著者
松川 剛久 三谷 純
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:24240982)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.333-353, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
58
被引用文献数
1

概要. 折り紙の幾何学的な性質は古くから研究の対象とされてきた.近年では「計算折り紙」という言葉も誕生し,計算機を用いた研究や工学分野への応用についても活発に議論されている.本稿では折り紙の数理に関して平坦折りの研究についてまとめるとともに,それに関係する計算量および設計手法について紹介する.また,立体折り紙と剛体折り紙という,折り紙の数理の応用において重要な分野についても概説する.
著者
沖野 郷子 町田 嗣樹 川口 慎介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

地球内部の水の分布状況と循環についての理解を深めることをめざし、水の入り口として重要な海洋トランスフォーム断層(OTF)及び断裂帯において、学術研究船「白鳳丸」を用いて中央インド洋のマリーセレストOTFとアルゴOTF及び周辺海域(13°-18°S)の地球物理・化学観測を実施した.観測結果の解析により,1)OTF内の断層分布とテクトニックな発達史、2)蛇紋岩体分布可能性の有無,3)周辺も含めた海洋地殻の組成と変質過程を明らかにし,4)蛇紋岩化に伴う流体湧出を検証するためのメタンの分析が進行中である.
著者
永江 雅和
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.77-92, 2013-11-30

私立鉄道会社の経営にとって、出発時の用地買収は重要な課題である。1923年設立された小田原急行鉄道株式会社(現小田急電鉄株式会社)が沿線用地をどのように買収し、駅を設置してきたのか、沿線地域の史料をもとに検討した。第1に注目される点は創業者利光鶴松のネットワークである。政治家時代に自由党に入党し自由民間活動家や東京市政関係者と親交を結んだ利光は、これらのネットワークを活用して、沿線地域との交渉を行った。第2の論点は駅の設置場所を巡る交渉である。沿線地域のなかでも多摩川以西の神奈川県内陸部の自治体は、東海道線開通以後、県の動脈が沿岸に集中したことから、内陸部の鉄道敷設を渇望しており、少数の例外を除き同社の路線敷設に賛成であった。ただ用地買収条件については、個別の土地所有者の利害が存在し交渉は難航した。小田原急行側は、後発私鉄であるがゆえに、隠密の用地買収を行うことができず、地域有力者の調停が不十分な場合、駅設置の有無、設置場所を交渉カードとして用いた事例が確認された。駅用地についても従来は地元自治体が好意的に寄付を行う事例が多かったと述べられているが、実際には寄付は同社から要求されているケースが多く、駅の設置をめぐり、沿線自治体内外で紛争が生じる場合も存在したことを地域文献を元に明らかにしている。
著者
武部 豊
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.123-134, 2001-12-30 (Released:2010-03-12)
参考文献数
64
被引用文献数
2 2

HIVがヒト集団に伝播し, 世界中に播種する過程は, 同時にウイルスゲノムが劇的な多様性を獲得し, 適応していく過程でもある. HIVが多様性を獲得するメカニズムには, 複製エラーによる突然変異と, 遺伝子組換えの2つが関与するが, さらに, ウイルスのもつ生体内での高度でしかも持続的な増殖能によって加速され, 驚異的な多様性が生み出される. HIVは地球上の生物の中で最も高速で変異する生命体であり, その変異速度は真核細胞の100万倍にも達する. これらの性質は, 増殖環境の変化に対して, HIVが適応・進化していくメカニズムの生物学的基盤ともなっている. 薬剤耐性ウイルスの急速な出現は, このウイルスのもつ驚異的な flexibility を反映する現象の一例である. 本稿では, 世界流行のもっとも主要な原因ウイルス株であるHIV-1を中心として, HIVのゲノム多様性獲得機構と多様性がもたらす生物学的・ウイルス学的意義について論じたいと考える.
著者
三浦 尚子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p>研究の背景と目的</p><p> 法務省は次の入管法改正で国籍国への帰国を拒否する外国人対策に,送還忌避罪や仮放免逃亡罪という刑事罰や難民申請の回数制限を設けようとしている.日本は難民条約を批准しているにもかかわらず難民認定率が1パーセントに満たない「難民鎖国」であり,不法残留(オーバーステイ)の送還忌避者に対して収容という措置を講じている.入管法には収容期間の基準がなく,送還忌避者の長期収容が恒常化しており,国際連合の恣意的拘禁作業部会からも勧告を受けている.</p><p></p><p> 日本の入国管理体制は,1990年代では外国人の入管法違反に対して減免措置を取り続け,政府の責任及び義務を免じてきた(明石2010).しかし2001年に起きた同時多発テロを契機に,日本でもテロ対策が強化され,さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて不法残留者の摘発および収容が厳格化されていく.出入国在留管理庁の収容空間は,各地方の出入国在留管理局(収容場)と2カ所の入国者収容所にある.</p><p></p><p> これまでも,入管の収容処遇に関する非人道性や被収容者のメンタルヘルス不調が,報道機関や支援団体によって批判されてきた.一方仮放免制度で一時的に収容所の外に出られたとしても,仮放免者はいつ再収容されるかどうか予測できず,就労不可,医療費の全額負担,さらにコロナ禍で家族・親族の収入が激減し生活困窮にあるという.移民の権利に対する政策の不在が,問題の根底にある(髙谷2019).加えて,支援団体の活動展開は収容所のin(内)/ex(外)で分かれる傾向にあり,被収容者・仮放免者等に対するシームレスな支援体制の構築が求められる.そこで本研究では,まず東日本入国管理センター(以下牛久入管収容所と記す)の被収容者と支援団体を調査対象に選び,コロナ禍における入管収容と課題を検討したい.</p><p></p><p>2.調査方法</p><p></p><p> 2020年11月からSWNW入管収容問題を考える会,2021年1月から牛久入管収容所問題を考える会に参加し,牛久入管収容所に週1回面会ボランティアをしながら聞き取り調査を実施した.面会は各30分間で1日最大7名に行い,主に日本語で,ごくたまに英語で対話した.</p><p></p><p>3.被収容者の生活状況とメンタルヘルス</p><p></p><p> 1993年12月に開設された牛久入管収容所,通称「ウシク」は,700名定員の大規模な収容施設である.通常,退去強制令書が発布された300名程度の男性送還忌避者を収容していたが,新型コロナウィルスの影響で2020年4月から2021年1月18日までで231名が仮放免となっている(牛久入管収容所問題を考える会の代表田中氏による).2021年1月現在で100名弱が収容されており,ナイジェリア,タンザニア,コンゴ民主共和国,ネパール,ミャンマー,スリランカ,イラン,ベトナム,ペルーの日系人などが含まれる.被収容者の中には入管法違反以外に薬物,傷害,窃盗などの違反歴があり,虞犯の観点からか刑期を終えているにもかかわらず収容されている者がいる.調査対象者は1990年代から2000年代に訪日しており,概ね日本語を流暢に話す.</p><p></p><p> 収容棟には旧館と新館があり,各階に配置された2つのブロックは通り抜けできないようになっている.被収容者が自動ドアで施錠された各居室からブロック内の共有スペースに自由に行き来できるのは,1日6時間に制限されている.旧館の居室は和室6畳にトイレとテレビが配置され,7時に電気とテレビを職員がつけ22時に消しに来るという.コロナ禍で暖房が24時間完備され,寒さが緩和されている.作業やプログラムなどは一切なく,運動場の利用は1日50分である.シナガワ,ヨコハマなどの収容場での収容期間と合わせると,調査対象者は1名を除き4年間以上収容され,仮放免の不許可に精神的なダメージを受けている.収容に対して,比較的短期の被収容者は帰国するより「生き残れている」と述べる一方,最長7年間の者は「自分は動物じゃない」,「外も大変なのはわかるが自由を得たい」と主訴している.車いすを常時使用する者,100日超のハンガーストライキを行う者,思春期の子供を心配する者,保証金が支払えず無気力になった者など,被収容者の健康状態,経済状況,家庭環境,国籍国の政情,過去の教育へのアクセス等は個々別々でそれぞれにケアが必要である.被収容者は収容所内でも極端に移動が制限されており,電話,面会,差し入れ,将来の希望など,外界との僅かなつながりで何とかメンタルヘルスを保っている状況にあり,長期収容の廃止等喫緊な対応が求められる.</p><p></p><p>文献 </p><p></p><p>明石純一2010.『入国管理政策—「1990年体制」の成立と展開』ナカニシヤ出版.</p><p></p><p>髙谷 幸2019.『移民政策とは何か—日本の現実から考える』人文書院.</p>
著者
豊川,慎
出版者
日本ピューリタニズム学会
雑誌
ピューリタニズム研究
巻号頁・発行日
no.4, 2010-02-28

It is well known that A.D. Lindsay (1879-1952) found out one of sources of the modern democracy in the Protestantism, especially in the seventeenth-century England Puritanism. In order to address the complex interactions between the modern democracy and Protestantism including Puritanism, in this article I critically explore A.D. Lindsay's theory of democracy and its relation with Puritanism, focusing on his democratic theory on discussion, consent, voluntary association and so on. By doing so, I will reconsider issues on the Post-war democracy in Japan where Lindsay's political thought had been translated and introduced before and after the Second World War.
著者
秋元 肇
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.270-278, 1989-10-15 (Released:2017-10-07)

二酸化炭素などの温室効果気体の濃度が2倍になると地表の温度は1.5~4,5℃上昇するといわれているが,どのような原理からそのような数字が導き出されているのだろうか,また,二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素などの温室効果気体の濃度上昇のメカニズムは,どうなっているのだろうか.温室効果気体による地球温暖化の原理を,地球のエネルギー収支という地球物理学的側面と,温室効果気体の物質収支という地球化学的側面の両面から概観し,最近の科学的知見の一端をまとめてみた.
著者
遊行 同念 橘 俊道
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.54-74, 1972-06
著者
中森 康浩 大澤 亨 二木 元典
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1-2, pp.21-24, 2017-06-20

[抄録] 今回,我々はオキシドールを浣腸し急性出血性大腸炎を発症した1例を経験した.症例は43歳男性.以前よりグリセリン浣腸を習慣的に使用していたが,今回誤ってオキシドールを浣腸し,その後より血便,腹痛,倦怠感を認めた.近医を受診し直腸炎の診断にて精査加療目的に当科紹介となる.大腸内視鏡にて直腸から連続する粘膜浮腫像,炎症像を認めた.CTでは直腸からS状結腸にかけて浮腫状の腫張及び周囲脂肪織の濃度上昇を認め,口側腸管との口径差を認めた.明かなfree air,腹水貯留は認められなかった.オキシドールの浣腸による急性出血性大腸炎の診断にて絶飲食,ステロイド注腸,点滴による保存的加療を開始した.発症4日目より飲水を開始.発症7日目の大腸内視鏡では炎症像が残存するも症状は消失しており,経口摂取開始後も症状再燃無く,発症14日目に退院となった.オキシドールは容易に入手できるが誤用により重篤な症状を呈するためその危険性を認識しておく必要があると考えられた.
著者
馬場 悠男
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.158-162, 1995-08-01 (Released:2016-10-31)
参考文献数
5
著者
廣田 敦士 市川 淳 早川 博章 西崎 友規子 岡 夏樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.231-242, 2019-06-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
18

Humans and animals prefer immediate reward rather than delayed one. In other words, a future reward is felt discounted. The speed of discounting is expressed with the parameter K, which is called discount rate. Problems related to time discounting often occur in everyday life. For example, if we put up with purchasing a product by impulse, we may succeed in savings as a future reward. On the other hand, if we purchase a product by impulse, we will get a satisfaction and an effect of product as an immediate reward at the expense of a future reward. This study focused on embodied cognition for adjusting discount rate easily and solving problems mentioned above. Our experiment revealed that a high-power posture tended to reduce discount rate, which means that savings will be easier to succeed. This occurred only under condition where the reward is small.
著者
高橋 究
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.66-72, 2018-09-30 (Released:2018-11-13)
参考文献数
24

5-アミノレブリン酸(ALA)は,ヘムやクロロフィルといった,エネルギー生産など生物の根幹機能を担う重要な分子であるテトラピロール化合物の代謝系における出発物質で,生物に普遍的に存在する,生命の根源物質とも称される天然アミノ酸である.生体におけるALAの生理作用は,農業分野で見出されたのち,医学・ヘルスケア分野においても多彩で加速度的な応用がなされており,当該分野へのALAの応用について概説する.
著者
藤島 一郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Suppl.2, pp.S129-S141, 2009 (Released:2010-12-01)
参考文献数
47
被引用文献数
2