著者
田畑 陽彩 高橋 侑希 井上 絢音 竹山 悠斗 真野 航輔 山野 莉緒
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

【はじめに】ため池は雨水や河川水を貯め、稲作灌漑に利用されてきた。また、生物の生息場所の保全、地域の憩いの場を提供するなど多面的機能を果たしている。しかし、農家数の減少により灌漑用途としてのため池使用は減少し、管理が行き届いていないため池が増加している。このようにため池の管理が行き届かなくなると、水が長期間滞留することから水質悪化が懸念される。水質悪化を避けるため、多くのため池で伝統的におこなわれてきた「池干し」が見直されている。池干しとは、ため池において水利用の少ない冬期に一定期間水を抜き、底泥を乾燥させることである。そして、富栄養化した水の排出、底泥の洗い流し、栄養塩類の溶出抑制などにより水質改善が見込める。しかし、その水質改善についての詳細なメカニズムは不明な点が多い。これは、池干しによる有機物分解等の作用の違いを実験的に作り出すのが難しいからである。そこで私たちは、池干し下にある底泥を採取し、実態に即して検討することにした。具体的には、何十年も池干しをおこなっていない池と、毎年おこなっている池を選定し、リン循環の周年変化を比較し、違いを考察する。【実験結果】本研究では、加古川市東部の台地上にあり、市街地化も同程度と立地環境が似ている2つの池を選定した。池干しをおこなっていない池が源太池、おこなっている池が新川池である(図1)。まず、この 2 つの池において底泥の堆積構造を調べ、サンプリングをおこなった(図2・3)。 実験1では、サンプルを天日干しして水分を除いた後、電気炉を用いて強熱減量(有機物量)を求めた。その結果、有機物量は源太池で平均 15.7%、新川池では 13.0%となった(図4)。これは t 検定では有意差である。 実験2では、モリブデン青法を測定原理とする試薬と吸光光度計とを使って、全リンと溶存態リンの溶出濃度を測定した。全リンについてはオートクレーブを使用している。実験開始後 25 日目における溶出濃度をみると、新川池の方が全リン・溶存態リンともに溶出が抑制されている(抑制率は順に 82.1%、55.5%)ことから、池干しの効果が大きいと考えられる(図5・6)。 全リンは有機態リンも含んでおり、源太池に有機物が多く含まれているという実験1の結果と整合する。【考察】以上の結果に基づき、池干しをおこなう新川池のリン循環モデルを作成した(図7)。①池干し前の湛水期は、水中の有機態リンが溶存酸素用いた微生物の活動で異化され、無機態リンとなる。底泥に含まれている Fe2+イオンが溶出して、酸化・水酸化反応により水酸化鉄に、PO43-イオンは水酸化鉄との吸着反応により沈降する。嫌気状態で還元が起き、リン酸イオンが溶出する。このリン酸イオンが植物プランクトンの栄養分となり、有機態リンに変わる。② 池干しをおこない底泥が空気にさらされると、好気性微生物が活動し有機物が分解される。③その後、新たに溶存酸素を多く含む水が流入してくる。起こる反応は池干し前の湛水期と同じであるが、溶存酸素をより多く含むため有機態リンから無機態リンへの異化、リン酸イオンの水酸化鉄との 吸着・沈殿がより活発になる。また、新たな溶存酸素を多く含む水が流入してくることで水中の溶存酸素量が増えるだけでなく、池干し期間中に換気によって有機物の分解が既に起きているので、水中の溶存酸素消費量が減り溶存酸素量の低下が抑制される。溶存酸素量は池干しをおこなっていない池よりも多くなり、有機態リンから無機態リンへの異化が進みやすい。 このように、①から③を一年かけて繰り返す。池干しをおこなうことで溶存酸素量が増え、結果的にリンが多く流入しても富栄養化を防ぐ作用が働くため、水質改善の効果を示す。底泥は沈殿したリンを保持する役割を果たしている。【おわりに】池干しによる水質改善効果について、リンの周年的循環に注目し、その解明に取り組んだ結果、池干しによって単に溜まっていた水が酸素を多く含んだ水に入れ替わることで水質が改善されるだけではなく、換気により水質悪化の原因の一つである硫化水素の発生も抑制し、その後しばらくの間抑制効果が持続するということが分かった。
著者
小菅 正裕
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

sP phase is an S to P converted waves at the ocean bottom or sea surface. Some researchers have used this phase from the offshore earthquakes in northeastern Japan to improve the depth accuracy of the earthquakes. However, the wavefield and propagation characteristics of this phase have not been well studied. Here I examined the characteristics by applying some simple visualization techniques and 3D wave propagation simulation. One technique is the simulated broadening of seismograms from the Hi-net network by correcting for the characteristics of the short-period seismometers. This correction enables us to investigate seismogram's lower frequency components that are less sensitive to short-wavelength heterogeneities in the lithosphere. The other technique is the visualization of low-pass filtered and auto-gain-controlled seismograms as wiggle traces. Thus, we can easily trace some converted phases on the paste-up seismograms. A comparison of simulated and observed seismograms is also quite useful to investigate the origin of converted waves. I used OpenSWPC code and velocity and attenuation structure based on the JIVSM model. I applied these techniques to some inter-plate earthquakes that occurred offshore Miyagi prefecture in northeastern Japan. I could identify both pP and sP phases from almost all examined earthquakes. These phases appear as a continuous phase on paste-up seismograms as far as 400 km epicentral distance. The time difference between these waves and P-waves varies with the source location, reflecting the depth difference between the earthquake and ocean bottom. Since the converted waves appear as continuous wave packets crossing station network, picking of arrival times from limited time bands determined from the paste-up records can improve the data accuracy, and hence the location accuracy. The use of pP phase together with sP phase will provide a new method to improve the depth accuracy of offshore earthquakes, which is important to investigate the seismicity in the period before the operation of the S-net, the ocean-bottom seismometer network covering offshore from Hokkaido to Kanto district.
著者
黒澤 駿斗 市川 大翔
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

地面は様々な物質で構成されている。同等の熱を加えたときに温度の上がり方・下がり方はそれぞれ異なる。温度を測るときには直接地面に刺して計測が難しいため放射温度計を用いて似た条件で複数回計測する必要がある。日差しが強い日になるとアスファルトと土の上では温度は大きく変わる。そのため同じ熱が当たっていても、土壌や地面の成分によって温度の上がり方は大きく異なる。このことから地面を構成している様々な物質にはそれぞれ比熱の違いがあると考えられるため放射温度計(SATO社SK-8940)を使い調査した。調べるための方法としては季節や時間を変えて、放射温度計で地面の温度を計測した。季節は昨年11月から今年4月にかけて、計測した時間帯は午前中の地温上昇がみられる時間帯に、約1日2回時間,30分から2時間ほどの間隔で行った。ここで注意すべき点としては、気温を下げる要因としての風の強さ、日陰の位置変化である。放射温度計は計測面積を十分にとるため地面から1m離して計測した。距離D:測定直径S=10:1の放射温度計を使用したためD=1mの場合、計測面積は78.5cm2と見積ることができる。土壌は、アスファルト、植生あり・なしでの地面の違いで計測した。熱容量の計算方法は受熱量Q(J)/上昇温度T(K)で考え,熱容量の比を比較したところ以下のようになった(比であるのは現在、厳密な測定面積の確定ができていないため)。【熱容量比】1例目 4月7日 草地:砂:レンガ≒0.714 :0.357:0.6672例目 4月9日 草地:砂:レンガ:土:アスファルト≒0.133:0.120:0.106:0.833:0.1123例目 4月11日 草地:砂:レンガ:土:アスファルト≒0.166:1.428:0.175:0.116:0.219データには考慮すべき誤差があるが全体の傾向として熱容量は 1例目 草地>レンガ>砂 2例目 土>草地>砂>アスファルト>レンガ 3例目 砂>レンガ>アスファルト>草地>土となった。ここからいえることとしては、アスファルトとレンガは熱容量の差が小さく外的要因による影響が少ないが、逆に草地、砂、土は熱容量の差が大きいため、風などの外的要因に影響されているのではないかと考えた。植生のある土壌の熱容量、ひいては比熱をもとめるにはさらに安定した条件で測定することが求められるであろう。この安定した測定には何が必要か、議論をしたい。
著者
田中 陽登 馬場 光希 浜島 悠哉
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

研究背景・目的本校天文気象部では、約70年前より百葉箱による気象観測(1日2回、気温・気圧・湿度・風速・雨量・視程観測等)が続けられてきた。1995年以降は欠測が増えたが、2007年には自動観測装置を導入し、視程以外の観測を再開させた。2018年には目視による視程観測を再開したが、毎日同じ時間に屋上に出て観測することが難しく、過去に比較して欠測が非常に増えた。本研究では、この問題を解決するために、コンピュータ制御したカメラで定時に対象を撮影することによる新たな観測方法を開発した。カメラを使うことで観測者の視力の影響を無くすことも可能となる。自動観測装置の製作・設置都心方面のより多くの目標物を見渡せる場所として5回の屋上を選択し、手すりに土台を取り付けて観測装置を固定した。容器は粉塵や風雨から機器を守るためにアルミシートで覆った密閉型のケースを作り、電源供給のため屋外用の電源コードとLANケーブルを室内から繋げるよう工作した。観測装置は、一眼レフカメラと、カメラを制御するためのRaspberry Piで構成した。プログラムは、定時に写真を撮影し、撮影画像を自動的にGoogleドライブにアップロードする命令をPythonで記述した。さらに、スマートフォンによる操作で撮影ができるようにし、その時の空の様子や視程の具合を確認できるよう、Slackを通じて観測装置をコントロールするプログラムも作成した。観測方法と結果観測を自動で行うために、カメラの適正な露出や感度など、撮影する際の設定をあらかじめ決める必要がある。同一のタイミングで撮影設定の異なる数枚の写真を撮り、露出が適正である写真を選ぶ作業を繰り返して、設定を決めた。焦点距離は150mmに固定し、1回の観測で3種類の撮影設定を定めた。36㎞先のスカイツリーや25㎞先の新宿のビル群について、同時刻の目視観測の結果とカメラの撮影画像の結果を比較したところ、目視観測で視認できたものは3種の撮影画像でも確認でき、目視とカメラで観測結果に差はないことがわかった。目視と画像にょる識別の差については更に観測を増やして検討する必要がある。考察今回の自動観測で得られたデータと先行研究の1950~60年代の同時期(冬)のデータと比較してみると、現在のほうが、格段に視程がよくなっている。かつては視程が4km未満の日が多くあり、先行研究では冬の朝もやや大気汚染が視程の悪さの要因となっていると言及していたが、現在は天気により視程が悪い時でも4km先まで見通せており、朝もやが出現することはほとんどなかった。今後は更に、視程と天候、及び季節、黄砂や大気汚染との関係をより詳しく調査していく。
著者
島村 泉里
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

空気抵抗の大きさを求める1つの要因に抵抗係数というものがあげられる。しかし、現在抵抗係数は実験から得る以外の方法で数値をわり出すことはできていない。そこで、本研究対象である抵抗係数についての知見を得るため、最初に、形状の違いによる空気抵抗の大きさの変化を、地上15.75m(本校5階)から物体を落下させることにより比較した。実験1として体積の等しい「立方体・四角錐・円錐・球」の4種類(表1)を木材から切り出し、落下させた。しかし、物体の形状の種類と実験数が不足していたこと、更に使用した木材の密度が一定ではなく形状が不精密であったこと、そして落下時に水平方向の軸を中心とする回転をしてしまったことにより結果が不正確であった。これらの点を克服するため、実験2として実験1と同様に体積の等しい「球・円錐・四角錐・円柱・直方体・立方体」の6種類(表1)の物体を3Dプリンターを用いて作成した(フィラメントとしてPLA樹脂を使用し、後述の実験3も同様である)。そのうえで物体の中心に穴をあけナイロン製のヒモを通すことによって回転を抑えた。実験1,2から、前面の形状が球形の時最も抵抗が小さく、次いで錐形、そして平面の順に大きくなるという結果を得ることができた。 角錐と円錐間・立方体と直方体間では共に、落下にかかる時間の差は前面投影面積の差以外による影響は極めて小さいと判断できた。この結果は、高等学校や大学等で用いられる力学や流体力学の参考書等に記載されている抵抗係数から算出できる抵抗の値の大小関係と一致する。また、実験2において落下をさせた6種類の形状のうち、双方とも先端は球形ではあるものの飛行機や新幹線等の先端等、日常生活の中で最も利用頻度が高く、形状のパターンを複数作成することが容易である円錐に焦点を当てた。そこで、頂角の大小変化に伴う抵抗係数の変化を「静止した物体に流体を当てる方法」、「終端速度から抵抗係数を求める方法」による2つの実験(それぞれ実験3,4とする)からそれぞれ算出する。実験3では3Dプリンターを用いて作成した中心角(頂角の半分)の異なる8種類(表2)の物体をそれぞればねばかりで吊るし、物体より一定距離離した位置から水を自由落下させ、その際物体にかかった圧力 をグラム重単位で物体にかかる力を計測し、そこから圧力を算出した。実験結果から抵抗係数を算出し、中心角の変化と対応するグラフを作成した(図1)。図1では中心角の増加に伴い抵抗係数(Cd)が指数関数的に増加する曲線に近似した。また、実験にて得られた抵抗係数を関数表示ソフト(FunctionView Ver 6.02)上に表示し 、近似する関数を推定し次の式を得ることができた。(θは中心角の大きさ(rad)を表す)Cd=0.36+1.2exp[4.2{θ-(π/2)}]この関数は指数関数であるため実際に使用する際の代入計算が煩雑であり、近似式の確度の確認がとれていない。計算の煩雑さを軽減し、標準偏差を用いてより確度の高い式の推定を行うために、対数を取り1次近似を行う。また、実験3で得られた抵抗係数の値は上記の参考書等に記載されている値よりも低い値となっていた。この原因としては落下させた水の出水口の面積が物体の前面投影面積よりも小さくなってしまったことや、流体の中で物体が移動する場合と停止した物体に流体を当てた場合では、かかる力に変化があるのではないかと考えられる。そのため、水中で物体を落下させる実験の実施を検討している。円錐に焦点を当てた次の実験4として、厚さが一様なコピー用紙(PPC用紙)を用いて頂角の異なる錐形(底面なし)を作成し、可能な限り同じ環境で(著者宅内同地点にて)地上2.5mの高さから落下をさせ、終端速度に確実に達している地上2.0m地点から着地までにかかった時間を計測する。計測した時間から終端速度を算出し、抵抗係数を求める。頂角が大きくなると抵抗を受け、まっすぐ落下させることが困難になっていくため、指向性を持たせるために先端に落下速度に影響しない適度な重量のおもりをつけることによって安定を図る。実験4 でも実験3と同様に算出した抵抗係数と頂角の変化を対応させたグラフを作成し、関数ソフトにて近似するグラフの推定を行う。本研究では実験から求めることしかできない抵抗係数を数式によって算出できるようにすることを目標としている。
著者
Masayuki Nakayama Hironori Kawakata Shiro Hirano Issei Doi
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

It is still vailed how elastic waves propagate in partially water-saturated unconsolidated media. Barrière et al. (2012, GJI) detected changes in amplitude and propagation velocity of transmitted waves through a 1-m long sand soil during water injection and drainage. However, the transmitted waves may not be stable, because they are generated by hitting a steel ball to granite plate. Also, the frequency band they analyzed was limited within 1.6-1.8 kHz. It is necessary to improve the experimental setup to estimate the spatial variations of the medium changes or to utilize the later phases of the transmitted waves, for example, reflection phases which are generated at the boundaries between the solid-fluid or fluid-fluid phases. In this study, we realized a system where we adopted a reproducible source (hereinafter, referred to as a shaker) and used a signal with a higher and broader frequency band of about an octave range in several ten kilohertz so that the wavelengths were longer than path lengths. In order to demonstrate the utility of our developed system, we here evaluated the stability of transmitted waves through a sand soil under dry or saturated conditions.We made a sand soil with the thickness of about 100 mm in a container (375 L×255 W×235 H mm3), which consisted of a permeable part (Wet part) and two impermeable parts (Impervious part and Dry part). We installed the shaker into Dry part to prevent change in the coupling between the shaker and the sand. 5 accelerometers were installed in the sand soil: one (ACref) was in the vicinity of the shaker as a reference, and the others (AC1-4) were aligned horizontally in Wet part. We designed a linear sweep signal from 1 kHz to 50 kHz as a transmitting signal. The transmitted waves were recorded at the sampling rate of 204.8 kHz, and we obtained hourly stacked waveforms. 4 Soil moisture meters were also installed to monitor water contents in the sand soil.We successfully recorded the transmitted waves at all of the accelerometers with high signal to noise ratio for the frequencies of the sweep signal. The fluctuations of spectral amplitude and phase for ACref were within ±0.5%, ±0.04 rad under both dry and saturated conditions, respectively. This shows that we succeeded in stably radiating the elastic waves from the source. Similarly, the fluctuations of spectral amplitude and phase for AC1-4 were within ±20%, ±0.2 rad under both dry and saturated conditions, respectively. According to the results of Barrière et al. (2012), the expected changes in amplitude and velocity may become about 5% and 15% during saturation or drying, respectively. Their observed velocity became lower than about 160 m/s, therefore, velocity change corresponding to our phase change become at most ~2% for analyzed frequencies. Therefore, these results suggested that our system enables us to sufficiently detect changes in amplitude and propagation velocity of transmitted waves through an unconsolidated porous medium while the degree of fluid saturation or water level changes.
著者
山下 太 福山 英一 下田 晃嘉 渡辺 俊
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (NIED) has been conducting friction experiments with meter-scale rock specimens using a large-scale shaking table. We have presented a result that the work rate at which the meter-scale rock friction starts to decrease is one order of magnitude smaller work rate than that of the centimeter-scale one (Yamashita et al., 2015, Nature). Mechanical, visual and material observations suggested that the difference of frictional properties between centimeter and meter scale is caused by slip-evolved heterogeneous stress concentration on gouge bumps generated with the frictional slip. We confirmed that numerical simulation based on the observations is fully consistent with the experimental results. However, it should be noted that the natural fault zone generally involves gouge layer in it. Therefore, it is crucial to investigate which the scale dependence of frictional property can be seen or not under such a condition. To answer this question, we conducted meter-scale gouge friction experiments using the large-scale shaking table. We used metagabbro blocks from India as driver blocks. The contacting area was 1.5 m long and 0.1 m wide. As the simulated gouge, we ground metagabbro blocks by the jet mill, so that the average diameter of the gouge particle is approximately 10 μm and the maximum diameter of that is less than 200 μm. We roughened the fault surface by sandblasting after polishing the surface so that the fault surface can grip the gouge particles. We distributed the simulated gouge with a thickness of 3 mm on the fault and then sheared at a constant or step-change velocity after applying normal stress up to 6.7 MPa at maximum. We will present basic experimental results at the meeting.
著者
福山 英一 山下 太 徐 世慶 溝口 一生 滝沢 茂 川方 裕則
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

We have been conducting meter-scale rock friction experiments using the large-scale shaking table at NIED since 2012. We have completed 5 series of experiments, each of which included about 20 experiments. One of the purposes of these experiments was to investigate the spatial scaling of the friction since the friction laws we use today were derived from centimeter-scale experiments. Another purpose was to monitor rupture evolution and local stress field using near-fault high-resolution measurements. In this talk, we will showcase some key results derived from our rock friction experiments.Regarding the spatial scaling of friction, we recognized that the local frictional strength was not uniform on the fault and its spatial variation had a significant impact to the macroscopic frictional strength (Yamashita et al., 2015). In addition, the scaling behavior seems different between rock-on rock friction and that with a gouge layer. In the rock-on-rock case, gouge generation changes the strength in space. But if the gouge layer already exists, strength depends on the rearrangements of the gouge particles (Yamashita et al., 2018).Regarding rupture evolution on laboratory fault, we pointed out a previously overlooked difficulty in direct measuring the two-dimensional (2D) evolution of the rupture front. Under very special condition, we could overcome this difficulty by installing 2D strain gauge arrays inside the rock sample. We found that the free surface effects at both edges of the fault had a significant effect on rupture nucleation (Fukuyama et al., 2018). In addition, the strain behavior close to the fault edge might not be the same as that on the fault, even if the sensors were installed within 10 mm away from the fault. Using numerical simulations, we could reproduce the observed strain data by extrapolating a simple friction behavior on the fault surface, suggesting that the way of deriving the friction law needs to be revised (Xu et al., 2019).We also discovered some interesting fault behaviors during our experiments. By changing loading rate or fault surface condition, we could frequently reproduce super shear rupture events in the laboratory, which were thought to be rare in nature. By investigating the cohesive zone length of the rupture front in the supershear regime, we showed that the experimental results could reach a good match with one of the theoretical predictions Fukuyama et al. (2017). Moreover, we observed slow slip events with supersonic propagation velocity during some experiments (Fukuyama et al., 2019), whose interpretation is still underway.The above results bridge the gap between the traditional small-scale lab experiments and the field observations, and can be useful for improving our understandings of fault rheology and earthquake physics.
著者
泉 祐輔
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

神奈川県三浦半島最南端に位置する城ヶ島は、過去に繰り返し起きた地震で隆起して海岸段丘を形成している。段丘面上には複数のポットホールが見つかる。そのうちの1つについて、1703年元禄関東地震と1923年大正関東地震による地殻変動の記録、および現地調査で得られた穿孔貝の生痕化石の記録から、ポットホールの形成期間を考察した。その結果、対象のポットホールは、元禄関東地震から大正関東地震までの約220年間で形成されたことが明らかになった。
著者
美山 透
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

教育の中で海洋が取り扱われる意義は、生活をとりまく環境の認識、各国と共有される資源への意識(漁業、海洋汚染など)、自然災害への理解(津波、高波、エルニーニョ、地球温暖化など)などが挙げられる。ここでは、これらの話題が高校教育に取り上がられているか、適切に説明されているかについて、「地理A」(6冊)、「地理B」(3冊)、「科学と人間生活」(5冊)、「地学基礎」(5冊)、「地学」(2冊)レビューした。講演者は専門が海洋物理学であり、その視点が中心になる。同じ教科でも出版社により個性があるものの、要旨では教科毎の概観を記す。 「地理B」は上記した話題を多かれ少なかれ網羅している。全教科書に海流図とともに、海流に関する概説がされている。海流の成因についても説明が試みられているが、その説明は危うい。例えば、3冊中の2冊で「吹送流」という言葉が出てくるが、いずれも誤用である(誤例、「親潮や黒潮も吹送流の一つである」)。「吹送流」は高度な内容と考えられているのか「地学基礎」では導入されておらず、「地学」になって正しく導入されている。地理では特有の用語が使われる例があり、黒潮に「日本海流」という別名があるのはその例である(2冊で例、1冊にはないが同じ出版社の地図帳に例)。地学の教科書では「地学基礎」の1冊の例外を除けば「日本海流」は使われていない。 「地理A」は「地理B」に比べると海洋への記述が少なく、海流の紹介はほぼ西岸海洋性気候に関連づけるだけのためにある。世界の漁業に関する記述も無くなる。「地理B」では全教科書にエルニーニョが取り上げられているが、「地理A」では6冊中2冊のみである。 「科学と人間生活」は海の取り扱いは小さく、海流図が載っている教科書は5冊中で全球海流図が1冊、日本付近の海流図が1冊のみに取り上げられている。エルニーニョが取り上げられている教科書はない。地球温暖化は扱い自体が他科目に比べて比較的消極的で、1冊のみに海面上昇の可能性が触れられていた。 「地学基礎」は、海流を取り上がるだけでなく、その成因の説明が求められるが、「地学」ほど高度な概念を使えないという制約のある教科である。そのためか、説明の質が教科書ごとに大きく違う。同じ出版社でも、「地学」では「地球の自転による転向力のため海水の流れは風の向きとは一致せず」から解説を始めているにもかかわらず、「地学基礎」では(海流は「平均的に見ると風の向きとよく対応する」という解説にしている例も見られた。 「地学」の2冊は、渦度などの概念が使えない中で、海流の成因やエルニーニョの説明にベストを尽くしている。その中でも、海流図や、海流の成因の説明のアプローチ、地球温暖化の積極性に違いがあり、2冊には個性の違いがある。
著者
近藤 誠 佐藤 陽祐 稲津 將 勝山 祐太
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

This study evaluated microphysical schemes implemented in a meteorological model SCALE (Nishizawa et al. 2015; Sato et al. 2015) targeting midwinter snowfall events in Hokkaido. Cloud microphysical schemes of a 2-moment bulk scheme (Seiki and Nakajima 2014: SN14), a 1-moment bulk scheme of Roh and Satoh (2014: RS14), and that of Tomita (2008: T08) were evaluated with the simulation for events, based on ground-based measurement by disdrometer. Our analysis elucidated that SN14 successfully simulated the measured relationship between the particle size and terminal velocity distribution (PVSD). On the other hand, T08 overestimated the frequency of graupel with fast fall velocity, and underestimated particle diameters. RS14 also overestimated the frequency of the graupel, but reproduced the fall velocity of graupel particles. Sensitivity experiments indicated that RS14 scheme can be improved by the modification for the slope parameter, mass-diameter(m-D) relationship, and PVSD relationship of graupel.ReferencesNishizawa, S., H. Yashiro, Y. Sato, Y. Miyamoto, and H. Tomita, 2015: Influence of grid aspect ratio on planetary boundary layer turbulence in large-eddy simulations. Geosci. Model Dev., 8, 3393–3419, https://doi.org/10.5194/gmd-8-3393-2015.Roh, W., and M. Satoh, 2014: Evaluation of precipitating hydrometeor parameterizations in a single-moment bulk microphysics scheme for deep convective systems over the tropical central pacific. J. Atmos. Sci., 71, 2654–2673, https://doi.org/10.1175/JAS-D-13-0252.1.Sato, Y., S. Nishizawa, H. Yashiro, Y. Miyamoto, Y. Kajikawa, and H. Tomita, 2015: Impacts of cloud microphysics on trade wind cumulus: which cloud microphysics processes contribute to the diversity in a large eddy simulation? Prog. Earth Planet. Sci., 2, https://doi.org/10.1186/s40645-015-0053-6.Seiki, T., and T. Nakajima, 2014: Aerosol effects of the condensation process on a convective cloud simulation. J. Atmos. Sci., 71, 833–853, https://doi.org/10.1175/JAS-D-12-0195.1.Tomita, H., 2008: New microphysical schemes with five and six categories by diagnostic generation of cloud ice. J. Meteorol. Soc. Japan, 86A, 121–142, https://doi.org/10.2151/jmsj.86A.121.
著者
尾方 隆幸
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

日本の地球惑星科学教育は,学校では主に「地学教育」「地理教育」として行われ,博物館やジオパークなどでは生涯教育としても実践されている.それらの教育現場で使用されている教材は,文部科学省検定済教科書に依拠していることが多いが,地球惑星科学の成果が適切に反映されていない内容も散見される.未来の地球惑星科学教育を構築するためには,複数領域を横断する観点から,教育内容・教材およびカリキュラムを議論することが必要である.
著者
石村 大輔 岩佐 佳哉 高橋 直也 田所 龍二 小田 龍平 梶井 宇宙 松風 潤 石澤 尭史 堤 浩之
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

2016年熊本地震以後に、布田川断層帯および日奈久断層帯において精力的に古地震調査が行われてきた。我々の研究グループでは、2016年熊本地震で出現した副次的な地表地震断層の過去の活動について明らかにするために、2017年には阿蘇カルデラ内の宮地トレンチ、2018年には出ノ口断層上の小森牧野トレンチを実施してきた。その結果、2-3千年という短い間隔で2016年に活動した断層が繰り返し活動していることが明らかとなった(石村ほか,2018,2019)。これは2016年熊本地震同様に、過去にも布田川断層の活動に際して、周辺の広い範囲に断層が出現したことを示唆する。一方、布田川断層の活動履歴については、多くのトレンチ調査が行われているが(熊原ほか,2017;岩佐ほか,2018;白濱ほか,2018;堤ほか,2018;上田ほか,2018,遠田ほか,2019,など)、それらの多くは鬼界―アカホヤ火山灰(7.3 ka;町田・新井,2003)以降に複数回活動したことを示すのみで、個々のイベントの年代が十分に制約できていない。また、トレンチ調査場所も、阿蘇カルデラ内や益城町に向かって分岐する断層上といった地点に偏っており、最も変位量の大きかった布田川断層の中央部に位置する布田周辺での活動履歴はよくわかっていない。そこで本研究では、布田川断層中央部に位置する布田地区でトレンチ調査を行なった。 掘削地点は、布田川断層と布田川が交わる西原村布田地区である。布田川断層と布田川が交わる地点では、2016年熊本地震で出現した大露頭の記載を石村(2019)が行なっており、高遊原溶岩を数10 m上下変位させる布田川断層の主断層と10 m前後上下変位させる副次的な断層が確認されている。そこから約50 mほど東の林内で5つのトレンチを掘削した。トレンチ掘削地点では、2条の地表地震断層が確認されており、南側のものは約10 cmの南落ちを伴う左ステップする開口亀裂、北側のものは30-40 cmの南落ちを示す断層崖であった。地表地震断層の変位様式と布田川の露頭で認められた断層との位置関係から、南側が主たる右横ずれ断層で、北側が副次的な正断層であると考えられる。トレンチは、南側で2箇所、北側で3箇所の掘削を行なった。 トレンチ調査の結果、すべての壁面で2016年の断層活動に加えて、過去の活動が認められた。特にK-Ah以降には少なくとも3回の断層活動(2016年イベント含む)が認められ、高い活動度を示した。現在、放射性炭素年代測定を実施中であり、発表ではそれらを加えて、より詳細な断層活動の議論とその時期について示す。
著者
石村 大輔 山田 圭太郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Long-term paleo-seismic history is significant for the understanding of earthquake mechanisms and the assessment of earthquake and related hazards (e.g., tsunami). Especially, tsunami deposits research progressed after the devastating large tsunamis (e.g., the 2004 Indian Ocean earthquake and 2011 Tohoku-oki earthquake) and paleo-tsunami deposits have been identified all over the world. In the terrestrial environment, it is generally difficult to find an appropriate site for revealing the long-term paleo-tsunami history and such appropriate sites were limited due to landform development and artificial modification. It is true along the Pacific coast area in the Tohoku region, northeast Japan. However, the authors found the most appropriate site for the reconstruction of long-term paleo-tsunami history on the Sanriku Coast. This is the Koyadori site, where organic fine sediments accumulated continuously since Towada-Chuseri (To-Cu) tephra (ca. 6 ka; Mclean et al., 2018) and sediments supply from surrounding are small except for tsunami deposits. In this study, we show the ages of paleo-tsunami deposits since 6 ka and their subsurface distribution in Koyadori lowland based on dense and many excavation and drilling surveys. From 2012 to 2015, we conducted trench excavation survey (Ishimura and Miyauchi, 2015), outcrop survey (Ishimura and Miyauchi, 2015), drilling survey (Ishimura et al., 2014), short Geoslicer survey (Ishimura et al., 2015), and long Geoslicer survey from 200 m to 400 m distance from the coastline and used these samples to this study. In the laboratory, we conducted the radiocarbon dating, tephra analysis, μXRF analysis, and gravel roundness analysis for lateral correlations of sediments. In this study, we mainly used five long Geoslicer samples. All samples reached To-Cu tephra and, that is, they record a continuous 6 thousand years history. From these samples, we confirmed that there are 14 tsunami deposits including the 2011 event after To-Cu tephra and the average recurrence interval is estimated to be 300-400 years. Subsurface distribution of them was revealed by sedimentary facies, geochemical signature, gravel roundness, and radiocarbon dates of long Geoslicer, short Geoslicer, and drilling cores. As a result, the most appropriate site in Koyadori for tsunami deposits research is limited only 300 m to 350 m area distance from the coastline. On the other hand, in the seaside area behind the 5-m-high beach ridge (200 m to 300 m distance from the coastline), large erosion occurred a few times after To-Cu tephra and these erosions were not expected from the present topography. This indicates that we need to care buried topography and to conduct a multi drilling survey. Takeda et al. (2018) pointed out a similar thing. This study gives us clues for tsunami deposits identification and accurate lateral correlation of sediments. Dense drilling surveys and/or continuous outcrops tell us an accurate number of tsunami deposits. Tephra layers give us robust ages and correlative layers in sediments. A geochemical signature can be used to correlate background sediments and gravel roundness is useful to identify tsunami deposits and correlate them. Radiocarbon dating gives us confirmation of the lateral correlation of sediments. We thought that this is an efficient procedure for paleo-tsunami deposits research.
著者
濱田 洋平 谷川 亘 山本 裕二 浦本 豪一郎 村山 雅史 廣瀬 丈洋 多田井 修 田中 幸記 尾嵜 大真 米田 穣 徳山 英一
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

⾼知県⼟佐清⽔市⽖⽩海岸付近の海底(水深5-10m)には、数十基の大型の石柱(長さ1m)が横たわっている。しかし、石柱が人工的に作られたものなのか、自然の岩石ブロックなのか、そしてその起源ついては不明である。石柱が確認された爪白地区は、昔から南海トラフ地震による津波と台⾵・⼤⾬による⽔害に幾度も襲われているため、海底の石柱には自然災害の痕跡が残されている可能性がある。また、⾼知県各地の沿岸部には684年の⽩鳳地震で⼀夜にして沈んだとされる村(⿊田郡)の伝承が伝わっており、石柱と「黒田郡」との関係性にも期待がもたれる。そこで本研究では、石柱の幾何学的特性と岩石物理鉱物学的な特性を測定し、起源の推定につながる可能性の高い近傍の岩石および石造物についても同じ特性を測定した。各特性の類似性を評価し、海底石柱の起源の推定を行った。一連の分析の結果、海底の石柱は三崎層群竜串層(中新統)を起源とし、現在は閉鎖している三崎地区の採石場から採取、加工され、爪白地区で石段や家の基礎などの石造物として利用された可能性が高いことがわかった。さらに、爪白地区で利用されていた石柱は1707年の宝永地震による津波により海岸まで流された可能性が高いことがわかった。本研究は、破壊分析(間隙率・密度・XRD)と非破壊分析(X線CT・pXRF・帯磁率測定)の両手法を用いて実施している。将来における水中考古遺物の保存を念頭に置いた場合、水中における非破壊分析手法の確立が喫緊の課題となる。本研究ではX線CT画像解析による石柱の表面形状の特徴とpXRFによる元素濃度比の測定結果を用いたPCA解析が起源特定に大きな貢献をしたが、水中でも室内分析と同様の精度でデータを取得する必要がある。一方で、石柱が水中に水没したプロセスを知る上での重要な手がかりとなる年代評価については手法と精度に問題点があることがわかった。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。
著者
村山 雅史 谷川 亘 井尻 暁 星野 辰彦 廣瀬 丈洋 富士原 敏也 北田 数也 捫垣 勝哉 徳山 英一 浦本 豪一郎 新井 和乃 近藤 康生 山本 裕二 黒田郡 調査隊チーム一同
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

黒田郡遺構調査の目的で,高知県浦ノ内湾の最奥部(水深10m)から採取した堆積物コアを解析した。当時の海洋環境や生物相の変遷履歴も復元することもおこなった。高知県土佐湾の中央部に位置する浦ノ内湾は,横浪半島の北側に面し,東西に細長く,12kmも湾入する沈降性の湾として知られている。高知大学調査船「ねぷちゅーん」を用いて、バイブロコアリングによって4mの堆積物コアが採取された。採取地点は,周囲からの河川の影響はないため,本コア試料は,湾内の詳細な環境変動を記録していると考えられる。採取されたコア試料は,X線CT撮影,MSCL解析後,半割をおこない肉眼記載や頻出する貝の採取,同定をおこなった。 堆積物の岩相は,olive色のsity clayであり,全体的に多くの貝殻片を含む。コア上部付近は,黒っぽい色を呈し強い硫化水素臭がした。また,コア下部に葉理の発達したイベント堆積物が認められ,その成因について今後検証する予定である。
著者
谷川 亘 徳山 英一 山本 裕二 村山 雅史 田中 幸記 井尻 暁 星野 辰彦
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

日本各地には巨大災害により沿岸部の集落や構造物が水没した記録や伝承が残されている。例えば1498年の明応東海地震による浜名湖南部集落の水没、天正13年の地震に伴う長浜市琵琶湖湖岸集落の水没、磐梯山の噴火に伴う檜原宿の水没が挙げられる。高知県内でも684年に発生した白鳳南海地震により集落が水没した伝承が残されており、その集落は「黒田郡」という名称で市民に知れ渡っている。この黒田郡伝承を明らかにするために、過去に幾度にもわたり調査が実施されてきた。しかし、調査記録が不明瞭な点が多く、黒田郡の謎にどこまで迫れたのかわからない。そこで2013年から高知大学と海洋研究開発機構が中心となって、黒田郡の調査が始まった。2019年までに高知県内沿岸部の6地点(南国市十市、野見湾、浦ノ内湾、興津、爪白、柏島)の調査を実施してきた。残念ながらこれまでのところ黒田郡の痕跡を示す証拠は得られていない。一方、本研究は海底の人工物と構造物を自然災害の記録を残す物証として見立てた地球科学的な分析アプローチであるため、これまでの発想にない発見が得られつつある。そこで本発表では、研究成果が出つつある3地点(野見湾・爪白・柏島)について調査概要を紹介する。須崎市野見湾の南部に位置する戸島は弥生時代の遺跡があり、島北東部海底で井戸を見たという報告が昔から寄せられている。そのため、野見湾は高知県内でも黒田郡の有力候補地として知られている。本研究では、海底地形調査により戸島北東部において縦横200m幅にわたる台地を確認することができた。海底台地は非常に平坦で、海食台の可能性をうかがわせることから、海食台の形成過程から地震性沈降史を評価できる可能性がある。一方、土佐清水市爪白海岸海底には人工的に加工された跡が残る石柱が多く横たわっている。本研究により、この石柱は近郊の爪白地区で石段や家の基礎として古くから使用されていた石造物であることがわかった。さらに、石柱が陸上から海底に運搬されたプロセスに南海地震津波と水害が関与している可能性があることがわかった。幡多郡柏島の北部に石堤を想定させる巨石が積まれた壁状構造物が海底にあることが知られている。野中兼山が整備した陸上の堤(兼山堤)とほぼ並行に位置しているため、兼山堤との関連性もうかがわせる。しかし、年代同定と鉱物分析からこの構造物は自然でできたビーチロックである可能性が高いことがわかった。ビーチロックは潮間帯で形成されるため、ビーチロックの年代分析から沈降履歴を評価できる可能性がある。本研究は、水中構造物と水中遺物を対象にした調査が、地震や水害などの歴史自然災害の履歴の評価につなげられる可能性を示唆している。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。参考文献谷川亘ほか、2016、黒田郡水没伝承と海底遺構調査から歴史南海地震を紐解く:レビューと今後の展望、歴史地震、31、17-26
著者
廣瀬 丈洋 濱田 洋平 谷川 亘 神谷 奈々 山本 由弦 辻 健 木下 正高
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Pore fluid pressure is important for understanding generation of both megathrust and slow earthquakes at subduction zones. However, its occurrence and quantitative constraints are quite limited. Here, we report the estimate of pore pressure by the analysis of transient upwelling flow from the borehole, that was observed while drilling the underthrust sediments in the Nankai Trough off Cape Muroto during IODP Expedition 370. In order to interpret the observed velocity and duration of the flow, we have solved a radial diffusion equation to estimate pore pressure before penetrating an aquifer. The calculation yields that the pore pressure exceeded ~3 MPa above hydrostatic and the size scale of the aquifer is several hundred meters, in case of an aquifer permeability of 10-13 m2. Our result suggests that the underthrust sequence is currently composed of patchily-distributed high-pressure aquifers.In the neighborhood of the drilling site, very low frequency (VLF) earthquakes have been reported (e.g., Obara and Kato, 2016). Seismic survey has suggested a possible linkage between high pore pressure zone and the distribution and generation of slow earthquakes (e.g., Kodaira et al., 2004). Furthermore, high temperature and pressure friction experiments by Sawai et al. (2016) suggested that a transition from stable to unstable slip behavior appears with increasing pore fluid pressure that is a prerequisite for the generation of slow earthquakes. Our result implies that the slow earthquakes at off Cape Muroto can be attributed with slip behaviors along not only décollement but also the patchily distributed high-pore-pressure aquifers in the underthrust sediments.
著者
川久保 晋 東 龍介 日野 亮太 高橋 秀暢 太田 和晃 篠原 雅尚
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

北海道襟裳沖のプレート境界浅部はスロー地震活動が活発な海域として知られ,超低周波地震(Very Low Frequency Earthquake, VLFE)は2003年十勝沖地震以降(Asano et al., 2008),低周波微動は日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の運用が始まった2016年以降(Tanaka et al., 2019; Nishikawa et al., 2019),それぞれの活動の様子が把握されてきた.とりわけ2016年以降にはS-netによってVLFEの活動に先駆けて半日から4日前に微動活動が始まることが明らかとなった(Tanaka et al., 2019).一方,VLFEの活動範囲は2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)前後で変化していないように見えることから,微動活動も東北沖地震以前より発生していた可能性がある.そこで本研究は,北海道襟裳沖における東北沖地震以前の微動の検出とその活動様式を明らかにすることを目的とする. 本研究では,2006年10月25日から2007年6月5日に設置されていた自己浮上式海底地震観測網42点の記録から,エンベロープ相関法(Ide, 2010)を用いて微動を検出し震源決定を行った.本研究では観測点間のエンベロープ波形の最大相互相関係数が0.6を超える観測点ペアが10組を超えた場合にイベントを検出したとみなした.震源決定には相互相関係数が最大となるときの時刻差を観測走時差として用い,この走時差を最もよく説明する震源をインバージョンによって求めた. 解析の結果,検出された全イベント10445個のうち,継続時間20秒以上かつマグニチュードが3以下で,震央誤差と時間残差が小さい微動は989個見つかった.検出された微動の震源は海溝軸から一定の距離に分布しており,深さの推定誤差が10 km未満と小さいイベントは沈み込む太平洋プレートの境界面に集中して分布する様子がみてとれた. 観測期間中に微動とVLFEの活動が共に活発だった時期(活動期)は2006年11月,2007年3月,そして2007年5月の3度あり,それぞれの期間で微動の時空間的な特徴に着目した.1つ目の活動期(2006年11月12日~19日)には微動の活動域は16–23 km/dayで北東に移動していたと推定された.ただし,11月15日に千島海溝中部で発生した巨大地震(Mw 8.3, Lay et al., 2009)の活発な余震活動の影響で微動の検知能力が低下した可能性がある点や,設置されていた地震計が全観測網の南側半分のみであった点に留意する必要がある.2つ目の活動期(2007年3月15日~19日)には微動の活動域は25–30 km/dayで南西に移動していたと推定された.3つ目の活動期は2007年5月10日のみで終息した小規模なものであり,先の活動期とは違い地震発生場所の移動は認められなかった. これら3つの微動活動とAsano et al. (2008)のVLFE活動を比較すると,両者の活動時期はおおよそ一致し,詳しく見ると微動がVLFEに対して半日~4日半ほど先に活動を開始する傾向があることが分かった.こうした関係性は東北沖地震後の微動・VLFE活動(Tanaka et al., 2019)に共通する.また,検出した微動全ての震央分布を東北沖地震後にS-netで検出された微動(Nishikawa et al., 2019)と比較すると,両者は空間的にほぼ一致しており,東北沖地震前後で分布域に変化はなかったと考えられる.このような2006年から2007年と現在の微動・VLFE活動の共通点は,東北沖地震によってこの領域におけるスロー地震活動の振る舞いに影響を及ぼさなかったことを示している.