著者
中西 泰夫 山田 節夫
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.79-96, 2010-01-27

この論文の目的は, 特許の質と特許の陳腐化率および特許の価値を調べることにある. 特許の質と陳腐化率および特許の価値を実際のデータから計測して, 特許の質が陳腐化率と特許の価値をどのように規定しているか明らかにする. そして特許の価値をもとめる. また質がどれだけの価値を持つかを計測して明らかにする. この論文では, 特許の陳腐化率と初期の価値のパラメータを推定して得ることにより, 特許の価値を質を考慮して定量的に求めた. そこで特許の質についても定量的に評価額を求めることができ, 社会的にも有用である結果を得た. 推定した結果, すべてのパラメータについて有意な推定結果を得た. 化学産業と医薬品産業に関しては, 陳腐化率が高く, 初期の価値も高い値であった. 特許の質を考慮すると, 化学産業と医薬品産業では, 大きな影響があった. 特に被引用が7以上の特許については, 価値がはなはだしく大きかった.
著者
Jacqueline Banerjee
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-53, 1994-03

ヴィクトリア朝時代には、子供であるというだけでもつらいことだった。女の子であるというのはもっとつらいことだったのであろう。この時代の女性小説家たちはその満たされぬ思いを、器量がよくなくて反抗的なジェーン・エアや(シャーロット・ヤング作『ひなぎくの花輪』の)エセル・メイのような女性主人公に注ぎこんだ。わたしたちはこのような少女に共感を覚えるのだが、彼女たちが成長するにつれてその反抗が鎮まっていく傾向に気づく。男性作家も女性作家も、結婚と家庭生活を女性主人公たちの究極の到達点と定めていたのである。この定型例はディケンズの作品に明らかに見られる。『荒涼館』の苦悩する子供キャディ・ジェリビーはあっさりとかわいい善良な主婦になってしまう。しかしさすがはディケンズ、キャディやリトル・ドリットのような人物の奉仕は心からのものであり、深い満足感をもたらしている一方、愛がなければ(『つらい時勢』のルイザ・バウンダービーの場合のように)家庭にも幸福の可能性はないことを明示している。とは言え、他の作家たちはもっと模範例のかげから反抗をのぞかせ、束縛のもとで苦悩したり(たとえばジョージ・エリオット作「エイモス・バートン」のパティー・バートン)、より大きな世界にエネルギーのはけ口を見つけようとする年長の女性主人公を描いてみせる備えができていた。しかし、そのような主人公たちの努力は、ハンフリー・ウォード夫人の描くマーセラや、ヤングの描くレイチェル・カーチス(『家族のなかの賢い女』)の慈善事業的な冒険で例証されるように、悲惨な結果に終わりがちである。ヴィクトリア朝時代の女たちがよりよき教育や職業の機会を必死に求めていたことは、ヤングのようながんこな伝統主義者の作品からですら、明白になる。そういう機会がないので、女主人公たちは、シャーロット・ブロンテの描くシャーリーのようにダイナミックにも、エリオットの描くダイナ・ポイサー(『アダム・ビード』)のように決然ともなりうるのだが、やはりその活動を家庭の炉辺に限定しなければならないのだ。
著者
久保 徳彌
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.B219-"B224-1", 1929

凡ソアル化學的物質ガ生體ニ働ク際.其ノ生力學的作用ト化學的構造トノ間ニ一定ノ相互關係ノ存スルモノニシテ同一構造ヲ有スル物質ニ於テモ其ノ微細ナル分子的變化ガ.ソノ生力學.藥力學的作用ニ種々ナル相違ヲ來ス事ハ既ニ認メラルヽ處ナリ。余ハ此ノ事實ニ立脚シテあみん類ニ於ケル第一級,第二級並ニ第三級ト稱セラルヽ分子群ノ變化ガ如何ニ生力學.藥力學的ニ變化ヲ來スモノナルヤヲ檢センガ爲メ。めちーるあみんニ於テ,其ノ瓦斯新陳代謝ニ於ケル相互關係ヲ研究セリ。即チめちーるあみん,ぢいめちーるあみん.とりめちーるあみんニ就テ瓦斯新陳代謝試驗ヲ行ナヒ,其ノえねるぎー新陳代謝ヲ観察スルニ,饑餓第一日ニ於テハ,各々其ノめちーる數ノ増加ニ從テえねるぎー新陳代謝増進シ,第二日目ニ於テハ殆ド變化ナキモ.只第一級めちーるあみんニ於テハ後半ニ於テノミえねるぎー新陳代謝ノ上昇ヲ來セリ。呼吸系數ハめちーる數ノ増加ニ從テ減少スルヲ認メタリ。
著者
内田 雅人 Masato UCHIDA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.119-130, 2014-03

研究の目的 強化スケジュールにおける強化子出現の規則性とオペラント反応の持続性の関係を消去抵抗を指標として、コンピュータ上のシミュレーション実験によって検討した。研究計画 コンピュータ上の仮想実験でラットのレバー押しを部分強化(VR、FR、VI、FI)か連続強化(CRF)で条件づけし、強化子出現の規則性の違いと消去時の反応の持続性の関係を比較した。場面 オペラント条件づけのシミュレーション実験ソフトを用いて、仮想ラットのレバー押し反応と消去抵抗を測定した。被験体 仮想ラットを5匹ずつ5群に配置した。独立変数の操作 変率強化(VR)、定率強化(FR)、変時隔強化(VI)、定時隔強化(FI)、連続強化(CRF)の強化スケジュールを用いた。行動の指標 消去基準に達するまでのレバー押し反応数、所要時間、反応間時間(IRT)を測定した。結果 消去期の反応数と消去に至るまでの所要時間の違いが確認された。消去1日目には、短いIRTがVR群とFR群に多く、VI群には長いIRTが多いという特徴が確認されたが、消去2日目以降はどの群のIRT分布もCRF群に類似したパターンへと変化していった。結論 強化子出現が不規則で強化期から消去期への条件変化が明瞭でない変動型スケジュールは、その変化が明瞭な固定型もしくは連続強化スケジュールよりも消去抵抗を高めることが確認された。
著者
瀬戸山 雄介 福田 隆一 山下 真司 中畑 敏秀 宮崎 麻理子 福田 秀文 了徳寺 孝文 工藤 貴裕 永濱 智美
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.166, 2007 (Released:2008-02-01)

【はじめに】 大腿骨頚部骨折術後において、浮腫が関節拘縮、感覚障害など二次的に機能障害を起こす要因となり、理学療法を進める上で問題となることが多い。そのアプローチとしてパンピングを用いる事は多いが、良好な結果を得られないことも経験する。そこで今回大腿静脈に通過障害があることを仮定し、その阻害因子と成りうる筋に対してアプローチを行い、若干の知見を得たのでここに報告する。【対象】 大腿骨頸部骨折術後3週以上経過しており明らかな心疾患、腎疾患がなく下腿に浮腫がみられるとした。大腿静脈通過障害にアプローチを行った群(以下アプローチ群)に関しては6名10脚、内訳は男性1名、女性5名、平均年齢85.6±7.8歳。 コントロール群は4名7脚、内訳は女性4名、平均年齢89.5±4.4歳であった。【方法】 アプローチ内容に関して、アプローチ群は、腸腰筋、恥骨筋、内転筋を中心に内転筋管周囲筋及び鼠径部周囲筋に対してストレッチ、マッサージ、ストレッチ、筋収縮の順に行った後、足趾及び足部パンピングを実施した。コントロール群は足趾及び足部パンピングのみ実施した。浮腫の評価は下腿周径(最大、最小)、足部周径(第一中足骨骨底と舟状骨を結ぶ周径)を測定。測定時間はアプローチ前の午前9時とアプローチ後の翌日午前9時とし、アプローチ実施時間に関しては午後2時とした。データ処理に関しては、両群における改善脚数の割合及び周径の改善率を算出した。改善率に関しては、対応のないt検定を用いてデータ処理を行った。【結果】 前日と比較して改善がみられた脚数の割合は、下腿最大周径においてアプローチ群では70%(0.5センチ~1.5センチ改善)であり、コントロール群では14%(0.5センチ~0.8センチ改善)であった。下腿最小周径において、0.5センチ以上改善した脚数の割合はアプローチ群で50%、コントロール群で0%であった。足部周径において、0.5センチ以上改善した脚数の割合は、アプローチ群で30%、コントロール群で14%であった。また下腿最大部周径におけるアプローチ群とコントロール群の改善率の比較において、有意差が認められた。(P<0.05)【考察】 アプローチを行った方が下腿浮腫は改善する傾向にあった。これは大腿静脈が内転筋管、大腿三角、血管裂孔を通過しており、周囲の筋(内転筋管周囲筋、鼠径部周囲筋)から圧迫を受け、循環障害を起こす可能性が示唆された。また内転筋管・鼠径部周囲筋に関しては、術後の外転筋不全による内転筋の代償や、長時間の臥床・座位による適応性短縮などにより機能不全を生じやすい。これに対して内転筋管・鼠径部周囲筋にアプローチを行うことで大腿静脈通過障害が改善したことが、下腿浮腫の改善につながったと考えられる。