著者
林 衛
巻号頁・発行日
pp.1-55,

東日本大震災以前から市民に提供されていた石巻市ハザーマップでは,新北上川沿いの沖積平野に河口から3.5kmもの津波遡上が予測され,明示されていた。同震災で最大級の被災の現場となった大川小学校は,浸水域予測範囲のわずか0.5km上流に立地していた。地震津波発生のしくみの多様性,潮の干満などを考えれば,高低差のない平野部での0.5kmは「誤差の範囲」といってよい。ハザードマップには,体感する震度に比して巨大津波をもたらす津波地震への注意書きもあった。つまり,公的にマグニチュード8を想定した宮城県沖地震(連動型)においても,大川小学校の津波による浸水は予見の範囲外にあったとはいえないのである。避難訓練やマニュアルの整備の重要性が強調されているが,現実の災害は想定どおりとはならない。想定から想定外が予見できる大川小学校被災の事例などから,地球惑星科学の知見があってもいかされない自然災害の人災的側面に関する教訓を導き出す。
著者
井上 翔大 大山 恵弘
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-8, 2010-01-20
参考文献数
13
被引用文献数
2

現在,Java,C#,ML のような高い生産性での安全なプログラミングを支援する現代的なプログラミング言語が様々な目的で利用されている.しかし,OS や組み込み系ソフトウェアなどの低レベルのシステムソフトウェアの分野では,未だに C 言語が広く用いられており,低い生産性や致命的なバグの原因となっている.そこで,本研究では,現代的な関数型言語 OCaml で OS を開発し,低レベルのシステムソフトウェアの記述における関数型言語の有効性を評価する.その OS は極めて小さいが,カーネル空間とユーザ空間の分離,マルチタスク,割り込み処理,初歩的な入出力デバイス管理などのいくつかの基本 OS 機構を備えている.その OS の大部分は OCaml で記述され,残りは C 言語とアセンブリ言語で記述されている.この論文では,その OS の設計と実装について述べるとともに,開発を通じて得た,関数型言語を使用することの利害得失などに関する知見を示す.Modern programming languages such as Java, C#, and ML support secure and high productivity programming, and are currently used on various purposes. Unfortunately, in the field of low-level system software including operating systems and embedded software, the C language is still widely used and causes low productivity and critical bugs. In this work, we develop an operating system in a modern functional language OCaml, and evaluate the effectiveness of functional languages in writing low-level system software. Though the operating system is extremely small, it provides several basic operating system mechanisms including user-kernel separation, multitasking, interrupt handling, and primitive I/O device handling. Most of the operating system is described in OCaml, and the rest is described in C and assembly. This paper decribes the design and implementation of the operating system, and presents several insights we obtained through the development (e.g., pros and cons of using functional languages).
著者
金田 楢太郎
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.9, pp.410-415, 1889-09-25 (Released:2010-10-13)
被引用文献数
2
著者
佐藤 久美子
出版者
京都大学図書館機構
巻号頁・発行日
pp.1-96, 2015-12-03

会期・会場: 2015年12月3日(木)13:30~17:00 : 京都大学附属図書館3階ライブラリホール ; 主催: 京都大学図書館機構
著者
笠谷 和比古
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-63, 1990-09-30

徳川幕府体制の下での特異な政治的問題の一つとして、「大名改易」のあったことは周知の通りである。それは軍事的敗北、血統の断絶、法律違反などの諸理由に基づいて、大名の領地を幕府が没収し、当該大名がそれまで保持してきた武家社会内での身分的地位を剥奪してしまうものであった。徳川時代にはこの大名改易が頻繁に執行され、結果的に見れば、それによって幕府の全国支配の拡大と安定化がもたらされたこと、また改易事件の幾つかは、その理由が不可解に見えるものがあり、それによって有力大名が取り潰されてもいることからして、この大名改易を幕府の政略的で権力主義的な政策として位置づけるのは定説となっている。そしてまたそのような大名改易の歴史像が、徳川幕府体制の権力構造、政治秩序一般のあり方を理解するうえでの重要な根拠をなしてきた。
著者
笠谷 和比古
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.123-147, 1991-03-30

前稿(一)においては、福島正則と加藤忠広の二大名の改易事件について検討した。その結果、両改易ともに、幕府側の政略的な取り潰しということはできず、むしろ両大名側に処罰されて致し方のない重大な違法行為のあることが否定できないことが明らかとなった。このように徳川幕府の大名改易政策は、従前考えられてきたような政略的で権力主義的な性格のものではないのである。そしてこのことは、この大名改易の実現過程における、その実現のあり方という面についても言いうる。本稿では大名改易の実現過程を、改易の決定過程と、当該大名の居城と領地の接収を行うその執行過程とに分けて見ていく。秘密主義と権力主義という幕府政治についての一般通念と異なって、大名改易政策の実現過程に見られるのは、諸大名へのそれぞれの改易事情の積極的な説明であり、城地の接収に際しての大名領有権に対する尊重と配慮であった。
著者
吉村千鶴 著
出版者
東京開成館
巻号頁・発行日
1939
著者
谷口 祥一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.758-765, 2014-02-01 (Released:2014-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

RDAの理解において重要であるが,RDA本体には直接記載されていないこと,すなわちRDAの位置付けを確認するための事項を取り上げ論じた。最初にRDAの全体的な評価とわが国におけるRDA採用の必要性を確認し,そのうえで以下の事項を論じた。(1)RDAはFRBRとFRADに基づいているが,細部においては多数異なる部分があるため,むしろ独自のモデルをもつと捉える方が混乱が生じない。(2)RDAのみでもメタデータを作成できるが,RDAに含まれている選択肢の扱いや構文的事項については採用機関側での決定が必要である。RDA採用機関においては従来からのMARC21がメタデータスキーマとして用いられており,それに代わるものが現在検討されている。(3)RDAメタデータが利用者にもたらすものは,端的にはFRBRモデルに沿ったOPAC検索・表示機能の実現である。(4)RDA自体はLinked Dataに対応したものではなく,そのためLinked Dataに向けてRDAエレメントや値の記録に用いる統制語をレジストリOpen Metadata Registryに登録する作業が別途進められている。
著者
吉田 文和
出版者
北海道大学
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-74, 2012-03-30

2011年3月11日に発生した福島第1原子力発電所が引き起こした原発災害を,公害論からみることによって,この問題を原因論と被害論を基礎として責任論,対策論,費用論,救済論,代替政策論から分析し,問題の広がりと解決の方向性と時間軸,課題を整理し,展望を見出すことができることを具体的に示した。
著者
飯田 啓介
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2013-06-01 (Released:2013-06-01)

情報・システム研究機構ライフサイエンス統合データベースセンターは,新たな日本語Webコンテンツとして「ライフサイエンス 新着論文レビュー」および「ライフサイエンス 領域融合レビュー」をあいついで公開した。「新着論文レビュー」は,トップジャーナルに掲載された日本人を著者とする生命科学分野の論文についての,論文の著者自身の執筆によるレビュー,「領域融合レビュー」は,生命科学において注目される分野・学問領域における最新の研究成果についての,第一線の研究者の執筆によるレビューを公開するものである。ともに,広く生命科学全般にかかわる教員・研究者および大学院生・学生を対象とし,よりわかりやすいものとするため,用字・用語の統一にくわえて,一文一文を編集者の視点から吟味し大胆に修正している。また,だれでも無料で閲覧できるだけでなく,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC)表示 2.1 日本のもとにライセンスされており、クレジットの明記を条件として,自由に転載・改変・再利用することができる。
著者
柴田 元幸
出版者
現代文芸論研究室
雑誌
れにくさ
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-24, 2013-03-29

特集 ラテン文学
著者
葉佐井 博巳 星 正治 横路 謙次郎
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.32, no.SUPPLEMENT, pp.32-39, 1991 (Released:2006-05-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1 1

Three studies of fallout measurements were reviewed for the discussion of possible radioactivity intake from the Hiroshima atomic bomb. The first study discussed correlations between enriched 234U and 137Cs specific activities from the measurement of soil samples collected in the “black rain” area. The second study measured 137Cs activity on the rock and roof tile samples collected in the hypocenter area immediately after the explosion. Some of the rock and roof tile samples collected near the hypocenter had a small but detectable amount of 137Cs activity. However, it has been determined that 137Cs exposure, for example, was negligible compared with DS86 dose estimates, since these activity levels were low. The third study detected 90Sr activity in some of the specimens of human bones exhumed on Ninoshima Island. This study compared the difference in activity between the bone head and shaft, with higher activities obtained in the bone head. This fact suggests a short intake period for this activity, however, the levels of 90Sr contamination were too low to allow a discussion of the exposure risks.