著者
荻本 快
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.81-88, 2014-03-31

父親と幼児によるRough-and-Tumble Play(RTP:乱闘遊び)は,幼児が自らの攻撃性を制御する能力の発達に寄与することが示唆されてきた。本論は,父子のRTPに関する幼児の発達理論に基づき,介入プレイ観察法による事例検討をもとに理論的考察を行うことで,父子のRTPにおける幼児の自己制御の発達要件について,その変数間関係を考察した。その結果,RTPにおいて優位性を保つ父親が攻撃性を制御する態度と行為を示し,それを幼児が模倣することで,攻撃性の制御の内在化を促進する父子の協調が生じることが見出された。そして,幼児の攻撃性の制御が安定化する過程で,RTP中に幼児が自らの限界を超えようと挑戦することと,それに対する父親からの賞賛と誇りの表現によって幼児の父親への同一視が強化されることが考察された。
著者
中嶋 佳苗 磯崎 三喜年
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.61-69, 2014-03-31

本研究は,「ふたりきょうだい」に焦点をあて,「きょうだい」関係における対人魅力の検討を行った。研究1では,日本の大学生96名を対象にきょうだいにおける対人魅力尺度を作成し,研究2では,研究1で作成した尺度を用いて性格の社会的望ましさと類似性がきょうだいの魅力に与える影響を検討した。研究1より,きょうだいにおける対人魅力尺度は「交流因子」「信頼因子」「誇り因子」の3因子全15項目の構造であり,高い信頼性があることが示された。研究2では,先行研究より,性格の社会的望ましさの方が性格の類似性よりもきょうだいの魅力に与える影響が大きいという仮説をたて検討を行った。その結果,仮説を支持する結果が得られ,きょうだい関係においても類似性の効果よりも社会的望ましさの効果の方が魅力判断における影響が大きいという,これまでの知見と一致する結果が得られた。
著者
中川 岳 追川 修一
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.13-13, 2014-12-05

次世代の不揮発性メモリはバイトアクセス可能であり,計算機の主記憶として 利用可能である.主記憶が不揮発になることで,主記憶と2次記憶を融合することが可能になる.これにより,CPUから永続的なデータに直接アクセスが可能になり,I/Oのオーバヘッドを削減することができる.しかしながら,現時点では単体で主記憶を構成可能なNVMは登場していない.そのため,これまで,少量のDRAMと相変化メモリ(PCM)を組み合わせて主記憶を構成する方法が検討されてきた.PCMは 書き込みに短所のある不揮発性メモリ素子である.DRAMと組み合わせ,書き込みアクセスの多いデータをDRAMに配置することで,PCMの短所を隠蔽して主記憶を構成することができる.このようなハイブリッド構成では,データに対 する書き込みの傾向に基づいて,データ配置を決定する必要がある.この方法として著者らはデータの持つセマンティクスを利用して,プログラミング言語処理系のレベルでデータ配置の決定を行う方法の提案と実装を行った.実験の結果,提案手法はハイブリッド構成の主記憶における効率的なデータ配置に効果があることが分かった.しかしながらその一方で,提案手法には配置の効率面での問題がある.本発表では,その解決のための修正と効果の検証結果について説明する.
著者
Masahiko Sakai Tatsuki Kato
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.15-15, 2014-12-05

Malbolge is known as one of the most esoteric languages, in which programming is very difficult. The difficulty comes from (a) its restrictive instructions, (b) instruction-replacement after execution and (c) restriction on loadable data. In this presentation, we overview Malbolge language and our results to produce its programs.
著者
菱沼 利彰 藤井 昭宏 田中 輝雄 長谷川 秀彦
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.25-33, 2014-12-16

高精度演算を用いることでKrylov部分空間法の収束を改善できるが,高精度演算はコストが高いことが知られている.高精度演算の1つに,倍精度を2つ組み合わせて4倍精度演算を行う倍々精度演算がある.我々は,IntelのSIMD拡張命令であるAVX2を用いてBCRS形式の倍精度疎行列と倍々精度ベクトルの積(DD-SpMV)の高速化を行った.AVX2を用いたCRS形式のDD-SpMVでは,各行で端数処理などを必要とするが,BCRS形式は端数処理をなくし,メモリアクセスを改善できる.しかし,BCRS形式は演算量が増加する.本論文では,AVX2に適したBCRS形式のブロックサイズと,増加した演算量と端数処理の削減,メモリアクセスの改善効果のトレードオフについて示した.実験の結果,AVX2に最も適したブロックサイズは4×1であることが分かった.また,メモリアクセスの改善効果はサイズの大きい問題ほど有効で,行列サイズが10 5以上のとき,演算量が3.3倍以上になるケースにおいても,BCRS4×1にすることでCRS形式の実行時間を約45%に短縮できることを確認した.
著者
松田 卓也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.01, pp.10-14, 2014-12-15

シンギュラリティとは人工知能の能力が全人類の知的能力より大きくなる現象,あるいはその時点を言う.2045年頃であるとする意見が多い.そのような人工知能を超知能と呼ぶ.本論ではシンギュラリティと超知能について概観する.特に超知能の分類,シンギュラリティと超知能の諸問題,現実の計画, シンギュラリティ,超知能の社会的・政治的意味,危険性などについて論じる.また政治的側面に関する筆者の見解も述べる.
著者
若井 一樹 佐々木 良一
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2014-CSEC-67, no.2, pp.1-8, 2014-11-28

Twitter におけるスパム行為となりすまし行為の検知手法を提案する.これらの検知手法はスパム行為となりすまし行為の様々な特徴から検知対象であるか判定する項目を複数個作成し,それら項目を数量化理論の適用によって最適な項目組み合わせを選定することによって検知するものである.またこれら手法を実装するとともに,検知結果をユーザにわかりやすく提示するよう Twitter の表示系を強化したアプリケーション LookUpper の開発と評価を行った.この結果,本検知手法ではスパム行為となりすまし行為どちらも 90% 以上の的中率で検知することが可能であった.LookUpper の開発と評価について,本検知手法を実装し検知結果をわかりやすく表示する機能を開発し,被験者 10 人によってなされた LookUpper のユーザビリティに関する実験結果から全体的に高い評価を得るとともに,今後 LookUpper の改良を行っていくためのアイディアを導く種々のコメントが寄せられた.
著者
吉田 武大 Takehiro YOSHIDA
雑誌
教育総合研究叢書
巻号頁・発行日
vol.5, pp.103-111, 2012-03-31

本稿では,アメリカにおけるバリュールーブリックの活用動向について,実践事例の紹介を通じて明らかにすることを目的としている。検討の結果,次の5点が明らかとなった。第1に,評価規準を作成する際に,客観的な表現を使用したということである。第2に,評価の観点で示された能力を身につけていない評価基準としてレベル0を設定したことである。第3に,学士課程教育段階の学生に通常想定される能力を超えるような評価規準を設定しないということである。第4に,個々の授業のねらい等に応じて評価の観点の一部を見直したということである。そして第5に,これらの4点を踏まえ,授業で使用する学習教材それぞれについて,事前に評価の観点を細かく設定することで,書き換えたバリュールーブリックを活用する意義がより明確になるということである。
著者
吉田 武大 Takehiro YOSHIDA
雑誌
教育総合研究叢書
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2013/01/120:00:00, 2011-03-31

本稿では,アメリカにおけるバリュールーブリックの動向を紹介することを目的としている。目的の解明にあたり,AAC&Uのウェブサイトとバリュープロジェクトの関係スタッフの論考等を引用しながら,バリュールーブリック開発の背景,バリュープロジェクトとバリュールーブリックの概要を取り上げた。その結果,次の3点が明らかとなった。第1に,CLAやMAPPのような標準化されたテストでは学生の多面的な学習成果の評価が困難であることを受け,バリュールーブリックが開発された。第2に,バリュープロジェクトでは,多くの高等教育機関からの協力を得て,バリュールーブリックの開発が進められた。また,同プロジェクトは,学生の学習成果を評価する際に,eポートフォリオの活用を推奨している。第3に,バリュールーブリックは15種類作成されており,活用に際しては個々の機関・プログラム・授業の文脈に即して表現を書き換えることが求められている。
著者
松本 亮介 岡部 寿男
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2451-2460, 2014-11-15

Webサービスの大規模・複雑化にともない,Webアプリケーションの開発だけでなく,Webサーバソフトウェアの機能拡張も必要になる場合が多い.Webサーバの機能拡張において,高速かつ軽量に動作することを重視した場合,C言語による実装が主流であったが,生産性や保守性を考慮した場合はスクリプト言語で機能拡張を行う手法も提供されている.しかし,従来手法は,Webアプリケーションの実装だけでなく,Webサーバの内部処理を拡張することを主目的とした場合,高速性・省メモリ・安全性の面で課題が残る.そこで,スクリプト言語で安全に機能拡張でき,かつ,高速・省メモリに動作するWebサーバの機能拡張支援機構を提案する.Webサーバプロセスから内部処理としてスクリプトが呼び出された際,高速に処理するために,インタプリタの状態を保存する状態遷移保存領域の生成を,サーバプロセス起動時に生成しておいて,それを複数のスクリプトで共有して実行するアーキテクチャをとった.また,メモリ増加量を低減し,かつ,状態遷移保存領域を共有することにより生じるスクリプト間の干渉を防止して安全に機能拡張するために,スクリプト実行後に状態遷移保存領域からメモリ増加の原因となるバイトコード,および,任意のグローバル変数・例外フラグを解放するようにした.このアーキテクチャの実装には,組み込みスクリプト言語mrubyとApacheを利用し,Rubyスクリプトによって容易にApache内部の機能拡張を行えるようにした.このApacheの機能拡張支援機構をmod_mrubyと呼ぶことにする.
著者
窪田 暁 Satoru KUBOTA クボタ サトル
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.10, 2014-03-31

本稿の目的は、ドミニカ共和国(以下、ドミニカ)の移民送りだし社会としての面、およびトランスナショナルに展開する移民と故郷の人びととの相互交渉に注目し、そのなかから誕生した「ドミニカンヨルク」というイメージにドミニカ社会のどのような価値観が投影されているかについて考察するものである。そのうえで、このような相互交渉にもとづき生みだされた移民イメージが野球選手に移民としての役割を担わせることに結びついたことを明らかにする。 トランスナショナルな現象を扱う先行研究では、故郷の人びとを移民からの影響を一方的にうける(うけない)対象として捉えてきた。そこで描かれるのは、移民からの影響をうけて変容するコミュニティや非移民の姿であった。しかし、多くの人びとは移民からの最低限の送金でなんとか生活を送り、バリオ(共同体としての町、村)内に格差が拡大しないような節度あるふるまいを実践している。それを支えているのが、地域社会の伝統的な規範意識や価値観である。 しかしながら、現在のドミニカをめぐる経済状況は厳しく、より多くの送金を受けとりたいというのがバリオの人びとの本音であることも事実である。そうした状況のなかで、年々増え続ける移民に対して、一時帰国の際に華美で散財のかぎりを尽くす「ドミニカンヨルク」というステレオタイプ・イメージを創りあげ、国際電話やfacebookといったトランスナショナルな相互交渉を通して、移民にも「ドミニカンヨルク」像を演じさせることに成功したのである。さらに、こうした「ドミニカンヨルク」の役割を、野球選手に担わせることによって、今度は「野球移民」を誕生させることに繋がっているのである。 そこで本稿は、こうしたステレオタイプ・イメージの創出を、二国間にまたがるトランスナショナルな相互交渉の過程から明らかにする。そのうえで、伝統的な規範意識や価値観を武器に、新自由主義経済が蔓延する予測不可能で不安定な社会を生きぬくドミニカの人びとの生活戦略の在りようを示したい。Focusing on transnational discursive relations in the Dominican Republic, this article aims to investigate how behavior is symbolized in the process of creating the migrant image of “Dominican York.” I further consider how the process of creating this image produced the figure of the baseball migrant. Dominican emigration has increased substantially since the 1960s, and there are now about two million Dominicans living in the U.S.A. My fieldwork shows that they express a sense of still belonging to their homeland at two levels. The first is by keeping a direct connection through frequent calls to their homeland and sending remittances to their families. The second is reflected in the frequent return trips to their homeland. The existing studies on Dominican emigration dealing with transnationalism have focused on the unidirectional impact of migrants on their native country by their sending of remittances. However, these studies have paid scant attention to an important aspect of everyday cultural practice in the sending society, that is, the effect of this immigration on morale and behavior in the local community back home. Social conditions in the Dominican Republic, however, remain difficult, and it is still true that local people need to receive more remittances. In the transnational discursive relations, nonmigrants have used local knowledge to create a migrant stereotype image of luxury and ostentation in “Dominican York.” In so doing, they have allowed migrants there to perform this role, and this has been a factor in the birth of the baseball migrant. Here I indicate the process of how a stereotype image has been created through the transnational discursive relations of both migrants and nonmigrants. I will show the Dominican life strategy of survival with local knowledge in the face of a spreading, unstable, and unpredictable neo-liberal world.
著者
下澤 嶽 シモサワ タカシ Takashi Shimosawa
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.14, pp.9-13, 2014-03-31

本稿では、日本における地域指向CSRの最近の動向を検証しながら、2012年に実施した静岡県遠州地域の企業の社会貢献活動調査の結果をもとに、地域指向CSRの可能性を検証するものである。
著者
張 輝陽 星野 准一
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.135-138, 2014-10-31

本稿ではMOBAにおいてグラフ理論と時相理論を用いた適切な戦術でプレイヤと協力できるチームメイトAIを提案し,AIエージェントの行動とゲームの楽しさの関連性について検討する.