候変動とその社会への影響を予測する上で重要である。 東アジアの揚子江デルタでは、約7.5-4.2 cal. yr BPにかけて世界で最古の稲作を中心とした新石器文明が栄えたが、4.2 cal. yr BPに突然消滅し、300年間にわたり文明が途絶えたが,この原因は明らかになっていない。そこで、本研究では文明盛衰の背景にあった環境変動を解明すること目的とした。 中国の東シナ海大陸棚に存在する陸源砕屑物堆積帯(Inner shelf mud belt)から採取された堆積物コア(MD06-3040)のアルケノン古水温分析(Uk37’)を行い、完新世の表層水温(SST)変動を高時間解像度で明らかにした。コア採取地は沿岸の浅海であるため、SSTは気温(AT)と良い相関がある([AT] = −10.8 + 1.35 × [SST]; r2 = 0.90, p < 0.001)。よって、Uk37’-SSTの復元記録から揚子江デルタのATを定量的に推定することができる。Uk37’-SSTのデータに基づくと、Little Ice Age (約0.1-0.3 cal. kyr BPの寒冷期)など全球的な気候変動と整合的な温度変化が復元されたことから、この指標の信頼性は高いと言える。そして、約4.4-3.8 cal. kyr BPには、複数回かつ急激な寒冷化 (3-4℃の水温低下、3-5℃の気温低下に相当) が発生していたことが示された。この寒冷化は4.2 kaイベントに呼応し、顕著な全地球規模の気候変動と関連するものと考えられる。この時期に、東アジア及び北西太平洋では、偏西風ジェットの北限位置の南下、エルニーニョの発生頻度の増加、黒潮の変調 (Pulleniatina Minimum Event) などの大きな環境変動が先行研究より示唆されている。これらの要素が相互に関係し、急激な寒冷化およびアジアモンスーンの変調がもたらされた可能性が高い。本研究が明らかにした急激で大きな寒冷化イベントは、稲作にダメージを与え、揚子江デルタの社会や文明を崩壊させる一因となったかもしれない。
著者
中塚 武
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

〇はじめに-文理融合と言う課題 歴史学や考古学と地球惑星科学は、ともに過去におきた出来事を対象に含み、長い時間を掛けて進む、いわゆる歴史的プロセスを扱う学問分野である。その共通の特性を生かして、さまざまな共同研究が行われてきた。しかし文理融合にはさまざまな課題があり、その背景には学問の根源的な目的の違いという問題があった。ここでは、総合地球環境学研究所(地球研)で2014年から5年間にわたって行われた研究プロジェクト「高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索」(気候適応史プロジェクト)の経験から、歴史学・考古学と地球惑星科学の協働の活性化の方向性について議論したい。〇気候適応史プロジェクトの基本構造 地球研は文理融合の手法を用いて地球環境問題の解決に資するプロジェクトを全国の大学等から多数公募し、時間を掛けて準備と審査を繰り返したのち期限を定めて本格的な研究を行わせる大学共同利用機関である。古気候学者である私は、その枠組みの中で2010年から全国の古気候学、歴史学、考古学の関係者に呼びかけて、3つのステップからなる気候適応史プロジェクトの構想を作った。1)最新の古気候学の手法を用いて過去数千年間の日本の気候を年単位で復元する、2)得られた古気候データを歴史学・考古学の膨大な史・資料と詳細に対比する、3)気候と社会の関係の無数の事例を比較分析して、気候変動に強い社会と弱い社会の特徴を明らかにする。このプロジェクトでは当初、文献史料から天候を解読する歴史気候学を除くと、理系から文系への一方的な情報の流れだけを想定していたが、実際には両者の緊密な相互作用により、事前の想定を遥かに越えた研究の進展があった。以下、プロジェクトで最も重視した古気候復元指標である樹木年輪セルロースの酸素同位体比を用いた夏の降水量の復元を例にして、文理融合の効果と課題について述べる。〇文理融合による研究の進展と課題 樹木年輪セルロースの酸素同位体比は、年輪古気候学に独特の難しさがあった日本のような温暖湿潤域で高精度の気候復元を可能にした画期的なプロキシーであり、プロジェクトでは、そのデータを日本全国で過去数千年間にわたって早期に構築することを目指していた。文系の研究者は、当初、年輪古気候データのユーザーとしてのみ位置づけられていたが、実際にはさまざまなレベルでデータ構築自体に大きく貢献することになる。理系から文系へは高精度の古気候情報と共に、酸素同位体比を用いた新しい年輪年代情報が提供されたが、それに対して文系から理系には以下のような反応があった。1.出土材や建築古材の積極的な提供、2.データの史・資料による批判、3.データの時空間的な精度と範囲の改善要求である。理系の側にとって1は全面的に歓迎できるが、2,3は耳が痛く、自らの発想からは生まれにくい。しかし3の要求が、世界で初めて酸素と水素の同位体比を組み合わせて、年輪古気候学が最も苦手とする長周期の気候復元を可能にした。その結果、2の批判も克服して、過去数千年間に亘る年~千年のあらゆる周期の気候変動の復元に成功し、古気候学・歴史学・考古学の研究は一気に進展したが、プロジェクトの目的である肝心の「気候変動に強い社会システムの探索」の方はなかなか進まなかった。文理を越えた学問の根源的な目的への相互理解が足りなかったからである。〇おわりに-相互理解が協働の基本 空前の長さと精度を持つ高分解能古気候データの構築という気候適応史プロジェクトの成果は、文理双方の学問的なニーズが緊密に相互作用した結果である。当初は理系データの文系への提供だけを考えていたが、実際には相手のニーズを無視した一方的なデータの押し付けはうまく行かず、文理を超えた相互批判が重要であった。これは、文系のデータを理系が利用する場合でも同じである。一方で、文理融合が個別分野の発展を促すだけでなく、真の「融合」になるためには、より深いレベルでの相互理解が必要であった。私が気候適応史プロジェクトの中で気付いた最も重要な事実は、「歴史学者や考古学者は、必ずしも現代の問題の解決のために、歴史の研究をしている訳ではない」ということである。もちろん、それには意味がある。文系の歴史研究が重視するのは、研究対象とする時代の人々の価値観の違い、つまり歴史上の各時代の人々の多様性を理解し、現代の私たちを相対化することである。現代が過去と違うのと同様に、未来も現代とは違う以上、未来志向で現在の問題を解決していくためには、法則性の発見を重視する理系の研究者と、多様性の理解を重視する文系の研究者が、相互に尊重し合って未来に向って共に考えていくスタンスが必要である。そのことに気が付いたことが私にとってプロジェクトの最も重要な教訓であった。
著者
福井 敬一 佐藤 英一 新堀 敏基
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2015年7月7日より,正式運用を開始した静止気象衛星ひまわり8号は先代のひまわり7号(MTSAT-2)に対し,大幅な機能強化が図られた.搭載された可視赤外放射計(Advanced Himawari Imager, AHI)は観測波長帯数が5バンド(可視1,赤外4)から16バンド(可視3,近赤外3,赤外10)へと,空間分解能もほぼ倍に高解像度化した.さらに,全球の観測頻度も60分ごとから10分ごとに向上するとともに,日本域を観測する領域観測1,2(東西2000 km,南北1000 km)や火山観測や台風観測などに利用される東西南北1000km四方の可動領域(領域観測3.機動観測)では常時2.5分ごとの観測も可能となっている.機動観測では台風観測時以外はカムチャッカの火山を対象に観測している時間が多い(2018年1月末現在はマヨン火山を含む領域を観測している).また,東西1000km,南北500kmの領域2か所(領域観測4,5.ランドマーク観測)を常時約30秒ごとに観測している.領域観測4,5の主目的は,位置合わせや月・深宇宙を利用した感度校正(Bessho et al., 2016)であるが,軌道が安定していることもあり,火山噴火を主対象とした領域を観測することも多く,2018年1月末現在,領域4,5は各々,インドネシアのアグン火山,桜島を含む領域を観測している.ひまわり8号の高解像度・高頻度観測によってMTSATに比べ小さな噴火も観測可能となるとともに,多バンド化によって,火山灰雲の高度推定精度が向上し,火山灰雲の光学的厚さや粒径などの情報を含む火山灰プロダクトの開発が進められている(Hayashi et al., 2016).さらに,火山ガス(SO2)の検出も可能となってきている(例えば,Ishii et al., 2018).桜島を含む領域では,ひまわり30秒データとともに,全球観測,日本域観測のデータも利用できるため,10分毎に4回,1分間で4枚の画像を取得できる時間帯がある.さらに,同じ領域を領域観測3,4,5で観測することも可能であり,このような運用を行えば,さらに高頻度の観測も可能になる.噴火直前の火口の温度状況や噴火直後の噴煙柱の成長の様子を捉えるため,ひまわり8号の30秒ごとの超高頻度観測(Super-Rapid Scan)データを利用した研究を開始した.Fukui et al. (2017) では桜島爆発直後の噴煙柱についてバンド3(波長0.64μm,空間分解能500m)の30秒毎データと桜島周辺で実施している高密度気象レーダーデータ(Sato et al., 2017),監視カメラ映像データとを比較検討した.今回はバンド3データと赤外データから求めた桜島爆発時の噴煙柱の上昇過程と噴煙上端の温度の時間推移から見た噴煙柱の成長過程について報告する.参考文献Bessho, K. et al. (2016) An Introduction to Himawari-8/9 —Japan’s New-Generation Geostationary Meteorological Satellites. J. Meteor. Soc. Japan, 94, 151-183, DOI:10.2151/jmsj.2016-009.Fukui, K. et al. (2017) Observations of volcanic eruption columns using Himawari-8 Super-Rapid Scan 30-sec imagery. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P03Hayashi, Y. et al. (2016) Observation of volcanic ash clouds by Himawari-8. JpGU 2016, MIS26-06.Sato, E. et al. (2017) Volcanic ash plume observation by weather radars. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P01.Ishii, K. et al. (2018) Using Himawari-8, estimation of SO2 cloud altitude at Aso volcano eruption, on October 8, 2016. Earth, Planets and Space, 70:19, DOI:10.1186/s40623-018-0793-9.
著者
中道 治久 清水 厚 下村 誠 Syarifuddin Magfira 井口 正人
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1.はじめに 噴煙や火山灰の拡散範囲の把握にリモートセンシング技術が活用されている.例えば,桜島噴火では国交省現業レーダー(XRAIN)で噴煙が把握され(真木・他,2015), GNSSの搬送波位相データから噴煙高度推定が行われている(Ohta and Iguchi, 2015).噴煙高度10kmを超えるような噴火ではCAPILSO衛星搭載ライダーにより噴煙が把握され(Winker et al., 2012),地上のライダーネットワーク(例えば,EARLINET)にて国を超えての火山灰の広域拡散が把握されている(Ansmann et al., 2010).最近では噴火を対象に常時リモートセンシング観測が桜島を中心に行われており,昨年レーダーによる桜島と新燃岳の噴煙の観測結果を報告した(中道・他,2018).本講演では,2018年6月16日桜島南岳噴火のレーダーとライダーによる観測結果の比較と,2018年12月からの口永良部島噴火のレーダー観測結果を報告する.2.南九州の火山近傍のレーダー観測と桜島のライダー観測 エアロゾル観測によく用いられるミー散乱ライダー(以後,ライダー)は,レーザーを鉛直上向きに照射して対象物からの後方散乱光を観測する機器である.京都大学防災研究所は2014年11月末に2台のライダーを桜島島内に設置してから連続観測を実施している.また,南九州の主要な火山の近傍にXバンドマルチパラメータレーダー(以後,レーダー)を2017年8月に設置し,連続観測を実施している(中道・他,2018).現在,桜島および口永良部島についてはセクタRHIスキャンにてレーダー観測をしている.なお,桜島火山観測所にはライダーとレーダーの両方が設置されている.3.2018年6月18日桜島南岳噴火時の噴煙のレーダーとライダーの観測結果の比較 南岳山頂火口にて2018年6月16日午前7時19分に噴火が発生し,噴煙高度4700mと報告されている(気象庁HPを参照).この噴火では,火砕流が火口から南西方向に1.3 km流下した.映像から噴煙柱の下部から上部が西に風に流されてシフトしており,同時に火砕流の発生が見て取れた.レーダー反射強度分布から,噴火開始後1分内に噴煙は3,300mに達し,噴火開始後3分で5,000mに到達したことがわかった.また,同時に噴煙柱が西方向(観測所に近づく方向)へ1kmシフトしているのが確認できた.噴火開始5分後に火口直上から高度3,000mにかけて鉛直のレーダー反射強度の高まりが再度確認でき,これは2度目の噴火の噴煙に対応している.なお,噴火が短時間の間に2回あったのはディスドロメータ観測においても確認されている.ライダー観測においても噴火開始3分後に噴煙柱の西方向への移動に対応した変化が観測されており,レーザー視線方向で4.7 kmの距離に顕著な散乱ピークが見られ,レーダー反射強度の高まりと対応がよい.噴火開始8分後にはレーダー反射強度から噴煙が観測所から距離4kmのところにあると認識できたが,ライダーでは観測所から距離3.3 kmに散乱ピークが見られた.噴火開始から15分後ではレーダー反射強度に噴煙に対応する強度変化は見られなかったが,ライダーでは距離2km未満にて散乱強度の高まりが有意にあり,その高まりは時間が経過するにしたがって,距離が縮まり距離1km程度になり,20分以上継続して存在した.レーダーでは認識できないような,より微細な粒子が大気中に存在してもライダーでは検知可能であることを反映しており,火山灰が拡散して希薄になっているが,風に流されて移動していることが明らかになった.4.2018年12月以降の口永良部島噴火時の噴煙のレーダー観測結果 2018年12月18日,2019年1月17日,1月29日の噴火の噴煙に対応したレーダー反射強度の高まりを確認できた.12月28日の噴火の1分後にはレーダー反射強度から噴煙は3,000 mに上昇し,噴火開始3分後には最高噴煙高度5,000mに達したことがわかった.1月17日の噴火では,レーダー反射強度から噴火開始2分後には最高噴煙高度4,000 mに達したことがわかった.1月29日の噴火では,レーダー反射強度から噴火開始2分後に噴煙高度3,000 mに達し,5分後に4,000mに達したが,それ以上は上がらなかった.
著者
上田 拓 山谷 里奈 尾形 良彦 加藤 愛太郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

On June 18, 2019, a Mj6.7 earthquake occurred at Yamagata-oki. The source region of this earthquake is adjacent to that of the Mj7.5 earthquake which occurred on June 16, 1964, and in this region, there are few aftershocks right after the 1964 earthquake, and the seismicity rate in recent years is extremely low (Earthquake Research Committee, 2019). This observation suggests that the source region of the 2019 Yamagata-oki earthquake was not ruptured by the Niigata earthquake, but the cause has not been revealed. In order to elucidate the relationship between these two areas, this study compared the characteristics of seismicity between the two areas.We used the JMA catalog constructed by Japan Meteorological Agency (the Preliminary Determination of Epicenters). We applied HIST-ETAS (Hierarchical Space Time Epidemic Type Aftershock Sequence) model (e.g., Ogata, 2004) considering the spatial dependence of each parameter of the Space Time ETAS model (e.g., Ogata, 1998), to the hypocenter catalog (M1.8) from 1998 through 2019 in order to estimate the spatial distribution of background seismicity rate μand number of aftershock occurrences K. As a result, we find that μ-value is higher and K-value is lower in the source region of Yamagata-oki earthquake than in that of Niigata earthquake.In addition to these differences, we find that the b-value, which is one of the characteristics of the seismicity, is lower in the source region of Yamagata-oki earthquake than in that of Niigata earthquake. Moreover, comparing the seismic wave velocity structure obtained by Matsubara et al. (2019), the P wave velocity is lower in the source region of Yamagata-oki earthquake than in that of Niigata earthquake.The difference in seismic wave velocity and characteristics of seismicity between these two areas suggests that the macroscopic behavior in the source region of Yamagata-oki earthquake is more ductile than in that of Niigata earthquake. In more ductile area, microfracture is likely to proceed and it decreases seismic wave velocity. In addition, background seismicity rate (μ) decreases in more ductile area because of low brittleness. Moreover, the results of rock experiments and numerical simulation by Amitrano (2003) imply the increase in aftershock productivity (K) and the decrease in b-value in more ductile area. Focusing on the short-wavelength component of the linear strain rate distribution in the east-west direction (Meneses-Gutierrez and Sagiya , 2016), the different response for the 2011 off the pacific coast of Tohoku earthquake between the source regions of Yamagata-oki earthquake and Niigata earthquake is appeared. These differences may reflect different deformation styles between the two regions.
著者
加藤 翔太 西田 究
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震波干渉法は2観測点で観測された地震波形記録の相互相関関数を計算することにより、片方を仮想的な震源とし、もう片方を観測点とした場合の観測波形を推定する手法である(e.g. Snieder et al., 2013)。地震波干渉法解析では、地震波動場がランダムかつその強度分布が等方・均質であることを仮定する。ランダムな波動場として海洋波浪起源の脈動を解析に用いる場合には、周期5-20 sの帯域で表面波が卓越することが知られている。そのため、脈動を用いた地震波干渉法は地殻・上部マントルの3次元構造の推定に適している(e.g. Shapiro et al., 2005)。近年では、表面波だけではなく実体波の抽出が試みられている。その一例として、マントルの410/660 km不連続面からの反射P波の抽出が報告されている(Poli et al., 2012, Feng et al., 2013)。しかし、これらの反射P波を抽出した先行研究の対象地域は大陸に限られていた。本研究の目的は、防災科学技術研究所Hi-netの上下動記録に地震波干渉法を適用することにより深さ410/660 km不連続面からの反射P波を抽出し、日本列島下の不連続面をイメージングすることである。本研究では以下の手順で各観測点ペアに対する相互相関関数を計算した。用いた波形記録は防災科学技術研究所Hi-net観測点のうち西南日本に存在する240点の上下動記録(2007年-2018年)である。まず、Hi-netの上下動記録を2 Hzにダウンサンプリングした。その上で各観測点について翌日の観測波形との差を計算して元の観測波形の代わりに用いた(高木ほか、2019)。これは、Hi-netの機器ノイズ(Takagi et al., 2015)の相互相関関数への影響を抑えるためである。次に、得られた1日長の波形を1024 sの時間窓に分割し、周期5-10 sおよび10-20 sの平均2乗振幅によって時間窓を選択した。選択した時間窓について周波数領域で白色化を行い、周期1-10 sの成分について全観測点ペアの相互相関関数を計算した。まず4-th root vespagramを全観測点ペアに対する相互相関関数について計算した(Rost and Thomas 2002)。その結果、410 km不連続面の反射P波がオフセット距離0-300 kmで見られ、660 km不連続面の反射P波はオフセット距離50-100 kmで見られた。また、660 km不連続面の反射P波は410 km不連続面の反射P波に比べて弱いことがわかった。次に、得られた反射P波を不連続面の深度に変換するため、Common Middle Point (CMP)重合を行った(e.g. Stein and Wysession, 2003)。具体的には、オフセット距離が500 km以内の各観測点ペアについて反射点の位置でグループ分けを行い、各グループに対して不連続面が水平と仮定しCMP重合を行った。速度構造はJMA2001(上野ほか、2002)を用い、深度推定は410 km不連続面についてのみ行った。その結果、地域ごとに410 km不連続面深度の変動が見られ、特に東経134°-135°北緯33°-36°に反射点を持つグループでは不連続面が上昇している結果が得られた。これは、従来の地震波を用いた不連続面深度に関する研究(Tonegawa et al., 2005, Tono et al., 2005)と整合的である。本研究では地震波干渉法により西南日本の410 km不連続面深度の推定を行った。今後は用いる観測点を増やして対象領域を日本全国へと拡大するとともに、今回扱わなかった660 km不連続面の推定も行う予定である。謝辞:本研究では防災科学技術研究所のHi-netの上下動記録を用いました。記して感謝いたします。