著者
大久保 賢一 福永 顕 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-48, 2007
被引用文献数
1

通常学級に在籍する他害的な問題行動を示す発達障害児に対して、大学相談機関と小学校が連携し、学校場面における行動支援を実施した。対象児に対する個別的支援として、(1)適切な授業参加を促すための先行子操作と結果操作、(2)課題従事行動を増加させるための結果操作、(3)問題行動に対する結果操作を段階的に実施した。また、校内支援体制を整備するために、(1)発達障害の特性や問題行動の対応に関する校内研修の実施、(2)支援メンバー間における情報の共有化と行動の継続的評価、(3)全校職員に対する情報の伝達といったアプローチを行った。その結果、対象児の適切な授業参加や課題従事行動が増加し、問題行動は減少した。また、大学スタッフと保護者の個別的支援を実施する役割を学校職員へ移行することが可能となった。対象児に対する個別的支援と校内支援体制の構築に関して、その成果と課題について考察を行った。
著者
原野かおり 桐野 匡史 藤井 保人 谷口 敏代
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.163-168, 2009
被引用文献数
1

介護福祉の仕事は多種多様で多忙であるにもかかわらず報酬も低いこと等から,離職率が全労働者の平均を上回っている.本研究では,介護福祉職員が介護福祉の仕事を継続している動機と離職意向が生じたときに離職を踏みとどまった理由を明確にすることを目的として7人の介護福祉職員に半構造化面接を行った.その結果,仕事を続けられる理由には,「労働条件」「職場のよい人間関係」「利用者からの信頼」「やりがい」「理想とする介護との出会い」「介護への自信」「仕事に対する価値」「人が好き」の8カテゴリーが抽出された.踏みとどまった理由は,「労働条件」「職場のよい人間関係」「やりがい」「介護への自信」「仕事に対する価値」「負けたくない」「損得勘定」の7カテゴリーが抽出された.これらの結果から介護福祉職が仕事を継続する肯定的要因の概要が明らかになった.
著者
金 相集
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 2003-03-31

近年の情報技術を用いた電子メディアの飛躍的な発展は,われわれのコミュニケーション環境を一変させている。また,電子メディアがもたらす社会や文化は益々複雑にその様相を変えており,それをある一定の枠組みのなかで論じることはかなり困難な作業になっている。これらの問題を乗り越えるためには,変容しつつあるメディア空間を様々な観点から観察し分析する努力が求められている。本論文では,2000年の韓国国会議員選挙中に高まった「不適格な政治家を落選させようとした」市民運動としての「落選運動」に焦点をあて,この運動をめぐる新聞報道とインターネット(BBS)上での発信内容を分析しつつ,既存メディアとしての新聞とニューメディアとしてのインターネットの関係を明らかにすることを目的とした。第2章では,まず,われわれの社会が今まで経験し,そしてこれから経験していくメディアコミュニケーションの変化の位相を明確に捉えることを目的とし,各メディアの持つ特性について考察した。次に,メディア間で生じつつある融合やミックス,そして相互作用といったメディアコミュニケーションの変化の要因について述べた。最後に,メディアコミュニケーションの変化に欠かせない要因として,メディア環境の地域的特性を取り上げて論じた。第3章では,韓国における新聞とインターネットの特性について考察した。特に,新聞とインターネットを取り巻く環境を社会・政治的な面に注目しながら,主に両メディアの発展過程を中心に述べた。新聞においては,まず,日本による植民支配から解放後の新聞の発展過程を述べた後,その過程から生じた政治との癒着問題と政治権力から独立しようとしたマスメディアの改革運動を中心に韓国社会における新聞の特性を概観した。一方,インターネットにおいては,インターネットが韓国で急速に普及した原因と韓国社会におけるインターネットのもつ意味について論じた。第4章では,落選運動の期間中報道された新聞の内容と同期間行われたインターネット上での議論の相互参照の関係に着目し,1)新聞とインターネットの間に,言説の相互参照の関係はどのように行われるのか,2)メディア間の相互参照の結果,各々のメディアの発する言説はどのような変化をみせるのか,3)このようなメディアコミュニケーションの変化は,世論形成にどのような影響を及ぼすのか,という3つの観点で分析を試みた。その結果,新聞はインターネット空間で交わされる議論の主な情報源として用いられており,逆にインターネット上での議論及び話題も新聞に影響を及ぼしたという結論が得られた。また,このようなインターネットと新聞の発する言説の相互参照関係によって,一部の新聞においてその報道内容に変化が生じていることが確認された。第5章では,本論文の要約と今後の課題について述べた。本論文で分析した結果の全体的な考察を通して,メディア間の相互参照の関係がどのように地域社会の世論形成過程に影響を及ぼしているのかについて議論した。
著者
喜多村 和之
出版者
筑波大学
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.33-55, 2001-03

喜多村でございます。今日は山本先生がおはじめになりました研究会の趣旨を大学経営人材の養成を目指してということでうかがいまして、こういう研究会は当然、早くから、特に私学の間から当然行わなければならないものを、まず国立のほう ...
著者
杉本 覚 岡田 猛
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.261-275, 2013-03-25

近年,美術館においてワークショップという形態の教育普及活動が頻繁に行われるようになってきている。しかし,ワークショップの実践家の数はまだ少なく,その育成が喫緊の課題として挙げられている。この課題を解決するためには,まずはファシリテーターの熟達過程を調査し,その実証的なデータに基づいた教育プログラムを作成する必要があるだろう。そこで本研究では,実際のワークショップにおいてスタッフの活動の様子を参与的に観察するとともに,参加したスタッフに質問紙を実施して,その回答やミーティングでのやり取りをもとに学習や認識の変化を分類し,ワークショップ内の活動との対応を検討した。その結果,スタッフの学習として「ファシリテーションに関する学習」「ワークショップ自体に対する認識の変化」「作品との関わり方に対する認識の変化」「日常の自身の姿勢に対する認識の変化」の4つのカテゴリが見出された。
著者
打浪 文子
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
no.54, pp.105-120, 2015

本稿では、軽度から中度の知的障害者16名に対して、通信機能を持つ情報機器(PC及び携帯電話)の利用状況及びその具体的様相を把握し課題を析出するために、半構造化面接法による聞き取り調査を実施した。調査結果から、知的障害者のPC利用は自由に利用できる少数と利用環境の整わない多数に二分されることを明らかにした。また携帯電話は対象者全員に利用経験があり、情報伝達や支援代替的なツールとして活用されていること、通話以外の固有機能も幅広く利用されていることを明らかにした。健常者社会との情報格差を減らし彼らの社会参加を促進するために、技能習得の機会の拡大、知的障害者が「利用しやすい」ことに着目した情報機器の活用方法の検討、公的な知的障害者向けの情報支援施策の展開、当事者・家族・支援者への意識啓発が今後の社会的課題である。
著者
出口 弘
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.598-604, 2011-10-01

本稿では,エージェントベースのモデリング&シミュレーションに関する認識論的課題を扱う.そこでは方法論的なモデルの展開(Unfolding)と畳込み(Folding)という概念を鍵に,エージェントベースのモデル作法について論じる.従来のマクロな微分方程式モデルを中心としたモデル化技法は,マクロな変数の増減を定める動的プロセスを定式化するものである.しかしそのマクロ変数がマイクロなエージェントの状態変数から得られるシステムでは,個々のエージェントの状態変数からなるモデルへとモデルを展開することで,より微細な境界条件をモデルに組込むことが可能となる.本稿ではこうした異なる粒度や視点を持ったモデル間の相互関係をモデル化の認識論として分析する.