著者
磯山 直也 木下 晶弘 出田 怜 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.2151-2164, 2015-11-15

本稿は,参加型演劇YOUPLAYの概要,システム構成,公演を通じての考察について報告する.YOUPLAYとは,一般の参加者が演者となり,決められた物語の中で役を演じる舞台である.舞台は床と壁1面に映像が投影されており,舞台天井に設置されたカメラや参加者が身に着けたセンサの情報によって,映像や音声がインタラクティブに変化し,参加者は物語の中に没入して演じることができる.YOUPLAYはこれまでにVol.0(03/20-24, 2013)とVol.1(11/16-24, 2013)の2度,大阪梅田のHEP HALLにおいてそれぞれ40公演ずつ行っており,参加者の様々な反応を見ることができた.センサを一般人に装着させることでインタラクティブな表現をアドリブ演劇に取り入れることができたが,それにともなうトラブルも多く発生した.本稿では,参加者から得られた感想やトラブルの発生とその対処を含め,インタラクティブシステムのデザインについて議論する.
著者
"杉本 篤信" "スギモト アツノブ" Atsunobu" "Sugimoto
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.11-28, 2009-02

"ケインズ経済学において,独立支出の増加がGDPに乗数倍だけの増加をもたらすという「乗数理論」は,財政政策の効果に大きな期待をさせる理論的根拠になっている.しかし,日本の90年代の長期不況期に財政政策の効果は小さくなったと認識され,ケインズの経済学への信頼が薄れてきた.それに対して,伊東光晴氏はその著書において,90年代の資産デフレ不況下において,政府支出の増加は,在庫投資や投資の減少により,財政政策の効果が弱められたのであったと主張する.本稿では,この伊東氏の見解を,データを通して計量的手法で考察した.結果は,伊東氏の主張は裏付けられず,90年代の政府支出と在庫投資や投資との相関関係はなかったと推察される."
著者
仲田 将之 柿本 正憲 西田 友是
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2012-CG-147, no.5, pp.1-5, 2012-06-15

ウィンドシールド上の水滴の CG アニメーション手法は,レースゲームや自動車のシミュレータでの特殊効果としてすでに使用されている.これまでのアニメーション手法は,親水表面であるガラスを考慮して水滴が流れに沿って濡れ広がることを想定したものだった.一方,自動車分野ではワイパーに加えて撥水フロントガラスを使用してドライバーの視認性を改善する方法が普及してきた.撥水ガラスに付着した水滴の振る舞いは,普通の親水ガラスでのそれとは異なる.本論文では,フロントガラスの撥水性を考慮した水滴のリアルタイムアニメーション手法を提案する.提案法では各水滴を質点として記述し,動的撥水性や重力,空気抵抗などの外力を考慮してシミュレーションを行う.ガラス表面にはそれと同時に霧雨と同程度の粒径を持つ水滴が多数付着しており,しかもこのサイズの水滴は外力の影響を受けにくく静止しているため,一枚の画像として扱う.水滴の移動によって撥水表面が綺麗になる現象 (ロータス効果) も可視化する.本論文では,提案法に基づいて走行する自動車のフロントガラスに付着した水滴のアニメーションが可能なことを示す.
著者
小山 友介
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.17(2006-EIP-030), pp.27-34, 2006-02-18

本研究では,家庭用ゲーム産業の活性化状況を調査することを目的として,『ファミ通ゲーム白書』にある1996年から2004年までの販売トップ100データを用いて,販売タイトルについてシリーズ作品・移植作品・版権もの作品などの各属性をもつタイトル数を数え上げた.その結果,1)シリーズ作品の占める割合が年々増加し,現在は9割近くを占めること,2)それに対応して,売上上位に食い込むオリジナルタイトルが減少したこと,3)移植ものが減少したこと,4)版権ものが増加したこと,が明らかとなった.これらの結果から,現在の日本の家庭用ゲーム産業の活性化度は決して高くないと言うことが出来る.
著者
河西 秀哉 Hideya KAWANISHI
雑誌
論集
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.75-91, 2013-06

本稿が明らかにするのは、初期のうたごえ運動の活動実態である。うたごえ運動は、1948年に関鑑子(せきあきこ)によって、中央合唱団が結成されたことにより始まった。1953年に「第1回日本のうたごえ祭典」が開催され、その後、全国に急速に広まっていく。中央合唱団は共産党系の青年組織である日本共産青年同盟の音楽部門として結成されたことからもわかるように、共産党の影響を大きく受けていた。しかしうたごえ運動は共産党の影響下にあったわけではなく、社会の動向に大きく影響を受け、歌を通して平和を追求する運動を行っていた。これまで、うたごえ運動の研究はほとんど行われてこなかったが、近年になって急速になされるようになってきた。しかし、一次史料がほとんど検討されていないこと、初期の動向がほとんどわからないことなどの問題が残っている。そこで本稿は、中央合唱団の機関誌『うたごえ』の分析を通じて、1940年代後半から1950年代初頭にかけてのうたごえ運動の実態の解明を行った。その結果、①みんなで歌うという行為に活動の重点を置いていたこと、②平和を追求するような思想を持ち、そのような歌を歌っていたこと、③ロシア音楽や日本民謡を特にレパートリーとしていたこと、などが明らかになった。
著者
篠田 浩一 堀 貴明 堀 智織 篠崎 隆宏
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2014-SLP-100, no.2, pp.1-6, 2014-01-24

情報処理学会音声言語情報処理 (SLP) 研究会が 100 回を迎えた.音声認識・理解はこの 20 余年の間に当初は予想もできないほど飛躍的な進歩を遂げた.本研究会は日本における音声認識・理解研究の議論・発表の場としてその進歩に大きく貢献してきた.本稿では,この記念すべき 100 回目の研究会における一連の企画の 1 つとして,この 100 回の歩みを踏まえた上で,今後音声認識・理解研究が進むべき方向性について,4 人の研究者が提言を行う.
著者
原 俊彦
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.41-49, 2010-03-31

日本の人口移動統計としては住民基本台帳人口移動報告と国勢調査報告人口移動集計があるが,いずれも配偶関係別移動人口は集計されておらず,配偶関係ごとの人口移動率の相違は不明であった.そこで,札幌市の人口動態統計の男女初婚件数,離婚件数,再婚件数を,2000年から2005年まで各歳コーホート(同一年出生集団)別に積算・集計し,5歳年齢階級別累積件数を求め,これを元に配偶関係別純移動(転出入の差)率を推計した.その結果,未婚の純移動率は男女とも若年層で転入超過だが,25-29歳から30-34歳にかけての移動を境に,それより上の年齢層で転出超過に転じ,逆に有配偶では転出超過から転入超過にシフトする傾向があること,また離別では全年齢階級で転出超過となる一方,死別では男子が転出超過,女子は転入超過となるという興味深い特徴が明らかとなった.これらの傾向は分母に年齢別人口,各配偶関係別人口のいずれを取っても,また推計が比較的容易な未婚とそれ以外の配偶関係に分けた場合や,配偶関係不詳をいずれかに振り分けた場合も変わらないことが確認できた.さらに,これらの累積初婚件数や純移動率を用いてコーホート未婚初婚率(未婚者を分母とした初婚率)を算定したところ,配偶関係別純移動率に差がないと仮定した場合より低い値となり,有配偶女性が市外に流出して未婚の女性が多く残るために未婚初婚率が低くなるのではないかとの懸念は当たらないことが判明した.
著者
稲葉 通将 高橋 健一
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.241-244, 2015-09-18

人間同士の対話において,聞き手の反応や相手への働きかけは,話し手が話を進めていくために必要な要素である.そこで本研究では,ユーザの発話に対し,聞き手として適切な応答を行うことで対話を活性化させる対話システムを設計する.対話システムの応答は多クラスSupport Vector Machine(SVM) を用いて応答クラスを決定することで行う.そのための学習データとして,Twitter におけるtweet・replyペアを用いる手法を提案する.本研究で提案する応答手法は,Twitter 上に公開している対話システムに実装されている.本論文ではこの対話システムの機能についても併せて述べる.
著者
久保田 慶一 Keiichi Kubota
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.26, pp.65-71, 1988-12-31

Eine der in der Kompositionsgeschichte seit 1600 gewichtigsten Kompositionsverfahren, d. h. "thematisch-motivische Arbeit" ist als Mittel geschichtlich begrenzt, aber als musikasthetisches Kriterium aufs heutige Musikdenken in der Gegenwart beeinfluβbar. Im vorliegenden Aufsatz wird diese Kompositionsweise, erstens rein musikalisch, besonders im Zusammenhang mit H. Chr. Kochs Beschreibungen uber sie (1802) erklart. Daraus liegt nahe, daβ diese Verfahren fur ein modernes Kunstwerk-Idee gultig ist, das sich in "Autonomie des Kunstwerks" erscheinen lassen soll. Zweitens, die "thematisch-motivische Arbeit" als Kriterium wird als asthetische Voraussetzungen einer Analyse erkl art, deren Ziel in Entdeckung eines musikalischen "Zusammenhangs" liegt. Damit zieht sich diese Mittel der musikalischen Analyse auch auf das genannte Idee des modernen Kunstwerks. Schlieβlich, diese "asthetisch -kompositionstechnische" Verfahren wird durch Analyse von J. Haydns Quartett (Op.33-3, I. Satz) noch ausfuhrlicher dargestellt.
著者
河谷大和 柏崎 礼生 高井 昌彰 高井 那美
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.80(2008-CG-132), pp.35-38, 2008-08-15

日本におけるアニメ作品は,国内及び世界的にも高く評価されており,代表的なデジタルコンテンツ産業の一つとなっている.その一方で,動画投稿サイトや同人活動,個人的な趣味の場において,これらの資源を再利用した二次創作物の制作意欲が日々高まりつつある.しかしそれらの制作にあたり,技術面などから手をつけられずにいることも多い.そこで本稿では,アニメ作品の肝であるキャラクターに着目し,それらに特徴的である顔の輪郭形状,目領域,髪領域などに関する特徴量を自動で抽出し,アニメ作品に特有な描画調の強さの度合いを示すアニメ度の定義をし,キャラクターの評価を行う手法を提案する.また,その応用例についての検討を行う.
著者
鈴木 誠
出版者
麗澤大学中国研究会
雑誌
中国研究 (ISSN:09194177)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-75, 2008-12-25
著者
本田 敏文 横井 利彰 松山 実 山田 新一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.人工知能および認知科学, pp.408-409, 1989-10-16

ニューラルネットワークの適用対象の1つに組み合わせ最適化問題が存在し,HopfieldのネットワークやBoltzman Machineのような相互結合型のネットワークが一般に用いられている.Boltzmann Machineは確率的に動作するため,焼きなましの手法等を用いることによりローカルミニマムを避けることが可能とされている.しかし,温度変化のスケジュールは経験的に選んでいるのが現状であり,このスケジューリングを誤ると精度の高い解が求められない,あるいは現実的な時間内での解決が不可能となる.本研究ではネットワークのエネルギー関数により適切なものを選択すれば,シビアな温度調節を回避できると考え,ネットワークの状態に応じてエネルギー関数をダイナミックに変更する手法を提案する.これを組み合わせ問題の1つである巡回セールスマン問題(TSP)に適用し,デジタルシミュレーションによって比較,検討を行う.
著者
粟野 皓光 佐藤 高史
雑誌
研究報告システムとLSIの設計技術(SLDM) (ISSN:21888639)
巻号頁・発行日
vol.2015-SLDM-173, no.7, pp.1-6, 2015-11-24

本論文では Line sampling(LS) を利用した高速なトランジスタ・レベルの遅延歩留まり解析手法を提案する.集積回路製造プロセスの微細化にともない,トランジスタ特性のばらつきが増加しており,集積回路の設計は困難を極めている.確率的にばらつく回路遅延を解析するために統計的静的遅延解析 (SSTA) が考案され,その高速化に対して数多くの研究が行われてきた.SSTA ではゲート・レベルの遅延モデルを用いている.一層の正確性を期すために,タイミング検証の最終段階では,最悪遅延を与えうるパスを抜き出し,トランジスタ・レベルのモンテカルロ解析 (MC) を行うことが一般的であるが,純粋な MC は収束が遅く実際の歩留まり解析には適用できない.収束性を改善する手法として重点的サンプリング (1s) が一般的に用いられるが,最適な代替分布の決定が必要となり,これはばらつき変数が高次元になるほど困難な問題となる.遅延歩留まり解析においては,最悪遅延パスに限定したとしても数百から数千個のトランジスタにおけるばらつきを考慮出来ることが求められ,次元数にスケーラブルな手法が必要である.本論文では,回路遅延が,ばらつき変数の線形和で近似できるという特性に着目し,LS の応用を提案する.数値実験の結果,最新の歩留まり解析手法である,subset simulation と比較して,同等の解析精度を得るために必要な回路シミュレーション回数を 1/14 から 1/300 程度にまで低減可能であることが明かとなった.
著者
小沢 哲史 TETSUSHI OZAWA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.155-166, 2013-03

近年、日本では少年犯罪に対する関心が高まり、実態以上に過大視する傾向が強まっているとされる。これを「少年犯罪に対する過大視現象」とする。この現象については実態の把握が十分ではなく、この現象をどのように説明すべきか、その影響は何かなど不明な点も多い。本論文は第一に、この現象の実態をより明確に把握するため、高校生、大学生、幼稚園児の母親、50 〜70歳代の計4グループ、合計183名を対象に、平成17年度内閣府調査の質問文を精緻化した調査を実施した。第二に、少年犯罪の過大視現象をどのように捉えるのかについて学際的議論を行った。最後に、過大視現象が青少年の発達に与える影響について論じた。