著者
佐藤 和彦 池辺 八洲彦 藤代 一成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.187-188, 1992-09-28

現在多種類の自然言語辞書(以下辞書とよぶ)が利用されているが,ユーザーの立場から見ると辞書にはいくつか不備な点が認められる。それらは大別して構造的な欠点と内容的な欠点の2つに分類することができる。構造的な欠点の多くは通常の辞書が「紙」という媒体で構築されていることを原因とする欠点で,内容的な欠点とは辞書が扱う情報に関する欠点である。文献では,内容的な欠点の一例として英和辞書における単語の語源情報の取扱いの不備が指摘されている。自然言語の時的発達に関する情報をまとめて語源情報という。語源情報には,その単語に関する意味,語形,用法などの歴史的変化の情報が含まれる。当研究室では,英和辞書に普遍的に見られる語源情報の不備を新しい視点から改善した辞書システムを,高度データベースシステムとして構築するプロジェクトが進行中である。その一部として本報告では,大学受験生(高校生),一般社会人を対象とした英単語学習システム構築を念頭におき,語源情報の一部である印欧原語語根から生じる単語間の関連の利用可能性と有効性の調査結果について述べる。
著者
岡島 奈音
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.17, pp.43-53, 2012-03

町人が経済力を獲得した江戸時代以降、日本女性の最も一般的な衣服であった小袖には、様々な趣向を凝らした意匠が登場した。本研究では、円山派絵師の筆によるという伝来を持つ三井家伝来きもの型原寸下絵29件の内の1件「八緩文様下絵」から推定される小袖の姿をCGで再現するとともに、同下絵に関する従来の言説を再検討するため、絵画作品である八橋図、工芸作品である八橋文様、各々の展開との比較を行った。考察の結果、以下のような見解を得た。1)「八橋文様下絵」から推定される小袖は、鶴の丸文様の紅色論子。様板は鹿の子絞り、杜若の花は自または水色、茎は明るい緑、葉は一段濃い緑の色糸、橋桁の輪郭は金糸で刺繍され、全体には金砂子が施されていたと考えられる。2)従来「八橋文様下絵」の制作にあたったと考えられてきた円山・四条派には、八橋図の作例を見つけることが出来なかった。小袖意匠としての八橋文様は類例も多くみられ、オーソドックスな小袖意匠として広く用いられたと考えられる。更に、橋を分断する八橋図の作例は決して多くないが、八橋文様には分断された橋の意匠の類例が散見している。以上の見解から、「八橋文様下絵」を、円山派絵師が小袖意匠に絵画性を持ち込んだ作例というよりも、先行する小袖意匠を参考に制作されたものと結論付けた。
著者
山本 綾 古島 泰子 長谷川 多美子 肥田 朋子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.305-311, 2009-10-20
被引用文献数
3

【目的】不動状態に伴う痛みは,疾患特異的なものだけでなく,不動化で引き起こされた可能性がある。そこで,ギプス固定による不動化モデルラットについて疼痛行動評価を行うとともに,活動量を調べた。【方法】慢性絞扼ラットの両側後肢をギプス固定したCCI固定群,一側後肢を固定した片肢固定群,両側後肢を固定した両肢固定群,無処置のコントロール(CON)群に分け,疼痛行動,ROM制限,筋萎縮を調べた。また,片肢固定群,両肢固定群,CON群の活動量を調べた。【結果】アロディニア・痛覚過敏がCCI固定群,両肢固定群,片肢固定群の順に発生した。ROM制限,筋萎縮は固定群間で有意な差はなかった。活動量は両肢固定群,片肢固定群の順に有意に少なかった。【結論】固定群全てで痛みが生じたことから不動化は痛みを引き起こすと考えられた。また,活動量の少ない群に痛みの発生が早く認められたことから全身活動量も痛みの発生に影響することがわかった。
著者
小林 一三 山崎 三郎 黒田 敏夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-28, 1973-01-25
被引用文献数
1

茨城県下から採集したマツカレハ幼虫を材料として, 人工照明の影響のない3m×3m×2.5mの大型ケージを用いて成虫の羽化の様子とその後の成虫の行動を調べたところ, 次のような結果を得た。1)羽化は7月中旬を盛期として行なわれ, その羽化曲線はピークが羽化開始日の方に傾き, 尾を終了日の方へひいた型となった。この傾向は雌よりも雄の方が著しいため, 羽化期を通じての毎日の羽化成虫の性比は初期には0.5より小さく, 盛期に0.5,後期には0.5より大と漸増した。2)1日における羽化時刻は午後5時から11時までの間であって, 雄は雌よりも早い時刻に羽化し, そのピークは日没前の7時ころ, 雌では日没後の8時ころであった。この場合の雄雌のちがいは同型の曲線が約1時間のずれを持ったちがいであって, 1)の性比の変化と共に交尾を確実にする上で役立つものと思われる。3)羽化した成虫は30分ほどで翅の伸張を終え, 雄ではその後2時間ほどで飛行した。雌は翅の伸張を行なった場所に止まって深夜を中心とした時間帯に交尾を行なった。日中は静止を続け夕刻から活動を開始し, その後, 雌はただちに産卵を始め, 夜9時ころまでが産卵の時間であった。夕刻7時30分と明方4時を中心としたl0〜20分間にややはっきりとした飛行の集中する現象がみられた。
著者
堀 雅博 岩本 光一郎
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.132-146, 2013-04

本稿では,大相撲興行におけるいわゆる「八百長」の経済学的誘因構造を明らかにすることを目的に,簡単な理論モデルを提示し,Duggan and Levitt(2002)に倣った幾つかの実証分析を行った.「星の買取り」,及び「星交換」の成立要件を考察した理論分析からは,「八百長」行為には力士が置かれた環境下での誘因構造が大きく影響しており,上位看板力士が「八百長」を行うとすれば星の買取りを,平幕/十両の力士は星交換を,それぞれ選択する可能性が大きいと考えられる一方,幕下以下の力士養成員には「八百長」の誘因があまりないことが示された.一方,Duggan and Levitt(2002)のデータ期間を約2倍に延長し,また力士養成員も含めて行った実証分析の結果,①勝越しの可能性が懸かった力士の勝率が不自然に高いという意味での「八百長」は,2000年代に入り減少していたものの,近年迄一貫して続いていたこと,②力士養成員レベルでは,統計的に検出できる程の「八百長」は行われていないこと,③2011年2月の携帯メール八百長スキャンダル以降では,関取レベルでも,統計的に検出可能な形での「八百長」は無くなっていること,④「八百長」問題で処分対象となった力士とその他の力士を比較すると,すくなくとも平均的レベルにおいて,処分対象力士の方が「八百長」に強く関与していた可能性が高いこと,等が明らかになった.本稿の分析結果は,大相撲興行の取組結果から読み取れる力士の選択(「八百長」)が経済学的な誘因構造と極めて整合的であること,また,その誘因構造の設計次第で,力士の選択は全く異なったものになり得る可能性を示唆している.This paper first develops a simple model to show that incentives for match-rigging in professional sumo differ depending on the rank to which a wrestler belongs. While incentives for match-rigging can arise for wrestlers in the top divisions (sekitori), few incentives arise for wrestlers-in-training (makushita and below). We then report the results of our empirical analysis, which show that match-rigging in the top divisions has declined in the post-Duggan and Levitt (2002) period, and that at the wrestler-in-training level there was no statistically detectable match-rigging during any period. We find further that match-rigging in professional sumo has stabilized at statistically undetectable levels following the mobile phone text message match-rigging scandal, and that on average the wrestlers selected for sanctions following the scandal were in fact those most involved in match-rigging.
著者
杉村 安幾子
出版者
金沢大学
雑誌
言語文化論叢 (ISSN:13427172)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-58, 2006-03-31
著者
小中 龍一郎
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-107, 2001 (Released:2009-03-13)

In Japan, an import amount of pistachio nuts, from the United States is increasing every year, because there is hardly contamination with aflatoxin in the pistachio nuts. On the basis of the local information, I introduce a process from the harvest of pistachio nuts to manufacture at California. As the result of manual, standard, machine harvest, machine dryness and industry-university collaboration, we can have high quality pistachio nuts with little aflatoxin contamination. So as to prevent contamination with aflatoxin, pistachio nuts need to be isolated from fungus. Therefore, it is necessary to have the consistent control system that is from farm to factory.
出版者
三重県立第四中学校
巻号頁・発行日
vol.明治44年度, 1911

1 0 0 0 OA 僧寶正續傳7卷

著者
宋釋祖撰
巻号頁・発行日
1000

宋石室祖琇撰。宋代の禅家の名僧30人の列伝。川瀬一馬著『五山版の研究』では、本書の五山版が南北朝期に開版され、当館・宮内庁書陵部(金地院旧蔵本)等が架蔵するが、伝本の少ないなか、建仁寺の山内寺院のひとつである両足院が5部を架蔵していることが、本書刊行に係わるなんらかの意味を持つであろうことが示唆されている。巻首に目録、巻末に「代古塔主与洪覚範書」を付し、版式は四周単辺・左右双辺が混在している。当館本は磨滅が少なく精刻であるが、表紙から第7丁までは上部が欠損し、全葉裏打ち補修が施されている。表紙右上に「忠雅⁄堂」の小型印を押捺した紙片が貼付されている。書中、かなりの部分に朱点・朱引きが施されている。
著者
新興音楽出版社
出版者
シンコー・ミュージック
巻号頁・発行日
vol.32(6), no.440, 1982-06