著者
伊藤 理絵
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.122-127, 2012-07-21 (Released:2017-07-21)

笑いに関する質問紙調査を通して、大学生および大学院生(以下、大学生)における笑いの性差について検討した。24の質問について、19歳〜25歳の大学生108名(男性50名,女性58名)の回答を分析、比較した。6男性の平均年齢は20.82歳(SD=1.38)、女性の平均年齢は20.43歳(SD=0.62)であった。その結果、女性は男性よりも、人をバカにする笑いを好ましく思っていなかった。また、女性は、笑うことは健康につながると思っており、「笑い」を色に例えると暖色系だと感じる傾向がみられた。一方、男性は、異性を笑わせたいと思う欲求が女性よりも強いという結果が示された。本調査は、大学生という発達段階の一部の対象者を取り上げた結果ではあるが、笑いやユーモアの研究を進めるにあたっては、対象者の男女構成比に配慮し、得られた結果についても性差の影響を考慮に入れる必要性が示唆された。

7 0 0 0 OA 婦人の本然

著者
桐生悠々 著
出版者
弘文社
巻号頁・発行日
1903
著者
宮武 茉子 鳴海 紘也 関谷 勇司 川原 圭博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.752-760, 2022-03-15

フラワーゼリーとは,花の形をしたゼリーが透明なゼリーの中に浮かんでいる芸術的なスイーツであり,食べるのがもったいないと思わせるほどの美しさで見る者を惹きつける.本稿ではこの繊細なスイーツの複雑な制作過程を単純化し既存のデザインスペースを拡張することを目的として,スリットインジェクションプリンティングという造形手法と,設計ソフトウェアを実装し評価を行った.この設計ソフトウェアを用いることで,ユーザはプレビュー画面を見て試行錯誤しながら形状をデザインすることができる.またフラワーゼリーの造形に関しては,柔らかく崩れやすいゼリーのプリントを実現するため,カラーゼリーをベースゼリーに直接注入するスリットインジェクションプリンティング技術を導入したフード3Dプリンタを開発し,様々な形状のゼリーを造形できることを示した.さらに,初心者と経験者に対してユーザスタディを実施して提案手法の効果を評価し,初心者でも簡単にフラワーゼリーを作製できるようになり,経験者はデザインを試行錯誤しながら制作可能であることを示した.
著者
水野 君平 太田 正義
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.501-511, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
28
被引用文献数
7 7

本研究の目的は,スクールカーストと学校適応の関連メカニズムについて,社会的支配志向性(SDO)に着目し,検討することであった。具体的には,自己報告によって生徒が所属する友だちグループ間の地位と,グループ内における生徒自身の地位を測定し,前者の「友だちグループ間の地位格差」を「スクールカースト」と定義した。そして,SDOによるグループ間の地位から学校適応感への間接効果を検討した。中学生1,179名を対象に質問紙調査をおこなった結果,グループ内の地位の効果が統制されても,グループ間の地位はSDOのうちの集団支配志向性を媒介し学校適応感に対して正の間接効果を持った。つまり,中学生において,SDOを介した「スクールカースト」と学校適応の関連メカニズムが示された。考察では,集団間の地位格差を支持する価値観を通して,高地位グループに所属する生徒ほど学校適応が向上する可能性が議論された。
著者
三枝 まり
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = Humanities: Christianity and Culture (ISSN:00733938)
巻号頁・発行日
no.44, pp.57-84, 2013-03-31

本稿は、今年(2013 年)、生誕110 年を迎える諸井三郎の作曲活動の土台となったスルヤの時代に光を当て、初期創作の課題と、創作思想を取り上げて、ヨーロッパの古典的な形式受容を第一の課題としたとされる諸井の創作の根源を明らかにするものである。 諸井は戦前から創作を手掛け、当時から脚光を浴びていたものの、戦前の日本の作曲家の中で彼がどのような存在であったのかは十分に考察されていない。しかし、諸井の門下からは、尾崎宗吉、戸田邦雄、入野義郎、柴田南雄、団伊玖麿、神良聰夫ら日本に12 音技法を導入した作曲家たちが輩出され、今日の音楽文化の背景には、諸井の創作活動・教育活動に連なる系譜が続いている。諸井は近代日本音楽史を考える上で欠かすことのできない存在であると言える。そこで、本稿では、比較的作品の所在が数多く確認できるとくに歌曲に焦点を絞り、彼がこの時期に試みた作曲様式について考察し、彼の創作の原点を探った。 諸井三郎は、日本におけるドイツ音楽の領袖として知られるが、スルヤ時代は彼にとって試行錯誤の時代であり、近代フランス音楽やグリーグ、スクリャービンらの音楽も受容している。彼はスルヤ時代に頌歌「クリシュナムルティ」(1928)など宗教的な題材による作品を含めて、17 曲もの声楽曲を残している。これらの作品において諸井は、日本語の詩の音の数にあわせたリズムを導入したほか、形式に捉われない象徴主義的な作品や、半音階的書法や朗誦風のレチタティーヴォ、機能性を曖昧にした和音使用した作品などを残し、渡独前のスルヤ時代に様々な実験的な試みを行ったことが明らかになった。
著者
Владимир Платонов
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-12, 2019-10-20 (Released:2019-11-19)
参考文献数
21

選手の多年にわたる競技生活では,大きく2つのステージに大別される.その1 つ目は,最高の競技力を形成するステージであり,これは,トレーニングを開始してから最高の競技成績に到達するまでの期間である. このステージは,     ①トレーニング開始段階     ②基礎的準備段階     ③専門的準備段階     ④最高の競技成績達成に向けた準備段階の4 つの段階に分けられる.選手の性別や個々の能力,種目の特性などによって,このステージの期間は最短で7-8年,最長で12-14年ほどと開きがある.     2つ目は最高の競技力の発揮,発展,維持するステージである.これは,選手が最高の競技成績を達成してから選手生活を終えるまでの期間であり,次の段階に分けられる.     ①個人の競技力を最大限発揮する段階     ②競技力を維持する段階     ③競技力漸減の段階     ④選手生活終了段階     これらの各段階の間に明確な線引きはない.というのも,選手の多年準備システムとは,競技力を形成・発揮するひとつの連続的なプロセスであるからだ.
著者
Владимир Платонов
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-14, 2016-10-20 (Released:2019-09-04)
参考文献数
35

アスリートが試合への準備を行うにあたっての理論および方法論は,専門的な法則性に基づく指針となるパラダイムや指導的理念となる専門的諸原則に基盤を置いている.それら専門的法則性とは,安定的で再現される関係性を示す.つまり,生まれ持った資質と,競技力の構成要素を高いレベルに向上させる可能性との関係,また,アスリートの身体に作用を及ぼすトレーニングの内的・外的要素と,その結果として起こる反応との関係性,動きの質的表徴と準備状態の様々な要素の関係性,準備状態の様々な面と試合活動の最適な構造との関係性などである.これら原則は,アスリートが試合への準備を行う中で,実際のトレーニングに起こり得る典型的な状況においていかにあるべきかということや,コーチングをどこまで創造的におこなってよいかの指針を示すうえで重要な役割を果たしている.またこれらの原則は,科学的研究によって導き出された結果を解釈するために重要であることはもちろんのこと,それと同様に,我々がしばしば遭遇する現代スポーツの実情からかけはなれた医学・生物学的分野におけるケースにも適用することが重要である.
著者
下妻 晃二郎
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.4-7, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
6
被引用文献数
9

QOL評価においては、QOLが複数の要素から構成される「多次元」的概念であることと、「主観」を評価・測定することに意義がある。QOL評価尺度は目的別に主に2種類ある。一つは健康状態を詳しく調べる「プロファイル型尺度」で、もう一つは、医療経済評価で使われる「価値付け型尺度」である。プロファイル型尺度で測定した結果は臨床現場へ、価値付け型尺度で測定した結果は社会における医療資源配分の指標として役立つ。PRO(Patient-Reported Outcome)という言葉が最近よく使われるようになってきたが、QOLとは概念や階層が若干異なり、それを理解することで両方を上手に併用・使い分けを行うことが大切である。QOL尺度開発の歴史は、まず1946年のWHO憲章の健康の定義から始まるが、その後1948年に開発されたKarnofskyのPerformance Status(KPS)では、まだ「主観」の測定が大事であるという考えはおそらくなかった。QOLという用語が一般に知られるようになったのは、米国では1970–80年代とされる。1990年代に入ると数多くのQOL測定尺度が主に欧米で開発された。2001年に日本では国際QOL研究学会が開催され、500名以上の研究者が参集したが、その後日本で質が高い議論ができる場が少なかったため、2011年にQOL/PRO研究会が設立された。QOL/PRO評価研究の課題としては、測定の信頼性の向上や得られたデータの臨床的解釈に関する方法論の確立、そして、特に価値付け型尺度が使われる医療経済評価の研究においては、倫理的・社会的課題の解決が重要事項である。信頼性と妥当性が高いQOL/PRO評価法の開発は、行動医学へも多くの貢献ができると期待される。
著者
岡村 等
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稻田法学会誌 (ISSN:05111951)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.141-164, 2016-03-25
著者
伊藤 克樹 宇佐美 範恭 寺島 常郎 清水 隆宏 福島 曜 麻生 裕紀
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.390-394, 2019-08-20 (Released:2019-08-30)
参考文献数
13

背景.右肺下葉S6に空洞性結節と周囲への散布陰影を呈し,外科的生検により診断した浸潤性粘液性腺癌症例を経験したので報告する.症例.71歳男性.肺癌検診にて異常陰影を指摘され,X年9月に精査目的で当院紹介となる.CTにて右S6に空洞を伴う結節影と周囲に散布影を認めた.X+1年11月のCTで空洞性結節は徐々に増大傾向を示したため,気管支鏡検査を施行したが,確定診断は得られなかった.炎症性病変が示唆されたが,悪性も否定できなかったため,外科的生検を施行し,浸潤性粘液性腺癌の診断を得て,右下葉切除術を施行した.周囲への散布影は全て同一葉内肺転移であった.結論.浸潤性粘液性腺癌は肺炎類似の画像所見を呈することが広く知られているが,本症例の如く空洞性結節を示す場合もあることは,画像診断上認識する必要があると考えられた.
著者
鐙谷 武雄 七戸 秀夫 黒田 敏 石川 達哉 岩崎 喜信 小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.49-53, 2006 (Released:2008-08-08)
参考文献数
9
被引用文献数
7 7

We explored national and regional characteristics based on age, gender, and prognosis of subarachnoid hemorrhage by using the Japanese Stroke Data Bank, a data bank of acute stroke patients established to provide evidence for standardization of Japanese stroke management. We analyzed data from 1,183 patients with subarachnoid hemorrhage in the Japanese Stroke Data Bank. For regional investigation, we divided the patients into 3 groups according to their place of residence: Hokkaido, Tohoku, and the area west of Kanto. The total male-to-female ratio was 1:1.88. The female proportion was dominant in older patients: 1:2.27 in the 60s, 1:4.48 in the 70s, and 1:4.63 in the 80s. The age distribution of the patients was apparently different between male and female. Female patients (mean age: 64.5) were older than male patients (mean age: 56.1)(p In total, favorable outcome (mRS of 0-2), extremely poor outcome (mRS of 5-6), and death (mRS of 6) were 58.0%, 28.3%, and 19.8%, respectively. In a regional analysis, the outcome of the patients of the area west of Kanto was poorer than that of Hokkaido and Tohoku (p
著者
高橋 雄介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.38-56, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
103
被引用文献数
6

本稿の目的は, 2014年7月から2015年6月までの間に発表・報告された人格(パーソナリティ)特性をはじめとする個人差変数が取り扱われた研究について概観し, その動向と課題についてまとめたうえで, 今後の展望や展開を論じることである。ジェームズ・ヘックマンの研究以来, パーソナリティ特性(非認知能力)の発達及び教育的介入の可能性に関する研究に焦点が当たっている。本稿では, まずBig Fiveとそれに並ぶ個人差変数(知能や自尊感情など), そして自己制御とそれに類する心理学的構成概念(衝動性や満足の遅延など)に関する研究について, 次に, パーソナリティ特性や個人差変数と身体的・精神的・社会的健康との関連に関する研究について概観して, それらの成果をまとめた。最後に, 「あ・い・う・え・お」に準える形で(あ : Anchoring vignettes, い : Interactions, う : Unique relationships, え : Environmental Effects, お : Other reports), 5つの観点から今後のパーソナリティ特性研究の展望と展開を考察し, 3つの視座から課題と期待を論じた。