著者
菊川 紗希
出版者
跡見学園女子大学附属心理教育相談所
雑誌
跡見学園女子大学附属心理教育相談所紀要 (ISSN:21867291)
巻号頁・発行日
no.13, pp.91-108, 2017-03

本研究の目的は,女子大学生を対象にぬいぐるみ所持前後の抑うつおよび状態不安の変化を明らかにすることであった。予備調査(N=285)にて,移行対象の有無,愛着のタイプ,抑うつ得点を調査し,実験プログラムの協力者を募集した。愛着のタイプ(The xperiences in Close Relationships Inventory for The Generalized Other : ECR-GO)「恐れ型」の多さ,抑うつ得点(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale : CES-D)の高さより,予備調査協力者である女子大学生の危機的な状況,特定の愛着対象が不在である,もしくは,その関係が不安定である可能性が伺えた。介入研究(N=10)にて,X年Y月中の3週間,1日約15分間3条件を設定して,ぬいぐるみを抱く実験プログラムを行った。日常活動をせずにぬいぐるみを抱いていた期間の抑うつ得点および状態不安得点の平均値は,介入前より後に有意に下がる(抑うつ得点:t=2.832,df =9,p<.05*),また,下がる傾向(状態不安得点:t=2.127,df =9,p<.1†)にあった。介入前後において日常活動をせずにぬいぐるみを抱くことが,抑うつおよび状態不安に影響することが示唆された。
著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:21888647)
巻号頁・発行日
vol.2022-EIP-96, no.8, pp.1-6, 2022-06-02

欧州・米国間では,個人データの移転のために,欧州の十分性認定制度を前提としつつも,セーフハーバースキーム,プライバシーシールドが採用されてきたが,それぞれ,欧州司法裁判所によって無効とされてきた(SchremsI,SchremsII).プライバシーシールドに対する十分性認定が無効となったのちの,欧米間の個人データ移転のための交渉は表面化していなかったが,2022 年に入り,新たな大西洋横断データプライバシー・フレームワーク(Trans-Atlantic Data Privacy Framework)が検討されていることが公表された.本発表では,同フレームワークについて,現状と課題を述べる.
著者
松本 正生
出版者
埼玉大学社会調査研究センター
雑誌
政策と調査 (ISSN:2186411X)
巻号頁・発行日
no.18, pp.17-30, 2020

2016年参院選、17年衆院選、19年参院選と国政選挙の後に実施した、さいたま市の高校生に対する意識調査の結果をもとに、若者の投票行動および政治意識の推移を考察する。調査結果からは、在学中の3年の間に、高校生の選挙への関心や投票への動機づけの低減が明らかとなる。併せて、政治への不満や政治家に対する不信の度合いも大きく低下している。政治や政治家へのマイナス・イメージの低減は、現状の肯定というより、彼らが政治を意識すること自体がなくなりつつあることを示唆している。In this study, we will examine the changes in voting behavior and political consciousness of young people based on the results of opinion surveys of high school students in Saitama City. These surveys were conducted after the 2016 House of Councilors elections, 2017 House of Representatives elections, and 2019 House of Councilors elections. The results of the survey show a reduction in the students’ interest toward elections and motivation for voting in these three years. At the same time, there has been a significant decline in the degree of dissatisfaction with politics, and mistrust of politicians. The decline in the negative image of politics and politicians alludes to young people losing political awareness rather than an affirmation of the status quo.
著者
鹿野 嘉昭 Yoshiaki Shikano
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1-2, pp.35-79, 2010-09-20

本稿は、明治初年に実施された旧藩札と新貨との交換(藩札整理)の実態について数量分析の立場から明らかにすることを狙いとしており、次のような興味深い事実を見出した。藩札の新貨との交換価格は各地における金銀銭相場を基準にして全国一律のルールにしたがって藩ごとに個別に決定されたが、届相場が九六銭12貫500文以下となった諸藩発行の銭札・銀札については、全国一律に1貫文8銭あるいは100文当たり8厘、市場実勢との比較において2~3割ほど割安な水準で新貨に交換された。明治政府が承継した藩札債務は3855万円から最終的には2493万円に更生減額されたが、その8割は先に掲げた交換価格の設定方法に由来する。そうであるがゆえに、大蔵省としても「官吏を派遣し精密な調査を行った結果、諸藩から報告のあった藩札の流通価格が大きく減額されたため」としか説明できなかったのであろう。
著者
伊藤 博
雑誌
大妻女子大学文学部紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.33-48, 1990-03
著者
一森 哲男
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3127-3135, 2009-12-15

人口に比例して議員定数を配分することは一見簡単な問題と思えるが,実は意外と難しい.この問題はアメリカ合衆国憲法に記載されているが,200年以上にわたり議論が続いており,解くことのできない問題ともいわれている.しかしながら,現時点では,この問題はヒル方式かウェブスター方式で解かれると考えられている.両方式間の最大の争点は,大州と小州間の配分議席数による偏りである.どちらの配分方式がより小さな偏りを与えるのか.本論文では,従来の考え方の矛盾点を明らかにし,新しい考え方により,ヒル方式だけでなくウェブスター方式も絶対的に小州に有利なこと,さらに,従来の定説どおり,ヒル方式がウェブスター方式より相対的に小州に有利なことを示し,ウェブスター方式の優位性を与えた.
著者
宮下 敦志 戸田 智基
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2022-SLP-142, no.33, pp.1-6, 2022-06-10

音声認識モデルには,話者の違いによる発声の揺らぎに対して認識結果が不変であることが求められる.声道長変換はそのような揺らぎを模倣する変換の 1 つである.本報告では,全域通過フィルタによるワーピングで表される声道長変換について,群論を用いて別の変換式を与え,そこから解析的に導かれる声道長正規化処理を音声認識モデルの入力に用いる手法を提案する.提案手法では,学習データに依存しない特徴量表現を得ることが可能である.TIMIT データセットを用いた音素ラベル分類による実験的評価によって,学習データに含まれない仮想的な声道長の話者について,提案手法による汎化性能の向上が確認された.