著者
尾山 公一 山田 智美 伊藤 大輔 渡邉 紀之 関口 由紀子 鈴木 昌子 近藤 忠雄 吉田 久美
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP61, 2015 (Released:2018-10-01)

【緒言】我々は、アジサイの花色変異の現象に興味を持ち研究を行っている。一細胞分析により、アントシアニンのdelphinidin 3-O-glucoside (1)が、助色素(5-O-caffeoylquinic acid (neochlorogenic acid (2))、5-O-p-coumaroylquinic acid (3)、3-O-caffeoylquinic acid (chlorogenic acid (4))の組成比、液胞pH、及びAl3+量の違いによって多彩に赤から紫、青に発色をすることを明らかにした (Figure 1) 1-3。アジサイの青色は、pH 4の条件下、1、2または3及びAl3+を混合すると再現できることがわかった4,5。この青色色素は、水溶液中だけで安定に形成される金属錯体で、ツユクサなどに見いだされた自己組織化超分子金属錯体色素(メタロアントシアニン)とは全く異なる性質を持つ非化学量論量の分子会合錯体である。これまで、結晶化の成功例はなく、1H NMRスペクトルもブロードで複雑なため、構造は今も不明である。本研究では、5-O-アシル化キナ酸類の効率的合成方法を新たに開発した。次に、合成した助色素を用いて青色色素を再構築し、解析可能なNMRスペクトルを得ることに成功した。【5-O-アシル化キナ酸類の効率的合成法の開拓】従来の2と3の合成4-6では、1位のカルボン酸の保護基にメチル基を用い、アシル基のフェノールの保護基にアセチル基を使用しているために、最終ステップの脱保護反応で競争的脱アシル化反応とアシル転移が起こり、収率が著しく低かった。また、5位へのエステル化は酸クロリドを用いていた。そこで、合成経路を見直し、1位のカルボン酸の保護基としてPMB基を持つキナ酸誘導体5を新たに分子設計して、Scheme 1に示すように(–)-キナ酸 (4) から5段階79%で合成した。5の5位アキシアルヒドロキシ基へのアシル化反応は、遊離カルボン酸にTsClとN-メチルイミダゾール (NMI)を加えてアシルアンモニウム中間体を生成させて、そこへアルコールを反応させる田辺法7を検討した。i-Pr2NEtの添加によりアルコールとカルボン酸の求核性が上がり収率が向上した(Scheme 2)。また、アンモニウム中間体の生成と同時にアルコール5が本中間体をトラップすることを目指してNMIを最後に加えた。その結果、収率はさらに向上した(Scheme 2)。この改良法を用いてp-クマル酸やコーヒー酸などの種々の遊離カルボン酸のエステル化反応を行い、72–94%の高収率で6-12を得た (Scheme 3)。得られたアシル体6-11の脱保護反応を検討した(Table 1)。芳香環部分に酸素原子のない6-9では、いずれも高収率(79-87%)で目的のアシル化キナ酸を得た。しかし、フェノール性ヒドロキシ基をMOM保護した10と11では、収率は40%以下と低かった。種々検討した結果、BCl3/C6HMe5を作用させると高収率(69,73%)で脱保護体が得られた 8。これらにより、市販のキナ酸(4)から7段階、通算収率45–60%で種々の5-O-アシル化キナ酸類の合成を達成した9,10。【アジサイ青色金属錯体色素の化学構造】合成した助色素類を用いて、アジサイ萼片の青色再現実験と得られた溶液の可視吸収スペクトル、円二色性、およびNMR分析を行った。これまでの知見により1-5、(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
芳本 信子 吉川 祐子 吉田 久江 菅沼 大行 山根 理学 稲熊 隆博 内藤 敬子 内藤 耕太郎
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-7, 2007-03-31 (Released:2019-07-01)

トマトやすいかに含まれ, 強い抗酸化作用を有するリコピンの摂取が, 2型糖尿病患者の酸化障害を軽減する可能性を考慮して血糖値, 特に糖化ヘモグロビン(HbA1c)の変動に及ぼす影響を検討した.リコピン摂取前平均7.9%であったHbA1cは, 摂取1年後には6.8%に低下し改善が認められた.2型糖尿病患者の高血糖による弊害をコントロールする1つの方法としてリコピンの含まれている食品を継続摂取することの有用性が示唆された.
著者
宮原 誠 西山 光郎 吉田 久美子 一宮 正道 多田 耕輔 藤田 雄司 秋山 紀雄 久保 秀文 長谷川 博康 宮下 洋
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1+2, pp.29-34, 2011-04-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

症例は37歳,男性.トラックの荷台から飛び降りた際,立てかけてあった熊手の柄が肛門より刺入した.柄を自己抜去した後,肛門出血および疼痛が出現し当院救急搬送された.受診時,下腹部に軽度圧痛があり,肛門の5時から8時の方向にかけ挫傷を認めた.腹部CTで右傍直腸腔内に血腫および遊離ガスを認め,注腸造影で造影剤の腸管外への漏出を認めた.以上より,杙創による直腸穿孔と診断し緊急手術を施行した.開腹時,右傍直腸腔内に血腫,体毛,衣服の断片が存在し,直腸Rb部右壁に1.8cm大の穿孔を認めた.穿孔部を縫合閉鎖し,S状結腸を用いた人工肛門を作成した.また経肛門的に裂創部粘膜を縫合した.経過は良好で術後25日目に退院,8ヵ月後に人工肛門を閉鎖し完治した.杙創において,会陰部や肛門周囲から刺入した場合には骨盤内臓器や腹腔内臓器を損傷する危険性があり,受傷早期に臓器損傷の有無とその程度を把握し,これに応じた治療を迅速に行う必要がある.また体腔内に異物が存在することもあり注意すべきであると思われた.
著者
和宇慶 真 小濱 剛 吉田 久
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.3PM-Abstract, pp.219-219, 2017 (Released:2017-09-13)

脳活動を非侵襲的に計測する手法としてfNIRSが広く利用されている。これは脳神経活動により発生する酸素消費を、近赤外光を用いて血中ヘモグロビン濃度の変化として観測するものである。しかしながら、fNIRS観測信号には生理学的要因によるものや、身体の動きに伴う全身性の血流量変化が含まれる。本研究ではこれらの問題に対し、Yamadaらの分離モデルを用いて観測信号を機能成分と全身成分に分離した。また、先行研究では機能成分の係数をグローバルな値として-0.6に固定していたが、計測部位によって有意な差があったため、全ての係数を数値計算により動的に決定した。このモデルを用いて観測信号を分離した結果、被験者の動きによる大きな血流量変化が全身成分として分離され、機能成分のベースラインが安定した。また、機能成分の係数を固定した場合に比べ、全ての観測信号において相互情報量が小さくなった。この結果は、計測領域やタスクによって最適な係数が異なる可能性があるため、検討の余地があると考えられる。
著者
吉田 久良 亀川 克美 有田 静児
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.3, pp.387-390, 1977
被引用文献数
14

活性炭によるニクロム酸カリウム水溶液(6価クロムの濃度110ppm)からの6価クロムの吸着について,pHの影響,活性炭に吸着されたクロムのNaOHまたはHCl水溶液による溶離などについて検討した結果,つぎの結論が得られた,(1)6価クロムはpH4~6.5で活性炭に容易に吸着される。(2)6緬ク揖ムは活性炭にHCrOぺおよびCrOのような6価クロムの形で吸着される。(3)酸性側では6緬クロムは活性炭により容易に3価クロムに還元される。(4)3価クロム(クロム(III)イオン)は活性炭にほとんど吸着されない。(5)6緬クロムを吸着した活性炭を0.1N以上のNaOH水溶液で処理すると,吸着されたク律ムの100%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては6価クロムであった。(6)6価クロムを吸着した活性炭を1NHClで処理すると,吸着されたクロムの90%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては3価クロムに還元されていた。
著者
吉田 久美子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.119-120, 2009-02-01 (Released:2009-03-13)
参考文献数
10
著者
伊藤 大輔 新海 陽介 三木 直子 加藤 友紀 近藤 忠雄 吉田 久美
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.455-460, 2007

The sepals of Hydrangea macrophylla show various colors from red through purple to blue and famous for its easy color change. However, any colored sepals consisted of the same components; one anthocyanin, delphinidin 3-glucoside (1) and three co-pigments, 5-O-caffeoylquinic acid (neochlorogenic acid, 2), 5-O-p-coumaroylquinic acid (3) and 3-O-caffeoylquinic acid (chlorogenic acid, 4). For blue color development, Al^<3+> has been clarified to be essential and we obtained stable blue solution by mixing 1, 2 and Al^<3+>. However the mechanism of flower color variation and the chemical structure of the blue pigment are still obscure. To clarify the color variation of hydrangea, we established "Single Cell Analysis Method". After recording the absorption spectrum of a cell, the vacuolar pH of the cell was measured by using a microelectrode. By micro-HPLC technique, the composition of 1-4 and Al^<3+> was determined. Combining the results, we could reproduce the cell color from blue to red by mixing the components in various pH aq. solutions.
著者
吉田 久美子 神田 清子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.23-31, 2010-06-21
被引用文献数
3

目的:がん治療が外来へと移行している動きに伴い,がん患者には治療や進行に伴い変化する心身の状態を調整する能力が求められている.本研究の目的は,がん患者のセルフケアの構成概念を導くことである.<br>方法:分析方法はRodgersのアプローチを用い,概念分析を行った.これまでの看護実践をもとにしたがん患者のセルフケアに焦点をあてるために医中誌とPubMedから文献を検索,収集し,質的に分析した.<br>結果:対象となった76文献の中では,がん患者のセルフケアについての明確な定義づけはされていなかった.分析により,がん患者のセルフケアの概念は,4つの先行要件,4つの属性,2つの帰結,2つの関連概念が抽出された.<br>結論:がん患者のセルフケアの定義は,『がんに関する情報の探索と活用により,生活を保持するための意思決定を行うことである.そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対処し,がんの進行を抑えるための保健行動の実行から構成される』と定義づけられた.
著者
吉田 久 宮川 三郎 前野 真司
出版者
農業技術協會
雑誌
農業技術 (ISSN:03888479)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.p325-327, 1990-07
被引用文献数
2
著者
吉田 久美 前島 正義 近藤 忠雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

花色発現には種々さまざまな液胞膜輸送が重要な役割を果たしている。そこで、この観点から、花色の解明を目指した。1)アサガオの開花に伴う花色変化の機構と液胞膜輸送開花時に液胞pHが上昇するのは、表層の着色細胞だけであることから、花弁の短時間の酵素処理により着色プロトプラストだけを調製し、これから、着色細胞だけの液胞膜を単離した。これを用いて、pH制御に関わると推測される輸送タンパク質の解析を行った。開花に向けてV-ATPse、V-PPaseの活性が協奏的に上昇した。ナトリウムープロトン交換輸送体(NHX1)は、開花最終ステージで劇的に発現量が上昇し、活性が上がった。同時に、PM-ATPaseの発現量と活性も上昇することがわかった。以上より、これらプロトンポンプ類およびNHX1の働きが、花色の青色化(即ち液胞pH上昇)をもたらすことを明らかにした。さらに、開花にともないアサガオの花弁の表層細胞の体積は数倍に増加し、この現象と花色の青色化、およびK^+量の増加同調していることがわかった。即ち、アサガオ開花時の液胞膜上のプロトンポンプ、NHX1および細胞膜上のプロトンポンプの発現量の増加と活性上昇は、液胞内へK^+を輸送して細胞を伸長生長させるために必須の装置ではないかと考えられる。2)その他の花の花色発現機構アジサイ、ファセリア、チューリップなどの液胞内成分を明らかにし、青色発色機構の化学的な解明を行った。
著者
吉田 久美 亀田 清 近藤 忠雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

目的赤小豆(Vigna angularis)は日本では文化的にも独特の位置を占める豆で、とくにその色が珍重されるが、未だに種皮色素の構造も、その加工食品である飽の色についても化学的な知見がほとんどない。本研究では、種皮色素の化学構造を明らかにすること、および、製餡加工工程において、種皮色素がどのように餡へと移行して餡の紫色が発色するのかを解明することを目的に行なった。方法および結果赤小豆種皮から色素を抽出して分析する条件の検討を行ない、トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル水溶液で抽出し、逆相HPLCで分析する手法を確立した。赤小豆種皮には、二種類のアントシアニンとは違う発色団を持つと推定される色素が含まれることを初めて見いだした。そこで、これらの色素の単離精製法を検討した。溶媒抽出後、アンバーライトXAD-7カラムクロマトグラフィー、次いでゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行うことにより、かなり色素の純度の上った色素を微量であるが得た。同時に、ケルセチンを同定した。種皮色と餡色の違いを明らかにする目的で、製餡加工工程試料から成分を抽出して、HPLC分析を行なった。渋切り水には、色素はほとんど含まれず、無色のポリフェノール成分が多く溶出することがわかった。さらし餡に、種皮に含まれる2種の色素が存在することがわかり、同時に、餡では、無色のポリフェノール量い対する色素の含有量が増えていることがわかった。渋きり操作により、赤茶色系統の発色をするポリフェノール類が除去されることがわかった。
著者
吉田 久
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の主な目的は、1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いた統一的な新しい等価帯域幅のクラスの提案とその理論構築、2.非定常過程における瞬時等価帯域幅の新たな提案とその推定法に関する研究の推進、3.本研究で提案する解析法を心音などの実際の生体信号解析へ応用し、新たな知見を得ることであった。当該研究期間に得られた研究成果は以下の通りである。1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いることによって、音声処理分野でスペクトルの広がりを表現するときによく使われるSpectral Flatness Measureを包含するような等価帯域幅の表現を得た。また、従来から提案している等価帯域幅との比較を行った。2.統計学におけるCopulas理論を援用して非定常確率過程の正値の時間-周波数分布を推定する方法を検討し、非定常確率過程に対する等価帯域幅の拡張を行った。3.非定常信号の等価帯域幅に関する理論構築において、時間-周波数分布の時間周辺分布の推定法、および周波数周辺分布の新規な推定方法の提案を行った。4.提案する非定常性解析法を実際の生体信号である脳波に適用した。その結果、覚醒維持の努力をしている区間の脳波は非常に帯域が広く、脳の活動が活発化しているように見えることを明らかにした。これは覚醒と睡眠の中枢である視床下部と能動的行動を司る前頭部の関係を知る上でも大変興味深い研究成果である。眠気に逆らって覚醒維持を続けるといった状態の脳波解析はあまりなく、こうした脳波の生理学的知見を得ることは、仕事の効率を定量的に検討する場合に大変有用であると考えられる。こうした関係をより詳しく調べる上でも、前頭部に混入する瞬きや眼球運動によるアーチファクトの除去法などの信号処理における課題を今後解決していく必要がある。
著者
上村 大輔 有本 博一 吉田 久美 北 将樹 大野 修
出版者
慶應義塾大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

自然界での生物現象から真摯に学び、特異な生態系でくり広げられる生物現象を「生態系ダイナミズム」という視点で着目し、現象に関与する切れ味の良い有用天然有機分子の探索を試みた。また、新規化合物の単離・構造決定のみで満足することなく、化合物の展開利用までを視野に入れた姿勢で化学合成と生物学的意義の解明を目指した研究に取り組み、複数の重要化合物の発見及びその機能解明を達成した。本研究により、サンゴ幼生誘引物質や哺乳類毒の解明等これまで未解明であった現象に関与する物質を解明するとともに、関連科学分野への波及性を発揮する新規天然有機化合物の発見を導くことができ、生物分子科学の新領域を創成した。