著者
若尾 勝 福光 英彦 田中 勇治 徳村 拓哉 星 虎男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.377-381, 2014 (Released:2014-07-03)
参考文献数
20
被引用文献数
3

〔目的〕座位能力,摂食・嚥下機能および尿失禁の間の関連性を分析することである.〔対象〕入院中に理学療法を実施した患者128名とした.〔方法〕座位能力,摂食・嚥下機能,尿失禁の有無について理学療法評価および看護師記録等から記録し,これらのうち2つの間の関連性をすべての組み合せについて分析した.〔結果〕座位能力分類1および2と対応する座位能力分類3では摂食・嚥下レベルが低く,座位能力分類と10段階摂食・嚥下グレードも同様であった.また,座位能力が低いと尿失禁が多くみられ,尿失禁の有る群は摂食・嚥下レベルが低かった.一方,座位能力分類1では,摂食・嚥下機能が良好で,尿失禁が少ないことが判明した.〔結語〕摂食・嚥下機能および尿失禁の改善には,まず座位能力の改善が重要である.
著者
西川 泰夫
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.26, pp.25-37, 2008

本論では、「心理学」という学問が、わが国に移入され定着するに至る背景やことの経緯を当時の人物の交流関係から再検証するとともに、なお未解決の論点をあらたな資料を基に再検討した。しかしなお、今後に多くの論点が残る。 心理学(新心理学)の導入と定着に日本初の役割を担ったのは、元良勇次郎である。その彼がアメリカ留学に至る間の経緯は、新島襄と津田仙との深い交友関係による直接、間接のつながりに支えられていた。この件を再検証する。 一方、そもそもの「心理学」と言う名称の由来やその語源(原語)に関する論点もなお未解決である。「心理学」という日本語表記と「psychology」という英語表記との結びつきはいかに確立したのか。この件の発端には、西周の大きな関与がある。彼は、ヘーヴンの著作「精神哲学(メンタル・フィロソフィー)」を訳出して「心理学」と題して出版した。他方、西は自著や他の訳書では一貫して、「サイコロジー」に対して「性理学」と訳出していて、心理学とサイコロジーとを直接結びつけてはいない。しかし、性と心は同義語と想定することも可能である。この仮説の再検証に当たっては、西村茂樹の著作や講演内容がヒントとなることが分かった。西村は当時、文部省で編纂課長を務める傍ら、大学に「聖学科」を置くというアイデアを提唱してもいた。また、「性善説」と題する講演で、この「性」という用語の定義内容を確定するために、これを「心」と読み替えて行うと述べている。さらに、彼の著作「心学講義」では、彼の言う「西国の心学」とは「心理学」に他ならないという主張を展開している。こうした見解をもとにあらためて「心理学」という名称の由来と当時の「心理学」の制度的位置づけを検討した。 なお、西村茂樹と津田仙は、幕末の佐倉藩士という共通の出自をもつ。彼らの略伝を示し「心理学」のルーツをめぐる議論に重ね彼らにまつわる広い人脈ならびに相互関係への言及を試みた。千葉県郷土史、近現代史の一断面である。
著者
青山 智哉 鷹見 達也 下田 和孝
出版者
北海道立水産孵化場
巻号頁・発行日
no.56, pp.115-123, 2002 (Released:2011-03-05)

1.ブラウントラウトの年齢、成長と成熟を明らかにするため、北海道で採集された175尾のブラウントラウトについて鱗や生殖腺などを調べた。 2.プラウントラウトの1+、2+、3+、4+、5+および6+の4から5月における尾叉長の平均は、それぞれ9.1、19.4、26.4、30.6、38.4および59.9cmであった。 3.成長履歴の解析により、2+の一年間の成長が極めて良い群が認められた。それらのうちの2個体は2+の春に降海していた可能性が高いと考えられた。 4.ブラウントラウトの成熟は、雄では1+から、雌では2+から始まった。 5.紋別川においてプラウントラウトの産卵は11月下旬から始まった。 6.以上のことからブラウントラウトは北海道の自然環境に適応し、河川型から降湖型、降海型へと変化していることが推測された。
著者
森 洸遥 辻 寧英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.5, pp.245-252, 2018-05-01

Kerr型非線形媒質を用いた光デバイスは,光による高速な光制御を行うことが可能であるため,全光型ネットワークの重要な素子である光スイッチや光論理ゲートを実現するため盛んに研究が行われている.しかしながら非線形媒質では,通常の線形デバイスの設計理論を直接応用できない場合も多く,汎用的で効率的な設計法が求められている.本論文では伝搬解析手法に有限差分ビーム伝搬法,感度解析に随伴変数法を用いたトポロジー最適設計法をKerr型非線形媒質を含む場合に拡張し,光スイッチ及び全光型論理ゲートの最適設計に関する検討を行っている.
著者
青野 正明 Aono Masaaki
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
no.15, pp.15-24, 2017-09-30

戦前、神社神道は非宗教とされ、植民地民を含めて日本国民が参拝する祭祀とされた。植民地朝鮮(1910~1945年)では国体明徴声明以降(1935年~)、皇祖神崇拝(アマテラスへの一神教的な崇拝)を強める神社神道が、日本国民というナショナリズムの形成(=国民教化)に用いられた。 この立場から本稿では、植民地朝鮮において神社神道が行政に追従し、天皇崇敬システム(国体論)と結びついたことを村落レベルにおいて紹介する。そして、村落レベルでの「神社」とは何かという問題を考えてみる。 まず日本人移住者の村々では、信仰の二重性を見いだすことができた。それは、天照大神(アマテラス)と「内地」の他の神々という祭神の二重性であった。彼らのこのような信仰の二重性に対して、神社行政は天照大神奉斎に吸収させる統制、つまり日本人移住者の国民教化を図る統制を推進していった。 一方、大多数である朝鮮人の村々では地方行政により官製「洞祭」(村祭り)の設置が企図されたことがあった。官製「洞祭」は在来「洞祭」と神社施設が接近して生まれた性質のもので、①神社と在来「洞祭」の習合を図るタイプと、②在来「洞祭」を神社化するタイプに二分される。前者のタイプは神社神道の土着性を重視する施策であったが、1935年以降の国体明徴期にはこのタイプは顧みられず、土着性よりも国民教化を優先させる意図のもとで、後者の在来「洞祭」を神社化する政策が推進された。 戦後、神社神道は単一的なナショナリズム形成をサポートし続けてきた。また、観光地などの神社が栄える一方で、過疎化が進む地方の神社は衰退の途にある。村落レベルにおいて神社とは何か、それは神社神道が今日も問われている問題ではないだろうか。*用語の説明 神祠:神社の下のクラス 無願神祠:行政から設立許可を受けていない神祠招待論文
著者
東京帝国大学 編
出版者
東京帝国大学
巻号頁・発行日
vol.[昭和8年3月末現在], 1933
著者
田中 宗 棚橋 耕太郎 本橋 智光 高柳 慎一
出版者
公益社団法人 低温工学・超電導学会 (旧 社団法人 低温工学協会)
雑誌
低温工学 (ISSN:03892441)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.287-294, 2018-09-20 (Released:2018-10-27)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

Quantum annealing (QA) is a promising calculation method for obtaining a better solution to combinatorial optimization problems. QA is a natural computation technique proposed in the context of statistical physics in 1998. In 2011, the world's first commercial machine realizing QA experimentally was released. After that, the development of hardware and software has been exhaustive, and the studies on application search have been done using commercial QA machines. In this paper, we first explain the basics of QA without assuming the knowledge of statistical physics and quantum physics. We also show a couple of examples of application studies on QA. In addition, existing problems and overcoming other methods are explained.
著者
Nobushige KUROKAWA Masato WAKAYAMA
出版者
Faculty of Mathematics, Kyushu University
雑誌
Kyushu Journal of Mathematics (ISSN:13406116)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.171-187, 2008 (Released:2008-05-22)
参考文献数
16
被引用文献数
5 7

Deformations of the multiple gamma and sine functions with respect to their periods are studied. To describe such deformations explicitly, a new class of generalized gamma and sine functions are introduced. In particular, we study the deformations from the viewpoint of multiplication formulas and Raabe's integral formulas for these gamma and sine functions. This new class of gamma functions contains Milnor's type multiple gamma functions as a special case.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1942年09月26日, 1942-09-26
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。