著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016-05-01 (Released:2016-08-17)
参考文献数
45

3種の日本新産のチャツムタケ属菌,Gymnopilus crociphyllus (オオチャツムタケ),G. dilepis (ムラサキチャツムタケ)およびG. suberis (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.
著者
草本 真実 白水 貴 保坂 健太郎 細矢 剛 Kusamoto Mami Shirouzu Takashi Hosaka Kentaro Hosoya Tsuyoshi
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要 = The bulletin of the Graduate School of Bioresources Mie University
巻号頁・発行日
vol.47, pp.1-11, 2021-12

Auricularia specimens deposited in the National Museum of Nature and Science, Japan, were observed to reexamine their species identification based on updated taxonomic criteria, and to verify the taxonomy and distribution of Auricularia spp. in Japan. Four of the ten specimens previously identified as A. auriculajudae were reidentified as A. americana (1), A. cornea (1), and A. villosula (2) based on morphological criteria such as medullae, abhymenial hairs, and basidiospores. The remaining six specimens could not be identified at the species level due to the lack of distinguishing morphological characteristics. Two of the five specimens previously considered A. minor were identified as different species due to basidiospore size discrepancy, but the remaining two specimens and the type specimen were in poor condition, and their basidiospores could not be properly observed. Three of the nine specimens previously identified as A. polytricha were reidentified as A. cornea based on morphological criteria. The remaining six specimens were not identified as A. polytricha. The type specimens of A. polytricha f. leucochroma and A. polytricha f. tenuis were in poor condition, and their basidiospores could not be properly observed. Reexaminations of existing specimens based on recent taxonomic criteria will contribute to updating the taxonomy and distribution of Auricularia spp. in Japan.
著者
牧 輝弥 保坂 健太郎 北 和之 石塚 正秀 渡辺 幸一 五十嵐 康人 當房 豊
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

氷雲の形成を促す「氷晶核(氷核活性を持つ粒子)」の発生源は不明であり,その粒子密度は気候変動予測での不確定因子となる。その為,近年,分析・観測技術の向上に伴い検出可能となった大気浮遊微生物(バイオエアロゾル)の氷核活性へ学術的関心が集まるようになった。特に,微生物活性が高い森林からは氷核活性微生物が頻繁に放出されると推測されている。しかし,微生物の森林からの放出量は定かでなく,森林が氷晶核の主要発生源とは断定できない。そこで,本研究では,観測機器を完備した森林観測サイトにおいて,地上観測と高高度大気観測を併用することで,森林地表から高高度までの浮遊微生物の鉛直分布を明かとし,氷核活性微生物の森林からの放出量を追究しつつある。2019年度は,筑波実験植物園において,森林内と森林上空を浮遊する大気粒子を,ヘリコプターと建物屋上を併用して捕集した。大気粒子から微生物のゲノムDNA直接抽出し(培養を経ない),解析した結果,森林内には,数百種以上の細菌と真菌が浮遊しており,真菌(特にキノコ)が樹冠上から上空にまで浮遊し垂直分布していることが明らかになった。大気粒子試料から,20種程度の真菌と細が分離培養され,その内,3種で高い氷核活性が認められたため,氷核活性微生物が森林外へと放出されている強力な手がかりが得られた。今後,定量PCRによる氷核活性微生物の定量に取り組む。こうした風送微生物に関する研究成果への学術的評価は高く,大気科学雑誌Atmos. Environ.やエアロゾル研究(牧代表主著)に論文発表された。また,充実した研究成果から導き出される「微生物・キノコと雲形成の関連性」は社会的注目度も高く,科学テレビ番組(例:林先生の初耳学:MBSテレビ,ガリレオX:BSフジ)に取りあげられ,研究紹介執筆(空飛ぶ微生物ハンター:汐文社)や招待講演の依頼を受ける機会に恵まれた。
著者
保坂 健太郎
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究 = Ogasawara research (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
no.44, pp.137-144, 2018-07

南硫黄島から2017年に採集されたきのこ類についてリスト化するともに子実体写真で紹介する。合計12標本(2門2綱4目9科11属11種)が採集され、全て腐生菌もしくは木材腐朽菌であった。多くは南硫黄島に自然分布する種であると思われる。
著者
糟谷 大河 中島 結里乃 河原 栄 保坂 健太郎
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.15-21, 2023-05-01 (Released:2023-07-22)
参考文献数
23

日本新産種Bryoperdon acuminatum(モリノコダマタケ,新称)を,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.子実体が小型,卵形~円錐形で無性基部を欠く点,担子胞子がほぼ平滑~わずかに疣状突起に覆われる点,外皮の刺が球形,類球形,卵形あるいは棍棒形の偽柔組織からなる点が本菌の特徴である.核rDNA塩基配列の分子系統解析により,日本およびヨーロッパ産B. acuminatumの同一性が支持された.
著者
糟谷 大河 丸山 隆史 保坂 健太郎
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.5-15, 2022-05-01 (Released:2022-07-07)
参考文献数
31

日本新産の2種のザラミノシメジ属菌,Melanoleuca alboflavida(アシボソザラミノシメジ,新称)およびM. griseobrunnea(ネズミザラミノシメジ,新称)を,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.細長く直立し,軟骨質で白色を帯びる柄と,フラスコ形から紡錘形の側シスチジアおよび縁シスチジアがM. alboflavidaを特徴づける形質である.一方,M. griseobrunneaはかさが淡灰褐色を帯びる点,柄の基部の肉が淡灰色から褐色を帯びる点,そして縁シスチジアが長首フラスコ形で結晶を有する点により特徴づけられる.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析により,これら2種の同定結果が支持されたとともに,M. alboflavida はMelanoleuca亜属に,M. griseobrunneaはUrticocystis亜属に位置することが示された.
著者
糟谷 大河 塙 祥太 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.jjom.H26-10, 2015-11-01 (Released:2018-01-27)
参考文献数
23

日本新産のホウライタケ型きのこ,Crinipellis dipterocarpi f. cinnamomea (新称:シナモンニセホウライタケ) について,千葉県の照葉樹林内地上のタブノキおよびスダジイの落葉落枝上より採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNA のITS 領域を用いた分子系統解析の結果,日本,タイ,インドネシアおよびマレーシア産のC. dipterocarpi f. cinnamomea は最節約法のブートストラップ値で強く支持される同一のクレードに位置した.この解析により,日本および東南アジア産のC. dipterocarpi f. cinnamomea は同一の分類群であることが支持された.
著者
柿嶌 眞 保坂 健太郎 阿部 淳一ピーター 大村 嘉人
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故から4年間、自然界における放射性物質の動向を解明するため、茨城県(つくば市を中心に)、福島県、栃木県、宮崎県、千葉県などできのこ類、地衣類、植物寄生菌類の放射能の生物モニタリングを行なった。その結果、きのこ類では腐生性よりは菌根性の方が放射能が高く、地衣類ではきのこよりも平均的に10倍高く、事実上放射性セシウムのミニホットスポットである。植物寄生菌類では特にサツキツツジもち病菌の罹病葉が健全葉より2倍高いことが明らかになった。一般的な傾向として事故後2年まで菌類や地衣類の放射性セシウムの放射能は徐々に減少したが、現在は、放射能はほぼ安定し、減少率が低い。
著者
糟谷 大河 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-01, (Released:2017-05-31)

日本新産のチャツムタケ属菌,Gymnopilus decipiens (ヤケノヒメチャツムタケ),について,北海道で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.北海道産 G. decipiens は火山性ガスを含む高温の水蒸気が噴出する噴気孔周辺に発生し,子実体は小型で温和な味であることが特徴である.分子系統解析の結果, 日本産標本の核 rDNA の ITS 領域は,ロシア( ヤクーツク) 産 G. decipiens のものと完全に一致する塩基配列を有し,本菌がシベリアから北海道の亜寒帯にかけて連続的に分布することが示された.
著者
北林 慶子 都野 展子 保坂 健太郎 矢口 行雄
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.69-76, 2016-05-01 (Released:2016-08-17)
参考文献数
28

双翅目幼虫は子実体内に多数かつ頻繁に観察されるがその生態は,ほとんど研究されておらず,双翅目幼虫は胞子散布者として機能し得るか否か不明である.本研究では,ハラタケ型子実体内部に生息する双翅目幼虫の生態について,幼虫の子実体内部での摂食対象組織と幼虫による消化が胞子に与える影響を消化管内胞子の外部形態を詳細に観察することによって調べた.ハラタケ亜門4目16科23属114個の子実体から幼虫を3798個体採集した.解剖した幼虫172個体のうち,103個体の消化管内に胞子が存在した.顕微鏡下で消化管内胞子の外部形態に変化は確認されず,トリパンブルー染色においても,対照群胞子より消化管内胞子は6~11%損傷率が高かったが80%程度の胞子は無傷であった.以上より,双翅目昆虫の幼虫による子実体中での胞子摂食が高頻度で起きていること,幼虫の消化管内の胞子の多くはほとんど物理的損傷を受けていないことが示された.
著者
糟谷 大河 下保 有紀子 下保 敏和 下保 晴稜 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-91, 2016-12-16 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13

本州より初めて発見された海浜生の担子菌類であるスナハマガマノホタケ Typhula maritima について,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.本菌は新潟県,富山県および石川県の海浜のケカモノハシ Ischaemum anthephoroides およびチガヤ Imperata cylindrica 群集付近で採集された.核rDNA のITS 領域を 用いた分子系統解析の結果,日本 (本州および北海道) 産のスナハマガマノホ タケは最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.これらの結果は,スナハマガマノホタケの海水に浮く菌核が海流によって長距離分散するという考えを支持している.
著者
折原 貴道 池田 枝穂 大和 政秀 保坂 健太郎 前川 二太郎 岩瀬 剛二
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2009 (Released:2009-10-30)

きのこを形成する菌類の中でも, 被実性の子実体を形成し, 胞子の射出機構を欠失している点が特徴であるシクエストレート菌 (sequestrate fungi) の分類学的および系統学的研究は日本国内において特に遅れており, 今後の研究により多くの新分類群や未知の系統が明らかになることが期待される. 国内のシイ・カシ類樹下に発生するシクエストレート担子菌コイシタケはHydnangium carneum の学名が与えられているが, オーストラリアに分布しユーカリと特異的に菌根を形成するH. carneum とは, 形態的・生態的特徴のいずれも大きく異なる. 演者らは, コイシタケおよびブナ・ミズナラ樹下に発生し, 形態的に本種と酷似する未報告種(仮称:ミヤマコイシタケ)の形態学的評価および核リボソームDNAのITS領域を用いた系統解析を行った. 分子系統解析の結果, コイシタケはH. carneum とは遠縁である, ベニタケ属の系統内で分化したシクエストレート菌であることが示され, 形態的にも子実層部のシスチジアなど, ベニタケ属菌に特徴的な構造が確認された. ベニタケ属の系統内では複数のシクエストレート菌の系統が分化していることが知られているが, コイシタケおよびミヤマコイシタケはそれらの既知系統のいずれにも属さなかった. また, コイシタケはミヤマコイシタケと種レベルで異なることが分子系統解析結果からも支持された. 両種は肉眼的には酷似しているが, 担子胞子や担子器の形態など複数の顕微鏡的特徴に差異があることも明らかになった. ミヤマコイシタケの担子胞子はベニタケ属菌に特徴的なアミロイド反応を呈する一方, コイシタケの担子胞子は非アミロイドであることから, 両種を含む系統ではシクエストレート菌への系統進化が起こった後に担子胞子のアミロイド反応が消失したと考えられる. また, 両種の分布状況に基づく生物地理学的考察も行う.