著者
菊池 千草 堀 英生 前田 徹 松永 民秀 鈴木 匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.477-483, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

One of the Specific Behavioral Objectives (SBOs) of pharmaceutical education model-core curriculum is as follows: “Understand patient's state of mind and be sensitive to patient's feelings”. We performed learning through simulation of diabetes drug therapy as a means to achieve the objective and evaluated the educational effects of the learning. The simulation was performed and a questionnaire survey was conducted among the 4th-year students of the 6-year curriculum before and after simulation. The score of “level of understanding patient's feelings” was significantly increased after simulation (p<0.001). In addition, the score tended to be associated (R2=0.192) with an increased score in two factors that affect patients' self-care action: “Consciousness of diabetes mellitus” (β=0.251, p=0.062) and “Time and effort for drug therapy” (β=0.248, p=0.065). The main topics of discussion about the simulation included “Lack of sense of critical illness”, “Lifestyle”, “Dose regimen” and “Necessity of support from patients' family and others close to them”. Therefore, the learning through simulation diabetes drug therapy was effective to understand patients' states of mind because students learned the importance of some factors affecting self-care action.
著者
菊池 千草 松永 民秀 鈴木 匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.6, pp.809-820, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

Pharmacy school students were trained in a program simulating medication administration and giving adherence instructions. Following the training, the educational effects were evaluated. Students were separated into two groups. One group of students played the role of pharmacists and instructed simulated patients on medication adherence. Another group of students played the role of patients receiving simulated drug therapy; they were instructed on medication adherence by the students playing the role of pharmacists. The educational effects were evaluated using a questionnaire. The scores for “recognition of factors that influence medication adherence” tended to increase after the simulation, and they increased significantly after practical training. The scores for “self-evaluation of technique for instructing patients on medication adherence” increased significantly after the simulation, and they increased even more after practical training. The students' understanding of the effects on patients who were being instructed also increased significantly after the simulation, and these changes were maintained after practical training. In particular, students became more aware of the influence of pharmacists' attitudes. In practical training, the simulation training was helpful for bedside practice at hospital pharmacies and over-the-counter service at community pharmacies. Thus, the use of role play and simulated patients was an effective method for training pharmacy students to instruct patients on medication adherence.
著者
鈴木 七海
巻号頁・発行日
2019-03-31

本論文は、ホームスクール実践者への質問紙調査とインタビュー調査を通して、日本のホームスクールの全体像を把握し、その現状と課題を明らかにすることを目的としている。「学校信仰」が日本社会に深く浸透している現状を踏まえた上で、「ホームスクールの実践の意義」を解明する。ホームスクールは、アメリカやイギリスなど世界の多くの国で、法律で認められている教育形態のひとつである。一般的に親が子どもの主たる教育を学校に任せる代わりに、主に家庭で教育することをホームスクールというが、その方法は家庭によってさまざまである。日本において、その知名度はまだ低く、またその実態に関する学問的研究はほとんど存在しない。日本のホームスクールは不登校と関係が深く、本調査においても子どもの不登校をきっかけにホームスクールを選択した人びとが多いことが明らかになった。しかし、「不登校の受け皿」や「休養の場」としてホームスクールを選択した人は少数であった。多くの人びとは、ホームスクールの実践を続ける中で、ホームスクールを「学校と同等の、またはより優れた教育の選択肢のひとつ」として肯定的に捉え、積極的な実践姿勢へと変化していく様子が見られた。日本のホームスクール実践者の多くは、イヴァン・イリッチの教育の「学校化」理論に賛意をしめしている。また、実践者の多くはジョン・ホルトの教育哲学である「アンスクーリング」の理念を参考にしながら、ホームスクールを行っていることが明らかになった。
著者
中谷 奈津子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.319-331, 2014-12-25 (Released:2017-08-04)
被引用文献数
4

本研究は母親のエンパワメントの観点から以下のことを明らかにする。地域子育て支援拠点事業の利用を通して母親にどのような変化がみられるか,母親の変化は属性や支援者の子育て支援観,母親規範意識などと関連するか,支援者の子育て支援観は支援者自らの母親規範意識と関連しないのか。全国の地域子育て支援拠点事業に協力を依頼し支援者と利用者を対象にアンケート調査を行った。調査の結果,拠点事業の利用によって,母親は育児負担の軽減,育児情報の取得と活用,仲間づくりを行っていることがわかった。母親の変化は支援者の子育て支援観よりも母親規範意識に影響される傾向にあること,支援者の母親規範意識は支援者自らの子育て支援観に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
安田 喜憲
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.101-123, 1997-09-30

ギルガメシュ叙事詩は四六〇〇年前にメソポタミヤ南部で書かれた人類最古の叙事詩である。この叙事詩のメインテーマはウルクの王ギルガメシュと友人エンキドゥが、森の神フンババを殺す物語である。フンババはメソポタミヤの神エンリルに命ぜられてレバノンスギの森を数千年の間守ってきた。そこに青銅の斧をもったギルガメシュとエンキドゥがやってきた。フンババは怒り狂い口から炎を出して襲いかかった。しかしギルガメシュたちは強く、とうとうフンババは殺されてしまった。フンババの森の神を殺したことによって、ギルガメシュはレバノンスギを自由に手に入れることができた。人類が最初に書いた物語は森林破壊の物語だった。フンババの殺害を知ったエンリルは激怒し、大地を炎にかえ、食べ物を焼き尽くすという。すでにギルガメシュ叙事詩の作者は森林破壊の恐ろしさを知っていたのである。フンババが殺されてから三〇〇〇年後、日本では八世紀に日本書紀が編纂された。その日本書紀のなかにスサノオノミコトとイタケルノミコトの物語が書かれている。二人は新羅国より日本にやってきて、スサノオノミコトは髭からスギを胸毛からヒノキを産みだし、イタケルは持ってきた木の種を九州からはじめて日本全土に播いた。この功績で紀ノ国に神としてまつられた。この二つの神話にかたられる神の行動はあまりにも相違している。ギルガメシュはフンババを殺しレバノンスギの森を破壊した。スサノオノミコトとイタケルノミコトは木を作りだし木を植えた。この神話の相違は花粉分析の結果から復元した両地域の森林の変遷にみごとに反映されていた。フンババの森の神を殺したメソポタミヤや地中海沿岸では森はすでに八六〇〇年前から大規模に破壊され、五〇〇〇年前にはアスサリエ山などのメソポタミヤ低地に面した山の斜面からはほとんど森が消滅していた。そして森は二度と回復することはなかった。これにたいし、日本でもたしかに森は破壊された。しかし、八―一〇世紀の段階で、すでに植林活動が始まっていた。このためいったん破壊された後地にふたたび森が回復してきた。日本では今日においても国土の六七パーセントもが森に覆われている。二つの神話はそののちの二つの地域がたどる森の歴史をみごとに予言していた。フンババの森の神を殺したメソポタミヤでは森という森はことごとく消滅し文明も崩壊した。これにたいしスサノオノミコトとイタケルノミコトが森を植えた日本は、今日においても深い森におおわれ繁栄を享受しているのである。
著者
辻 浩史 望月 昭英 保坂 愛 吉澤 利弘 玉岡 晃
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-332, 2008
被引用文献数
3

症例は62歳女性で意識障害のため入院した.入院後,意識はすみやかに改善したが,血液検査で炎症所見,髄液蛋白高値をみとめた.頭部MRI上,拡散強調画像,T<sub>2</sub>強調画像にて脳梗塞様高信号域が散在していた.抗生剤,抗ウィルス薬を投与したが炎症反応は改善せず退院した.退院後,亜急性に異常行動が出現し,しだいに活動性が低下したため,再入院した.炎症反応の増悪と,頭部MRIにて脳梗塞様高信号域の増大をみとめた.脳生検にて,intravascular lymphomatosis(IVL)と診断し,rituximab併用多剤化学療法にて寛解しえた.RituximabはIVL治療において重要な追加薬剤となる可能性がある.<br>
著者
尾本 恵市
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.415-427, 1995-12-01
参考文献数
46
被引用文献数
1

この総説は, 日本人の起源の問題について, 分子人類学の立場から, 何が, どこまでいえるのかを紹介し, 今後の総合的な日本人研究への一助とする目的で書かれた。検討のための土台として, 埴原の「二重構造モデル」が用いられた。このモデルを, (1)「原日本人」は東南アジア起源である, (2) 現代日本人の諸集団の形成には、「原日本人」と北東アジア系の渡来人という主として2つの系統を異にする集団が関わっている, との2つの部分仮説にわけ, それぞれを個別に検討した。分子人類学的に重要な資料としては, 古人骨のミトコンドリアDNAの塩基配列 (宝来ら) と古典的遺伝標識の遺伝子頻度を用いた多変量解析 (根井, および筆者ら) などがある。前者は, 原日本人の南方起源説にとり有利な資料を, また, 後者は, 反対に, 原日本人の北方起源説を支持する資料を提供している。また, 埴原のいう「二重構造」の存在についても, 意見がわかれている。このような不一致点をどのように説明するかが, 大きな問題である。本論文で筆者は, 問題点の所在を明らかにすると共に, 将来の検討に対する資料として, いくつかの提案をした。
著者
辰巳 安良 田中 毅弘 藤井 修二
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.264, pp.1-11, 2019

<p>事業継続のベースとなる近未来に向けての現時点での現実的な取り組みを調査し、未来の事業継続マネジメントを取り巻く環境が、どのように整備・改善され、どのようなリスクが残されることになるかを知ることが不可欠といえる。既報第1報では、具体的な検討を行うため、「東京都地域防災計画、震災編」と「都民ファーストでつくる新しい東京」をベースにして市街地の近未来の姿を想定し、近未来において残されている建築・設備を中心としたリスクを抽出し、定性的な分析を行った。そこで、本報第2報では、地域ごとのDCM/BCMに係わるリスクの検討を行う。そのため、具体的な検討を行うため、実態調査を行った大丸有地区、田町駅東口北地区、長岡市中心市街地、柏の葉スマートシティの4つの地区について、第1報の手法に沿って、DCM/BCMにおいて残されたリスクについて、対象とする地域の特性や脅威の種類に応じて検討、考察し、リスクの時代による変化の評価に用いたリスクとその事例を示す。</p>
著者
小野 英生
出版者
純真学園大学
雑誌
純真学園大学雑誌 = Journal of Junshin Gakuen University, Faculty of Health Sciences (ISSN:21866481)
巻号頁・発行日
no.7, pp.43-46, 2018-03

はじめに平成23年度に開学した純真学園大学は,福岡県福岡市南区筑紫丘の住宅街に囲まれた小高い丘の上にあり,福岡市中心の天神地区から西鉄電車で約5分の大変交通アクセスが良い地域に立地している.本学の建学の精神は学園訓でもある「気品・知性・奉仕」を掲げ,都市型の保健医療系大学として開学後8年目を迎えようとしている.保健医療系専門大学として1 学部4学科(看護学科,放射線技術科学科,検査科学科,医療工学科)を有し,4学科が合同で行う学科横断型カリキュラムとして1年次から4年次まで段階的に多職種連携教育を行っていることが大きな特色である.開学後から本学は,保健医療系専門大学として地域に貢献すべく,下記のような「健康保健関連分野での地域貢献活動」を行っている.毎年夏に開催している高校生や中学理科の先生を対象とした「サイエンスキャンプ」,ボランティア サークル「クリーンアップ」が中心となっている駅周辺の清掃活動,西鉄大橋駅西口広場を会場とした本学独自のイベント「健康フェスティバル」,南区役所や公民館を通じ地域住民の方々を対象とした「公開講座」,最先端の研究を行っている講師を招聘した「学術講演会」,その他「ママとパパのための 育児体験教室」等,規模の大小はあるが様々な活動を行っている.これら地域密着型の貢献活動に加え,福岡市南区を中心とする各行政機関やその他団体と防災関連協定や包括連携協定を締結している.今回は本学と地域団体との連携協定を中心に述べる.
著者
田邉 政治 宮本 幹大 山上 登 山広 昭文 森本 誠司 上村 晴美
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.39-44, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
3

マツダの車両開発における信頼性評価では,車体やシャシーに代表されるコンポーネントを使ったリグ試験(熱・振動など過酷な条件を模擬した耐久試験)に加え,実車(フルビークル)耐久信頼性試験が重要な役割を担っている。この耐久信頼性試験は,従来テストドライバーが,耐久車に乗車する形で行われてきた。この業務は,昼夜交代制の勤務でありドライバーの判断ミス防止や労務環境の改善,試験期間の短縮という課題があった。これらの課題に対し有効な打開策となる自動運転装置による悪路耐久試験方法を考案し実用化することができた。本稿では,自動運転装置を適用した事例と今後の展望を紹介する。
著者
入江 さやか
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.48-63, 2018

平成最悪の豪雨災害となった「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」。気象庁は1府10県に大雨特別警報を発表し最大級の警戒を呼びかけたが、九州から東海にかけての広い範囲で河川の氾濫や土砂災害が同時多発的に発生、死者は200人を超えた。この広域かつ激甚な災害に、放送メディアはどう対応したか。近い将来発生が想定される「南海トラフ巨大地震」などへの対応を考える上でも、十分な調査・検証がなされなければならないと考える。本稿では、その検証の足がかりとしてNHKや在京民放キー局が実際に西日本豪雨をどう伝えたか、発災前から発災後の報道を時系列で示し、今後検討すべき課題を整理した。
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.723, pp.10-11, 2019-11-11

2019年10月12日夜に伊豆半島に上陸し、関東地方を縦断した台風19号。翌13日昼に東北地方の沖合に抜けるまでの間、東日本の広い範囲に大雨や暴風、高潮をもたらした。 気象庁は最大級の警戒を呼び掛ける大雨特別警報を13都県に発令。
著者
森田 尚人
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.第383号, pp.1-33, 2010-03

Izawa Shuji who was one of the leading educators in early modernJapan published a famous textbook on education that has been the firstbook titled “Pedagogy” in Japan. He also the first person who introducedevolution theory by translating T. H. Huxley’s On the Origin of Species. Although these works were frequently referred in textbooks on both historyof education and history of science, their contents and relations betweenthem have never been analyzed nor argued in their historical contexts. In 1875 Ministry of Education sent three young men to the UnitedState to investigate teacher training course in normal schools. Izawa wasadmitted to Bridgewater Normal School and studied under Albert G.Boyden whose transcript of a lecture provided the source of his Pedagogy.Examining Izawa’s handwritten notes, we find that Boyden’s lecture was profoundly influenced by Mark Hopkins’ An Outline Study ofMan. In this book Hopkins discussed psychological and ethical nature ofman from the standpoint of Scottish “common sense” philosophy, so Scot’s tradition of mental philosophy was reflected in Izawa’s Pedagogy.Nevertheless Hopkins who could not keep out of the impact of evolutionrecognized man as a organism and paved the way for Izawa’s acceptanceof evolution theory. After graduation Izawa went to Lawrence Scientific School at Harvard, where he studied a variety of subjects in natural science. Upon his return to Japan Izawa became head of Tokyo NormalSchool. Izawa’s faith in education as scientific thinking as well as morallyuplifting had its roots in contemporary American education. Izawawas expecting Japanese educators for acquiring scientific method and knowledge and applying them practically.