著者
太田 勝一
出版者
市立大町山岳博物館
雑誌
市立大町山岳博物館研究紀要 (ISSN:24239305)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.7-16, 2021 (Released:2021-08-11)

佐野坂丘陵は大小の岩塊からなる崩壊堆積物からなり,かつての姫川を堰き止めて青木湖を形成したと考えられている.しかし,その形成過程には不明な点が多かった.たとえば,① 佐野坂丘陵の西側山地に位置する明瞭な崩壊崖の中軸に比べて,崩壊堆積物の位置は約200 m北側に偏り,また,② 崩壊堆積物の構成岩石は崩壊崖の地質構成と異なるなどの問題点が残されている.その原因として,崩壊崖の最大傾斜方向に対して崩壊堆積物が斜め北方向に移動した可能性や,未知の横ずれ断層により崩壊堆積物が北側に変位した可能性などが考えられる.活断層が関与した場合,断層活動と地震により大規模崩壊が発生し,その後の断層運動と崩壊の繰返しにより,現在の青木湖と佐野坂丘陵が形成されたと考えられる.これらの問題について,崩壊崖と崩壊堆積物の地質調査を実施し,既存のデータと統合して,今後の研究のための予察検討を行った.
著者
浜田 実 門田 浩次 小玉 淳
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.49, no.447, pp.1427-1433, 1983

半無限体や厚板などの軸対称弾性問題に有効なハンケル変換をシンプソン積分法により行う場合,積分核として含まれるベッセル関数の振動性のため,精度のよい結果を得ることが困難である.そこで本研究では,フーリエ変換におけるFilonの方法にならい,被変換関数&fnaf;(x),またはx&fnaf;(x)を区分的に二次関数で近似し,これにベッセル関数を乗じた積分値をロンメル関数で表わして値を求める方法を提案する.また,二つの例題により本方法の有効性を示す.
著者
山本 健兒
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.14, 2011

1.はじめに本報告の目的は,1990年代初め以降,長期的衰退傾向にあるわが国陶磁器地場産業の中で,有数の産地である有田においてどのような取り組みがなされてきたかを描き,その取り組みが結果としてより小規模な産地の自己主張を,したがって有田焼産地の分解傾向を明らかにすることにある.そのための主たる研究方法は,産地にある各種組合の理事長または専務理事,有力企業の経営者またはマネージャ,公的機関の陶磁器産業支援担当者への詳細インタビューである.これは2008年9月以降,特に2009年8月から2010年7月にかけて行った.その数は,12企業,8つの産地組合(卸団地,工業,商工,直売,波佐見,大川内,三川内,大有田),2つの公設試,1つの教育機関,佐賀県庁を含む4つの自治体である.2.有田産地の地理的構成有田焼産地は佐賀県有田町よりも広い範囲の分業関係から構成されている.これは例えば下平尾(1973)を初めとする成長時代の有田焼産地に関する諸研究から明らかである.これら先行研究に基づいてその概要を描けば次のようになる.豊臣秀吉の朝鮮侵略を契機として,九州北西部の諸大名は陶工たちを朝鮮半島から連れてきて,陶磁器業を各領内に移植した.その結果,日本の産業近代化以前に,佐賀県有田町に相当する範囲だけでなく,長崎県波佐見町,佐世保市三川内地区にも陶磁器産地が形成された.佐賀県内でも伊万里市大川内地区、武雄市山内町や嬉野市吉田地区に小産地が形成されていた.これらの産地はもともと独自の産地名をもつ製品を生産していたが,第二次世界大戦以降の有田焼の隆盛に伴って,その製造販売に関わる分業関係に組み込まれるようになった.特に生地成形は波佐見町の零細企業が担当し,これを各産地の窯元が焼成するという分業が発達したし,絵付けに特化する零細企業も有田町や波佐見町に多数立地した.旅館や割烹に有田焼を販売する商社は有田町に多数存在するようになったが,デパートなどに卸す比較的大規模な商社は波佐見町で発達した.また近代化以降,すべての小産地で製造される陶磁器の原料は天草陶石となったが,これを陶土に加工するのは主として塩田町(現嬉野市)の業者である.したがって,有田焼産地は実態として佐賀県と長崎県にまたがって形成されるようになった.3.衰退時代のイノベーション形成の試み有田焼生産が1990年代初め以降衰退しつつある理由は,陶磁器への需要低下にある.これをもたらした原因として外国からの安価な陶磁器の輸入もあるが,それ以上に日本人の生活スタイルの変化と旅館や割烹などの低迷による業務用和食器需要の減退が影響している.しかし,日本国内の他の陶磁器産地に比べて有田焼産地には,衰退傾向に対して相対的に踏みとどまる側面もある.それにはイノベーションが寄与している.そのイノベーションには,個別窯元企業あるいは産地問屋をプロモータとする新製品開発もあるが,新製品考案の知的交流の仕組みとこれに関連する流通経路の革新も,産地の維持に貢献している.産地の各種組合の弱体化の一方で,有田焼産地の中にあるより小規模な産地単位でツーリズムと結合しようとする動きもまた,従来の流通経路を破壊し革新するという意味でイノベーションの一つに数えられる.有田町では陶磁器産業で「肥前は一つ」という運動が成長時代末期に展開した.また衰退時代には有田町だけでの産地ブランド運動が起こるというように紆余曲折があったが,現在は有田焼という名称とは別に,伊万里市大川内地区の鍋島焼,長崎県波佐見町の波佐見焼,佐世保市三川内地区の三川内焼を前面に出す動きが顕著になりつつある.大川内では1960年代の洪水被災の後、1980年前後から開始された長期にわたる景観整備と結びついて,ツーリズムと結合させる産地振興が進んだ.波佐見町では,産地ブランドというよりもむしろ,独自の企業ブランドを確立した窯元による東京の消費者との直接的結びつきや,東京に本拠を置くプレミアム商品等開発企業との提携で従来の有田焼や波佐見焼のイメージとは全く異なる新商品開発生産に従事する企業などが,いずれも波佐見町中尾地区の景観と結びついてツーリズムの振興につながっている.三川内でも,産地組合が従来の機能を停止してツーリズムへと走りつつある.4.おわりに上に見た有田焼産地でのイノベーションのための試みは,各小産地の商品を小産地名で再生・復権あるいは普及させようとする動きへとつながっている.したがってかつての有田焼産地は,幕藩時代に形成された小産地へと分解する傾向にあるといえる.今後,有田焼産地は縮小を余儀なくされるであろうが,各小産地でのイノベーションへの努力によって,小産地は,あるいは企業単独でのブランドを確立した企業は存続する可能性が高い.
著者
新井白石 編
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.1(巻之1-5), 1903
著者
三柴 恵美子 平塚 英治 小町 裕子 鈴木 賢治 新井田 孝裕
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.233-238, 2010-12-29
参考文献数
8
被引用文献数
1

<B> 目的:</B>ロービジョン者がどのくらい視覚補助具を保有しているのか、またそれらを有効利用できているか、もしできていないならその要因は何かということを検討するため、JRPS(日本網膜色素変性症協会)栃木県支部の協力を得て、アンケート調査を行った。<BR><B> 対象と方法:</B>対象は、JRPS栃木県支部会員49名のうち、回答のあった29名である。方法は、ロービジョン者用にアンケート形式を工夫し、郵送にて行った。<BR><B> 結果:</B>保有視覚補助具数は、平均3.6種類だった。遮光眼鏡、白杖、携帯用ルーペ、拡大読書器の順で多かった。視覚補助具の有効利用に影響する因子として、使い方が簡単である、眼の状態に合っている、説明や訓練を受けたことがあげられた。一方、有効利用を妨げている要因としては、眼の状態に合わない、説明や訓練の不足であった。病院,眼鏡店,市(区)町村役場の窓口の対応に関する満足度では、市(区)町村役場の窓口の対応に不満の多い傾向がみられた。有効利用に今後必要と思われるものとして、行政の窓口担当者の知識向上、使用法の説明や訓練、アフターケアの充実に対する要望が多かった。<BR><B> 結論:</B>視覚補助具を有効利用するためには、個々のロービジョン者の眼の状態を考慮した選択に加え、使用法の説明や訓練の充実、行政の窓口担当者の知識向上が必要と考えられた。
著者
磯野 義人
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.905-914, 1990-10-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
11

The possibility of obtaining artificial rain falls on and area by the man-made mountain range with a huge air-supported membrane structure is discussed.The arid area selected as a ideal geographical model is Saudi Arabia and various aspects of climate condition of the area are considerd.The man-made mountain range proposed is held by continuously supplied air by many blowers. The minimum size of the structure will be 10km long, 1.2km width and 600m high.The membrane material of the structure will be TEFLON coated glass fiber fabrics. And cable reignforcements at certain intervals are also recommended.As a conclusion, the idea has high capability in realization of rain falls but more detailed research is required for the location of site, etc.
著者
竹内 秀一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.105_2-105_2, 2016

<p> 運動部活動などを舞台に物語が紡がれるスポーツ漫画は、我々とスポーツとの関わりを映し出すひとつの鏡といえる。例えば、1990~96年に井上雄彦氏によって連載された『スラムダンク』は、多くの若者をバスケットボールへと駆り立てた。このような現象を松田(2009)は、「マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが、逆に現実世界のスポーツのリアリティ感覚の受皿となる」と述べる。すなわち、スポーツ漫画は単なる表象文化ではなく、他方スポーツに新たな現実を生起させる循環装置にもなっているのである。ところで、漫画が世代ごとの「アイデンティティ」を確認する役割を担うという報告(諏訪、1989)もある。ここより、スポーツ参与者の同一性(=プレイヤー・アイデンティティ)を基底している言説、あるいは揺らぎのダイナミクスをスポーツ漫画から捉えることができるのではないか。そこで本研究では、スポーツ漫画におけるキャラクターの表象について、「アイデンティティ」という補助線を用いて考察していく。そして、そこから透けてみえる運動部活動における現代的な力学の様相を明らかにすることを目的とする。</p>
著者
松田 昇 馬場 俊行 古田 佑紀
出版者
法曹会
雑誌
法曹時報 (ISSN:00239453)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.p377-398, 1981-02
著者
堀口友一著
出版者
暁印書館
巻号頁・発行日
1981

1 0 0 0 IR かりん 第11号

著者
京都大学吉田南総合図書館
出版者
京都大学吉田南総合図書館
雑誌
かりん (ISSN:18834167)
巻号頁・発行日
no.11, 2018-12-01

<巻頭言>定説を疑う /寶 馨 [02]<声>本の海に漕ぎ出して /仲井 慧悟 [04]<声>私と魔物と地下の書庫 /近藤 真帆 [06]<声>魂の宿る本と部屋 /土田 亮 [08]<特集 : 吉田南シネマ>みんなの映画 /中嶋 節子 [10]<特集 : 吉田南シネマ>私の映画体験 /吉田 万里子 [12]<特集 : 吉田南シネマ>エンドロールから /長谷 海平 [14]<自著を語る>交錯と共生の人類学 : オセアニアにおけるマイノリティと主流社会 /風間 計博 [16]<自著を語る>日本古代宮廷社会の儀礼と天皇 /吉江 崇 [18]<自著を語る>死が映す近代 : 19世紀後半イギリスの自治体共同墓地 /久保 洋一 [20]<寄贈図書/Donated books>吉田南構内各部局教員及び関係者寄贈図書/Donated books from the people concerned with Yoshida-South Campus [22]<特別図書紹介/Introduction of Special Collections>平成29年度 特別図書/Special Collections 2017 [23]<図書館の活動/Activities>吉田南総合図書館の一年間/Yoshida-South Library - Event Calendar [24]<図書館の活動/Activities>図書館統計/Statistics of the Library [26]<図書館の活動/Activities>貸出回数ランキング/Ranking of books borrowed [27]
著者
芦髙 郁子 Ashitaka Ikuko アシタカ イクコ
出版者
意匠学会
雑誌
デザイン理論 = Journal of the Japan Society of Design (ISSN:09101578)
巻号頁・発行日
no.74, pp.81-95, 2019

学術論文This paper is aimed at clarifying the concepts of "design" and "rhythm of light" as described in Japanese magazines and books in the 1920s. In 1921, Minoru Minami (1887–1948) advocated the concept of "design" in his work "Research of Artistic Photography." It was defined as abstract composition and musical expression. In the following year, 1922, Minami published the photographic work "Design" in the magazine "Artistic Photography Study." It was abstract still life photography composed with soft focus, the expression in which was defined by Minami as "rhythmic." Kenkichi Nakajima (1888–1972), who was influenced by Minami's concept of "design," advocated "expressionism of the photograph." Nakajima inherited a compilation entitled "Artistic Photography Study" from Minami, and he positioned "rhythm of light" as an important element within the "expressionism of the photograph." The articles published in "Artistic Photography Study" (from Nakajima's compilation period) were influenced by the social transformations resulting from urban modernization, and many photographs of the urban landscape were printed in these articles. They were geometrically abstracted. "Rhythm of light" showed a change in the subject of photography in that the subject had spread to the urban landscape, while simultaneously being affected by "design." Thus, the concepts of "design" and "rhythm of light" had a great influence on photographers of the 1920s, enabling them to create a plethora of abstract and musical photographic images.
著者
青木順子著
出版者
星雲社 (発売)
巻号頁・発行日
2001
著者
山田 三雄
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1971, no.24, pp.1-13, 1971

In E. Cassirer's <I>Philosophy of Symbolic Forms</I> (Philosophie der symbolischen Formen) meaning constitutes reality in coexistence with the sensible.<BR>The symbolic act possesses three forms, i.e. expression, intuition and concept; the mythical as an act of expression comprehends reality as the world of quality. In contemporary intellectual life, the tendency of giving free rein to the mythical must be deplored However, the mythical as a means of expression for a child in its state of development opens up important research topics.
著者
藤井 秀人 堀川 直紀 中 達雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-169,a1, 1998-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

水田農業が地域水環境に与える影響について実態を把握するため, 米国の調査を行った。カリフォルニア州の代表的な用水事業であるCVP, SWP, グレン・コルサ水管理区等での聞取り調査をもとに, 同州の厳しい水事情と水環境を保全するためのさまざまな水田農業に対する規制の実態について紹介する。具体的には, 水田を冬季の間湛水させ, 生態系, 特に渡り鳥の生息地として利用させる試みとその急速な普及, 農薬散布後は圃場水を28日問田面に保留する規制, CVP改革法により, CVPの水の一部が環境用水へ振り向けられること, CVPの利水権者は水を転売することが可能になったこと等について報告する。
著者
荒巻 凌 星野 崇宏
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.343-344, 2020-02-20

近年、位置情報マーケティングの需要が増大するにつれて、データ分析の現場では座標(緯度・経度)を住所に変換する逆ジオコーディングの機会が増えている。国内における逆ジオコーディング手法としては外部のAPIに依存するものが主流となっている。しかしながら、顧客の位置情報を外部に送信することはコンプライアンスやセキュリティ上の問題から困難である。さらにAPIにはHTTPアクセスのオーバーヘッドがあり、数億件規模のビッグデータの処理には所要時間が極めて長くなる問題がある。本研究では外部サービスに依存せず、国土地理院等から公開されているデータをインメモリデータベース上に格納し、高速かつセキュアに逆ジオコーディングする手法を提案する。