著者
楠本 大 鈴木 和夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.G05, 2004

はじめに針葉樹の師部は、傷害や菌の感染に対して、防御反応を引き起こす。それにともない師部内では様々な化学変化が起こる。これまで多くの組織化学的研究によって、師部の化学物質の変化が示されているが、それら化学物質の経時的・空間的変化を定量的に明らかにしたものは少ない。本研究では、フェノール系物質を中心に防御反応による化学物質の量的変化を、組織化学的観察と対応させながら、明らかにすることを試みた。材料と方法実験には東京大学演習林田無試験地植栽の5年生ヒノキを用いた。7月にヒノキの主幹に傷を付け、その後継続的に5本ずつ選び、傷の周りの樹皮を採取した。解剖観察:樹皮切片を作成した。ポリフェノールはジアゾ反応法とニトロソフェノール反応法で、リグニンはフロログルシン-HCl法で染色した。スベリンはフロログルシン-HClで染色した切片にUV光を照射して蛍光を観察した。フェノール類の抽出と定量:樹皮を傷害カルス、壊死部(コルク組織を含む)、傷から1mmまでの生きた師部(コルク形成層とコルク皮層を含む)、傷から1_から_2mmまでの生きた師部に分け、凍結乾燥した。10mgの組織片を粉砕し、80%メタノールで2回抽出した。総ポリフェノール量をFolin-Denis法で定量した。タンニン量は、抽出液にゼラチンを加えてタンニンを沈澱させたのち、上澄みに残ったポリフェノール量を総ポリフェノール量から引くことで計算した。壁結合フェニルプロパノイドの抽出と定量:メタノール抽出を行った後の残渣から細胞壁に結合したフェニルプロパノイドを1N NaOHで抽出した。抽出されたフェニルプロパノイドはHPLCで分析した。リグニンの定量:NaOHで抽出した後、残渣のリグニン量をアセチルブロミド法により測定した。結果傷害カルスにおけるポリフェノール量は健全部よりも測定期間を通じて有意に高く、解剖観察においてもポリフェノール粒が多数観察された。一方、壊死部では3日目で既にポリフェノール粒は消失し、量的にも減少した。0-1mm師部では、parenchymatic zoneにおいて多量のポリフェノール粒が観察された。また、師部柔細胞では14日目以降液胞の拡大とポリフェノールの染色性の低下が観察された。0-1mm師部のポリフェノール量は健全部よりも若干増加したがその差は有意ではなかった。1-2mm師部のポリフェノール量は健全部と変わらず、解剖観察によっても変化はみられなかった。タンニン量は、いずれの部位においてもポリフェノール量の20_から_35%を占め、ポリフェノールとほぼ同じ経時変化を示した。傷付け7日目に壊死部の細胞壁にリグニンの蓄積が認められ始め、14日目まで蓄積の範囲が増加した。壊死部のリグニン濃度は14日目から増加し始め、28日目に一定に達した。傷害カルスでは、カルス形成が始まったばかりの14日目に健全部に比べてリグニン濃度が低かったが、28日目以降は健全部と同様の濃度を示した。壁結合フェニルプロパノイドについては、p -クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸のうち、フェルラ酸のみが検出された。フェルラ酸は壊死部と傷害カルスで7日目以降増加した。考察傷害カルスのポリフェノールは、その発達初期から多量に含まれており、傷害カルスの防御に強く関与していると考えられた。一方で、師部柔細胞では、化学性の変化によると思われる染色性の低下が認められた。壊死部ではポリフェノールの減少がみられたが、これは細胞が傷付けられたときに遊離した酸化酵素がポリフェノールを酸化重合させたためと考えられた。壊死部のリグニンは、染色によって7日目に認められたが、実際に細胞壁中の濃度が増加するのは14日以降であった。また、その増加は28日目まで続き、壊死部であっても1ヵ月程度は生理活性を維持している可能性が示唆された。壁結合フェルラ酸はリグニン濃度に変化が認められた壊死部と傷害カルスにおいて有意に増加し、リグニン合成との関連が示唆された。このように、ヒノキ師部の防御反応は部位によって多様であり、その発現のタイミングも異なっていた。病原体に対する抵抗性は、こうした種々の防御反応の総合的な効果によって決定されると考えられた。
著者
牟田慎一郎著
出版者
システムソフト
巻号頁・発行日
1984
著者
三木 仁司 開野 友佳理 沖津 奈都 森本 忠興 内田 尚之 木村 早那 岡本 浩 泉 啓介
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.264-268, 2016 (Released:2017-01-26)
参考文献数
20

28歳,女性。平成27年4月右乳房の硬結と痛みを自覚し当科を受診。初診時,右乳房AC領域に5cm大の硬い腫瘤を触知し発赤も認めた。肉芽腫性乳腺炎を疑いテトラサイクリン系抗生剤投与を開始した。乳房硬結部の針生検を施行し病理学的に炎症所見を認め,同材料の培養検査でCorynebacterium kroppenstedtiiを検出した。初診から約4週間後,両下腿に散在性の紅斑が出現し皮膚生検にて結節性紅斑と診断した。そこでプレドニゾロンを投与開始し2週間後に結節性紅斑は軽快した。しかし肉芽腫性乳腺炎はドレナージが必要で治癒するのに約4カ月を要した。肉芽腫性乳腺炎は,最近Corynebacterium kroppenstedtiiの感染が原因ではないかといわれており,本症例も針生検材料からCorynebacterium kroppenstedtiiを検出しえた。よって,肉芽腫性乳腺炎の早期診断に針生検は有用な診断手段と考えられた。また,稀に結節性紅斑を合併することがあり,乳房に感染したCorynebacterium kroppenstedtiiに対する免疫反応の結果,結節性紅斑が惹起されたのではないかと考えられた。
著者
伊藤 健市
出版者
關西大學商學會
雑誌
關西大學商學論集 (ISSN:04513401)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.19-72, 2017-12-25
出版者
帝国議会衆議院
巻号頁・発行日
vol.第1回帝国議会~第92回帝国議会, 1957
出版者
朝日新聞出版
雑誌
週刊朝日
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.114-116, 2011-02-04
著者
Jiafei Zhao Le Zou Rongkun Jiang Xuetian Wang Hongmin Gao
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Electronics Express (ISSN:13492543)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.20190687, 2020 (Released:2020-01-25)
参考文献数
31
被引用文献数
2 5

An antenna array system with high angular resolution is proposed to adapt the demands of both medium-range radar (MRR) and long-range radar (LRR) detections for 77 GHz automotive radars. Both the MRR and LRR modes are integrated into one substrate based on the optimized sparse array topology, which makes full use of the antenna aperture size to improve the angular resolution of the proposed system. Two-dimensional series-fed weighting arrays are designed via the Taylor synthesis method to effectively heighten the antenna gain and restrain the sidelobe level. After completing the fabrication, measurement results of the proposed antenna array are in good agreement with the simulation results. Moreover, the angular resolution is verified to be 0.5° by adopting the coherent signal space method (CSM) with stepped frequency transmitting waveform, which validates the effectiveness of the proposal.
著者
古谷野 さとみ 籏持 淳 山崎 雙次 石川 准子 北原 隆 成田 博文 近藤 直樹 増川 克典
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.494-499, 2010-09-15 (Released:2010-11-19)
参考文献数
11
被引用文献数
11 13

角層のセラミド(Cer)は,皮膚のバリア機能や保湿機能に重要な役割を果たしており,乾癬やアトピー性皮膚炎においては,角層の機能低下にともなうCerの減少が知られている。そこで,乾癬における角層Cerの詳細解析を行い,アトピー性皮膚炎との比較を行った。その結果,乾癬皮疹部においては,健常と比較して総Cer量が顕著に減少しており,このうちCer[NDS],Cer[NH],Cer[NP],Cer[AH],Cer[AP],Cer[EOS],Cer[EOH],Cer[EOP]の顕著な減少と,Cer[NS]とCer[AS]の顕著な増加が認められた。ヒト角層に存在する11クラスのCerのうち7クラスにおいては,Cerの短鎖化(短鎖成分の増加と長鎖成分の減少)が認められた。このような角層におけるCer異常は,アトピー性皮膚炎角層で認められたものと一致した。また,乾癬皮疹部で認められたCer異常の一部は,無疹部においても認められ,表皮におけるCer代謝異常が病態形成に及ぼす影響や,角化異常との関連が推察された。
著者
馬場 治 神田 穣太 岩崎 高資
出版者
東京海洋大学江戸前ESD協議会
雑誌
江戸前の海学びの環づくり瓦版
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-16, 2013-07-15

漁業者の思いに応える交流の場として (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業) / 馬場治福島沿岸生態系の放射性物質分布 (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業) / 神田穣太震災前の相馬原釜地区の漁業 (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業) / 岩崎高資漁業者、漁協職員の方に聴く、相馬原釜の沿岸漁業、震災、これからのこと (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業)テーブルで語ろう「不安の根っこを探ろう」 (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業)閉会のご挨拶 (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業)ふりかえりシートから (江戸前ESDふくしまワークショップ : 相馬原釜の沿岸漁業)編集後記