著者
佐藤 良明
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.287-309, 2017-07-31

「キング・オブ・ロックンロール」として君臨する間エルヴィス・プレスリーは, ポップ音楽業界だけでなく, アメリカ史を通して国民国家を分断してきた溝を二重に跳び越える文化英雄だった。南部の貧農の子が目映い世界のスターになったというだけでなく, それを「ヒルビリーの伊達男」に, 即ちサム・フィリップスのいわゆる「真正な黒人のサウンドと黒人の感触をもつ白人」になることをもって達成したのである。どうしてそんなことが可能だったのか。ポップ・ミュージックは, イメージの生産と購入を特徴とする新しい経済の中心部分をなすが, 1950年代後半の時期にエルヴィスの声と身体は, 何百万ものティーンエイジャーの心を動かして都市の黒人文化への渇望をかき立てた。顕著に黒人的な音楽スタイルを身にまとった彼は, これをカントリー音楽において展開してきた熱情的で一途な歌唱とブレンドした。彼が引き起こしたロカビリーの熱狂を日本のポップ市場に引き入れようとする初期の試みは, 社会的・歴史的な事情から成功したとは言えない。しかし, 日本にロックビートが浸透する1960年代後半には, 内向きの歌謡曲に新しいジャンルが登場する。森進一, 青江三奈らの歌唱は, 日本の伝統的な芸能力学を, エルヴィスの3連符の震えを含むR&Bの音楽的イディオムと接合するものであった。後に「演歌」と呼ばれるもののルーツを分析する中で我々は, エルヴィスが与えた文化横断的なインパクトの大きさを改めて目撃するだろう。My lecture is an invitation to see Elvis Presley as a trickster who, during his reign as king of rock 'n' roll, doubly crossed the gaps embedded not only in music industry but more profoundly in the nation itself throughout its history. Not only did the poor Southern boy become the flashy international hero but he did so by becoming a "hillbilly cat" or, in Sam Phillip's words, "a white boy with authentic Negro sound and Negro feel." How was that possible ? We look at pop music as an essential part of the new economy that featured production and purchasing of images. In the late 1950s Elvis's voice and body stirred the desire of millions of teenagers to transgress into the urban black culture. We examine how Elvis's singing came to assume the conspicuously black styles and how he blended it with the passionate, sincere singing developed in country music. The attempts to graft the rockabilly craze to the contemporary Japanese pop market was only partially successful for social and historical reasons. However, in the latter half of the1960s as Japan became more exposed to the rock beat, a new domestic-oriented genre emerges. The performances of Mori Shin'ichi and Aoë Mina combine traditional Japanese body dynamics with musical idioms of R&B including Elvis's vibration in triplets. By tracing the roots of what was later to be called Enka, we will once again witness the tremendous crosscultural impact Elvis made on the inhabitants of this planet.
著者
佐藤 良彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.217-223, 2013 (Released:2014-01-24)
参考文献数
7

特徴的な牙痕からニホンマムシ(Gloydius blomhoffii)の咬症と診断した犬4症例の治療例を報告する。症例1は受傷20時間後に受診,顔面に小さな牙痕を2カ所認め浮腫と出血が見られた。症例2は受傷15分後に受診したが臨床症状は見られず,翌日,顔面に3カ所の牙痕が現れ浮腫が観察された。症例3は受傷10時間半後に受診,左上唇に牙痕が2カ所あり顔面の浮腫を認めた。症例4は夜間受傷,左前肢に牙痕が1カ所あり腫大していた。プレドニゾロンを初診時に1.0~5.0 mg/kg投与し,その後漸減,抗生物質も投与したところ,いずれの症例も1週間前後に回復した。
著者
佐藤 良一
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.20-30, 2013-10-20 (Released:2017-04-25)

The difference of the idea in economics stems from the approach to the question: how to answer the mechanism of a market. The financial crisis in 2008 could be interpreted as the end of 'Market fundamentalism', however, the situations has been almost the same before the crisis. The 'market' is still the subject when businessmen talk about the economic problems. We have to tackle with the fundamental question: what is the core for ordinary people who sell labor-power for their subsistence. This paper consists as follows. In section I the argument of 'How market crowd out morals' by Sandel, the critics by Bowels and Gintis, and the reply to them are introduced. Needless to say, the fundamental unit, which organizes a society, should be a human being. The hypothesis on its behavior is indispensable for an economic theory. Neoclassical theory adopts the assumption of so-called homo-economicus. An alternative to this is 'Reciprocans', which is presented by US radicals. The distinction between these two is examined in the section II. When we try to present an alternative to the status quo from the viewpoint of 'a harmonious society', the development of the situation must be confirmed correctly. The recent change of the wage share in the US shows the severe conditions for working people. Assuming the capitalist way of management, the fundamental relations between capital and labor cannot be harmonious but conflict. As a Keynes model teaches us, the real wage rate must be reduced when the capitalist increase the employment. Profit maximization can be satisfied when the real wage rate is equal to the marginal product of labor. According to this condition, the inverse relation between an employment and real wage holds. Regrettably new prospects for an alternative won't be opened unless we could succeed in making some drastic change. If we pursue the harmony among people, the point is the feasibility of an alternative and the potential path to a 'new society'. For the present, we have to take a realist view of 'capitalist' economy. This means that we have to change the capitalist way of management step by step(section III).
著者
佐藤 良雄
出版者
武蔵野女子大学英文学会
雑誌
武蔵野英米文学 (ISSN:03886662)
巻号頁・発行日
no.3, pp.93-103, 1971-02
著者
佐野 浩彬 田口 仁 花島 誠人 伊勢 正 佐藤 良太 高橋 拓也 池田 真幸 鈴木 比奈子 李 泰榮 臼田 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>報告の背景と目的</b> <br>2016年4月14日21時26分に発生した震度7の地震(Mj6.5)と,4月16日1時35分に発生した地震(Mj7.3)およびそれ以降に続く余震(2016年熊本地震)に対して,防災科学技術研究所(防災科研)では災害対応の一環として,地図情報の作成・集約・共有による情報支援を実施した.防災科研が独自に行っている地震や液状化,降雨,火山,土砂災害などの観測・予測データや,熊本県庁から提供された道路規制情報や避難所情報,通水復旧のインフラ情報などをWeb-GISに統合し,俯瞰的な被害状況を把握できる仕組みを構築した.各種情報が集約された地図は,防災科研が構築した熊本地震のクライシスレスポンスサイト(http://ecom-plat.jp/nied-cr/index.php?gid=10153)において公開したほか,避難所情報などの公開が難しい一部の情報については,熊本地震災害対応にあたる特定機関向け地図を構築して提供した. 本報告では,熊本地震における地図情報の作成・集約・共有における災害対応支援のなかで,熊本県庁をはじめとする各種機関が集約・発信する情報が,どのように地図情報として一つの地理空間情報基盤上に整理されたのかについて報告する. <b><br>熊本地震における地図情報支援</b> <br>4月14日に発生した震度7の地震を受けて,防災科研では地震による被害状況把握ならびに情報集約のためのWeb-GISを構築した.当初は防災科研が観測した震度分布や推定全壊棟数分布のデータをWeb-GISに統合した.また,地震発生翌日の4月15日には,熊本県庁に防災科研研究員が派遣され,熊本県や中央省庁などと連携し,各機関から提供される災害情報を,構築したWeb-GIS上に統合した.直接Web-GIS上に取り込める形で提供された情報には,国土地理院の「被災後空中写真」やITSジャパンの「通れた道マップ」,地震推進本部の「活断層図」などが挙げられる.また,熊本県庁から提供された道路被害情報や避難所情報などはテキスト形式やExcelで整理されたもの,独自の地図で描画されたものなど,Web-GISに直接地図情報として取り込むことができなかったものもあり,それらは住所情報などを頼りにして位置情報を付与することでWeb-GIS上に統合した.各機関から集約・整備したデータは約45種類,データ数として424を数える(6月27日時点).Web-GIS上で集約されたデータは,利用者がニーズに応じて必要な情報を適宜選択して表示することができる.例えば,通水復旧状況のレイヤと避難所情報のレイヤを組み合わせることで,給水支援が必要な避難所を分析できたり,避難所と推定全壊棟数分布,道路規制情報の3レイヤを重ね合わせることで,生活支援が必要な地域と,支援に向かうためにたどり着くための最適ルートを事前に検討することが可能となる. <b><br>地図情報作成・集約・共有における課題</b> <br>被害情報をWeb-GIS上に統合することで、災害対応支援への活用が可能となるが、情報の統合化においては様々な課題が明らかとなった。例えば、避難所情報については国土交通省があらかじめ国土数値情報のなかで整備している避難所情報もあれば、DMATが独自に収集し整理している広域災害救急医療情報システム(EMIS)の避難所情報、また熊本県庁で集約されたものや熊本市で集約されたものなど、災害発生直後に各種機関が独自に情報収集を始めてしまったため、一つの情報として集約することが困難な状態だった。また、避難所情報の統合にあたっては、各機関が整理する情報の避難所名称に差異があったり、本来は指定されていない避難所が開設されているなど、単純な統合化・集約化が難しいという課題があった。こうした各種機関が独自に情報を収集、集約すると、その後の情報統合化が難しくなるため、あらかじめ共有情報の標準化(COP,Common Operational Picture)を検討しておくことが重要となる。今後の課題としては、地図情報の作成・集約・共有における自動化や高度化、災害情報におけるCOP実現に向けた検討が挙げられる。 &nbsp; <br> <b>謝辞:</b>本報告の一部には、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(先着的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:科学技術振興機構)の予算を活用した。
著者
阿部 英彦 谷口 紀久 稲葉 紀明 中島 章典 佐藤 良一 INABA Noriaki TANIGUCHI Norihisa
出版者
宇都宮大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

道路や鉄道が互いに鋭い斜角で交差する場合、門型の中間橋脚とそれに載る桁高の小さい橋桁を必要とするが、これらに綱部材とコンクリートを適宜合成して建造することにより、力学的挙動が良く、工事がし易く、環境に適し、かつ、経済性が優れた構造物が実現すると考え、その開発の為に2年に亘り種々、実験的研究を行った。実験は主として綱部材とコンクリート部材の結合、あるいは両者の一体化について試験した。(1)鋼部材同志をコンクリートと鋼材を介して結合し、これに引張外力を加え、その性状を調べた。コンクリート継手部の中にスタッド付き鋼板を埋込んだものと異形鉄筋を埋込んだものを試みた。鋼部材とコンクリートの重なり部の長さ、フープ筋の量、スタッドの配置等を変えて挙動を調べ、適当なプロポーションを見出した。(2)コンクリート部材に鋼梁の先端部を埋込んだ試験体に曲げを加えた。鋼梁の埋込み長さ、スターラップの量、スタッドの量等を種々変えて、それらが継手部にどの様に影響するかを調べた。埋込み長が短いと、そこのコンクリートに大きなせん断力が作用するので、スターラップを増さなければならないが、鋼梁にスタッドを設けると作用するせん断力を減少する効果がある。(3)H形鋼をコンクリート中に埋込んだ橋桁で、両者の一体化のためのずれ止めをフランジでなく、ウエブに設けても有効であるならば、桁高を減少できて有利である。そこで鋼梁の種々の位置に量を変えてスタッドを設け、また、スターラップの量も変えて曲げ試験を行った。スタッドもスターラップも少ないと充分な曲げ耐力を発揮する前にせん断破壊することがわかり、また、ウエブに設けたスタッドも充分有効であることがわかった。更に鋼梁のウエブに適当な穴をあけるだけでもずれ止めの作用を表すことが確められた。以上により、現場での施工許容誤差が緩く、工事の安全性の高い構造物の可能性の目途が見究められた。
著者
佐藤 良雄
出版者
成城大学
雑誌
成城法学 (ISSN:03865711)
巻号頁・発行日
no.66, pp.131-192, 2001-04
著者
佐藤 良三 鈴木 伸洋 柴田 玲奈 山本 正直
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.689-694, 1999-07-15
被引用文献数
6 10

瀬戸内海・布刈瀬戸の産卵場周辺の三原市幸崎沖で, ディスク標識を装着した197尾のトラフグ親魚を1994年と1995年の5月中旬に放流した。瀬戸内海では放流後6カ月以内に計14尾が再捕されたが, 多くは放流直後に周辺海域で再捕され, 以後西方の海域へ移動した。外海域では放流1&acd;22カ月後に11尾が玄界灘&acd;黄海, 志布志湾などで再捕された。翌年の産卵期に布刈瀬戸の産卵場周辺海域で計10尾が再捕され, 走島沖の2尾を除き, 他の産卵場と関係した再捕報告はなかった。この2尾が備讃瀬戸へ回遊した可能性はあるが, 布刈瀬戸への回帰性も否定できない。以上の結果から, トラフグは産卵場への回帰性を有すると判断された。
著者
佐藤 良彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.85-89, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
7

特徴的な牙痕および臨床症状からニホンマムシ(Gloydius blomhoffii)の咬症と診断した猫2症例の治療例を報告する。両症例とも夜間外出中に受傷したと思われ,家に戻ってきた際,症状は認められなかったが,翌朝には顔面が腫大していた。両例とも受傷した約12時間後に受診,症例1は下唇に牙痕を1ヵ所認め,下顎に高度な浮腫が見られた。症例2は前頭部に2ヵ所の牙痕を認め,顔面と下顎に高度の浮腫が観察された。両例とも初診時にプレドニゾロンを2.3~4.0 mg/kg投与し,その後漸減,抗生物質も投与したところ,4日間ほどで回復した。
著者
小山 法希 松川 雅仁 島田 昌彦 佐藤 良一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1068-1074, 2008-11-15
被引用文献数
2 3

冷凍バナメイエビを解凍後に0℃〜55℃の温度で貯蔵し,筋肉中のATP関連化合物の変化を調べた。10℃未満あるいは55℃の貯蔵では,AMPが減少しIMPと(HxR+Hx)がほぼ同じ割合で生成した。20℃〜40℃の貯蔵では,IMPが(HxR+Hx)より割合的に多く生成し,IMPは最高で70%にも達した。生のバナメイエビを氷殺後に7℃と22℃で貯蔵した場合,IMPの生成は7℃よりも22℃の方が多く,22℃で貯蔵したエビのうま味は有意に強くなった。遊離アミノ酸はいずれの貯蔵温度でも変化しなかった。
著者
佐藤 良夫 伊形 理 松田 隆志 西原 時弘 内柴 秀麿
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.95, no.150, pp.39-46, 1995-07-20

筆者等は既に1ポートSAW共振器を用いたラダー型SAWフィルタの開発を行った。ラダー型SAWフィルタは低損失化できる点に特長があるが,この論文ではさらに詳しくIIDT型SAWフィルタに対する種々の特長を述べる。またラダー型SAWフィルタは,帯域幅が基板材料の電気機械結合係数(k^2)で決定されるため,比帯域幅で3%を越える広帯域化を行うことが難しい。本論文では,基板材料を変えずに広帯域化を図るためのいくつかの方法を検討する。伸長コイルLを入れる方法,直列腕共振器の共振周波数を並列腕共振器の反共振周波数に一致させず大きくとる方法等の効果とその限界を述べる。
著者
神崎 正英 佐藤 良
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.453-459, 2011-11-01

国立国会図書館(NDL)は,書誌データの開放性・利用可能性を向上させる取り組みの1つとして,書誌データ提供におけるセマンティックウェブ技術への対応を進めている。この一環として,2010年6月には「ウェブ版国立国会図書館件名標目表(Web NDLSH)」,2011年7月には提供範囲を全典拠レコードに拡大し,システムの機能を拡張した「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版をリリースした。「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版では,典拠データをRDFモデルにより表現し,Linked Dataのスキームに準拠する等,セマンティックウェブ技術に対応した形式により提供している。本稿では,当サービスの概要,提供する典拠データの内容,RDFモデルの設計等について紹介をする。