著者
北澤 直宏
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.273-302, 2013-01-31

This paper aims at assessing the relationship between religion and politics in contemporary Vietnam, with a focus on Caodaism reorganization. After the Vietnam War, the socialist government regarded religion as a nuisance and carried out a retaliatory re-education program—to no effect. In the process of clamping down on anti-government movements by devotees, the Communist Party conducted in-depth analysis on Caodaism and decided to remove the religious dignitaries, in line with their policy of suppressing religious authorities. In 1979, with the cooperation of some dignitaries, the government promulgated the Caodai Decree 01, aimed at the dissolution all Caodaism organizations. The Caodai Holy See was placed under the control of the state and changes were imposed; however, many branch temples subsequently reverted to selfmanagement. There are three possible reasons for this: first, the Holy See had lost all authority and influence over the branch temples; second, branch temples ignored the modified Holy See as the latter had obeyed the socialist government and betrayed Caodaism Law; third, there was no consistent policy in each province. These phenomena rattled the Communist Party, which feared its own collapse, in an echo of events in the Soviet Union. It thus embarked on a plan in 1992 to reorganize Caodaism, with the aim of occupying and controlling branch temples through "educated" dignitaries. While it is certain that Caodaism was officially recognized in 1997, this did not signal the beginning of religious freedom. On the contrary, it only reflected the Communist Party's policy to control religious opponents by authorizing religions.
著者
十字 猛夫 朴 京淑 金 相仁 朴 明姫 竹内 二士夫 徳永 勝士 PARK Myong Hee KIM Sang In PARK Kyoung Sook
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

大韓民国ソウル市に在住する30家系,家族員計150名より血液試料を得て,HLAーA,B,C,DR,DQ型,及びHLAに連鎖する補体成分C4,B因子(BF)のアロタイプを検査した。なお、各家族には,少なくとも3人の子供がいることを条件とした。この結果から両親集団におけるMHC(主要組織適合性複合体)ハプロタイプ計120本を決定した。なお,これは韓国人のHLA分布に関する最初の大規模な家系調査である。この結果より,韓国人における代表的なMHCハプロタイプを求め,さらに,すでに我々が行なってきた日本人や北部中国人での結果と比較した。その概要は以下のようにまとめられる。1)韓国人で見出されたMHCハプロタイプは,我々が以前に調査した日本人や北部中国人で見出されたMHCハプロタイプと基本的に類似しており,ヨ-ロッパ人で報告されているMHCハプロタイプとは全く異なる。2)しかしながら,より詳細に見ればこれら東アジアの諸集団の間にも有意な差が認められる。すなわち,日本人・韓国人・北部中国人におけるMHCハプロタイプの頻度分布を比較すると,日本人と北部中国人の関係が最も遠く,韓国人は両者の中間に位置し,やや日本人により近い特徴をもつことが明らかとなった。3)以下,具体例をあげる。まず,韓国人で最も多いMHCハプロタイプ,Aw33ーB44ーBFFーC4A3ーC4B1ーDRw13ーDQw1は8%の頻度で見出された。このMHCハプロタイプは日本人でも2番目に多いハプロタイプであるが,中国人ではまれなものであった。このように,日本人と韓国人で共に頻度が高い一方,中国人ではまれなMHCハプロタイプとしては,A24ーCw7ーB7ーBFSーC4A3+3ーC4B1ーDR1ーDQw1や,A2ーCw11ーBw46ーBFSーC4A4ーC4B2ーDRw8ーDQw1,あるいはA11ーCw4ーBw62ーBFSーC4A3ーC4B1ーDR4ーDQw3などが見出された。4)日本人で最も多いことが知られているMHCハプロタイプ,A24ーBw52ーBFSーC4A3+2ーC4BQOーDR2ーDQw1は韓国人でも比較的高い頻度で見出された。我々はこのMHCハプロタイプを北部中国人でも高い頻度で見出している。このように,3集団に共通して見出されたMHCハプロタイプとしては,A2ーCw11ーBw46ーBFSーC4A4ーC4B2ーDR9ーDQw3があるが,このハプロタイプの場合には,日本人と韓国人でやや頻度が低くなっていた。5)上記3)と対照的に,北部中国人で最も多いMHCハプロタイプ,Aw30ーCw6ーB13ーBFSーC4A3ーC4B1ーDR7ーDQw2は韓国人でも4%以上の頻度で見出されたが,このハプロタイプは日本人ではごくまれなものである。6)以上のような結果より,我々は東アジア諸集団におけるMHCハプロタイプの分布状況から組先集団の複数の移動,拡散ル-トを推定した。まず第一に中国地方から朝鮮半島を経由して北九州および本州中央部に至るル-トである。これは,A24ーBw52ーBFSーC4A3+2ーC4B1ーDR2ーDQw1を持つ集団で代表される。7)第2に朝鮮半島から日本海を越えて,本州中央部の日本海側に至る移住ル-トである。これには,Aw33ーB44ーBFFーC4A3ーC4B1ーDRw13ーDQw1や,A24ーCw7ーB7ーBFSーC4A3+3ーC4B1ーDR1ーDQw1あるいはA11ーCw4ーBw62ーBFSーC4A3ーC4B1ーDR4ーDQw3などを持つ先組集団が含まれていたと考えられる。8)第3に,中国北部から南下し,朝鮮半島にもやって来たが,日本列島には殆ど到達しなかったグル-プがあったものと考えられる。このグル-プが持っていたMHCハプロタイプが,Aw30ーCw6ーB13ーC4A3ーC4B1ーDR7ーDQw2であったと考えられる。以上のように,家系調査に基づくMHCハプロタイプの分布調査は,互いに近縁な集団間の遺伝的関係を探るために,極めて有力なマ-カ-となることが分かった。

20 0 0 0 読書春秋

出版者
春秋会
巻号頁・発行日
vol.8(3);3月号, 1957-03-01
著者
高鳥毛 敏雄 逢坂 隆子 山本 繁 西森 琢 藤川 健弥 黒田 研二 磯 博康
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.19-25, 2007-01-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
36

〔目的〕ホームレス者の結核の実態とその対策方策を明らかにすることを目的とした。〔対象と方法〕平成15年から17年までの3年間ホームレス者を対象に公的就労事業にあわせて結核検診を実施した。各年の結核検診の受診者数は1,309人,1,545人,1,546人であった。〔結果〕各年の結核有所見者割合は約30%,要治療者割合は約2%とほぼ同様の状況であった。平成17年の要治療者30人中の過表に受検歴のあった者20人について胸部所見を調査したところすでに胸部結核有所見であった者が13人(65%)と高率であった。平成16年と平成17年両年連続受検者857人の分析では,胸部所見IV型の者20人の中から3人が発症,無所見の者597人からは8人が発症していた。つまり,IV型の者は無所見者に比べて11.2倍発症率が高かった。〔考察と結論〕ホームレス者は結核有所見者の割合が高いこと,有所見者からの発病率が高いこと,有症状受診が困難な者が多いことなどから,ホームレス者の結核検診実施にあたっては胸部所見が安定型の者に対してもQFTを活用するなど,何らかの治療基準を定めて対応することが必要と考えられた。
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.139, pp.23-42, 2021-12-31

本稿では,筆者がこれまでに考察してきたメディア文化に関する社会システム論的分析枠組みを利用して,クラシック音楽界では異例の注目を集めた佐村河内守の「ゴーストライター騒動」(2014年)を分析し,今日のメディア文化の在り方とそこにおける創造性産出のメカニズムの一端を明らかにした。クラシック音楽は歴史的に市民を感動させる音楽へと発展してきた。そのような歴史から考えれば,身体的障害や被爆二世といった記号的価値を付与して作品の価値を高めようとした佐村河内のやり方は自然なものであった。消費システムを観察し,消費システムを作動させようとする文化産業システムは,過去の作品との微細な差異を生み出しながら新しい商品を創作システムとともに生み出していく。創作システム,文化産業システム,消費システムが複合的に交差する中で佐村河内という「作曲家」が生み出され,彼は,現代日本の消費システムを作動させる調性音楽を生み出すプロデューサーとしての役割を果たした。文化産業システムを中心にした複数の社会システムが複合的に重なり合う中で,これまでになかった「21世紀の調性音楽」が生み出されたのである。
著者
笹谷 拓也 川原 圭博
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2019-UBI-62, no.8, pp.1-8, 2019-05-30

広い空間全域における無線での電力のやり取りが可能になると,IoT 技術は電源の制約から解放され,半永久的に電池が切れないセンサネットワークや,部屋にいるだけで勝手に充電されるウェアラブル / モバイル / インプラント機器などが実現すると考えられる.一方,従来の無線電力伝送は充電パッドなどの二次元状の給電領域を構成するものが主であり,ユーザが意識的に領域内に機器を置くことを前提とする.これに対し,準静空洞共振器 (QSCR : Quasistatic Cavity Resonator) という構造は空間内に三次元状に分布する磁界を生成できることからユビキタスな無線電力伝送への応用が期待されている.しかし従来の QSCR は部屋の中央に導体棒を要することや,部屋の中央から離れるにつれて給電効率が著しく低下するといった課題が存在する.これらの課題を解決するために,我々は複数のモードを持つのマルチモード準静空洞共振器 (Multimode QSCR) 構造を提案し,導体棒無しでの運用や,部屋内のあらゆる位置における高効率な給電が可能であることをシミュレーションにより示した.本稿では部屋スケール (3 m×3 m×2 m) のMultimode QSCR を実装した後,部屋全域において小型の受電器に対し高効率で給電できることを実測により示し,IoT システムへの応用について議論した.

20 0 0 0 OA 愛知県統計書

著者
愛知県 編
出版者
愛知県
巻号頁・発行日
vol.大正3年, 1916

20 0 0 0 OA 大字典

著者
上田万年 等編
出版者
啓成社
巻号頁・発行日
1917

20 0 0 0 文学界

出版者
文学界雑誌社
巻号頁・発行日
no.18, 1894-06
著者
井波 真弓 岩崎 晴美 宮沢 賢治 土屋 宏之 齋藤 兆古 堀井 清之
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.8-12, 2005 (Released:2005-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

本稿の目的は『源氏物語』第二帖「帚木」から第三帖「空蝉」にかけての「空蝉物語」 に離散値系ウェーブレット変換を適用し,源氏と空蝉の出会いから終焉までの,心象的 変動,すなわち,心の揺れを考察することである. 要素として「会う方向」「会わない方向」「思慕」を示すことばを選び,段落ごとの 使用頻度を調べた.次に離散値系ウェーブレットの多重解像度解析を適用した.その結果, 源氏の場合第1パートと第2パートで「会う方向」と「思慕」に揺れが見られるが,第3 パートではともに低くなり,「会わない方向」が高くなる.「会わない方向」は第1 パートから第2パート,第3パートへ行くにしたがって徐々に高くなっていく傾向が見 られた.空蝉の場合,第1パートは「会う方向」,第2パートでは「会わない方向」が 顕著であり,自己の身意識によって感情を理性で抑えようとする.しかし第3パートに なると対象そのものへの「思慕」が感情の中心を占める. 源氏は感情の起伏が大きく,「空蝉物語」が源氏の青春の心の惑いと喪失感を痛感 させる物語であり,かつ空蝉に翻弄されていることが検証された.また,空蝉の身分意識 が源氏を翻弄し,源氏からのアプローチが思慕を募らせる根拠であったことも明らかになった.