著者
宇宿 一成
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1129-1130, 2003-11-01

4歳,女児.熱発に対して前額部に冷却シートを貼付したところ,翌朝疼痛を伴い水疱形成を混じる紅斑を生じた.冷却シートおよびそれに含まれる植物成分の精油を用いたパッチテストは陰性だった.発熱と発汗により角質バリアーが障害されたために生じた冷却シートによる一次刺激性皮膚炎と考えた.1週間のストロングクラスのステロイド外用で略治した.冷却シートの安全性に対して皮膚科的に検討する必要があると考えた.
著者
柴山 雅俊
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1293-1300, 2006-12-15

抄録 夢と現実の区別困難について解離性障害の患者53名と対照群57名を対象に調査した。解離性障害にみられる夢と現実の区別困難を,①現実が夢のようである,②夢が現実のようである,③過去の記憶が事実なのか夢なのか判断しがたい,の3つに分類し,それぞれについて精神病理学的観点から論じた。解離性障害では今・ココを起点とするパースペクティヴperspectiveの成立不全が示唆される。それはまたパースペクティヴの起点・要になる私の成立不全をも意味している。同一性の拡散した私は,並立化し等質化した世界の知覚対象や記憶表象,空想表象,夢の表象との1対1の無媒介的・直接的関係を通して深く没入し,没入した世界によってあらためて私が構成されることになる。このような,知覚-表象や現実-夢などの並列化に加え,パースペクティヴの両極構造とそこにおける循環的関係は,解離性症候の基底に存在する病態構造の一つと考えられる。

5 0 0 0 二関節筋

著者
福井 勉
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.511, 2008-06-15

二関節筋とは起始と停止が2つの関節をまたぐ筋を指す.単一関節に関係する単関節筋と対比されることが多いが,多くの関節に作用する多関節筋という語の一部とも考えられる.下肢では大腿直筋,半腱様筋,半膜様筋,大腿二頭筋長頭,腓腹筋などが,上肢では上腕二頭筋長頭,上腕三頭筋長頭などがその代表である.二関節筋は2つの関節をまたいでいるため,一方の関節運動は他方の関節の影響を受ける.端座位で膝関節最終伸展を行う際に骨盤後傾が起こりやすいのは,ハムストリングスの短縮のためである.しかし,骨盤後傾は大腿直筋の起始部を停止部から遠ざける効果もある.投球動作やキック動作のように,四肢末端が強いトルクを出す際には,主動作筋の筋長を最大限にしていることが観察できる.キック動作のフォロースルーでも,骨盤後傾と体幹回旋によって,下前腸骨棘は脛骨粗面に容易に近づかない.そのためキック動作では,下肢末梢の瞬間中心は股関節よりも中枢の体幹に位置するようになる.このように,二関節筋は関節中心から遠い浅層に位置するため,レバーアーム長が長いことも大きなモーメント発揮に有利であると考えられる. 二関節筋は2つの関節の運動をつかさどるため,運動のパターン化を来す場合もある.変形性膝関節症における大腿筋膜張筋-腸脛靱帯の強い緊張,ジャンパー膝における大腿直筋の強い活動は,拮抗筋機能低下だけではなく,筋の付着部付近の単関節筋活動の機能低下とも結びついている.骨盤付着の二関節筋はすべて体幹姿勢の影響を受けるため,例えばジャンパー膝では,股関節屈曲モーメントが大きくなる骨盤後傾姿勢をとりやすく,同時に膝関節伸展モーメントを増大させてしまう.つまり,ある二関節筋が作用すれば,最小限の姿勢保持や動作が可能であるため,他の筋群の活動は必要とされない姿勢になり,負荷が一箇所に集中するようになる.したがって,ジャンパー膝の原因療法としては,股関節伸展モーメントを動作中に増大するような運動療法が考えられる.変形性膝関節症でも,股関節外転モーメントの増大は骨盤の反対側への傾斜,中殿筋筋力低下と共に生じ,二関節筋への負荷が過剰であるために生ずるとも言える.以上のように,筋炎や腱炎,肉ばなれなどは二関節筋特有と言っても過言ではなく,さらに二関節筋の過剰な運動参加は関節不安定化に移行しやすいなど,機能障害と結びつきやすい.関節疾患における単関節筋機能向上の運動療法が,肩関節や体幹に代表されるローカルマッスルへのアプローチに移行したのは機能障害との関連からであり,臨床に導入された根拠ともなっている.

5 0 0 0 創刊の辞

著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9-10, 1966-04-25

学会の機関誌を除くと,我が国では,消化器病学の専門誌が一向に育たないというジンクスがある.消化器病がとくに多いという我が国にあっては,不思議な現象のように感じられる.しかしそれにはそれ相当の理由があるであろう.たとえば消化器病の患者が余りにも多すぎ,余りにも一般的に過ぎるために,却って専門化しにくいとも考えられる.あるいはまた,消化器病には内科も放射線科も外科も病理も関与していて,その論文はそれぞれの分野の専門誌によって,すでに十分に消化されているのかも知れない.これらの現象はまた消化器病の専門家が現在十分に独立していないということにも通じよう. しかし最近は医学全体の専門化の傾向に推進されて,消化器病の専門化も静かにではあるが次第に進められつつあるように思われる.そしてそれには早期胃癌の診断学の発達が大きな拍車の一つになった.これまである程度片手間にでもできないことのない消化器病ではあったが,こと早期胃癌の診断に関する限り,X線の精密検査といい,胃カメラといい,ファイバースコープといい,さらには,生検,細胞診といい,何れも,もはや片手間にはできない知識と技術を必要とするようになった.そしてこの専門知識が現在の目本全国をあげての癌恐怖症に対する,唯一の現実的な解答だとすると,やはりこの道への専門化はさらに促進されなければならない事業である.この意味だけでも消化器病の専門誌が誕生すべき機運にあるといえるはずである.
著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9, 1977-01-25

11年前創刊の辞に,表題を取りあえず「胃と腸」とするが,いずれ「胃と腸」にする日が来るであろうし,またなるべく早くそうありたいという夢を記した. 10巻1号には創刊以来足かけ10年の経緯を振り返り,そろそろ「胃と腸」にしたいがもう暫く時期を待ちたいと述べた.それは編集委員の中に異論があって,「胃と腸」としたい気持は分るが,現実には内容がそこまで行っていないのではないかという自己批判があったからである.
著者
織田 好子 一角 直行 堀川 達弥 猪又 直子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.558-561, 2016-07-01

要約 41歳,男性.約10年前から全身の蕁麻疹・血圧低下・呼吸困難感などのアナフィラキシー症状を繰り返し,そのたびにエピペン®の自己注射を行っていた.さまざまな病院で多数の食品のプリックテストやスクラッチテスト,血清特異IgE抗体の検査を受けたが,長い間原因不明であった.今回,納豆摂取の2時間後に呼吸困難感が生じたため,納豆およびポリガンマグルタミン酸(poly gamma-glutamic acid:PGA)のプリックテストを施行したところ,両者で陽性であった.患者はサーファーであり,過去に頻回のクラゲ刺傷歴があった.PGAは冷やし中華のスープや種々の調味料などに含まれており,自験例の過去のアナフィラキシーのエピソードの中にもそれらを摂取して発症していた可能性が疑われた.クラゲ刺傷既往のある原因不明のアナフィラキシー患者の原因抗原としてPGAを考慮する必要があると考える.
著者
山野 泰穂 松下 弘雄 田中 義人 吉川 健二郎 原田 英嗣 吉田 優子 加藤 文一朗 久保 俊之 菅井 有 仲瀬 裕志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.48-56, 2019-01-25

要旨●大腸腫瘍性病変に対する拡大内視鏡診断は腺腫・早期癌に対する質的診断,量的診断において欠くことのできない診断手法となった.しかし,SSA/Pという新たな疾患概念の登場により,鋸歯状病変の拡大内視鏡診断は新たなステージを迎えている.今回筆者らはHPを除いた大腸鋸歯状病変180病変に対して従来のpit pattern分類にII型・IV型の亜分類(開II型,伸II型,鋸IV型)を加えて分類し,病変全体の均一性の観点からpit pattern単一群とpit pattern複合群とに分けて検討した.その結果,単一群において,SSA/Pでは81病変中69病変(85.2%)と高率に開II型を示し,TSAでは12病変中10病変(83.3%)と高率に鋸IV型を示すことが判明し,各々高い感度,特異度,陽性的中率を認めた.一方,複合群においては,SSA/P+CDでは31病変中24病変(77.4%)と高率に開II型+鋸IV型を示し,開II型+何らかのpit(α)で,またTSAでは何らかのpit(α)に鋸IVが付随することで高い感度と陰性的中率を示したが,特異度,陽性的中率は劣っていた.Ca in SSA/Pでは開II型+VI型が高率に認められたが,Ca in TSAでは特徴は見い出せなかった.その理由として,TSAの病理組織学的診断上の問題などの関与が示唆された.以上より,大腸鋸歯状病変に対する拡大内視鏡観察では均一性の確認が重要であり,複合したpit patternを有する病変では慎重な対応が望まれると結論した.
著者
山野 泰穂 田中 信治 菅井 有 松下 弘雄 斎藤 彰一 三澤 将史 堀田 欣一 竹内 洋司 佐野 寧 永田 信二 河野 弘志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1648-1669, 2020-12-25

Introduction山野 本号は「大腸鋸歯状病変の新展開」ということで,本誌ではしばしば鋸歯状病変に関して特集されていますが,大腸鋸歯状病変,さらにはSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)に関しては概ね市民権を得ており,多くの内視鏡医が知っている病変であると思います.SSA/PはMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変であろうと分子生物学的にも解析が進んでおり,adenoma-carcinoma sequence,de novo pathwayに次ぐ第三の発癌ルートserrated neoplastic pathwayとしてmalignant potentialも高いのではと考えられています. 一方,実臨床では鋸歯状病変,特にSSA/Pは本当に悪性度が高いのかという疑問があります.これまで長い間,SSA/Pは過形成性ポリープと見分けがつかず,非腫瘍として扱われ放置されてきた歴史,むしろadenomaのほうが前癌病変として問題であると考えられてきた歴史があります.

5 0 0 0 CT Colonography

著者
野﨑 良一 有馬 浩美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.740-741, 2021-05-24

CTC(CT colonography)が大腸癌術前検査のみならず,大腸スクリーニングにおける画像診断法として注目されている.術前検査として,CTCは注腸X線造影検査(barium enema ; BE)にとって代わろうとしている.盲腸まで内視鏡で観察できない,いわゆる全大腸内視鏡検査(total colonoscopy ; TCS)不成功例に対しても,CTCは有用な検査法である.大腸スクリーニングについてみると,大腸がん検診の精密検査法として本格的導入が間近となっている1). 本稿では大腸スクリーニング,大腸癌術前検査としてのCTCについて解説する.
著者
村瀬 永子 平林 秀裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.712-723, 2021-07-10

Point・基底核には,四肢の運動,眼球運動,情動,認知とかかわる皮質—基底核—視床—皮質を介するループが並列し,体部位特異性がある.・基底核はハイパー直接路,直接路,間接路といった経路による複雑な興奮(脱抑制)と抑制の回路を成している.・これら経路による発火モデル(rate model)でパーキンソン病やジストニアといった疾患の病態が説明されてきた.しかしそれで説明できない点もみられる.・脳深部刺激(DBS)の電極から得られる局所フィールド電位(LFP)の研究から,パーキンソン病では広範囲の異常な同期活動が病態の本質であろうと推察されている.
著者
金子 忍 畦上 恭彦
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.313-320, 2014-12-15

自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は,音声言語表出や理解にアクセントを含むプロソディの処理が困難であるとされている.一定のアクセント型を持たない一型式アクセントの方言地域において同音異義語で誤る場合,方言の影響なのかASDの認知特性の影響なのか不明である.本研究は一型式アクセント地域に住むASD児の単語アクセントの聴覚的識別・理解の特徴を明らかにするために,絵と音声のアクセント型が一致する一致条件,絵と音声のアクセント型が一致しない不一致条件,絵と音声(単語)が一致しない統制条件からなる同音異義語の正誤判断課題を用いて,定型発達児・者とASD児を比較し検討した.その結果,一致条件の平均正答数において,ASD児群は一型式アクセント群の成人より有意に低下していることが示された.ASD児は,単語アクセントの聴覚的識別・理解において,方言と年齢の影響を受けているということが示唆された.
著者
鈴木 秀典 今城 靖明 西田 周泰 舩場 真裕
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.141-147, 2019-02-25

はじめに 非特異的腰痛の頻度については,2001年にThe New England Journal of Medicineに発表されたDeyoらの論文1)では80%程度と報告されており,頻度の非常に高い臨床的概念である.しかし,その概念・病態については,いまだ明確でない点が多いのが現状である.腰痛の症状と単純X線所見が必ずしも相関しないことは,以前から認識されていた事実である.すなわち,単純X線所見やMRIなどの画像所見があまり診断の役に立たないような腰痛症を非特異的腰痛と分類してきた経緯があり,下肢症状を有するような腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症,重篤な脊椎病変の可能性(重度骨粗鬆症,腰椎圧迫骨折,腫瘍,感染,炎症性疾患,先天奇形など)を除外したものを総じて非特異的腰痛としてきたのである.腰痛症診断において,こうした簡単に時間をかけずに診断可能な画像診断などを重視してきたことが,非特異的腰痛をめぐる諸問題を生じさせてきた根底にあるように感じている.しかし,これも「非特異的腰痛:non-specific low back pain」という用語そのものが,欧米のプライマリーケア医により提唱されてきた概念であることを考えると,致し方がないとも考えられる.プライマリーケア医における腰痛症診療では,red flagsを除外することが最優先課題であると考えられるし,それ以外の腰痛に関しては,彼らにとってはある程度似通った運動療法や薬物治療となるため,詳細な確定診断を急ぐ必要性が乏しかったのではないかと思われる. そういった意味では軽視されがちな非特異的腰痛であるが,わが国の腰痛症診療を考えると,多くの腰痛症患者はこの非特異的腰痛にて病院を受診し,適切な治療を希望されているわけである.したがって,こうした腰痛に関してもまた正確な診断を行い,引き続く適切な治療を行う必要があるのである.また,医療保険システムの違いが大きいとはいえ,本邦ではこうした腰痛症患者に対してはじめから専門医である整形外科医院やクリニックで診療を行っているという診療上の大きなメリットがある.本稿では,わが国における腰痛症診断の実態調査として山口県腰痛study3)のデータを示しながら,非特異的腰痛のわが国の現状について報告する.また,丁寧な診察や問診などの重要性について述べるとともに,診断に基づく適切な腰痛症治療の可能性について示していきたいと考えている.
著者
斎藤 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.481, 1973-07-15

発端 昭和48年4月天然痘事件の発端は,3月31日午後3時管内の東京逓信病院から,3月26日から同院に入院中の郵政省職員のK氏(33歳,男)が,天然痘の疑いがあるという届出をうけた.届出によると同氏はバングラディシュに約1ヵ月滞在し,3月18日に帰国,23日に発病し26日に受診入院したという.主症状は発熱と発疹で,現在の疹の状況,前駆疹の存在などからして,天然痘の疑いは極めて濃いと判断された.
著者
甄 雅賢 工藤 和浩 末武 茂樹 田上 八朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.649-652, 1994-07-01

正常角層は扁平な角層細胞が細胞間脂質を介してサンドイッチのように何層も積み重なってできた膜状物である.身体各部位における角層層数の違いを調べるために,皮膚疾患患者から得た正常部皮膚の凍結切片を用い1%サフラニン液で染色した後,2%KOH水溶液により角層を膨潤させ層数を数えた.角層が最も薄いのは男子の陰茎部で約6層,次いで眼瞼の約8層で,逆に最も厚いのは手掌と足蹠で40層以上であった.十分な標本数が得られた部位で年齢と角層層数の関係を検討したところ,頬部と眼瞼では年齢によって角層層数に違いはなかったが,下肢伸側では加齢に伴って角層層数の増加がみられた.腹部では逆に高年齢層のほうが角層層数が少なかった.また増殖細胞のマーカーであるPCNAに対するモノクローナル抗体を用いて表皮の増殖の程度を評価し,角層層数との関係を検討したが両者の問に相関は認められなかった.
著者
本田 学
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1283-1293, 2020-11-01

指揮者やメトロノームなしに複数の演奏者が自律的に同期をとり,「阿吽の呼吸」で一糸乱れぬ演奏を実現する音楽表現が,地球上のさまざまな文化圏に数多く存在する。その典型例としてインドネシア・バリ島の祭祀芸能ケチャを取り上げ,ケチャ演奏中の複数人から脳波同時計測を行ったところ,演奏前に比較し演奏中と演奏後には,脳波の個体間同期が増強することがわかった。脳機能の同期と社会や文化との関わりについて考察する。
著者
三島 済一
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.197, 1993-10-30

姫路の眼科医,高橋江春が明治18年,国産最初の義眼を作り,『義眼要弁』という本を著した。曾孫の高橋先生,京都の奥沢先生からその実物を送って頂いて,見ると素晴らしい出来ばえで,お椀のような形をし,眼球の上にかぶせるようになっている。当時は風眼,旬行性角膜潰瘍が非常に多く,角膜ぶどう腫や眼球萎縮などになったので,前者では眼球縮小術をしてこの義眼をかぶせると,よく動き,容貌が改善し,喜ばれたことはまちがいない。 明治28年,日清戦争で負傷した元兵士に対し,恩賜の義手,義足,義眼が下賜されている。当時の義眼には輸入されたものもあったが,この恩賜の義眼は高橋義眼であろうと思っている。当時の陸軍軍医学校の図書室には眼科の本として,保利真直著3冊,伊東元春訳1冊と『義眼要弁』があった。したがって陸軍は高橋義眼をよく知っており,これを用いたに違いない。
著者
岩田 健太郎 北原 エリ子 高橋 哲也 長谷川 信 横田 一彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.796-801, 2020-07-15

高橋 本日は,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の患者に直接対応されている最前線の先生方にお集まりいただきました.最初に自己紹介を兼ね,それぞれの現場で何が起こっているのか,これまでの経緯をお話しください. 岩田 当院ではCOVID-19患者を受け入れて以降,受け入れ初期,緊迫期,安定期という3段階で進んできました.緊迫期は院内感染と並行して健康観察に伴う職員の離脱が増え,病院全体が不安に覆われていました.それから日々情報がアップデートされ,目の前の変わりゆく変化に常に対応していかなければいけない時期でもありました.この時期は災害と同じだったと技師長とよく話しています.その後,COVID-19の実態がある程度見えてきて,現在は安定に向かいつつあります.