著者
樋口 明彦
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.2-18, 2004-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
33
被引用文献数
5

本稿では, ヨーロッパの社会政策において注目されている社会的排除アプローチを考察して, このアプローチが現代社会における新たな不平等の理解にとって有効であることを論じる.最初に, 社会的排除に関する先行研究を検討して, 貧困から社会的排除に至る社会科学上のパラダイム変化, および社会的包摂という新たな政策的フレームワークの導入という2点を指摘する.同時に, 社会的排除アプローチに対する根本的な批判に応じて, 社会的包摂の内在的ジレンマを吟味する.次に, 現在EU諸国が最優先している積極的労働市場政策が抱える内在的ジレンマに焦点を当て, その問題点を検討する.その問題点とは, 失業者に有償労働を強いる政策が彼らをいっそう脆弱にするという逆説的状況を指す.そのうえで, 地域コミュニティにおける社会的ネットワークの構築と文化的アイデンティティへの支援が, そのような経済的側面における破壊的影響力の緩衝材として機能している様子を示す.さらに加えて, 権利要求運動としてのシティズンシップが, あらゆる人々に対する社会的包摂にとって必要であることを指摘する.最後に, 複層的メカニズムとしての社会的包摂こそが, グローバリゼーションが進展して, 人々が日常生活のなかで多様なリスクを抱える不安定な社会において, もっとも有効なフレームワークであることを結論づける.
著者
乾 彰夫 中村 高康 藤田 武志 横井 敏郎 新谷 周平 小林 大祐 本田 由紀 長谷川 裕 佐野 正彦 藤田 武志 横井 敏郎 藤田 英典 長谷川 裕 佐野 正彦 佐藤 一子 本田 由紀 平塚 眞樹 大串 隆吉 関口 昌秀 上間 陽子 芳澤 拓也 木戸口 正宏 杉田 真衣 樋口 明彦 新谷 周平 安宅 仁人 小林 大祐 竹石 聖子 西村 貴之 片山 悠樹 児島 功和 有海 拓巳 相良 武紀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、変容する若者の学校から仕事への移行実態を把握するため、調査開始時点で20歳の若者の18歳時点から24歳までの間の就学・就労等をめぐる状態変化と、その過程での諸経験・意識等を、同一対象者を継続的に追跡するパネル方式で調査したものである。このような調査では対象者からの毎回の回答率を維持し続けることが最も重要であるが、本研究では中間段階で予定を上回る回答率を達成できていたため、調査期間を5年間に延長する計画変更をおこない、最終年度を待たず次課題繰り上げ申請を行った。調査は次課題期間にわたって継続する予定である。収集されたデータの中間的分析はおこなっているが、本格的分析は今後の課題である。
著者
岡田 幸子 樋口 明彦 仲間 浩一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.381-388, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
28

維持管理の時代である今、再使用やリサイクルされる建設材料が増えている。建設材料である石材は、石垣や路盤舗装材などに使われてきた。しかし、文化財などの石造構造物の研究はあるが、石材の流通や再使用に焦点をあてた研究は少ない。本研究は、土木事業における石材の流通や再使用に着目し、北九州市では西鉄路面電車の敷石の生産から利用技術及び別用途での再使用に到る経緯を調査したものである。その結果、併用軌道における舗装技術と舗装に関する歴史的な経緯・過程、敷石の生産・流通・施工・補修の技術、ある時代の流通やストックの方法の全貌を解明した。また、現在77ヵ所 (39ヵ所確認) で再利用の情報を把握した。
著者
乾 彰夫 樋口 明彦 佐野 正彦 平塚 眞樹 堀 健志 三浦 芳恵 Andy BIGGART
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.120-131, 2021-06-25 (Released:2023-06-26)
参考文献数
36

1990年代以降,若者の大人への移行は著しく長期化した。若年労働市場の悪化は離家や家族形成に深刻な影響を与えている。しかし国による社会保障制度の差は,それらへの影響に違いをもたらしていることが考えられる。すなわち若者への保障が厚い制度のもとでは労働市場でのリスクは必ずしも直接に離家や家族形成に影響を与えない一方,それが乏しい制度のもとでは影響が直接的であることが予想される。本研究では若者の離家と家族形成への社会保障制度の効果について,日英比較を通しての検証を行う。日本の若者への社会保障は極めて限定的である。一方イギリスのそれは近年大きく後退したもののなお一定の厚みがある。分析結果からは,家族形成において,イギリスでは労働市場におけるリスクに対して社会保障が一定の緩和機能を果たしている一方,日本ではその効果はほとんど見られないことが示された。
著者
乾 彰夫 佐野 正彦 平塚 眞樹 堀 健志 岡部 卓 杉田 真衣 樋口 明彦
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、若者の大人への移行に、教育、労働市場、社会保障、家族などの諸制度・慣行が与える影響を、先進国間の比較を通じて明らかにすることと、それを通じて若者の移行支援にかかわる制度・政策へのインプリケーションを得ることを目的としている。そのため本研究では、日本・イギリス・ドイツ・スイス・ノルウェーを対象に、パネル調査データなどを用いて、教育・労働市場・社会保障・家族の諸制度・慣行が若者の移行に与えている影響を比較するという方法をとる。第一年度となる2018年度は、①学校から仕事へ・離家・家族形成の三移行のわが国のこの間の変化及びそれらに関わる諸制度等を概観するとともに、②海外共同研究者の協力を得て対象各国の状況を概観した。さらに③これらを踏まえ、比較枠組みについて海外共同研究者を交えて検討するとともに、④比較研究に利用するパネルデータ等の検討を行った。なお日本データについては、当初予定していたYouth Cohort Study of Japanに加え、厚労省21世紀成年者縦断調査データを利用する可能性を検討するため、同データの利用申請手続きを行った。また⑤先行して試行的に分析検討を行ってきた日英比較について、海外研究協力者とともに国際学会で発表するとともに、国際ジャーナルに投稿した。
著者
乾 彰夫 佐野 正彦 堀 健志 芳澤 拓也 安宅 仁人 中村 高康 本田 由紀 横井 敏郎 星野 聖子 片山 悠樹 藤田 武志 南出 吉祥 上間 陽子 木戸口 正宏 樋口 明彦 杉田 真衣 児島 功和 平塚 眞樹 有海 拓巳 三浦 芳恵 Furlong Andy Biggart Andy Imdorf Christian Skrobanek Jan Reissig Birgit
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、代表者らグループが2007~2012年度に実施した「若者の教育とキャリア形成に関する調査」を踏まえ、①そのデータの詳細分析を行い、現代日本の若者の大人への移行をめぐる状況と課題を社会に公表すること、②他の先進諸国の同種データと比較することで日本の若者の移行をめぐる特徴と課題を明らかにすること、の2点を研究課題とした。①に関してはその成果を著書『危機のなかの若者たち』(東京大学出版会、410 頁、2017年11月)として刊行した。②に関しては海外研究協力者の参加の下、イギリス・ドイツ・スイスとの比較検討を行い、2017年3月国際ワークショップ(一般公開)等においてその結果を公表した。
著者
岡田 幸子 樋口 明彦 仲間 浩一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.23, pp.381-388, 2006

維持管理の時代である今、再使用やリサイクルされる建設材料が増えている。建設材料である石材は、石垣や路盤舗装材などに使われてきた。しかし、文化財などの石造構造物の研究はあるが、石材の流通や再使用に焦点をあてた研究は少ない。本研究は、土木事業における石材の流通や再使用に着目し、北九州市では西鉄路面電車の敷石の生産から利用技術及び別用途での再使用に到る経緯を調査したものである。<BR>その結果、併用軌道における舗装技術と舗装に関する歴史的な経緯・過程、敷石の生産・流通・施工・補修の技術、ある時代の流通やストックの方法の全貌を解明した。また、現在77ヵ所 (39ヵ所確認) で再利用の情報を把握した。
著者
羽野 暁 樋口 明彦 榎本 碧 原田 大史 佐々木 裕大
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.32-42, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
21

屋外空間における視覚障害者の歩行支援として、筆者らは白杖の打音を用いた音による誘導に着眼し、一般的な舗装材と音響特性が異なる木材を舗装に用いた「木製バリアフリー歩道」を考案した。本研究は、この開発研究における最終フェーズとして、実用化標準断面に基づき屋外に実装した試験歩道において42名の視覚障害者を対象に歩行実験を実施し、行動観察により歩行支援機能を検証したものである。アスファルト舗装部とスギ板舗装部の二種類の舗装区間にて実験した結果、アスファルト舗装部を開始点とした歩行実験において27名の被験者が歩車道境界に近づき7名の被験者が車道に飛び出した。一方、スギ板舗装部を開始点とした歩行実験においては26名が歩車道境界に近づいたが、車道への飛び出しを全員が回避した。さらに、歩車道境界を白杖のみで認識し足踏を必要としない被験者が、アスファルト舗装部と比較してスギ板舗装部においてより多く確認できた。これらより、スギ板舗装がアスファルト舗装と比較して視覚障害者の車道飛び出し防止に有効であることが分かった。
著者
宮本 みち子 長須 正明 樋口 明彦 平塚 眞樹 津富 宏 西村 貴之 新谷 周平
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代における若者のリスクは、教育から労働市場への移行の困難として表現されてきたが、それは特定の階層に集中している。これらの若者は家庭・学校・職場のいずれにおいても不利な立場で連鎖的に社会から排除されている。日本・オランダ・オーストラリア・イギリス・フィンランドの国際比較から日本の特徴をみると、若者の自立を担保する社会保障制度は極めて弱体である。社会的に孤立し就労困難な若者の増加に歯止めをかけるためには、所得保障と就労支援サービスのセット、教育・福祉・労働・保健医療制度の連携が必要である。ターゲットを絞った支援サービスだけでなく、若者の社会参加とエンパワメントを若者政策に位置づけるべきである。
著者
舩橋 晴俊 壽福 眞美 徳安 彰 佐藤 成基 岡野内 正 津田 正太郎 宮島 喬 吉村 真子 上林 千恵子 石坂 悦男 藤田 真文 奥 武則 須藤 春夫 金井 明人 池田 寛二 田中 充 堀川 三郎 島本 美保子 樋口 明彦 荒井 容子 平塚 眞樹 三井 さよ 鈴木 智之 田嶋 淳子 増田 正人 小林 直毅 土橋 臣吾 宇野 斉 鈴木 宗徳 長谷部 俊治 原田 悦子 羽場 久美子 田中 義久 湯浅 陽一 伊藤 守 上村 泰裕 丹羽 美之 宮本 みち子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本プロジェクトは、グローバル化問題、環境問題、移民・マイノリティ問題、若者問題、メディア公共圏、ユビキタス社会、ケア問題といった具体的な社会問題領域についての実証的研究を通して、社会制御システム論、公共圏論および規範理論に関する理論的研究を発展させた。公共圏の豊富化が現代社会における制御能力向上の鍵であり、それを担う主体形成が重要である。また、社会制御には合理性のみならず道理性の原則が必要である。