著者
住田 弘一 加藤 直人 西田 瑞彦
出版者
東北農業研究センター
雑誌
東北農業研究センター研究報告 (ISSN:13473379)
巻号頁・発行日
no.103, pp.39-52, 2005-03
被引用文献数
10

田畑輪換を繰り返しつつ、持続的に作物を安定生産できるかどうかは、水田輪作営農を推進していく上で政策的にも極めて重要な問題であり、長期的視点から作物生産力を評価する必要がある。そこで、有機質資材の投入管理を組み合わせた長期的な畑転換や田畑輪換を繰り返したほ場において、土壌肥沃度や転作大豆及び復元田水稲の生産力の変化を調べた。寒冷地において、水稲と大豆による田畑輪換を畑期間が過半を占める体系で10年以上繰り返すと、土壌の可給態窒素が大きく減耗する。この可給態窒素の減耗は、畑期間が1-2年の田畑輪換の場合には、600gk/10aの稲わらを毎年投入することにより軽減される。しかし、畑期間が過半を占める場合には稲わら施用の効果がみられない。長期にわたり大豆を連作すると、田畑輪換の場合より可給態窒素の減耗が激しく、稲わら堆肥を2トン/10a連用しても、連年水田の堆肥無施用の場合を大きく下回る。このような可給態窒素の減耗に伴って、田畑輪換の繰り返しや長期畑転換における大豆の収量は、十分な水田期間を確保した輪換畑に比べ10-20%減収する。一方、復元田の水稲は、田畑輪換の繰り返しや長期畑転換を経ても、連年水田に比べて増収する。
著者
前田 一誠 小山 正孝 松浦 武人 宮崎 理恵 見浦 佳葉
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.335-340, 2010

本研究は, 授業において算数を学習していく際の創造性に焦点を当て, その育成のあり方を理論的・実践的に解明しようとするものである。本研究では, 複数の事柄を関連づけて新しいものつくりだすはたらきを創造性ととらえる。そして, とりわけ, 算数学習において, 子どもたちにとって新しく, 妥当性や普遍性をもつものがつくられていく思考過程に着目している。そのため本研究は, 子どもの思考過程を, 個人的側面と対話活動を中心とした社会的側面の両面を視野に入れて研究し, これからの算数教育における創造性の育成のあり方に対する示唆を導出しようとするものである。本年度は, 理論的研究を主とし, 算数教育における創造性に関する文献研究を行った。また, 実践的研究としては, 算数学習において子どもの創造性がどのように育まれていくかを, 授業記録をもとに, 明らかにしようとした。
著者
林 義樹
出版者
日本教育大学院大学
雑誌
教育総合研究 : 日本教育大学院大学紀要 (ISSN:18825389)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-40, 2008
被引用文献数
1

大学院教育を含めて、我国の大学教育改革が動き始めている。このような現状をふまえ、教育界全体にパラダイムシフトを惹起するような大学教育改革は、何を目指して、どう進めるべきか、そのグランドデザインと実現までの方策が求められている。そこで本論文では、著者の長年の参画教育の実践的な研究開発の成果を『ナレッジ・マネジメント』すなわち新しい「知」を経営するという視座から、再総括し直して、以下の4点を論ずる。(1)今日進行中の知識社会化は、教育の立場からは『知識創造』が重要である。(前提論)(2)次世代大学教育では、個性・人間らしさ・社会参画力・高質知をキーワードとして忘れてはならない。(目標論)(3)これらを展望する教育原理として構成員の参加の姿勢と知の質の相関が重要である。(原理論)(4)その実現には、参画の3指標の原理を用いた戦略と参画型コミュニティーの形成が有効である。(方略論)
著者
Abeysekera B. A. Hirantha Sithira 松田 崇弘 滝根 哲哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.628, pp.91-96, 2006-02-23
被引用文献数
1

IEEE 802.11規格の無線LAN環境では,アクセスポイント(AP)が下りフローを多重化しているにもかかわらず無線端末と同等のアクセス権しか割り当てられていないことから,複数の下りフローがAPで多重化されている場合,上下フロー間にスループットに関する不公平が生じることが知られている.本稿では,APにおけるMACプロトコルを改良することにより公平性を改善する方式を提案する.提案方式はMACプロトコルのパラメタであるコンテンションウインドを変更することによりAPに優位性を与える方式であり,APのMACプロトコルのみの改良で実現できる.また,パラメタの最適値は一般には上りフローと下りフローの数で決まるが,提案方式はAPを通過する下りフロー数のみに基づいた簡易な制御となっている.TCPおよびUDPトラヒックに対する提案方式の有効性をシミュレーションにより検討する.
著者
田中 真弓
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.411-426, 2000-10-01
被引用文献数
12 3 7

信濃川活褶曲地帯最南部に位置する十日町盆地を対象に,空中写真判読と詳細な地形・地質調査から,活褶曲と活断層の関係と褶曲運動の運動様式について考察した.当盆地に広がる約50万年前以降に形成された河成段丘群には,基盤である鮮新世から更新世にかけて堆積した魚沼層群の東翼より西翼が急傾斜という,非対称な向斜構造と対応した累積的な変形が認められる.またこの河成段丘群は,既知の活断層である十日町断層・珠川断層・津南断層と新たに認定した小根岸断層・霜条断層・宮栗断層による変位を受けている.当盆地内の活断層の活動度,変位地形から推定した断層面と地質構造の関係から,各断層をタイプ分けした.さらに,十日町盆地の活構造の活動を総合的に検討することを試みた.その結果,当盆地の褶曲運動は,少なくとも約50万年前から現在まで継続しており,盆地南部より北部において活発であることが明らかになった.また,当盆地の水平圧縮速度は1.4~2.7mm/yrより大きいと予想される.