著者
藤田 尚 野村 貴光
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.411-440, 2012-12-30

近年、我が国の少年法は、度々改正がなされているが、その内容を見る限り、少年の立場からなされたものというよりは、犯罪被害者や世論を受けて改正がなされているように思われる。その結果、少年法の理念からかけ離れ、徐々に厳罰化へ進んでいるような感が否めない。1980年代後半から、アメリカでは現在の日本と同様の動きが見られ、今もその動向は続いていると信じられているが、実際には、現在のアメリカでは、少年司法における厳罰主義に歯止めがかかり、その厳罰化からの転換は、特に諸州における州法の改正という形を取って顕著に現われている。 そこで、本稿は、アメリカ少年司法制度の経緯を概観し、この新動向について主に各州の傾向を詳細に検討した上で、今後の日本の少年司法制度の在り方について論じる。/近年、修復的司法が過去に達成した偉業、修復的司法の現在の状態、そして、将来において修復的司法が那辺に向おうとしているのかについて、欧米において問題提起がなされている。すなわち、古くは世界各国における先住民の文化及び宗教的伝統に起源をもつ和解及び紛争解決の実践から生まれ、その後、欧米諸国においては1970年代から草の根運動として始まり、2012年現在、さまざまな諸原理及び諸政策を内包する社会運動にまで進化を遂げた修復的司法の軌跡に対する再検討を通じて、修復的司法を進化させていくための必要条件を模索し、探求しようという動向が、欧米において発生するに至っている。 思うに、被害者政策としての修復的司法の必要条件を探求することは、被害者政策の手段としての修復的司法の将来的発展に寄与し、被害者の人権の保障につながる結果となるが故に、修復的司法の必要条件を探求することには意義が認められよう。そこで、本稿においては、究極的に被害者の人権保障の貫徹を目指すという動機から、修復的司法の必要条件を探求することを目的とし、被害者政策としての修復的司法に必要とされているものは何かとの問題提起を行い、その問題につき法律学、被害者学及び社会学的視角から、考察し、修復的司法の必要条件に対する理論的帰結を導出することにしたい。
著者
沼田 彩誉子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.28, pp.127-144, 2013-01-05

戦前・戦中期において、日本および日本占領下にあった満州・朝鮮半島に居住していたタタール人の多くは、戦後アメリカやトルコへと渡った。両国では2012年現在も、彼らや彼らの家族が暮らしている。本稿では、こうした極東出身のタタール人のうち、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア(以下ベイエリア)へ移住した在米タタール人に焦点をあてる。聞き取り調査を中心に、戦前・戦中期日本での生活、戦後の極東地域からの移住、およびベイエリアにおける現況をまとめる。従前「在日タタール人」と呼称される彼らは、戦前・戦中期における日本の「回教政策」と深く関わる存在である。一例をあげれば、早稲田大学に保管される大日本回教協会寄託資料には、彼らに関する文書・写真資料が所蔵されている。しかしながら「在日タタール人」の多くが戦後、極東地域から移住したために、彼らの存在、あるいは彼らの所有する資料は、日本では長らく忘却されてきた。アメリカやトルコに暮らす極東出身のタタール人や彼らの家族への聞き取りにより、既存文書・写真の特定や新規資料発見が大いに期待される。関係者の逝去・高齢化が進むなか、戦前・戦中期に関わる聞き取りおよび写真や書簡など私文書の調査は、喫緊の課題である。このとき、戦前・戦中期における「回教政策」が独善的なものであった事実を忘れてはならない。そのため、先行研究の多くは、「在日タタール人」を「回教政策」の対象や道具として扱ってきた。しかしながら、戦前・戦中期の日本とイスラーム関係の新たな理解を目指すとき、当時の「在日タタール人」と日本との関係が必ずしも良好だったわけではないにしても、彼らの視点から改めて日本の「回教政策」を評価することが求められる。そのためには第一に、現在の状況を正しく把握・理解し、インフォーマントとの関係を慎重に構築することが不可欠である。本稿は、彼らの移住経験に着目しつつ、聞き取り・資料調査を通じてその歴史を見直す作業への、第一歩として位置づけられる。本稿で扱うデータは、2012年4月25日から5月7日にかけて筆者が行ったベイエリアでの調査に基づくものである。日本での生活や移住の経験、ベイエリアにおける在米タタール人の状況について、合計9名の関係者への聞き取りを中心とする、フィールドワークを行った。日本では、東京、名古屋、神戸、熊本がタタール人の主な居住地となり、組織や学校、モスク、印刷所などが設立された。タタール人の流入が始まった1920年代当初、クルバンガリーがコミュニティ形成のイニシアチブをとった。しかし1933年にイスハキーが来日すると多くのタタール人は彼のもとに集まり、東京ではクルバンガリー派とイスハキー派の対立が起こるようになった。イスハキー、クルバンガリーがともに離日した後は、イブラヒムがコミュニティの指導者とされた。日本の戦局悪化に伴い、タタール人の多くは軽井沢や有馬温泉へと疎開を強制された。モスクや学校が空襲の被害を免れたため、タタール語による教育やタタール人の集まりは戦後も継続された。しかし1953年のトルコ国籍付与に伴い、彼らの大部分はトルコやアメリカへと渡っていった。極東からベイエリアへの最初の移住は、1923年までさかのぼることができる。日本で羅紗の行商を行っていたタタール人の一部が、関東大震災で被災し、渡米したのである。しかし、戦前のアメリカ移住は少数で、移民の数が増加したのは、戦後であった。終戦後のアメリカへの移住は、大きく2つのパターンにわけることができる。すなわち、極東からアメリカへ直接移住した場合と、トルコでの生活を経て、アメリカへと移住した場合である。いずれの場合も、終戦後に始まった極東からの出移民は、1950年代から60年代に集中している。1917年のロシア革命を機とする避難民を第一世代とするなら、第二世代、すなわち日本、満州、朝鮮半島を出生地とする彼らの子どもたちが、親や兄弟、結婚相手とともに、あるいは単身でトルコやアメリカへと移住した。2012年現在、ベイエリアでは、移住経験を持つ60〜80歳代の第二世代、第三世代にあたる米生まれの30〜50歳代の子どもたち、第四世代にあたる20歳代以下の孫たちが暮らしている。ベイエリアでは1960年に、在米タタール人の組織として「アメリカン・トルコ・タタール・アソシエーション」(American Turko Tatar Association。以下ATTAと略)が設立された。2012年5月現在、ATTA全体では会費納入者、シニア、子どもを合計して263名の極東出身の在米タタール人とその家族がおり、このうち187名がベイエリアに居住している。ATTAを設立し、集まりの場ではタタール語での会話がなされていた第二世代に比べると、第三世代のタタール語習得率やタタールへの関心、集まりへの参加率には、差がみられる。第二世代の高齢化による世代交代が進む今、タタールの言語や文化の保持は重要な課題となっている。カリフォルニア州コルマのサイプレス・ローン記念公園には、ATTAが購入、管理する4か所のムスリム墓地がある。合計302の墓のうち、160は埋葬済み、142はすでに購入され、使用者が決まった状態である。1962年に亡くなった人物が、この墓地へ最初に埋葬された。在米タタール人に関する今後の課題は次の2点に集約される。(1)第二世代へのさらなる聞き取り調査、(2)個々人が所蔵する写真、書簡などの私文書資料の探索とそれら資料に関する情報の収集である。
著者
田河 賢治 木下 賢吾
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.Proc, pp.601-602, 2017-05-03 (Released:2017-09-13)
参考文献数
2

Motivation: Over the past few years, activity trackers which can measure everyday steps, energy expenditures, and sleeping time are getting popular. Especially these days, some activity trackers use not only accelerometers but also optical heart rate monitors based on photopletysmography. In this study, we evaluated reliability of an optical heart rate activity tracker during running.Method and Results: Several subjects(n=11, all male) ran 1km on a flat road and we analyzed heart rate errors to check if there was a difference between subjects. We found that some subjects had significantly higher Mean Absolute Error than others(highest MAE,20.54±13.64; average MAE, 8.41±6.47), and there was a strong correlation between each subject's MAE and the standard deviation of running speed(Pearson's r=0.87, p<0.001).Conclusion: Optical HR monitors lead to errors when users change their pace of running.

7 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1945年02月22日, 1945-02-22

7 0 0 0 OA 古逸叢書

著者
清黎庶昌輯
出版者
黎氏日本東京使署刊
巻号頁・発行日
vol.第13冊, 1884
著者
川戸 貴史
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.713, pp.53-75, 2007-10
著者
Kayoko Hirayama-Yamada Natsuko Inagaki Takeharu Hayashi Akinori Kimura
出版者
International Heart Journal Association
雑誌
International Heart Journal (ISSN:13492365)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.359-366, 2021-03-30 (Released:2021-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
6

Dilated cardiomyopathy (DCM) is a common cause of heart failure. TTN, which encodes titin protein, is a representative causative gene of DCM, and is presented mainly as a truncation variant. However, TTN truncation variants are also found in healthy individuals, and it is therefore important to evaluate the pathogenicity of each variant. In this study, we analyzed 67 cardiomyopathy-associated genes in a male Japanese patient who was hospitalized for recurrent severe heart failure and identified a novel truncation variant, TTN Ser17456Arg fs*14. This TTN truncation variant was located in the A-band region. Moreover, the patient's mother with heart failure harbored the same variant, whereas the father and brother without heart failure did not harbor the variant. To examine the functional changes associated with the truncation variant, H9c2 cells were subjected to genome editing to generate cells with a homologous truncation variant. The cells were differentiated using all-trans-retinoic acid, and the mRNA expression of skeletal actin and cardiac actin were found to be increased and decreased, respectively, consistent with known changes in patients with DCM or heart failure. In contrast, another cell with the titin truncation variant used as a control showed no changes in heart failure-related genes. In summary, we found a novel TTN truncation variant in familial DCM patients and confirmed its functional changes using a relatively simple cell model. The novel truncation variant was identified as a pathogenic and disease-causing mutation.
著者
高坂 康雅
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.218-229, 2008-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
39
被引用文献数
7 6

本研究の目的は, 青年期における劣等感の発達的変化を, 自己の重要領域との関連から明らかにすることである。中学生・高校生・大学生549名に, 予備調査から選択された劣等感項目50項目への回答と, 自己の重要領域に関する自由記述を求めた。劣等感項目は予備調査と同様の8因子が抽出され, 自己の重要領域に関する記述は10カテゴリーに分類された。自己の重要領域と劣等感得点との関連を検討したところ, 中学生では知的能力を重要領域としており, 学業成績の悪さに劣等感を感じ, 高校生では対人魅力を重要領域としており, 身体的魅力のなさに劣等感を感じていた。そして, 大学生になり, 自己承認を重要領域とするようになると友達づくりの下手さに劣等感を感じるが, 人間的成熟を重要領域とするようになると劣等感はあまり感じられなくなることが明らかとなった。
著者
西村 綾夏
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科言語科学講座
雑誌
言語科学論集 = Papers in linguistic science
巻号頁・発行日
vol.23, pp.19-38, 2017-12

本稿では、文体パロディにおける絵文字の分析を通し、これまでの文体研究においてあまり議論がなされてこなかった視覚的文体素の重要性を指摘する。なお本稿における文体とは、小池 (2005) の定義する「メッセージの効率的伝達を考え て採用される、視覚的文体素 (文字・表記) 」と意味的文体素 (用語・表現) とによる言語作品の装い、または、装い方」をさす。小池の定義によれば「視覚的文体素」とは「漢字 (正字・略字・俗字) 、ひらがな (変体がな) 、カタカナ、アルファベット、ギリシア文字、キリル文字、ハングル、アラビア数字、ローマ数字、振り仮名・送り仮名・仮名遣い、それに疑問符、感嘆符、句読点などの各種記号や改行・空角・余白、文字の大小等」をいい、「意味的文体素」とは「言表態度 (モダリティ) 、話し言葉・書き言葉、共通語・方言、漢語・和語・外来語・外国語、古語・新語、完全語形語・省略語、雅語・俗語・隠語・流行語、男言葉・女言葉、老人語・幼児語、慣用句、引用句、文長、表現技法 (レトリック・視点等) 、ジャンル (物語・小説・実録・記録・日記等) 」をいう。文体を分析する手段としては、著名な作家を対象とし、その人物史や時代的背景をヒントとして紐解く方法 (小池 2005) 、計量的な観点から文体の特徴を捉えようとする方法 (工藤ら 2011, 佐藤ら 2009, 村上 2004) などがある。しかしこれらは主に意味的文体素の検討に留まり、視覚的文体素について分析した研究はほとんど見られない。本稿で扱う絵文字は、書き言葉において欠落するパラ言語的情報 (表情、声のトーン、ジェスチャー等) を補い、メッセージに対する話し手の態度を表明する (Evans 2017) 点で意味的文体素の一種であるが、漢字・ひらがな・カタカナ等と並べて使用される視覚的文体素の一種でもある。本稿では文体パロディ中に現れる絵文字の分析を通して、文体研究においては意味的文体素だけでなく視覚的文体素を分析することの重要性について論じる。本稿の構成は次の通りである。2 節ではまず、文学的観点からの文体研究、および計量的観点からの文体研究の手法について確認し、その問題点を指摘する。さらに、構文文法の枠組みから文体 (スタイル) を扱ったÖstman (2005) とAntonopoulou and Nikiforidou (2011) の主張を踏まえ、文体研究においてパロディを扱うことの重要性について述べる。加えて、絵文字を含んだ文体パロディの具体例を挙げ、絵文字の性質とその利用目的、文体パロディにおける絵文字の役割について整理する。3 節では実際に文体パロディ中で用いられる絵文字を分析し、パロディにおいては絵文字の選定・使用規則が模倣対象となっている点、ただしその使用ストラテジーに関しては、パロディ特有の誇張が見られる点を指摘する。4 節ではこれらの点を踏まえ、文体パロディにおいて絵文字の模倣が意味することについて論じる。最後に5 節では、今後の文体研究の展望を述べて議論をまとめる。The purpose of this paper is to show the roles of visual stylistic elements. Previous stylistic research has dealt mainly with "what is written (content)." However, as Östman (2005) points out, "How the text is arranged (design)" greatly influences the understanding of the text. The choice of visual stylistic element is closely tied to the genre and the features of the writer of the texts. Emojis are relatively new visual stylistic element, and it is said that the choice of pictograms will express the personality of the writer (Evans 2017). Nevertheless, few studies have focused on them. This paper compares the style of a famous Twitter user, "@tokyoxxxclub, " with the style of its parody, and discusses the role of visual stylistic elements in their production and the comprehension of parody. The analysis shows that the arrangement of the text and the use of emojis have a greater influence than do the contents of the text. In addition, the producers of the stylistic parody recognize and imitate the regular patterns of emojis observed in tweets of "@tokyoxxxclub." In general, if such regularity of parodies is violated, the acceptability of parody declines. This paper indicates that, the analysis of visual stylistic elements is indispensable in future stylistic research.
著者
松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.419-437, 2013-12-30 (Released:2017-05-19)

本稿の目的は,経済地理学の研究成果の中から方法論的な議論を抽出し,時系列的に要点を整理するとともに,全体を俯瞰することを通じて,方法論の軌跡を描き出し,あわせて,欧米での方法論的議論を参照しながら,日本における経済地理学方法論の特色と問題点,今後の課題を考えていくことにある.第2次大戦後,欧米諸国では,新古典派経済学の立地論や地域科学が発展をみせた.これに対し,日本の経済地理学は,戦前から独自の理論構築の歩みを示し,戦後には近代経済学的経済地理学とマルクス主義経済地理学とが並存してきた.後者はまた,経済地誌,地域的不均等論,法則志向の生産配置論等に分かれ,活発な議論がなされてきた.1970年代になると,国民経済の地域的分業体系を解明しようとする地域構造論が登場し,今日まで産業配置,地域経済国土利用,地域政策の4分野にわたる多くの研究成果を蓄積してきている.1990年代以降,欧米諸国では,文化論的転回や制度的転回など,方向づけが目まぐるしく変わってきたのに対し,地域構造論は,立地論や開発経済論のような多様な理論を批判的に吸収することによって理論内容を豊富にしてきた.21世紀に入り,グローバル化や情報・知識経済化の下で,日本の経済地理学は,新たな空間的視点や研究枠組みを確立するとともに,方法論的議論の希薄化を克服していく努力が必要である.
著者
岡崎 龍太 栗林 英範 梶本 裕之
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.335-343, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
24

Listening music with mobile devices is now a part of our daily life. With the aim of generating vibration-based feedback to enrich musical listening experiences with mobile devices, we have applied a frequency shifting method, which was proposed previously in the literature for mixer manipulation or cross-modal relationship between tactile and auditory stimuli. Experimental results showed that the proposed method significantly increased the listener's evaluation of sound consisting of high-frequency components.
著者
小塩 真司
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.127-129, 2021-03-27 (Released:2021-04-01)
参考文献数
4