著者
中村 達 古川 誠一
出版者
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

寄生蜂が様々な方法で寄主の免疫作用に対抗し、寄生に成功するのが知られているのに対して、同じ捕食寄生性昆虫である寄生バエについてはほとんど研究されていない。本研究では、ヤドリバエがどのように寄主免疫作用をくぐり抜けて寄生成功するのか明らかにするため、寄主体内での幼虫周辺や寄主の変化について経時的に調査した。寄主に侵入後、ハエ幼虫はバリア構造物と名付けた寄主組織からなる構造物に包囲されることがわかった。このバリア構造物は内側が寄主の血球由来、外側が脂肪体細胞由来で、ハエ幼虫はこの構造により、寄主によるメラニン化などの免疫反応から逃れていると考えられた。
著者
中村 達也 藤本 淳平 鹿島 典子 豊田 隆茂 鮎澤 浩一 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.185-192, 2018-12-31 (Released:2019-04-30)
参考文献数
29

【目的】重症心身障害児者の舌骨は,嚥下造影検査(VF)で鮮明に投影されないことも多く,咽頭期嚥下の特徴が不明確である.そこで,本研究では,重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を明らかにするために,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を健常成人と比較した.【対象と方法】健常成人19名(健常群)と重症心身障害児者41名(障害群)について,ペースト食品3~5 mLの自由嚥下時のVFを撮影し,30フレーム /秒で動画記録した.VF動画をフレームごとに解析し,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の特定,舌骨挙上開始時の特定が可能だった者の舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の測定,誤嚥の有無の評価をした.さらに,舌骨挙上開始時および舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を,喉頭蓋谷を基準に到達前・到達・通過後の3段階で評定した.統計解析は,一元配置分散分析およびFisher’s exact testを用いて比較した.【結果および考察】舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の群間差は認めなかった.各群の平均値は0.105~0.231秒であり,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は92.8%の対象者で一致していた. 舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は,健常群では到達前:7名(36.8%)・到達:12名(58.3%)・通過後:0名,障害群では到達前:2名(4.9%)・到達:18名(43.9%)・通過後:21名(51.2%)であり,群間差を認めた.これより,障害群は健常群に比較して,嚥下開始前に食塊が深部に到達しやすいと考えられた.【結論】重症心身障害児者は健常成人よりも,ペースト食品を嚥下する際に,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置が喉頭蓋谷を通過する対象者数が多かった.
著者
中原 貴 中村 達雄 田畑 泰彦 江藤 一洋 清水 慶彦
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 : 日本炎症・再生医学会雑誌 = Inflammation and regeneration (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.116-121, 2003-03-10
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

Our strategy for tissue regeneration is to induce maximum intrinsic healing potential at the site of a tissue defect, applying the elements of tissue engineering. Regeneration of periodontal tissues occurs through the combined application of a collagen sponge scaffold and gelatin microspheres incorporating basic fibroblast growth factor (bFGF) for controlled release. This &ldquo;sandwich membrane&rdquo; with or without bFGF (100&mu;g) was applied to a three-walled alveolar bone defect (3 x 4 x 4 mm) in nine dogs. Periodontal tissues, both hard and soft, treated with bFGF were effectively regenerated four weeks after the operation with functional recovery of the periodontal ligament in parts. Next, the effect of combining cells with the treatment was evaluated. Periodontal fenestration defects (6 x 4 mm) were created bilaterally in the maxillary canines of six dogs. One of these was filled with the collagen sponge scaffold seeded with autologous periodontal ligament-derived cells (3 x 10<sup>5</sup>), and the other was left empty. After four weeks, on the cell-seeded side, regeneration of the cementum was observed uniformly on the root surfaces, indicating that the seeded cells had formed new cementum. Our findings suggest a promising new approach to periodontal regeneration that is based upon <I>in situ</I> tissue engineering.
著者
中村 達也 加藤 真希 雨宮 馨 鮎澤 浩一 小沢 浩
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.332-341, 2018-12-15

Angelman症候群(以下,AS)の児は,乳幼児期には哺乳障害や摂食嚥下障害を示し,学童期には未熟な咀嚼機能にとどまる場合が多い.しかし,離乳期AS児の摂食嚥下機能の獲得に関する報告は少なく,経過には不明な点が多い.今回,1歳から就学までの間,摂食指導を継続したAS児を経験した.症例の摂食嚥下機能の獲得時期を,粗大運動および認知・言語機能の発達の観点から診療録を後方視的に検討したところ,運動発達において四つ這い獲得後に舌挺出のない嚥下と捕食,伝い歩き獲得後に押しつぶし,独歩獲得後に咀嚼を獲得したが,口唇閉鎖が伴わず食塊形成は不十分であった.本児は定型発達とは異なり,運動発達が進んでから摂食嚥下機能を獲得したが,獲得された粗大運動は,両膝伸展位の座位や,手指屈曲位で手掌が接地しない四つ這いなど,定型発達とは質的な差があった.また,乳幼児期から口腔領域の感覚過敏が強く,就学前も感覚過敏は軽減したものの残存していた.
著者
山崎 愛理沙 中村 達朗 大森 啓介 村田 幸久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.5, pp.204-207, 2017 (Released:2017-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

肥満細胞は免疫細胞の1つであり,顆粒を大量に含むその形態学的特徴からこの名がつけられた.この細胞は,ヒスタミンなどの炎症性物質を大量に放出(脱顆粒)することで,アレルギー性疾患の発症に関わる主な免疫細胞として長らく認識されてきた.しかし,近年研究が進み,肥満細胞は脱顆粒後に起こる種々のサイトカインやケモカイン産生・放出を通して,アレルギー性疾患以外の様々な疾患の発症や進行にも関与することが分かってきた.我々の研究室では,現在アレルギー疾患の他,創傷治癒,急性炎症,がんの発症や進行において,この肥満細胞が果たす役割の解析を進めている.特に肥満細胞が脱顆粒後に大量に産生する脂質メディエーターであるプロスタグランジンD2の役割について焦点をあてて研究を進めてきた.本稿ではその一部を紹介したい.
著者
稲田 有史 中村 達雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

神経因性疼痛モデルを大型動物(ビーグル)で作製した。それを外科的に治療することにより、局所ならびに中枢でどのような変化が起こるか電気生理学的及び病理・生化学的に解析することにより発症メカニズと治療のメカニズムを解明した。疼痛動物モデルとしては、末梢神経絞把モデルが確立されているので、それを坐骨神経に対して用い、末梢損傷の回復モデルとしてはビーグル犬坐骨神経を神経切除後に欠損部を人工神経で再建したものを用いた。さらに神経再生を促進する方法として、自己由来細胞の応用についても検討した。
著者
中村 達太郎
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.4, no.42, 1890-06-28
著者
舘 卓司 中村 達
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1)DNAデータと比較形態による双翅類の高次系統解析をおこない,DNAデータでは,ヤドリバエの単系統性およびクロバエとの姉妹群関係を示した.形態研究では,ハエ類成虫の後胸部の比較形態学をおこない,その側板の相同性を再定義した.環縫群とアタマアブ科では腹部との関節構造を持ち,それが共有派生形質であることを示した.2)ブランコヤドリバエ属の寄主利用の変遷は,これまでに記録された寄主情報を分子系統樹上で最適化することによって解明された.3)アワヨトウを使ってヤドリバエ2種の累代飼育実験のベースを構築された.これは将来的にヤドリバエの一齢幼虫の寄主適応能力を調べるためである.
著者
土屋 泰夫 佐野 佳彦 中村 利夫 梅原 靖彦 大久保 忠俊 中村 達
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.2258-2262, 1999-09-01
被引用文献数
15

症例は63歳の男性で, 食後右季肋部の疝痛発作のため入院した. 腹部超音波, CT検査で肝前上区域(S8)に胆管内部の腫瘤陰影とその末梢胆管の拡張を認め, ERCPでは同部に辺縁平滑な陰影欠損像を認めた. この後直接胆管造影で腫瘤陰影の脱落, その後再び腫瘤陰影が確認された. 血管造影で肝S8に腫瘤濃染像を呈したため, 胆管内発育型肝細胞癌を疑い手術を施行した. 肝S8表面の腫瘍を認め, 胆管内腫瘍栓は肝門部まで進展していたため, 右葉切除術を施行した. 主腫瘍の割面は被膜形成なく最大径は2.2cmで腫瘍栓に連続性を認めた. 組織学的にはEdmondso III型の肝細胞癌であった. 本邦報告例の臨床的検討では, 肝切除例の予後は姑息的治療例より良かった. 自験例のごとく被膜形成が不明瞭な浸潤性の腫瘍で, 2cm前後の肝細胞癌でも胆管内発育を来すため, 占居部位がGlisson鞘に近い例では十分な範囲の切除が必要である。
著者
森 善一 太田 浩司 中村 達也
出版者
日本感性工学会
雑誌
感性工学研究論文集 (ISSN:13461958)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-20, 2004 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

In this paper, we quantitatively analyze the KANSEI of human from many other angles for the purpose of generating the motion algorithm for a robothat does not tire a human. A red ball and a blue ball are displayed on a simulation screen. A person moves the red ball with a mouse and a computer moves the blue one. By using this model, first, we examine the relationship between the complexity and the boredom. The varieties of the complexity are motion, size, color, tone and shape. Secondly, we analyze actions produced naturally in interhuman interaction using two PCs connected by a network. Thirdly, we examine the impression that the motion of the robot gives to the human by SD technique.
著者
稲田 有史 中村 達雄
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究はそれを末梢神経の痛みを伴う患者に適応したとき、偶然に発見した驚くべき事実、即ちこれまで不可逆と考えられていたCRPSが、局所の障害を受けた神経を切除して、健全な末梢神経を再生されることによって、治癒するという事実を解明した。本研究ではこの局所の再生治癒機転を病理的に解明することから開始した。こういうアプローチは臨床では従来されてこなかったものであり、これまで治のみならず世界的にもかつて例がない。平成22年度に行った研究とその成果は下記の如くである。1) 局所の末梢神経損傷が周囲に与える影響を病理組織学的に検討した。臨床的に我々が初めて確認したカウザルギーの範囲に一致して損傷部位の神経からsproutingが生じるという事実を動物実験で検証した。2) 再生する末梢神経が中枢に与えるメカニズムを解明した。脊髄神経管の活動電位を測定し、神経線維、特にC fiberの再生を評価した。併せて神経の活動電位の回復も調べた。3) ビーグル犬のperoneal nerveの浅枝に微小電極を刺入して、単位感覚神経の活動電位を記録できるシステムを構成した。再生神経が触覚、熱覚、機械刺戟に対してどのように反応するか検討した。またマンシェット圧迫やエタノール注入によりA線維を遮断してCNAPがどのように変化するか、交感神経ブロックにより再生神経の活動電位がどのような影響を受け、これは正常の神経の回復の各時期においてどう違うか調べた。これらの研究の結果より新しい理論として「総和仮説」を提唱した。この理論は運動器疼痛に対する外科治療の新たな地平を切り拓くものとして注目されている。