著者
森勢 将雅 能勢 隆
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

VOCALOIDを代表とする歌声合成ソフトウェアが広く一般に普及するにつれ,計算機による「人間的」な歌唱を目指す数多くの取り組みがなされてきた.一方,Auto-Tuneなどのソフトウェアを用いた「非人間的」な歌唱もコンテンツとして利用されている.ここでは,コンテンツとしての自然さと非人間性を両立する歌声が存在するか確認するため,人間性を制御する加工法について研究に取り組んだ.実験の結果,提案法により,人間の歌声が有する揺らぎ成分を除去するという従来のアプローチだけではなく,誇張させた場合でも一定の自然さを保ちつつ非人間的な歌声を生成できることを確認した.
著者
Yu FURUSAWA Masashi TAKAHASHI Mariko SHIMA-SAWA Osamu YAMATO Akira YABUKI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.20-0271, (Released:2020-07-08)
被引用文献数
1

The argyrophilic nucleolar organizer regions (AgNORs) are cellular proliferation markers, crucial for predicting the clinical course and aggressiveness of tumors. The purpose of this study was to establish an easy and practical AgNOR staining method in the cytology of dogs and cats. Air-dried cytological slides were prepared from dogs (n=14) and cats (n=12). Ethanol, acetone, and formalin were tested as fixatives for AgNOR staining. Subsequently, various methods of Romanowsky-based counterstains were tested before and after AgNOR staining. Clear and strong AgNOR spots were observed with all fixatives, and post-May–Grünwald staining was the best counterstaining method. The established method showed clear AgNOR spots even in the long-term storage samples and Romanowsky-stained ones.
著者
Masayuki Horie
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.253-267, 2019-12-01 (Released:2020-01-30)
参考文献数
89
被引用文献数
1 6

Riboviruses are viruses that have RNA genomes and replicate only via RNA intermediates. Although they do not require a DNA phase for replication and do not encode reverse transcriptase, the presence of DNA forms of riboviral sequences in ribovirus-infected cells has been reported since the 1970s. Additionally, heritable ribovirus-derived sequences, called riboviral endogenous viral elements (EVEs), have been found in the genomes of many eukaryotes. These are now thought to be formed by the reverse transcription machineries of retrotransposons within eukaryotic genomes sometimes referred to as selfish elements. Surprisingly, some reverse-transcribed riboviral DNAs (including EVEs) provide physiological functions for their hosts, suggesting the occurrence of novel interactions among eukaryotic genomes, retrotransposons and riboviruses, and opening the door to new avenues of investigation. Here I review current knowledge on these triangular interactions, and discuss future directions in this field.
著者
掛谷 亮太 瀧澤 英紀 小坂 泉 園原 和夏 石垣 逸朗 阿部 和時
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-307, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

スギ間伐林分と未間伐林分において 11本のスギを対象に根系分布調査を行った。間伐,未間伐林分のスギともに根系材積は樹幹指数と良好な相関性を持つこと,間伐の実施如何にかかわらず立木本数密度と高い相関性があることが示された。また,根系分布調査結果から崩壊地底面と側面のすべり面に生育する根の量を算出したところ,間伐林分では林齢の増加に伴って根の量が増加しないことが示された。このことは,森林の崩壊防止機能がすべり面に生育する根によって発揮されるとの既往の考えと整合性が取れないことになる。このため,表層型崩壊が発生するような急斜面の表層土は,土質的に明瞭なすべり面が形成され難いことを考えて,崩壊発生時には表層土全体が歪み,亀裂が発生して崩壊に至ること,また表層土中で大量に生育している根系が歪や亀裂の発生を抑制することで崩壊防止機能を発揮していると仮定した。この仮定に基づいて表層土中の根系量を算出したところ,間伐林分では表層崩壊が多く発生しやすい 10~30年生にかけて根系量が未間伐林分よりも多いこと,また既往の研究成果と同じく林齢の増加に伴って崩壊防止機能が強くなることを裏付ける結果が得られた。
著者
中村 浩一 兒玉 隆之 向野 義人
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.131-135, 2014 (Released:2014-03-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2

〔目的〕格闘技選手においてstate-trait anxiety inventory(STAI)とemotion intelligence scale(EQS)から精神的特性を検討した.〔対象〕格闘技選手(健常男性80名,平均年齢22.6 ± 4.7歳)とした.〔方法〕STAIとEQSを実施し,ボクシングとキックボクシング(打撃群),柔道とレスリング(組み技群)に分け,群間及び競技種目間で比較検討した.〔結果〕STAIでは,群及び競技種目間に差はみられなかったが,状態不安,特性不安が基準値に対し高値の傾向にあった.EQSでは,打撃群が組み技群に比べ「自己対応」が有意に高値,「対人対応」が有意に低値であった.〔結語〕格闘技選手の精神的特性として,不安を抱えやすい傾向にあり,競技特性が情動知能の対応領域に差をもたらす可能性が示唆された.
著者
為永春水 [著]
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1928
著者
澤田 忠幸
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.89-98, 2020-03

本研究では、「キャリア教育」の法制化に関する一連の施策や各大学での教育改善の動向を踏まえ、地方 A 大学の 3 年次生を対象として、就職活動前の汎用的技能(PROG)の個人差を規定する要因について、キャリア意識および自己調整学習方略の習得度、インターンシップ経験の有無との関連から検討を行った。その結果、PROG のリテラシーは、全国国公立大学理系の傾向と同様、1 年生よりも3 年次生で高かったが、コンピテンシーでは違いは認められず、国公立大学理系の全国平均と同等もしくは低い傾向にあることが示された。また、3 年時の夏休みまでにインターンシップや教育実習に参加したか否かによっては、コンピテンシーの高低に違いは認められず、自身の将来について展望と設計をもっている者、インターンシップを通じて課題の意図ややり方を考え、計画的に取り組むメタ認知的な自己調整学習方略を習得した者ほど、コンピテンシーが高いことが示唆された。本結果は、キャリア教育の設計の観点から議論された。
著者
関根 康正
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

4年間にわたった本研究では、それぞれ特徴的な場所を調査でき収穫は大きく、当初予想していなかった問題視角も明らかにすることができた。以下に箇条書きの形で、総括的論点をまとめておきたい。1 共同体の解体と個人化の影響:ケガレ観念は深く共同体との存在に根ざしていることが改めて明らかになり、それによって、個人レベルになっても解体しないケガレ観念と共同体の解体とともに希薄になるケガレ観念とがあることが明白になった。共同性において支えられてきた生活・生産の危機は、今日のように近代化し個人化した生活・生産スタイルになると、祈祷師や「オガミヤサン」に不漁の原因などの個人の身の上に起こった不幸・苦悩の解決を求めて足を運ぷという個人処理の方向に進むことになり、かえって伝統民俗文化の一部の捻れた形での(商業主義の入り込んだ)再活性化を呈することになる。2 水平的共同性と垂直的共同性の区別と絡み合い:社会的階層性や社会的差別につながる「浄・不浄」イデオロギーは、それぞれの地域でそのイデオロギー内容や歴史的な絡み合いの経緯を異にしながらも、支配イデオロギーとしての位置を占めてきた。壱岐・対馬では天童信仰という神道が、奈良では仏教を背景にした王権が、沖縄では公儀のノロ制度を持った王権や後の薩摩支配以降のその変容と仏教の流入が、そうした階層化をもたらすイデオロギーとして「浄・不浄」観念を浸透させてきた。ここで丁寧に現実を観察し分析しなければならない大事な点は、こうした支配イデオロギーの下に組み込まれた村落地縁共同体や血縁共同体が、支配の具になった「不浄」としてケガレ観念で完全に下まで塗り替えられたのかという点である。結論的には、列島のどこにおいても水平的な共同性とでも呼ぶべき次元が、垂直的な「浄・不浄」イデオロギーに貫かれた国家共同体の権力システムには完全には繰り込まれない、生活の共同性を維持しそれが生きられてきたとうことである。これは基層文化として連綿とあったものというより、支配イデオロギーの抑圧空間の中で庶民の反応として再生産、再創造されながら存在してきたものと見なすことの方は妥当であろう。関係論で考える必要がある。3 近代化・都市化:火葬の浸透の決定的影響:火葬は言うまでもなく決定的な葬送民俗文化の変更を引き起こしている。本土における土葬から火葬への変化は、葬儀の近代化・都市化を意味し、それは単に葬送方法が変わっただけでなく、村落社会の解体であり、共同性の解体を意味し、資本主義的な外部経済、形式的な(パッケージ化された)葬式仏教の受容を招くのである。こうなると、葬儀社主導の仏教イデオロギーが浸透してきて、ケガレ観念も「不浄」観念に引き寄せられて、それまでの「ケガレ」のダイナミズムが失われていくことが予想できる。とはいえ、問題は残っている。「不浄」理解だけでは対応できない、深みのある機微に富んだケガレ観念の考察を必要とした人生の危機問題は未解決のまま残されているので、人々は「自分探し」という自己肯定物語を求めて彷徨い歩き続けることになっている。その亀裂が深刻化している。この研究プロジェクトはこの点に関心を持って組まれた。民俗文化の喪失はどのように代替されていくのだろうか。ケガレ観念をこの現代においてこそ改めて問うことの意義がそこにある。