- 著者
-
原 俊彦
- 出版者
- 札幌市立大学
- 雑誌
- 札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.41-49, 2010-03-31
日本の人口移動統計としては住民基本台帳人口移動報告と国勢調査報告人口移動集計があるが,いずれも配偶関係別移動人口は集計されておらず,配偶関係ごとの人口移動率の相違は不明であった.そこで,札幌市の人口動態統計の男女初婚件数,離婚件数,再婚件数を,2000年から2005年まで各歳コーホート(同一年出生集団)別に積算・集計し,5歳年齢階級別累積件数を求め,これを元に配偶関係別純移動(転出入の差)率を推計した.その結果,未婚の純移動率は男女とも若年層で転入超過だが,25-29歳から30-34歳にかけての移動を境に,それより上の年齢層で転出超過に転じ,逆に有配偶では転出超過から転入超過にシフトする傾向があること,また離別では全年齢階級で転出超過となる一方,死別では男子が転出超過,女子は転入超過となるという興味深い特徴が明らかとなった.これらの傾向は分母に年齢別人口,各配偶関係別人口のいずれを取っても,また推計が比較的容易な未婚とそれ以外の配偶関係に分けた場合や,配偶関係不詳をいずれかに振り分けた場合も変わらないことが確認できた.さらに,これらの累積初婚件数や純移動率を用いてコーホート未婚初婚率(未婚者を分母とした初婚率)を算定したところ,配偶関係別純移動率に差がないと仮定した場合より低い値となり,有配偶女性が市外に流出して未婚の女性が多く残るために未婚初婚率が低くなるのではないかとの懸念は当たらないことが判明した.