- 著者
-
荒木 一視
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO (ISSN:18808107)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.2, pp.239-267, 2014 (Released:2015-03-31)
- 参考文献数
- 228
- 被引用文献数
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明治期以降の日本の食料供給を,穀物の海外依存に着目して検討するとともに,それに対する地理学研究を振り返った.食料の海外依存は最近始まったことではなく,明治中期以来,第二次大戦にかけても相当量を海外に依存していた.それに応じ1940年代まで,食料は地理学研究の1つの主要な対象で,農業生産だけではなく多くの食料需給についての論考が展開されていた.戦時期の議論には,問題のある展開も認められるが,食料供給に関する高い関心が存在していたことは事実である.しかし,その後の地理学においてこれらの成果が顧みられることは無く,今日に至るまで食料への関心は希薄で,研究の重心は国内の農業に収束していった.明治期以降もっとも海外への依存を高めている今日の食料需給を鑑みるに,当時の状況と地理学研究を振り返ることは,有効な含意を持つと考える.