著者
上間 陽子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.87-108, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

本稿は,風俗業界で働く若年女性たちの生活・仕事の中で直面する種々のリスクへの対処の仕方,その対処において果たす彼女たちの人間関係ネットワークの機能,そのネットワークの形成の背景,特にネットワーク形成において学校体験のもつ意味を捉えることを課題とした。 本稿は,筆者らが取り組んでいる,沖縄の風俗業界とその界隈で働く若者への調査の対象者の中から特に2人の女性(真奈さん・京香さん)を取り上げ,それらの比較対照を通じて上記の課題を追究した。2人は,中学校卒業時点で学校社会のメインストリームから外れ,地元地域からも排除されていた点で共通する。だが,真奈さんは中学校時代不登校であり,同世代・同性集団に所属した経験をもたず,多少とも継続的な人間関係は恋人とのそれに限られていたのに対して,京香さんは中学時代地元で有名なヤンキー女子グループに属し,その関係は卒業後も続き,困難を乗り切り情緒的安定を維持する上での支えとなってきた。そして京香さんが仕事場面でのリスクに対処する戦術も,そのグループに所属する中で身につけた非行女子文化の行動スタイルを流用するものだった。 2人のケースの比較検討から浮かび上がってきたのは,学校時代に保護された環境の下で人間関係を取り結ぶ機会としてその場を経験できることは,移行期に多くのリスクに直面せざるを得ない層の若者にとって,相対的な安全を確保する上で不可欠なネットワークを形成する基盤となりうるものであり,その意味は決して小さくないという点であった。
著者
上間 陽子 仲嶺 政光 望月 道浩 芳澤 拓也 辻 雄二 長谷川 裕 打越 正行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

沖縄の貧困を解明するために、本助成をうけることで次の3つの調査を行うことになった。まずひとつは沖縄の風俗業界で働く若者のインタビュー調査を実施した。この調査では、彼らの生育環境、友人関係、結婚、就職、文化などについて調べた。次に全国学力・学習状況調査の沖縄の結果の分析(2013年、2014年)を行った。最後に沖縄の教員が、貧困世帯の子どもをどのように捉えて、関わりを作ったのかについて、各年代ごとにどういった傾向があるのかについて分析した。
著者
乾 彰夫 中村 高康 藤田 武志 横井 敏郎 新谷 周平 小林 大祐 本田 由紀 長谷川 裕 佐野 正彦 藤田 武志 横井 敏郎 藤田 英典 長谷川 裕 佐野 正彦 佐藤 一子 本田 由紀 平塚 眞樹 大串 隆吉 関口 昌秀 上間 陽子 芳澤 拓也 木戸口 正宏 杉田 真衣 樋口 明彦 新谷 周平 安宅 仁人 小林 大祐 竹石 聖子 西村 貴之 片山 悠樹 児島 功和 有海 拓巳 相良 武紀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、変容する若者の学校から仕事への移行実態を把握するため、調査開始時点で20歳の若者の18歳時点から24歳までの間の就学・就労等をめぐる状態変化と、その過程での諸経験・意識等を、同一対象者を継続的に追跡するパネル方式で調査したものである。このような調査では対象者からの毎回の回答率を維持し続けることが最も重要であるが、本研究では中間段階で予定を上回る回答率を達成できていたため、調査期間を5年間に延長する計画変更をおこない、最終年度を待たず次課題繰り上げ申請を行った。調査は次課題期間にわたって継続する予定である。収集されたデータの中間的分析はおこなっているが、本格的分析は今後の課題である。
著者
上間 陽子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.87-108, 2015
被引用文献数
2

本稿は,風俗業界で働く若年女性たちの生活・仕事の中で直面する種々のリスクへの対処の仕方,その対処において果たす彼女たちの人間関係ネットワークの機能,そのネットワークの形成の背景,特にネットワーク形成において学校体験のもつ意味を捉えることを課題とした。<BR> 本稿は,筆者らが取り組んでいる,沖縄の風俗業界とその界隈で働く若者への調査の対象者の中から特に2人の女性(真奈さん・京香さん)を取り上げ,それらの比較対照を通じて上記の課題を追究した。2人は,中学校卒業時点で学校社会のメインストリームから外れ,地元地域からも排除されていた点で共通する。だが,真奈さんは中学校時代不登校であり,同世代・同性集団に所属した経験をもたず,多少とも継続的な人間関係は恋人とのそれに限られていたのに対して,京香さんは中学時代地元で有名なヤンキー女子グループに属し,その関係は卒業後も続き,困難を乗り切り情緒的安定を維持する上での支えとなってきた。そして京香さんが仕事場面でのリスクに対処する戦術も,そのグループに所属する中で身につけた非行女子文化の行動スタイルを流用するものだった。<BR> 2人のケースの比較検討から浮かび上がってきたのは,学校時代に保護された環境の下で人間関係を取り結ぶ機会としてその場を経験できることは,移行期に多くのリスクに直面せざるを得ない層の若者にとって,相対的な安全を確保する上で不可欠なネットワークを形成する基盤となりうるものであり,その意味は決して小さくないという点であった。
著者
上間 陽子 打越 正行
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はこれまで焦点の当てられることのなかった、地方在住のリスクを抱える若者の移行過程の聞き取り調査である。調査において特に注目したのは、これまでの移行調査では扱われることのなかった暴力や性の問題である。暴力や性の問題は、①当事者との合意が形成しづらく、②バッシングに転化しやすいことからこれまで記述されることがなかった。本調査研究では、そうした問題が起こるのかを、かれらの資源の枯渇状況を描くとともに、当事者の合意を経ながら記述をすすめることで、貧困研究においてえがかれることのなかった、暴力や性の問題を記述することができた。
著者
乾 彰夫 佐野 正彦 堀 健志 芳澤 拓也 安宅 仁人 中村 高康 本田 由紀 横井 敏郎 星野 聖子 片山 悠樹 藤田 武志 南出 吉祥 上間 陽子 木戸口 正宏 樋口 明彦 杉田 真衣 児島 功和 平塚 眞樹 有海 拓巳 三浦 芳恵 Furlong Andy Biggart Andy Imdorf Christian Skrobanek Jan Reissig Birgit
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、代表者らグループが2007~2012年度に実施した「若者の教育とキャリア形成に関する調査」を踏まえ、①そのデータの詳細分析を行い、現代日本の若者の大人への移行をめぐる状況と課題を社会に公表すること、②他の先進諸国の同種データと比較することで日本の若者の移行をめぐる特徴と課題を明らかにすること、の2点を研究課題とした。①に関してはその成果を著書『危機のなかの若者たち』(東京大学出版会、410 頁、2017年11月)として刊行した。②に関しては海外研究協力者の参加の下、イギリス・ドイツ・スイスとの比較検討を行い、2017年3月国際ワークショップ(一般公開)等においてその結果を公表した。
著者
上間 陽子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本調査研究は、沖縄県において、10代で子どもを出産した女性に対して、その選択に至った理由や背景を、インタビューによって聞き取ることを企図してなされた調査である。聞き取りにおいては、彼女たちの学校体験、ピアグループの有無・形成過程、定位家族、生殖家族の状況、本人の自己アイデンティティの形態について聞き取りをすすめるものである。初年度である一昨年の実施においては、10代の女性と、20代の女性では、世代的な違いがみられており、それはコミュニティ形成の仕方と、それを裏付けるように学校体験の差異というものが少なからず影響を与えているように思われた。初年度は49名の方から聞き取りを実施することができたが、二年目を迎える昨年度はあらたに16名の方から聞き取りをすすめ、現時点で、聞き取りデータ数は65名となっており調査の進行としてはまずまずだと思う。今年度までの65名のデータから明らかになったのは、出産に至るまでと出産後の状況の厳しさに、原母との関係とピアグループとの関係があるということである。また、出産によって原母との関係が変容しているケースがあり、その点に、彼女たちが出産を積極的に進めたい多くの理由が集中している。またピアグループの形成が学校・地元規定的なのか否かが、出産後の状態にかなり影響をあたえている、ということである。今年獲得予定のデータ獲得数は15名になるが、80のデータをベースにして整理をすすめたい。今年度のデータでは、支援を受けている女性が幾人か追加されているが、支援系の暴力も告発されている。その点について、どうしてそうした暴力がおこるのかについても、一定のデータを蓄積することができた。なお、こうしたデータの性質上、法曹界並びに医療従事者との連携も増えており、それゆえ多忙を極めることになったが、最終年度においても、こうした連携を進めながら、データの獲得にあたりたい。