著者
幣 憲一郎
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.78-83, 2021-04-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
1

外科治療における管理栄養士の役割は, 静脈栄養管理, 経腸栄養管理を中心とした急性期栄養管理はもちろんのこと, その後に続く慢性期栄養管理面で重要となる適切な治療食提供などを含めた栄養管理計画の立案までを担当する. 従来は「院内約束食事箋(栄養食事基準)」を構築する際, 「疾患別栄養管理法」が採用されてきたが, 近年の多臓器疾患や多くの合併症を有する患者が増え, 個別栄養管理の観点から「栄養成分別コントロール食」を導入する施設が増えている.「栄養成分別コントロール食」は, 特別治療食を各基本となる栄養素の組成に着目し, グループ化して管理するものであ, 「エネルギーコントロール食」, 「たんぱく質コントロール食」, 「脂質コントロール食」などがある. 今後は, 病棟ごとに配置された管理栄養士が各種学会の定めるガイドラインなどを熟知しながら「適切な食事」を提案することがますます求められている.
著者
庄司 吏香 早瀬 須美子 北川 元二 山中 克己 藤木 理代
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Sciences (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.3, pp.53-67, 2017-12-22

【目的】便秘の評価は、一般に主観的に回答する質問票により行われており、客観的な評価法は確立されていない。欧米人について、便秘と呼気中メタン濃度(以下、メタン濃度)との関連が多く報告されている。日本人については、高齢者に関する報告は散見するが、若年女性を対象とした報告はほとんどない。そこで本研究では、女子大学生のメタン濃度と排便習慣、生活習慣、食習慣ならびに食物摂取状況について調査し、メタン濃度が便秘の客観的な指標となりうるかについて検討した。【方法】女子大学生281人を対象に、メタン濃度を、呼気ガス分析機を用いて測定した。排便習慣(11項目)、生活習慣(8項目)、食習慣(5項目)、ならびに食物摂取頻度調査を実施した。解析対象者は記録に不備のなかった235人である。【結果】メタン産生者のカットオフ値は2.73ppm と報告されているが、今回調査した女子大学生の呼気中メタン濃度の平均値は2.40±0.58ppm であった。排便習慣に関する各質問項目について、回答肢ごとに平均メタン濃度を比較したところ、1週間の排便頻度が1日以下、1日あたりの排便量1個以下、便の形状が硬い、ほぼ毎日硬便、おならがよく出る、排便時のいきみが重い、排便時の残便感が重い、腹部不快感・痛み、胃痛、お腹の張りが重い者では平均メタン濃度が有意に高かった。生活習慣については、普段の体調、水分摂取量、生理中であることが呼気中メタン濃度と関連があった。食習慣および栄養摂取状況については関連がなかった。1週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間との呼気中メタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘の症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気中メタン濃度と関連がみられた。呼気中メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標として期待できると考えられた。【結論】対象者は若年者であり、メタン濃度は全般的にかなり低く、分布も狭かった。1 週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間のメタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気メタン濃度と関連がみられた。呼気メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標としては期待できると考えられた。
著者
猪股 ときわ
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.19-28, 1994

『琴歌譜』は古代の歌が「いかに歌われたか」の「実態」を知る資料として注目されてきた。だが琴歌の技術の当事者にとって、「書く」ことは、身体を駆使する琴歌の技と同様に音楽の技術の範疇にある。本書は、「書く身体」と「歌う身体」の相関のうちに「いかに歌うべきか」という当事者にとってのものでしかない理想を作り出し、そのことによって「歌う歌」や「歌う身体」の始原的なありようから、決定的な飛躍をしてしまったのである。
著者
村田 晶子
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.14-29, 2021 (Released:2021-05-10)

新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020 年度の授業が対面からオンラインに移行し、人との接触機会が減少したことから、多くの学生が孤独やストレスを抱えた。とりわけ留学生の場合、日本でのネットワークが限られ、孤独や不安を感じていた人々が多く、人とつながり、日常の問題を相談できるようなサポートが必要とされた。 本稿で分析するコロナ禍で孤立する留学生たちの学習支援とオンラインサポートは、こうした状況を踏まえて始まったボランティア学生達の活動である。本稿ではコロナ禍におけるボランティア学生による留学生のソーシャルサポートを分析し、①やさしい日本語や英語を用いた来日の見守りと情報提供、②留学生の母語でのメンタルサポート、③留学生と日本社会とをつなぐ交流サポート、④進学サポート、⑤就活サポートなどの実態を明らかにし、また、支援活動を通じた参加者(ボランティア学生、留学生)の様々な学び合いを分析した。 最後に、こうしたボランティアのオンラインのソーシャルサポートの取り組みは、非常時のボランティア活動の新しい可能性を示すものであり、さらには、非常時のボランティアから、平時にも可能なソーシャルサポートにつながる可能性をもった取り組みであることを指摘し、ボランティア活動を深めるための教育プログラムとの連携の重要性についても指摘した。 本稿で分析するボランティア活動は、所属大学の 2020 年度の『自由を生き抜く実践知大賞』の大賞を受賞した、多文化教育科目の履修生たちの 1 年間の取り組みである。
著者
玉川 博章
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.105-117, 2013-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
20

出版における知的財産権,特に日本出版社の海外ライセンス販売に焦点を当てる.事例としてマンガを取り上げ,海外へのライセンシングの状況を分析する.文化,そして政治経済のグローバリゼーションは,マンガの海外展開にも大きく影響を与えている.知的財産権の国際的調和と海賊版対策,そしてデジタル化による海賊版の拡大,そして各地でのマンガ執筆などについて検討し,グローバル化の中のマンガの海外展開を考察する.
著者
河内 彩香 村田 晶子 長谷川 由香 竹山 直子 池田 幸弘
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.30-45, 2021 (Released:2021-05-10)

2020 年度、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で多くの大学がオンライン授業に移行し、所属大学の日本語教育プログラムにおいても春学期と秋学期の授業が全面的にオンラインで行われ、LMS(Learning Management System)とオンライン会議システム(Zoom)による双方向授業を組み合わせて教育活動を行った。これまで、日本語教育におけるこれら二つを組み合わせた授業の詳細の分析はまだ十分にはなされていない。地理的な境界線を越えて実施することができるオンライン教育はコロナ収束後も発展していくことが予想されており、この実践を一過性のものとしてとらえるのではなく、実践を記録し、その効果や問題点を発信していくことが今後の言語教育の発展のために重要である。こうした点を踏まえて、本稿では、日本語教育プログラムにおいて実施した Zoom による双方向授業と LMS(Google Classroom)を組み合わせたオンライン教育の実施状況を記述し、レベル別、技能別の教育におけるオンライン教育のメリットと課題を分析した。
著者
浜 日出夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.465-480, 2010-03-31

近代社会は,均質で空虚な空間のなかに位置する社会がやはり均質で空虚な時間のなかを前進していくものとして自らの姿を想像してきた.そして,近代社会の自己認識として成立した社会学もまた社会の像をそのようなものとして描きつづけてきた.<br>本稿では,「水平に流れ去る時間」という近代的な時間の把握に対して,「垂直に積み重なる時間」というもう1つの時間のとらえかたを,E. フッサール・A. シュッツ・M. アルヴァックスらを手がかりとして考察する.<br>フッサール・シュッツ・アルヴァックスによれば,過去は流れ去ってしまうのではなく,現在のうちに積み重なり保持されている.フッサールは,過去を現在のうちに保持する過去把持と想起という作用を見いだした.またシュッツは,この作用が他者経験においても働いていることを明らかにし,社会的世界においても過去が積み重なっていくことを示した.アルヴァックスによれば,過去は空間のうちに痕跡として刻まれ,この痕跡を通して集合的に保持される.<br>この考察を通して,時間が場所と結びつき,また記憶が空間と結びつく,近代的な時間と空間の理解とは異なる,〈記憶と場所〉という時間と空間のありかたが見いだされる.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1934年07月02日, 1934-07-02
著者
新本 洋士 門分 彰子 八代 朋美 長縄 康範
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.156-158, 2015-03-15 (Released:2015-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ステンレストレー上に風乾した牛乳を加熱することによって乳糖と乳タンパク質のメイラード反応による乳タンパク質のグリケーションが生じる.風乾した牛乳を140°C以上で1時間加熱するとSDS-PAGEによって検出されるタンパク質は消失した.120°C加熱による牛乳タンパク質のグリケーションは高濃度のクロロゲン酸およびエピカテキンで抑制することができたが,アスコルビン酸は逆にグリケーションを促進した.