著者
林 由紀子 松原 茂樹
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.47(2007-NL-179), pp.49-54, 2007-05-25

一般に,新聞記事など文字による伝達を意図したテキストは,語彙や言い回しなどにおいて通常の話し言葉とは異なる.このため,音声合成ソフトウェアを使ってテキストをそのまま読み上げると,不自然な印象を与える音声となる.本論文では,不自然でない聞きやすい読み上げ音声を出力するための,書き言葉から話し言葉へのテキスト変換として,文体の変換及び体言止め表現の補完について述べる.文体の変換処理は,変換規則の適用により実行した.体言止めの補完を実現するために,文末の名詞及び時制等を考慮した決定木を作成した.新聞記事テキストを対象に評価実験を行い,精度89.7%,再現率86.7%という結果を得た.
著者
葛原 茂樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-19, 2020 (Released:2020-01-30)
参考文献数
61

日本神經學會は1902年に神経学・精神医学の合同学会として創設されたが,神経学部門の衰退により1935年に日本精神神經學會に改称された.第二次大戦後に,神経学は内科学と精神医学の狭間から復活して興隆し,困難を克服して1960年に日本臨床神経学会を設立し(1963年に日本神経学会に改称),1975年に「神経内科」が医療法の診療科名として認められた.その後の発展はめざましく,2018年に会員数は約9,000名,専門医数は5,500名以上に達した.当面する神経内科専門医基本領域化も神経学のアイデンティティ確立の一環と見做すことができる.歴史の教訓を今日の課題解決に活かすという観点から,本学会の116年を顧みる.
著者
藤原 茂樹 中村 海人 Heil David 野中 誉子
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<p>In this paper, impression words of surfboards and surfing were obtained by interviewing to some pro surfers and armature surfers who have long time experiences. As mechanical properties of samples of center fins for a long board, weights and sizes of part were measured. Strain for bending tests were also measured as flexibility of the samples. A pro surfer and armature surfers who have rich and long experiences of surfing tested the samples with a same long board, but subjective evaluations were not fit the mechanical flexibilities.</p>
著者
笠原 茂樹 斉藤 章弘 清水 英樹 山田 有希恵 芝野 耕司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.375-376, 1993-03-01

最もポピュラーなコンピュータミュージックといえば、シーケンサであろう。しかし、シーケンサーは、音楽を組み立てて、それを再生させるという機能をもつにすぎない。すなわち、シーケンサは、一種のデジタルレコーダである。実際に、ある曲を入力し、演奏させた場合、その曲を聞くものの立場から見ると、レコードやCDを聞くことと変わりはない。また、シンセサイザには、多くの場合、マイクロプロセッサが組み込まれているが、従来の楽器を根本的に変えるものではない。一つの楽曲の演奏ができるまでを考えると、練習によって、まずその楽曲を憶え、演奏技術とその適用方法を研く、三つの要素に分解することができる。コンピュータは、この三つの要素のそれぞれに対して、新しい可能性を研き、人の表現力を大きく高める新しい「楽器」としての可能性を秘めている。この可能性を上記の演奏ができるまでの過程と、次のように対応させることができる。すなわち、楽曲を覚えることは楽曲をデータとして入力することに対応し、演奏技術の適用はこのデータの加工に対応する。この過程をコンピュータ化することによって、事前に格納したデータにさまざまな加工を行うことによる新しい形態での演奏が可能になるのではないか。そして、この「楽器」を用いれば、オーケストラを実際に指揮し、フルバンドジャズを実際に演奏することすら可能であろう。こうした視点に立って、この研究では、ジャズとハウスミュージックでの即興演奏を分析し、これらの音楽分野で用いられているアドリブの手法を一種のフィルタとして、実現すること及びその制御をリアルタイムに行うことによる演奏の可能性を検討するために、MIDlインプロバイザーを試作した。
著者
西原 茂樹
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-84, 2013

本稿の目的は、明治末期から昭和初期にかけての甲子園野球関連言説を読み解き、当時において「甲子園野球」という独特の対象が構築されていく有様を明らかにすることである。<br> 「純真」は1920~30年代の甲子園野球関連言説において頻繁に使用された用語である。これは当初は主催者である新聞社により、選手や関係者が努めて遵守すべき「標語」として位置づけられており、必ずしも甲子園野球のあり方そのものを表現するものではなかった。しかし1920年代半ば以降、様々な論者が最高峰たる東京六大学野球と対比しつつ甲子園野球を言説化していく中で、「純真」は六大学野球とは一味違うこのイベントの魅力を表現し得る用語として捉え直され、その結果、それを核として定型化された一連の「物語」が構築されることとなった。<br> そこから窺えるのは、存続の危機に晒された明治末期の野球界が生き残りをかけて確立させた「規範」としての「青年らしさ」が、草創期の甲子園大会の運営においても重要な前提となっていたこと、そして昭和初期に商業化の一途を辿る六大学野球への批判が拡大する中で、「青年らしさ」を正しく体現し得る「他者」として甲子園野球を捉える見方が定着し始めたことである。
著者
村田 匡輝 大野 誠寛 松原 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.1621-1631, 2009-09-01
参考文献数
22
被引用文献数
3

リアルタイム字幕生成とは,講演や解説などの音声をテキストで提示するものであり,聴覚障害者や高齢者,外国人らによる講演音声の理解を支援するための技術である.講演では一文が長くなる傾向にあり,多くの文がスクリーン上で複数行にまたがって表示されることになるため,テキストが読みやすくなる位置に改行が挿入されている必要がある.本論文では,読みやすい字幕を生成するための要素技術として,日本語講演文への改行挿入手法を提案する.本手法では,係り受け,節境界やポーズ,行長などの情報に基づき,統計的手法によって改行位置を決定する.日本語講演データの1,714文を使用した実験では,改行挿入の再現率で82.66%,適合率で80.24%を達成し,本手法の有効性を確認した.
著者
新堂 晃大 佐藤 正之 葛原 茂樹
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.207-210, 2008

目的:知的職業に従事していた健常者と軽度認知障害(MCI)例の認知機能検査と画像所見について検討する。対象:70歳以上の小中学校校長・教頭退職者9名(男2名、女7名)。方法:全対象者にMini Mental State Examination(MMSE)、レーブン色彩マトリシス検査(RCPM) 、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)、リバーミード行動記憶検査(RBMT)を施行した。結果・結論:健常8名ではMMSE、WCSTとRBMTは一般に用いられる平均値と差はなかったが、RCPMが1SDを超える高得点であった。MCIと診断した1名ではRBMTが健常者の平均より3SD以上、また一般平均と比較しても3SD以上低下していた。脳血流シンチでは前頭葉と頭頂葉に血流低下を認めた。
著者
下手 公一 朝長 正徳 葛原 茂樹 山之内 博 吉村 正博 小林 祥泰 木谷 光博 山下 一也 村田 昭博 藤原 茂芳 恒松 徳五郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.513-518, 1987-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10

小脳の加齢に伴う萎縮に関する報告はいくつかあり, すでに我々も, 20歳代から70歳代の正常人でCTにおける小脳の加齢性萎縮は, 大脳に比べて軽度認められることを報告している. 今回は, 臨床的及び病理学的に痴呆, 中枢神経系の病変を有さない60歳から102歳の正常老年者の剖検脳142例を対象として, 小脳の加齢性萎縮及び動脈硬化と小脳萎縮との関係について検討した.脳切時に小脳虫部, 小脳半球断面をコピーし, パーソナルコンピューターに接続した Digitizer で断面積を計測し, さらに, 小脳半球のプルキンエ細胞数や脳重量, 小脳重量も計測して, それぞれ年齢との関係を検討した. また, 椎骨脳底動脈系の動脈硬化を(-)から(2+)に分類して, 小脳萎縮との関係を検討した. 結果は, 脳重量, 小脳重量, 小脳虫部断面積, 小脳半球断面積のいずれにおいても年齢と有意の負の相関を示し, 特に80歳を越えてから小脳の萎縮が著明になった. プルキンエ細胞数は, 小脳萎縮よりも早期から加齢に伴い著明に減少した. また, 椎骨脳底動脈系の動脈硬化が強くなるにつれて, 小脳萎縮も強くなり, プルキンエ細胞数も著明に減少した.以上より, 老年者において加齢及び動脈硬化は, 小脳萎縮の重要な因子であることが示唆された.
著者
葛原 茂樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.119-129, 2011-02-01

はじめに 太平洋熊野灘に面する紀伊半島の南岸一帯は,江戸時代までは紀伊国の牟婁と呼ばれていた。明治の廃藩置県によって東半分は北牟婁郡と南牟婁郡として三重県に編入され,西半分は和歌山県の東牟婁郡と西牟婁郡になり今日に至っている(Fig.1)。 この地域の中心部を流れる古座川流域には,「古座の足萎え病」の伝承があった1)。また,明治末にはわが国の神経学の創始者である三浦謹之助2)によって,紀伊から伊勢にかけての紀伊半島南岸にALSが多発することが指摘されていた。 このような伝承や医学的観察の知見を,1960年代以降に医学的手法によって研究し科学的知見に高めたのは,当時の和歌山県立医科大学精神科教授の木村 潔と,同科講師として研究を担った八瀬善郎であった3)。彼らは牟婁の風土病である「古座の足萎え病」が筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)であることを明らかにしただけでなく,牟婁地方の広範な疫学調査によって,古座川と穂原の2地区にグアム島とならぶALS高集積地があることを発見した。紀伊半島集積地のALS(紀伊ALS)は神経病理学的には中枢神経系にAlzheimer神経原線維変化[Alzheimer neurofibrillary change (tangle):NFT]が多発し,グアムALSと同質の疾患と考えられた4)。 紀伊ALSの疫学と原因研究は,八瀬をリーダーとして米国のグアム病研究グループと共同で進められたが,原因解明がなされないままにグアムに引き続いて紀伊半島でもALSの発生が激減していき,1980年代にはこれらの地域での高頻度発生は終焉したことが報告された5,6)。 1990年に三重大学に神経内科が新設され,教授として着任した筆者7)は,かつて高集積地であった穂原地区から1年間に3名のALS患者が受診したことを契機に再調査を行い,ALS多発がなおも持続していることを確認しただけでなく,同じ集落にグアムのパーキンソン・認知症複合(parkinsonism-dementia complex:PDC)に臨床像が酷似した疾患も多発していることを観察し,剖検例によって神経病理学的にも確定した。紀伊ALSとPDCは臨床病理学的には同じスペクトル上の疾患と考えられており,ALS/PDCとして扱われることが多い。多発の原因に関しては,環境因,遺伝素因ともに解明されていない。 時間軸でみると,紀伊半島でもグアム島でも,ALS発生は激減し,PDCは減少しながらも持続しているが,近年は高齢者認知症が増加していることが報告されている8)。このような疫学像の変遷が何によってもたらされたのかは,ALSの成因や予防との関連で大きな関心が払われている。本稿ではこのような筋書きに沿って,牟婁病の歴史を振り返ってみたい。
著者
藤原 茂樹
出版者
慶應義塾大学藝文学会
雑誌
藝文研究 (ISSN:04351630)
巻号頁・発行日
no.91, pp.21-44, 2006

一 催馬楽のいまみる姿二 催馬楽の質 : 歌われた催馬楽の記録三 楽譜としての性質四 路頭の謡謌 : まとめにかえて関場武教授退任記念論文集
著者
角掛 正弥 松原 茂樹
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.377-378, 2020-02-20

オープンサイエンスは、論文や研究データの参照や利活用を促進するための活動である。そしてその動きの一つとしてオープンデータが存在する。オープンデータは研究データを共用することで研究の加速化や、研究データへのアクセス促進を図る運動である。例えば、論文で引用された研究データを整備したリポジトリが存在すれば研究データへのアクセス促進に繋がる。そのようなリポジトリを構築・拡充する際に、研究データを自動的に論文から抽出できれば非常に有用である。そこで本研究では論文から研究データを抽出することを目指す。研究データの多くがインターネット上で利用可能であることから、URLによる研究データの引用に着目する。
著者
生駒 流季 松原 茂樹
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.379-380, 2020-02-20

近年のオープンサイエンスの広まりに伴い、研究において用いられたデータへの参照情報の抽出への需要も高まっている。また、学術論文では本文中で引用した論文や著者が参考文献として参照されるが、研究データへの参照に関しては明確な参照方法等の規定がなく、執筆者が個人の判断で研究データを参照しているという現状がある。本研究では、自然言語処理の国際会議における発表論文を対象に、参照先の文献から研究データとして参照されているものを識別する。その手掛かりとして、本研究では参照先文献のタイトルを含む書誌情報に加え、本文中で文献を参照した節のタイトルと、参照タグの含まれる本文から抽出した特徴量を利用する。
著者
葛原 茂樹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.187-194, 2017-06-30 (Released:2018-07-02)
参考文献数
26

神経内科医としての約 45 年の間に経験した思い出深い認知症症例と, 認知症に関係した研究と発見, それらにまつわる話題をオムニバス風に紹介した。1970 年代に経験した Pick 病様の前頭側頭型認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 症例は, 現代の TDP proteinopathy の一型である frontotemporal dementia-ALS であった。1979~1981 年の米国留学中に見た kuru 斑を伴う Creutzfeld-Jakob 病 (CJD) とグアムの筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン・認知症複合 (ALS/PDC) の脳標本の知識が, 帰国後に役に立ち, 筑波大学では Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病, 三重大学では紀伊半島の PDC の日本初の症例を発見する契機になった。1983 年から7 年間勤務した東京都老人医療センターでは, レビー小体病の臨床特徴を明らかにし, アルツハイマー病と健常者の多数例を対象に老化脳のタウと Aβ の免疫組織化学的研究によって, その相違を明らかにした。また, レビー小体がユビキチン化されていることを初めて明らかにした。研究に協力してくれた多くの患者と共同研究者に深謝する。